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四章 暴かれる真相
第二十八話
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左手が、柔らかい感触で包まれていた。
「ん……?」
ぼんやりと目を開けると、窓の外が明るくなっていた。それも、朝日といった雰囲気ではなく、思い切り南向きの日が入ってきている明るさだ。
「今何時だ……」
ぼやける目をしぱしぱとまばたいて、壁掛けの時計を見る。
「十三時……だいぶ寝てたな」
眉を寄せて、ソファから身体を起こす。
今日から夏休みで良かった。登校日だったら寝坊どころの騒ぎではない。
……ところで、さっきから漂ってくる良い香りと、左手から伝わる柔らかい感触はなんだ。
左手に視線をやると、視界の中に突如として。
俺の手を握ったまま眠る、女子高生が現れた。
突然の出来事に、脳がフリーズする。
視界のど真ん中で寝息を立てる女子高生は、俺の気配に気付き、ゆっくりと顔を上げる。
じっと俺の目を見て、片手を上げる。
「おはよう」
「なんでここで寝てるの⁉︎」
俺は声を荒立て、握られた手を振り解いた。
「側にいてほしいっていうから寝るまでここにいたら、いつの間にか私まで寝てたみたい」
朗らかに笑うユニを見ながら、俺は苦笑した。
「みたいって……俺が起きるまで、ずっとそこにいたの?」
「うん」
俺は言葉を失った。まさか昨晩何気なく言った一言を間に受けて、本当にずっと側にいるとは思わなかったからだ。
彼女も彼女だ。異性の手をなんの躊躇いもなく握るのはどうかと思う。俺だから良かったものの、もし違う男にすれば誤解を生む。
純粋なんだろうけど、いかんせん危機感を持たなすぎてる気がする。道端で下着丸見えで寝てるし。
深くて長いため息を吐き、ユニの目を見て言う。
「君の気持ちは嬉しいけど、あまり誤解を招く行動は取らない方がいい。勘違いする人もいるから」
「勘違いって?」
「それは……」
無邪気な眼差しを向けながら問われてしまい、俺は口ごもる。
「とにかく! これからは少し気をつけて行動してくれ」
強引に話を締め、ソファから起き上がる。箪笥にしまわれた新品のワイシャツをユニに手渡す。
「これに着替えて」
「えぇ……別に着替えなくてもいいよ」
「駄目だ。俺はシャワー浴びてくるから、それまでに着替えて」
それだけ言い残し、リビングのドアを乱暴に閉める。そそくさと制服を脱ぎ、雑にシャワーを浴びてから予備のワイシャツの袖に腕を通す。基本的に休日も制服で過ごすから、ワイシャツだけは多く持っている。
上だけ変えた格好でリビングに戻ると、新品のワイシャツに着替えたユニが、ソファで足をぶらぶら揺らしながら座って待っていた。
俺に気付いたユニが、にへらと笑って言った。
「どう? 似合う?」
「似合ってる似合ってる。ほら、行くぞ」
適当に流しながら立ち上がるよう促し、家を出る。
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
「警察署。君を預ける」
「……え」
隣を歩いていたユニが、突然足を止める。何事かと振り向くと、なぜか絶望を露わにしていた。
「どうした、急に止まって」
尋ねるも、答えようとしない。側まで歩み寄り、顔を覗き込むと、その表情は酷く怯えていた。
「捨てられる……」
今にも消えてしまいそうなほどか細い声でそう言うと、ユニは反対方向へと走り出した。
「ちょ、おい!」
明らかに様子がおかしいので後を追うが、ユニはすばしっこく逃げ続けた。
しかし、慣れない道を適当に走ったせいですぐに行き止まりと衝突してしまう。
久方ぶりに走ったから息が切れ切れなのに対し、ユニは一切息が切れていないのが気掛かりだが、俺は構わず言った。
「なんで、逃げるんだ……」
警察署に連れて行くと話した瞬間、彼女はなぜか捨てられると勘違いした。まずはその誤解を解かねば意味がない。
その考えに至った時、ある違和感にもたどり着いた。
俺は昨日、ケースで見た紙の内容は一部──名前と記憶喪失の事しか伝えていない。にも関わらず、彼女は自分が捨てられた事を知っている。
記憶喪失が嘘なのか? いや、どういった経緯で道端で眠っていたのかを覚えていなかった。断片的に覚えているという可能性も、と熟考していると、こちらの考えを読んだかのように、ユニが答えた。
「嘘よ! どうせあなたも、他の人と同じで私を捨てるつもりなんでしょ!」
「他の人?」
「あ! いや、今のは違くて……」
口が滑ってしまったのか、明らかに動揺している。
「君、まさか記憶喪失ってのは嘘なのか?」
詰め寄ると、ユニは顔を俯かせ、表情を隠した。
眼前にまで近づき、更に尋ねる。
「怒らないから正直に言うんだ」
「でも……」
「話さないなら無理矢理にでも連れてく。けど話すなら、少しだけ待ってやる」
酷いやり方だと思う。選択権を与えてはいるが、ほぼ一択の選択を強いるのは良心が痛む。
ユニは長い時間黙り込むが、観念したように口を開けた。
「本当に、怒らない?」
涙目による上目遣いに若干心揺らぎながら、こくりと頷く。
「実は私、今まで沢山の人の家に泊まってたの」
ユニの発言を聞いて、二の句がつげなくなった。彼女の今の境遇についてはある程度分かってはいるが、この口ぶりからすると昨日からではなく数ヶ月前から捨てられたのではないか?
