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第一部・四章 最悪なる刺客

第二十六話

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 暗黒騎士と名乗る男が剣を握った途端、先程以上に殺意が増幅し、全身が戦慄した。
 しかしそれが効いたのか、硬直していた体の震えが止まった。
 抜かなければ殺られる! 全細胞がそう叫んだのを悟り、震えが治まった瞬間、こちらも剣の柄を握る。

 カズヤが取った選択肢は、偶然か必然か正解だった。

 暗黒騎士が抜刀した途端、カズヤは遥か後方へ吹き飛んで行った。
 燃える建物に背中から衝突するも勢いは止まらず、壁を突き破り室内に乱暴な侵入をする。
「……よく防いだな」
 土煙の向こう側から、感情も何もこもっていない、氷の質感を帯びた声が聞こえてきた。
「我の剣に反応したのも見事だが、正面から受け刃こぼれせぬとは、良い素材を有しているに違いない」
 暗黒騎士は、何か独り言めいたことを言っているが、今のカズヤにそれを指摘する余裕はなかった。
 壁に直撃する寸前、背後に風素を逆向きで解放したお陰で軽傷で済んだ。後頭部には薄い鋼素の膜を張っていたため、大事に至る負傷も未然に防げた。
 とは言え、無傷というわけではない。
 斬撃を受け止めた右腕は痺れて満足に振れないし、衝撃も完璧に受け流せたわけじゃない。内臓が損傷したのか、壁に激突した時、思い切り吐血した。今も口の中は血の味がするし、めまいもする。
 だが、今はチャンスだ。
 敵は俺が満身創痍だと思って油断してるはず。その油断を使わない手はない。
 剣を交えた時、暗黒騎士と俺の力量差を瞬時に察した。
 俺の戦闘経験は二回。人界内では多い部類に該当する。
 対して暗黒騎士からは、恐らく俺の戦闘経験を百倍しても足りないほどの修羅場を生き抜いている。
 そんな奴に正面から挑んで勝つ確率など、一もない。
 ならば奇策に転じる。
 奇襲を繰り返していけば、勝率は一気に高くなるはず。
 相手に悟られないように、静かに詠唱を始める。炎素に《形状変化・アロー》《加速》のニつの構文を加え、土煙が薄くなる瞬間を慎重に待ち望む。
 土煙の一箇所が微かに薄れ、暗黒騎士の全貌が視界に入った瞬間、静かに炎素の矢を投擲する。
 完璧な不意打ちと自負してもいい。奴は油断しているし、煙から突然矢が飛んできたんだ。対処出来るわけがない。
 だがすぐに思い知らされる。自分がどれだけ浅はかで、学習しない人間なのかと。
 兜目掛けて飛翔する矢を、暗黒騎士は右手で軽々と掴み、枝のようにへし折った。
「虚をついたつもりか」
 変わらず、冷ややかな声で呟く。
「……今のを防ぐなんて」
 絶好の機会を逃したことに落胆すると、騎士は言った。
「衝突する寸前、風素を背後で展開して勢いを半減。頭部を薄く張った鋼素で保護し致命傷を防いだ」
 先程の吹き飛びも全てバレている。
 まさかこいつ、俺が機会を伺っているのを承知の上で、敢えて魔術を正面から受けたのか。
「瞬間的判断力は一級品。熟練の剣士に値すると言ってもいい」
 相手の称賛に、素直に喜ぶことも、嬉しいと思うことなど出来なかった。
「だが、それだけだ」
 その発言を耳にした途端、発作と思しき震えが再発する。
「魔術も策も全て素人に等しい。剣技も素人よりも少し上なだけ。マガツヒを仕留めたのは、単なる偶然か」
 しばし唖然とし、俺は騎士の真意を理解した。
 こいつは測っていたんだ。自分と戦うに値する人物かどうかを、テストしていたんだ。
 マガツヒという名の化物を倒した俺に興味を持っていた騎士だが、その興味は完全に消え去ったに違いない。
 証拠に、奴から放たれる殺意が一際濃くなった。一瞬でも気を緩めれば、首を跳ねられるほどの殺意が、騎士の背後から漏れている。
「今度こそ死んでもらうぞ」
 息の根を止めるべく、ゆっくりと歩み寄ってきた。
 ──考えろ! この状況を打破する策を、今すぐに!!
 歩み寄る暗黒騎士を睨みながら、絶望的状況の打開案を、脳の隅々まで必死に模索する。
 だが残念なことに、全て成功ではなく失敗する未来が見えた。
 魔術の矢を上空から降り注がらせようと、死ぬ時間が先延ばしになるだけ。そもそも、一番得意な炎素が効かなかったのだから、魔術による攻撃は期待出来ない。
 残された選択肢は、愛剣による真剣勝負……だが、それも期待は出来ない。奴と俺とで剣技に莫大な溝が存在する。例え虚をついたとしても、軽く受け流され今度こそ殺される。
 初撃を防げたのは奇跡だ。数秒遅れていたら、今頃は上半身と下半身が見事に分かれていただろう。
 だが奇跡は続かない。
 次の斬撃を防げる気がしない。
 どうにかしなければ、何か打開案を考えなければ、今度こそ殺されてしまう。
 コモレヴィの森での恐怖を軽々と超越した恐怖に怯えながら、暗黒騎士を睨み続ける。
 そして、活路が開かれる。
 カズヤは剣を鞘に納め、右手を素早く前に突き出す。瞬時に炎素を宿し、構文なしで放出する。
 炎素が向かうは暗黒騎士……ではなく、床に転がる酒瓶。
 酒瓶を粉々に粉砕し、炎素は内部に溜まっていたアルコールの高い酒に引火した。
「無駄なことを……」
 暗黒騎士はそう言うと、炎海など気にする様子もなく悠然と歩を進めた。
 だが既に、カズヤの姿はそこにはなかった。
 今回カズヤを救ったのは、全ての偶然が重なったお陰だ。
 暗黒騎士の斬撃で後方へ吹き飛んだこと、斬撃の衝撃で酒瓶が落ちたこと、奴の歩幅がゆっくりだったこと、あらゆる偶然が完璧に一致して起きた奇跡に、カズヤは助けられた。
 人界に於いて、あらゆる事象は創世神の導きとされている。
 建物の物陰に隠れながら、密かに創世神へ感謝の念を送り続けた。創世神の逸話の全てを信用してるわけではないが、この瞬間だけは全て信用している。
 なんて都合のいいことを考え、思考を切り替える。
 取り敢えず危機的状況は脱した。次は身の振り方を検討しなければ。
 暗黒騎士に魔術と剣技は効かない。
 これだけで八方塞がりではあるが、まだ地の利はこちらにある。
 極限状態に陥った状態でも、相手の動向を観察するのを怠らなかった。それ故に、暗黒騎士の弱点を突いた策が、頭に浮かび出た。
 