しかも、その間どうやって宿を得ていたのか、なんとなく嫌な想像がつく。一層暗くなった彼女の表情からもそれがうなづける。
「でも、何も覚えてないのは本当。どこから来たかも覚えてなくて、目が覚めたらこの街にいたの。あのケースもその時に置いてあって、中を見て捨てられたって分かって、それで……」
「昨日の俺みたいに、知らん人の家に泊まってたと」
そして、その条件として彼女は自分の身を……。
そこから先は、考えないようにした。
ユニの表情が露骨に曇ったからだ。
どこか遠くを見るような目で、ユニは言った。
「最初は凄く怖かったんだけど、もう大丈夫。泊めてもらってるんだから、それに見合ったお返ししないと」
「見合ってないから捨てられてきたんだろ?」
俺の返しに、ユニの目に寂しさと諦観をごちゃまぜにしたような色が浮かんできた。
俺は、少し胸が痛むのを感じた。
「この国じゃ、君みたいな未成年に手を出すのは犯罪だ。一時の欲望の為に一生を天秤にかけるリスクは侵したくない。一時的には泊めるが、後々危うさに気付いて追い出されてきた。違うか?」
「……よく分かったね」
俺は、誰に、ということでもなく、腹が立ってきた。
「でも仕方ないよ。私は捨てられたんだから、生きる為には少しでも工夫しなきゃ。上手いことやって、誰かの家に住むしかないんだよ。だから」
「辛いのに耐えて、そこまでして生きたいか?」
気付けば口走っていた。
「その日生きるのがやっとな生活を続ける為に、自分の身を犠牲にするなんて馬鹿げてる」
「でも、そうしなきゃ」
「優しさや同情から泊めてくれた人もいただろうけど、ほとんどは君の身体目的だったはずだ。言いたくないけど、その方法が通じるのは若いうちだけだ。大人になったらもう通じなくなる。そうなったらどうするつもりなんだ?」
「ど、どうにかして探すよ」
「どうにかしてって、具体的には?」
「それは……」
俺の言葉に、ユニは困ったように言葉を濁した。
どうして、分からないんだ。
普通の思考なら、安易に見知らな男性を誘惑しようという考えに至るものではないと思う。いや、子を捨てる親の元で育った彼女にとって、何が普通なのかは分からない。
俺は怒りとも悲しみとも分からない気持ちを胸の中で反芻させながら、それを振り払うようにきっぱりと言った。
「うちの高校に来い」
「高校に?」
「そうだ。中卒で働けないことはないが、今は不況だからまともな所じゃ働けない。だからせめて高卒ぐらいしておけば就職も進学も今よりかはマシになるはずだ」
「で、でも」
「金の件なら心配するな。君を捨てた親御さんがたんまりと教育費を残してる」
俺は、ケースに入っていた養育費の封筒をポケットから取り出した。
「親切なのか薄情か分かんない親だよな。娘を捨てておいて、こんなに残していってさ」
中は見えないが、かなりずっしりとくる重量だ。
封筒をユニに渡すと、聞こえるか聞こえないか分からない微妙な声量で言う。
「学校に通っても、住む所がないんじゃ」
「うちに住めばいい」
「え?」
「行くあてもないんだろ? だったらうちに住めばいい」
俺が言うと、ユニは信じられない、というようにまばたきを繰り返した。
「で、でも私何もあげてないし」
「何もいらないよ」
俺は顔をしかめて、言葉を続ける。
「金がない、記憶もない、けど警察には行きたくない。じゃあ知らない人の所で住もう。そんな生活はもうやめろ」
「悠斗くんだって知らない人じゃ……」
「君の事情を知っていて、一晩を共に過ごした。充分知人だろ?」
ぐっと言葉を飲み込むユニ。
正面から顔を見ると、やはり可愛い。
「住む場所ないんだろ?」
「うん」
「じゃあうちに住め。気が引けるなら家の家事を手伝って。それが俺の求める対価だ」
そう言うと、ユニは驚いたように目を丸くした。
「そんなんでいいの?」
「普通はそう」
ユニが、口をぱくぱくとさせた。
何か言いたげなので待ってやると、ようやくユニは言う。
「ずっと住んでていいみたいな、言い方だけど」
「ずっとは駄目。君の家族が迎えに来るか、自立できるようになるまでだ」
「……それまではいていいの?」
その問いに、どう答えるものかと、迷う。
ここ数分の会話で分かったことだが、この子は相当な甘ったれの馬鹿だ。
男を誘惑して宿を借り、適当に渡り歩いてきたのだろう。それも一個な方法だと思うが、褒められる行為ではないし、肯定する気もない。
俺は、言葉を選びに選んで、ようやく口を開いた。
「事情も聞かずに泊めた俺にも責任はある。だからせめて、君が一人で生きていけるようになるまでは捨てたりはしない」
そういうと、ユニはどこかぽかんとしながらも、微かに嬉しそうに笑い、首を縦に振った。
「わ、わかった……」
俺はふぅと息を吐いて、前髪をかきあげた。
久しぶりに熱くなってしまった。
なんで彼女を放っておけないのか、今わかった。
俺とユニは同じで、経緯は違えど親を無くしている。それからは全てがどうでも良くなり、死んだように生きてきた。
彼女を見て苛立ったのは、自分と重なって見えたからだ。孤独に押しつぶされ、全てを捨てた生活を続けてきた、今の自分とそっくり……。
俺はふと顔を下げて、ユニの方をじっと見た。
「な、なに」
ユニは俺から目を逸らして訊き返してくる。
さっきまでの摑みどころのない態度は消えてしまっている。
俺はユニに人差し指を向けて、言った。
「そうと決まったら家に帰るぞ。やることは沢山あるんだからな」
「そ、そうだね。帰ろっか……」
***
「こうして、俺とユニちゃんは一緒に暮らすことになりました」
空白の七年とユニとの出会いが終わる頃には、車内は重苦しい空気に包まれていた。
俺の話を終始無言で聞いていた二人は、何を言うでもなく黙っている。
渋滞から抜け、直線道を静かに走行する音だけが鳴る車内。
「それで、君が鎧騎士になった経緯は?」
ようやく口を開いた滝口の問いに、俺はわずかな間を空けてから答えた。
「……俺が鎧騎士になったのは──」
その時だった。
携帯電話の着信音が、ポケットから響いてきた。
「すいません、いいですか?」
一応隣に確認を取ってから取り出し、画面を見る。
知らない番号からの着信。
普段なら不気味で出ないが、今の俺は躊躇わず出る。
『よぉ、腰抜け野郎』
着信ボタンを押すと同時に流れた声に、悠斗と滝口が凍りつく。
「なんでこの番号を知ってる」
『番号を知る手段なんていくらでもあるんだよ。手短に聞く方法もなぁ』
奴の顔が目に浮かぶほどの卑しい笑い声に、俺の怒りが頂点に達した。
「……ユニちゃんに何をした」
携帯を握る力が強まる。もし、この手が奴に届いたならば、そのまま絞め殺してしまいそうな、行き場のない苛立ちが膨れ上がっていく。
『まだ何もしてねぇよ。だが、これからする約束を破れば保証できないけどなぁ』
「交わす約束などない」
『……お前、立場分かってんのか? お前の大事な大事な彼女はこっちにいるのに、随分と反抗的な態度だな』
それを言われては、何も言い返すことができない。
今はなによりもユニの安全を確保しなければいけない状況だ。変に奴の反感を買うのは避けるべきと分かっているのだが、やはり我慢できない。
『まぁ安心しろ。約束は簡単だ。今日の夜に、回収した駒を全部持ってある所に一人で来い』
半年かけて集めた駒を欲する意図が分からないが、今は何も言わずに堪える。
『詳しい場所はメールで伝えるが、約束は守れよ? 約束を破るってことは、俺の慈愛に反する行為だ』
「慈愛だと? ふざけるな、父さんと母さんを殺したお前が何言ってやがる」
『おいおいおい、冗談だろ? まだそんな昔のこと気にしてんのかよ。女々しい腰抜け野郎だな』
「……テメェ、今なんつった」
『女々しい腰抜け野郎って言ったんだよ』
今すぐ電話を切りたくなった。これ以上奴との会話を続けたら、理性が消し飛ぶ恐れがある。
『まぁいいや。場所はメールで送っといてやるが、一分でも遅れたら……』
「分かってる」
『ふん、じゃあな』
一方的に電話が切られ、放心する。数秒後にメールの通知音が鳴ったが、今は確認する気にもなれない。
無心で遠くを眺めていると、一連の話を聞いていた滝口が控えめな声で言った。
「悠長に話してる場合ではなさそうだね」
「えぇ、そうですね」