   ***

「……どこに隠れた」
 辺りを隙間なく模索しながら呟くと、一角の建物から立ち昇る敵意を察した。
「そこにいるな、小僧」
 沈黙が数秒続いた後、物影から小僧が姿を現した。
 そこで自分の目を疑った。本当にこいつが、先程の小僧なのかと。
 気配が違う。今の奴は、一人の剣士に値するほどの気迫と決意に満ち溢れている。
「潔いな。死の覚悟が出来たということか」
 僅か数分で決意を固めたことを称賛すると、小僧は言った。
「死ぬ覚悟なんていらない。俺がしたのは、戦う決意だ」
 見事。その一言に限る気迫と決意がこもった台詞に、暗黒騎士は思わず息を漏らした。
 何年ぶりだ。我を前にここまで悠然と立ち、自らの意志をぶつけてきた存在は。
「ならばその決意、我が審議してやろう!」
 叫び、小僧を刃圏に入れるために急接近する、寸前──。
「今だ!!」
 右手を突き出した小僧がそう叫んだ途端、不可思議な現象が我に降りかかった。
 我の立っていた場所から、突然一本の火柱が、我を覆うように立ち昇った。
 状況の理解をするために、自分の立っている地面を見下ろす。そして、驚愕で両眼を見開いた。
 魔術陣……しかもこれは、高位魔術……
 魔術陣を視認した瞬間、自分は自らの過ちに気付いた。小僧の、いや、一人の剣士の策に溺れたのだと。