いつも以上に素っ気ない返事で答えてから、滝口と向かい合い、頭を下げる。
「お願いです。ユニちゃんを助ける為に、皆さんの力を貸してください」
多分、初めて人に頭を下げた。今までは無意味なプライドが邪魔して躊躇われていた行為を、忌み嫌っている相手にしている。
昔の自分が見たら、無様な姿と嘲笑っていただろう。
だけど今だけは、プライドなんていらない。ユニを助ける為ならば、なんだって捨てる。
「個人的な願いの為に、警察を使う気か?」
滝口の問いに、俺ははっきりと答える。
「俺だけじゃユニちゃんは助けられない。だけど、皆さんがいれば助けられる」
「……それは真か?」
「嘘は言わない。言う必要がない」
確固たる決意と意志のまま答える。
しかし、それで動くほど、滝口は甘くはなかった。
「一個人の為に警察を動かすなんて、総監として認められない。警察は市民の為に動く組織であり、君のために動く都合のいい道具じゃない」
ごもっともな返しだった。国の権力を個人的な願いの為だけに動かせば、総監の立場が危うくなる。滝口からしてみれば、折角登りつめた地位をみすみす手放したくないはずだ。
「今のは総監としての意見であり、今から言うのは総監でもなんでもない、一人の大人としての意見だ」
滝口は突然、俺の頭を掴んだ。
「今は亡き友の倅を助けない理由がどこにある?」
「え? てことは……」
「今回の件、総監としてではなく私個人の意志で手を貸そう。あと」
掴んだ手で髪をかき乱す。
「鎧騎士なんて力を手にしても、君はまだ子供なんだ。困ったら大人に頼るのは当然のことであって、頭を下げるほどのことじゃない」
「でも……失敗したら、滝口さんまで危険な目に遭うかもしれないんですよ。簡単に決めていいんですか?」
「勝てるんだろ?」
滝口の言葉に、息を呑む。
「君だけじゃ勝てない。けど私たちが手を貸せば勝てると言ったのは他でもない、君自身だ。私はその言葉と覚悟に賭けただけだ」
「そ、それだけの理由で動くなんて」
お人好しなのかただの馬鹿かのどちらかだ。という言葉は言わずに、胸の中に押しとどめておく。
「それだけじゃないよ、悠斗くん」
運転席から、沙耶香が顔を出して微笑んだ。
「本当は私たち大人が頑張らなきゃいけないのに、子供のあなたにばかり無茶を強いてる。そのせめてもの罪滅ぼしとして、あなたが困ってる時は迷わず手を貸したいのよ」
「そんな……あなた達が負い目を感じる必要なんてありませんよ」
「ありがとう。でもね、大人ってめんどくさい生き物だから、子供に遠慮されると意地でも力になろうとするの。無論、この私もね」
自分も手伝う事をサラリと言っているのが、すぐに分かった。
隣に座る滝口が、ふっと鼻で笑いながら言った。
「他の人員は私が呼ぼう。ちょうど、君に恩義を感じている者もいるからな」
「誰のことですか?」
「面識はないと思うから、後で話そう」
答えを濁されると余計気になるが、分からない以上考えるだけ無駄だ。
「そんな事より、どうなんだ。悠斗くん」
「総監と私以外も集まりそうだけど、勝算はあるの?」
滝口と沙耶香の問いに、俺は率直な答えで返した。
「勝ってみせます。俺の全てを犠牲にしてでも」
「ん……?」
ぼんやりと目を開けると、窓の外が明るくなっていた。それも、朝日といった雰囲気ではなく、思い切り南向きの日が入ってきている明るさだ。
「今何時だ……」
ぼやける目をしぱしぱとまばたいて、壁掛けの時計を見る。
「十三時……だいぶ寝てたな」
眉を寄せて、ソファから身体を起こす。
今日から夏休みで良かった。登校日だったら寝坊どころの騒ぎではない。
……ところで、さっきから漂ってくる良い香りと、左手から伝わる柔らかい感触はなんだ。
左手に視線をやると、視界の中に突如として。
俺の手を握ったまま眠る、女子高生が現れた。
突然の出来事に、脳がフリーズする。
視界のど真ん中で寝息を立てる女子高生は、俺の気配に気付き、ゆっくりと顔を上げる。
じっと俺の目を見て、片手を上げる。
「おはよう」
「なんでここで寝てるの⁉︎」
俺は声を荒立て、握られた手を振り解いた。
「側にいてほしいっていうから寝るまでここにいたら、いつの間にか私まで寝てたみたい」
朗らかに笑うユニを見ながら、俺は苦笑した。
「みたいって……俺が起きるまで、ずっとそこにいたの?」
「うん」
俺は言葉を失った。まさか昨晩何気なく言った一言を間に受けて、本当にずっと側にいるとは思わなかったからだ。
彼女も彼女だ。異性の手をなんの躊躇いもなく握るのはどうかと思う。俺だから良かったものの、もし違う男にすれば誤解を生む。
純粋なんだろうけど、いかんせん危機感を持たなすぎてる気がする。道端で下着丸見えで寝てるし。
深くて長いため息を吐き、ユニの目を見て言う。
「君の気持ちは嬉しいけど、あまり誤解を招く行動は取らない方がいい。勘違いする人もいるから」
「勘違いって?」
「それは……」
無邪気な眼差しを向けながら問われてしまい、俺は口ごもる。
「とにかく! これからは少し気をつけて行動してくれ」
強引に話を締め、ソファから起き上がる。箪笥にしまわれた新品のワイシャツをユニに手渡す。
「これに着替えて」
「えぇ……別に着替えなくてもいいよ」
「駄目だ。俺はシャワー浴びてくるから、それまでに着替えて」
それだけ言い残し、リビングのドアを乱暴に閉める。そそくさと制服を脱ぎ、雑にシャワーを浴びてから予備のワイシャツの袖に腕を通す。基本的に休日も制服で過ごすから、ワイシャツだけは多く持っている。
上だけ変えた格好でリビングに戻ると、新品のワイシャツに着替えたユニが、ソファで足をぶらぶら揺らしながら座って待っていた。
俺に気付いたユニが、にへらと笑って言った。
「どう? 似合う?」
「似合ってる似合ってる。ほら、行くぞ」
適当に流しながら立ち上がるよう促し、家を出る。
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
「警察署。君を預ける」
「……え」
隣を歩いていたユニが、突然足を止める。何事かと振り向くと、なぜか絶望を露わにしていた。
「どうした、急に止まって」
尋ねるも、答えようとしない。側まで歩み寄り、顔を覗き込むと、その表情は酷く怯えていた。
「捨てられる……」
今にも消えてしまいそうなほどか細い声でそう言うと、ユニは反対方向へと走り出した。
「ちょ、おい!」
明らかに様子がおかしいので後を追うが、ユニはすばしっこく逃げ続けた。
しかし、慣れない道を適当に走ったせいですぐに行き止まりと衝突してしまう。
久方ぶりに走ったから息が切れ切れなのに対し、ユニは一切息が切れていないのが気掛かりだが、俺は構わず言った。
「なんで、逃げるんだ……」
警察署に連れて行くと話した瞬間、彼女はなぜか捨てられると勘違いした。まずはその誤解を解かねば意味がない。
その考えに至った時、ある違和感にもたどり着いた。
俺は昨日、ケースで見た紙の内容は一部──名前と記憶喪失の事しか伝えていない。にも関わらず、彼女は自分が捨てられた事を知っている。
記憶喪失が嘘なのか? いや、どういった経緯で道端で眠っていたのかを覚えていなかった。断片的に覚えているという可能性も、と熟考していると、こちらの考えを読んだかのように、ユニが答えた。
「嘘よ! どうせあなたも、他の人と同じで私を捨てるつもりなんでしょ!」
「他の人?」
「あ! いや、今のは違くて……」
口が滑ってしまったのか、明らかに動揺している。
「君、まさか記憶喪失ってのは嘘なのか?」
詰め寄ると、ユニは顔を俯かせ、表情を隠した。
眼前にまで近づき、更に尋ねる。
「怒らないから正直に言うんだ」
「でも……」
「話さないなら無理矢理にでも連れてく。けど話すなら、少しだけ待ってやる」
酷いやり方だと思う。選択権を与えてはいるが、ほぼ一択の選択を強いるのは良心が痛む。
ユニは長い時間黙り込むが、観念したように口を開けた。
「本当に、怒らない?」
涙目による上目遣いに若干心揺らぎながら、こくりと頷く。
「実は私、今まで沢山の人の家に泊まってたの」
ユニの発言を聞いて、二の句がつげなくなった。彼女の今の境遇についてはある程度分かってはいるが、この口ぶりからすると昨日からではなく数ヶ月前から捨てられたのではないか?