   ***

 暗黒騎士に不意打ちは意味を為さないことは充分に痛感した。奇策も正攻法も通じない。
 一見すれば八方塞がり、勝ち目ゼロの戦いだ。だがカズヤはそんな状況の中で、騎士に対する違和感に気付いた。
 騎士は土煙から放たれた炎素に反応したが、足元に転がる酒瓶に対して放った炎素には反応を示さなかった。
 何故? 反応するに値しないから? だが、奴ほどの実力者ならば、俺が何を狙っているのか瞬時に察し、足元の酒瓶を遠くに蹴り飛ばすぐらいは……。
 その時、自分の憶測に出現した、何の変哲もない単語によって、事態は好転した。
 俺は酒瓶に向けて炎素を放った。
 無論騎士からも見えていたはずだから、引火せぬよう阻止してくるはず。だが騎士は阻止するような素振りを一切見せず、悠然と歩いていた。
 足元に転がる酒瓶に気付いていなかった? いや、標的として炎素を放ったのだから、少しは阻害するような行動に出るはず。
 ……まさか、見えていない? いや、見えないのか? 足元が。
 騎士の頭部は、竜を象った兜で覆い隠されている。隙間なく装着された兜は、足元が見えないほどに、自らの視界をも狭めているのか。
 突発的な仮説であったが、カズヤにとって、それは虚無空間に突如出現した、細々しく続く、勝利への道標に見えた。
 もし今の仮説が騎士の唯一の弱点だとしたら、失敗は許されない。失敗、もしくは悟られれば騎士は確実に警戒する。そんな中奇襲を仕掛けるのは絶望的だ。そうなれば、今度こそ勝ち目がなくなる。
 ──だが、成功すれば、勝てる可能性が出てくる。
 浅はかな希望に、俺は賭けた。
 それから俺は、奴が来るであろう進路に罠を仕掛けた。
 数分後に立つ箇所に、《形状変化・ピラー》《一点解放》《連続》を書き加えた炎素を軸に、魔術陣を設置。
 あとは騎士が到達した途端、待機させていた魔術を解放すれば、騎士を炎素の柱に閉じ込めることが出来る。
 成功するまで、決して悟られてはいけない。
 絶対的絶望で冷静さを失い、剣士として戦う決意をした。
 そう相手に思い込ませ、意識を俺だけに向けさせるんだ。決して油断などせず、罠の上に到達するまで粘るんだ。
 そしてその瞬間が訪れた。
 騎士が殺意を解放し、こちらに一直線に向かい、例の場所に立った瞬間、
「今だ!!」
 叫び、閉じてた右拳を広げる。
 待機していた炎素は《形状変化・ピラー》の作用により、魔術陣を軸に一本の巨大な炎素柱となり、《一点解放》の作用によって、下方から炎素が噴き出す。
 相手を炎の檻に閉じ込め退路を塞ぎ、柱の中で延々と獄炎に焼かれ続ける。《連続》によって、俺の意識と集中力が尽きぬ限り、これは無限に繰り返される。
「燃え尽きろ──!!」
 自らを鼓舞するように、裂帛の気合い声を迸らせる。
 ここが正念場だ。今この瞬間に、全神経を張り巡らせ、全意識を眼前の柱に集中させる。
 炎素は勢いを上げ、大気を震わせるほどの熱量を放出している。
 竜の息吹を思わせる炎素は、飛んできた樹木を一瞬で消し炭にし、額に滴る汗を瞬時に蒸発させた。
 喉の渇きに皮膚を焼く痛みを感じるも、意識を炎素にだけ向け続ける。
 ──まだだ! まだいける!
 奥歯から軋む音がなるほど強く噛み締めながら、強く意識した。
 幸か不幸か、今のカズヤの集中力は、過去最高と言える。
 騎士の圧倒的実力を目の当たりにしたカズヤにとって、この策は最後の希望だ。
 これを破られれば殺される。死の恐怖が彼を極限まで集中させ、絶対に解いてはいけないという意志が力に変わり、魔術を産み出している。
 怪我の功名か、今の彼は高位魔術の維持ができている。勿論本人に自覚はないが、このまま何もおきなければ、暗黒騎士といえどただでは済まない。
 