しかも、その間どうやって宿を得ていたのか、なんとなく嫌な想像がつく。一層暗くなった彼女の表情からもそれがうなづける。
「でも、何も覚えてないのは本当。どこから来たかも覚えてなくて、目が覚めたらこの街にいたの。あのケースもその時に置いてあって、中を見て捨てられたって分かって、それで……」
「昨日の俺みたいに、知らん人の家に泊まってたと」
そして、その条件として彼女は自分の身を……。
そこから先は、考えないようにした。
ユニの表情が露骨に曇ったからだ。
どこか遠くを見るような目で、ユニは言った。
「最初は凄く怖かったんだけど、もう大丈夫。泊めてもらってるんだから、それに見合ったお返ししないと」
「見合ってないから捨てられてきたんだろ?」
俺の返しに、ユニの目に寂しさと諦観をごちゃまぜにしたような色が浮かんできた。
俺は、少し胸が痛むのを感じた。
「この国じゃ、君みたいな未成年に手を出すのは犯罪だ。一時の欲望の為に一生を天秤にかけるリスクは侵したくない。一時的には泊めるが、後々危うさに気付いて追い出されてきた。違うか?」
「……よく分かったね」
俺は、誰に、ということでもなく、腹が立ってきた。
「でも仕方ないよ。私は捨てられたんだから、生きる為には少しでも工夫しなきゃ。上手いことやって、誰かの家に住むしかないんだよ。だから」
「辛いのに耐えて、そこまでして生きたいか?」
気付けば口走っていた。
「その日生きるのがやっとな生活を続ける為に、自分の身を犠牲にするなんて馬鹿げてる」
「でも、そうしなきゃ」
「優しさや同情から泊めてくれた人もいただろうけど、ほとんどは君の身体目的だったはずだ。言いたくないけど、その方法が通じるのは若いうちだけだ。大人になったらもう通じなくなる。そうなったらどうするつもりなんだ?」
「ど、どうにかして探すよ」
「どうにかしてって、具体的には?」
「それは……」
俺の言葉に、ユニは困ったように言葉を濁した。
どうして、分からないんだ。
普通の思考なら、安易に見知らな男性を誘惑しようという考えに至るものではないと思う。いや、子を捨てる親の元で育った彼女にとって、何が普通なのかは分からない。
俺は怒りとも悲しみとも分からない気持ちを胸の中で反芻させながら、それを振り払うようにきっぱりと言った。
「うちの高校に来い」
「高校に?」
「そうだ。中卒で働けないことはないが、今は不況だからまともな所じゃ働けない。だからせめて高卒ぐらいしておけば就職も進学も今よりかはマシになるはずだ」
「で、でも」
「金の件なら心配するな。君を捨てた親御さんがたんまりと教育費を残してる」
俺は、ケースに入っていた養育費の封筒をポケットから取り出した。
「親切なのか薄情か分かんない親だよな。娘を捨てておいて、こんなに残していってさ」
中は見えないが、かなりずっしりとくる重量だ。
封筒をユニに渡すと、聞こえるか聞こえないか分からない微妙な声量で言う。
「学校に通っても、住む所がないんじゃ」
「うちに住めばいい」
「え?」
「行くあてもないんだろ? だったらうちに住めばいい」
俺が言うと、ユニは信じられない、というようにまばたきを繰り返した。
「で、でも私何もあげてないし」
「何もいらないよ」
俺は顔をしかめて、言葉を続ける。
「金がない、記憶もない、けど警察には行きたくない。じゃあ知らない人の所で住もう。そんな生活はもうやめろ」
「悠斗くんだって知らない人じゃ……」
「君の事情を知っていて、一晩を共に過ごした。充分知人だろ?」
ぐっと言葉を飲み込むユニ。
正面から顔を見ると、やはり可愛い。
「住む場所ないんだろ?」
「うん」
「じゃあうちに住め。気が引けるなら家の家事を手伝って。それが俺の求める対価だ」
そう言うと、ユニは驚いたように目を丸くした。
「そんなんでいいの?」
「普通はそう」
ユニが、口をぱくぱくとさせた。
何か言いたげなので待ってやると、ようやくユニは言う。
「ずっと住んでていいみたいな、言い方だけど」
「ずっとは駄目。君の家族が迎えに来るか、自立できるようになるまでだ」
「……それまではいていいの?」
その問いに、どう答えるものかと、迷う。
ここ数分の会話で分かったことだが、この子は相当な甘ったれの馬鹿だ。
男を誘惑して宿を借り、適当に渡り歩いてきたのだろう。それも一個な方法だと思うが、褒められる行為ではないし、肯定する気もない。
俺は、言葉を選びに選んで、ようやく口を開いた。
「事情も聞かずに泊めた俺にも責任はある。だからせめて、君が一人で生きていけるようになるまでは捨てたりはしない」
そういうと、ユニはどこかぽかんとしながらも、微かに嬉しそうに笑い、首を縦に振った。
「わ、わかった……」
俺はふぅと息を吐いて、前髪をかきあげた。
久しぶりに熱くなってしまった。
なんで彼女を放っておけないのか、今わかった。
俺とユニは同じで、経緯は違えど親を無くしている。それからは全てがどうでも良くなり、死んだように生きてきた。
彼女を見て苛立ったのは、自分と重なって見えたからだ。孤独に押しつぶされ、全てを捨てた生活を続けてきた、今の自分とそっくり……。
俺はふと顔を下げて、ユニの方をじっと見た。
「な、なに」
ユニは俺から目を逸らして訊き返してくる。
さっきまでの摑みどころのない態度は消えてしまっている。
俺はユニに人差し指を向けて、言った。
「そうと決まったら家に帰るぞ。やることは沢山あるんだからな」
「そ、そうだね。帰ろっか……」
***
「こうして、俺とユニちゃんは一緒に暮らすことになりました」
空白の七年とユニとの出会いが終わる頃には、車内は重苦しい空気に包まれていた。
俺の話を終始無言で聞いていた二人は、何を言うでもなく黙っている。
渋滞から抜け、直線道を静かに走行する音だけが鳴る車内。
「それで、君が鎧騎士になった経緯は?」
ようやく口を開いた滝口の問いに、俺はわずかな間を空けてから答えた。
「……俺が鎧騎士になったのは──」
その時だった。
携帯電話の着信音が、ポケットから響いてきた。
「すいません、いいですか?」
一応隣に確認を取ってから取り出し、画面を見る。
知らない番号からの着信。
普段なら不気味で出ないが、今の俺は躊躇わず出る。
『よぉ、腰抜け野郎』
着信ボタンを押すと同時に流れた声に、悠斗と滝口が凍りつく。
「なんでこの番号を知ってる」
『番号を知る手段なんていくらでもあるんだよ。手短に聞く方法もなぁ』
奴の顔が目に浮かぶほどの卑しい笑い声に、俺の怒りが頂点に達した。
「……ユニちゃんに何をした」
携帯を握る力が強まる。もし、この手が奴に届いたならば、そのまま絞め殺してしまいそうな、行き場のない苛立ちが膨れ上がっていく。
『まだ何もしてねぇよ。だが、これからする約束を破れば保証できないけどなぁ』
「交わす約束などない」
『……お前、立場分かってんのか? お前の大事な大事な彼女はこっちにいるのに、随分と反抗的な態度だな』
それを言われては、何も言い返すことができない。
今はなによりもユニの安全を確保しなければいけない状況だ。変に奴の反感を買うのは避けるべきと分かっているのだが、やはり我慢できない。
『まぁ安心しろ。約束は簡単だ。今日の夜に、回収した駒を全部持ってある所に一人で来い』
半年かけて集めた駒を欲する意図が分からないが、今は何も言わずに堪える。
『詳しい場所はメールで伝えるが、約束は守れよ? 約束を破るってことは、俺の慈愛に反する行為だ』
「慈愛だと? ふざけるな、父さんと母さんを殺したお前が何言ってやがる」
『おいおいおい、冗談だろ? まだそんな昔のこと気にしてんのかよ。女々しい腰抜け野郎だな』
「……テメェ、今なんつった」