 そう……。何も、起きなければ。

 全神経を張り詰めているせいか、呼吸に乱れが生じる。視界も霞み始め、意識も朦朧としてくる。
 魔術だけに善意識を委ねていたが故に、身体への配慮を怠っていた。
 しかしカズヤは、高位魔術の維持を止めなかった。いや、止めてはならないという衝動に縛られていた。
 止めれば死ぬ。少し体調が優れなくても、この魔術を途絶える理由にはならない。たかが身体の疲れなど、寝てれば治る。
 自分に言い聞かせ、体からの信号を無視する。
 そして彼に、選択ミスの代償が降りかかった。
 突如、腹の底から込み上げてきた液体が喉を通過し、口内から勢いよく体外へ噴き出された。
「がはっ──」
 何が起きたのか分からず、吐き出された液体を確認する。
 真紅の液体──血が、飛び散っている。
 これが体内を巡る生命線だと気付くのに、かなりの時間を費やした。
 ──何故突然!? 騎士からの攻撃は受けてないし、吐血する原因など……
 いや、ある。吐血する原因には、心当たりはある。
 医師からは絶対安静を言い渡されるほど疲れていた。
 騎士の初撃を防いだと思い込んでいたが、それで蓄積された負荷を解放されたのか。
 それを理解しながら俺は、無理矢理押し込めた。
 自分が戦わなければ、誰がやるんだ。その考えが定着していたがために、悲鳴を上げる身体に無理をさせ続けた。
 高位魔術も慣れていないのに、今の自分なら出来ると強く思い込み、身体の不調を無視した。
 既に限界だという身体に無茶を重ね続け、失敗を許されない重要な場面で結果が出てきた。
 込み上げる血液は止めどもなく噴出し、思わず膝をつく。その場に蹲りながら、吐血を抑え込むも止まらない。
 まずい……早く魔術に意識を戻さないと……。
 こんな状態だというのに、未だ魔術を気にするのはおかしいと自分でも思う。それでも、止まれなかった。
 高位魔術はまだ維持されていた。連続構文のお陰で中断されずに済んでいるんだ。今のうちにもう一度集中すればまだ……
「ふんッ!!」
 そんな希望は、炎素柱ともども粉々に切り崩された。
 炎素柱の中から、まったく負傷していない暗黒騎士が姿を現した。
「そんな…………無傷なんて……」
 覇気の欠片も存在しない、弱々しい声が漏れる。
 身体を犠牲に維持していた高位魔術だというのに……暗黒騎士の前では、単なる時間稼ぎにしかならないなんて。
 こちらの希望を全て潰すように、敵は地面に設置した魔術陣を、容易く粉砕して見せた。
「いい攻撃だった。気付くのに遅れていたら、少し危うかった」
 気付くのに遅れてたら……だと。
 馬鹿な、俺は騎士が魔の陣を踏む直前に解放したんだぞ。魔術陣は土煙で隠れていたし、奴の視界に入っていないはずなのに……。
 まさか騎士は、発動する寸前に気付き、何かを仕掛けたというのか。
 こちらの考えを見透かしたのか、騎士は悠然とした口調で言った。
「我の鎧には魔術耐性が施されておる。高位魔術の前では数秒が限界だが、数秒有れば充分。お主の魔術に対抗する魔術が唱えられる」
 魔術耐性……そうか。そうだよな……。
 俺はここで、自分が浅はかで無謀な人間だと思い出した。
 あいつは魔術の街に攻めてきたんだ。なら当然、魔術対策もしてくるに決まってる。
 その可能性を見過ごし、自分ならやれると過信した結果がこのザマだ。
「あのまま浴び続けていたら、少なからず鎧は傷ついていただろう」
 相手の言葉に、耳を傾ける暇などなかった。
 自分に対し落胆すると同時に、負担が一気に姿を見せた。
 酸素を取り込む度に、全身を雷撃が走ったような激痛が生じ、二酸化炭素を吐き出す度に吐血する。
 吐血で咽せると、失神するほどの激痛に見舞われる。意識を失おうにも、激痛がそれを許さず、意識を現実に留める。
 ──駄目だ。早く立ち上がって、次の策を練らなれけば。
 何もしなければ、殺されてしまう。
 それだけは嫌だ。なんとかして、生き残るためにも……みんなのためにも、戦わなきゃ……。
 なのに、なぜ立ち上がろうとしないんだ。何故俺は、何も考えようとしないんだ。
 自問への答えなど、考えるまでもなく理解していた。
 無駄だからだ。
 あらゆる策を練ろうが、圧倒的実力の前では愚策となり、呆気なく破られる。
 自問自答を終えると、両眼から大粒の滴が音を立てて弾けた。
「う……うぅ……」
 嗚咽を抑えることが出来ず、俯きながら泣き始める。
 思えば俺は、異世界に来てから調子に乗っていたのかもしれない。
 亜人を退け、魔獣も退け、ジュウオンジとの決闘に勝ったことで、慢心していたのかもしれない。
 魔術も剣技も素人なのに、何故無謀にも暗黒騎士に挑んだのか。
 絶対に勝てない戦いに、命のやり取りに何故、軽はずみな思いで挑んだのか。
「今更泣いた所で、我が見逃すと思うか」
 無慈悲な台詞の真意を、瞬時に理解した。
 あの長剣で、首を切る気だ。
 鎧を鳴らしながら近づく騎士が、俺には死神に見えた。漆黒のブーツから発せられる足音が、死の宣告が着実に近づいているのを知らせる役目を担っている。
「……死にたく、ない……」
 掠れた声で、呟く。
 解っている。これは命の奪い合いで、生きるか死ぬかの真剣勝負。過去に、亜人とも同じようなやり取りをしている。
 それでも、いざ自分が殺される立場になると、死にたくない思いが込み上げてくる。
 ──嫌だ、死にたくない。ここで死んだら、セレナにサヤ、ワタルに会えなくなる。
 嫌だ、そんなの嫌だ。
 走馬灯のように蘇る記憶を、恐怖しながら眺める。過去の記憶が流れる度に、死にたくない思いが強まっていく。
 処刑時間が刻一刻と迫っている。それでも俺は必死に後退り、逃げようとする。
 ──間違ってたんだ。俺なんかが騎士に勝とうなんて、おこがましいにもほどがある。
 後退り続けると、背中が建物の壁に衝突し退路が無くなってしまった。
 顔を上げると、兜の奥から冷酷な瞳で見下ろす騎士が、長剣を上段に構えていた。
「さらばだ」
 別れの挨拶を、騎士は見事な上段斬りと共に繰り出してきた。
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