『女々しい腰抜け野郎って言ったんだよ』
今すぐ電話を切りたくなった。これ以上奴との会話を続けたら、理性が消し飛ぶ恐れがある。
『まぁいいや。場所はメールで送っといてやるが、一分でも遅れたら……』
「分かってる」
『ふん、じゃあな』
一方的に電話が切られ、放心する。数秒後にメールの通知音が鳴ったが、今は確認する気にもなれない。
無心で遠くを眺めていると、一連の話を聞いていた滝口が控えめな声で言った。
「悠長に話してる場合ではなさそうだね」
「えぇ、そうですね」
いつも以上に素っ気ない返事で答えてから、滝口と向かい合い、頭を下げる。
「お願いです。ユニちゃんを助ける為に、皆さんの力を貸してください」
多分、初めて人に頭を下げた。今までは無意味なプライドが邪魔して躊躇われていた行為を、忌み嫌っている相手にしている。
昔の自分が見たら、無様な姿と嘲笑っていただろう。
だけど今だけは、プライドなんていらない。ユニを助ける為ならば、なんだって捨てる。
「個人的な願いの為に、警察を使う気か?」
滝口の問いに、俺ははっきりと答える。
「俺だけじゃユニちゃんは助けられない。だけど、皆さんがいれば助けられる」
「……それは真か?」
「嘘は言わない。言う必要がない」
確固たる決意と意志のまま答える。
しかし、それで動くほど、滝口は甘くはなかった。
「一個人の為に警察を動かすなんて、総監として認められない。警察は市民の為に動く組織であり、君のために動く都合のいい道具じゃない」
ごもっともな返しだった。国の権力を個人的な願いの為だけに動かせば、総監の立場が危うくなる。滝口からしてみれば、折角登りつめた地位をみすみす手放したくないはずだ。
「今のは総監としての意見であり、今から言うのは総監でもなんでもない、一人の大人としての意見だ」
滝口は突然、俺の頭を掴んだ。
「今は亡き友の倅を助けない理由がどこにある?」
「え? てことは……」
「今回の件、総監としてではなく私個人の意志で手を貸そう。あと」
掴んだ手で髪をかき乱す。
「鎧騎士なんて力を手にしても、君はまだ子供なんだ。困ったら大人に頼るのは当然のことであって、頭を下げるほどのことじゃない」
「でも……失敗したら、滝口さんまで危険な目に遭うかもしれないんですよ。簡単に決めていいんですか?」
「勝てるんだろ?」
滝口の言葉に、息を呑む。
「君だけじゃ勝てない。けど私たちが手を貸せば勝てると言ったのは他でもない、君自身だ。私はその言葉と覚悟に賭けただけだ」
「そ、それだけの理由で動くなんて」
お人好しなのかただの馬鹿かのどちらかだ。という言葉は言わずに、胸の中に押しとどめておく。
「それだけじゃないよ、悠斗くん」
運転席から、沙耶香が顔を出して微笑んだ。
「本当は私たち大人が頑張らなきゃいけないのに、子供のあなたにばかり無茶を強いてる。そのせめてもの罪滅ぼしとして、あなたが困ってる時は迷わず手を貸したいのよ」
「そんな……あなた達が負い目を感じる必要なんてありませんよ」
「ありがとう。でもね、大人ってめんどくさい生き物だから、子供に遠慮されると意地でも力になろうとするの。無論、この私もね」
自分も手伝う事をサラリと言っているのが、すぐに分かった。
隣に座る滝口が、ふっと鼻で笑いながら言った。
「他の人員は私が呼ぼう。ちょうど、君に恩義を感じている者もいるからな」
「誰のことですか?」
「面識はないと思うから、後で話そう」
答えを濁されると余計気になるが、分からない以上考えるだけ無駄だ。
「そんな事より、どうなんだ。悠斗くん」
「総監と私以外も集まりそうだけど、勝算はあるの?」
滝口と沙耶香の問いに、俺は率直な答えで返した。
「勝ってみせます。俺の全てを犠牲にしてでも」
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