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しおりを挟む教室に戻る間も不快な視線はなくならなかったが、声をかける度胸はないようでされだけが救いだった。
だが、戻った途端にクラス委員長の説教が待っていた。
「この忙しい時間に居なくなるなんて、何を考えているんですか?」
「いや・・それは・・」
頭に過るのはあの不意打ちのキス・・・
あれさえなければ、オレだってこんなこをしなかったはずだ。思い出しただけでも腹が立つ。今度見つけたらただじゃおけねえっ!
「・・・・聞いていますか?」
「・・・・」
いけねえ!考え事をしていたせいで、話を聞いていなかったことがバレて顔が引きつる。
「は、はい・・」
返事はしたものの、何を話していたのかわからなくてしどろもどろになった。
「・・・・ふ~ん・・・では、いいんですね。休憩時間がなくなっても・・?」
「えっ!・・」
俯いていた顔をパッと上げて聞き返す。
「休憩時間がなくなる・・?」
「ええ・・みんな時間を惜しんで仕事をしていたというのに勇人さまあなたは・・」
鬼の形相までとはいかないが、そうとう怒っていることに気付いて情けない顔になった。
「いや、それは困る。午後から高坂さんと一緒にまわる約束をしているんだ。だから・・」
「だから・・・?」
「・・・だから、その・・」
これはヤバい。何とかしないと本当に高坂さんとまわれなくなる。文化祭の準備や生徒会の雑務でずっと会えなくて寂しくてやっと今日一緒に過ごせるんだ。
この時間を誰にも邪魔されたくないし、奪われたくない。
「ごめん、委員長。オレが悪かった。明日は休憩時間はいらないから今日だけはオレに時間をください。お願いします」
だから、必死に頭を下げて謝った。
クソッ!頼むよ委員長・・・
しばらく頭をさげていると、オレの願いが叶ったのか大きなため息をついた委員長の息遣いが聞こえたかと思うと、オレの肩に手を置いた。
「わかりました。いいでしょう、今日のところは見逃してあげます。そのかわり明日は存分に働いてもらいますから、覚悟しておいてくださいねっ」
「ああ、ありがとう。約束する明日は今日の分も働くよ」
クラス委員長の優しい決断に喜んでいたオレだが、この時彼の酷な企みには気づかなかった。
周りにいたクラスメイトの不穏な様子に気づいていればこんな約束は絶対にしなかったはずなのに、嬉しくて気が抜けていたのだ。
「あんな約束して大丈夫なのかな?」
「うん、あれって絶対わかってないよね?」
「いつもの勇人さまなら気づくだろうけど、高坂さまとのデートで頭がいっぱいみたいだな・・」
「・・・教えたほがいいんじゃ?」
「やめろとけよ・・」
「だって・・」
「・・・あの委員長のことだ、オレたちが教えたとなるとこっちに被害が及ぶぞ・・」
「でも・・」
「それに勇人さまのコスプレ見たくないのか?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
勇人さまのコスプレ――――・・・
そう言われて全員の頭に浮かんだのは、体育祭でのあの衣装・・・
思い出しただけでも股間が疼く。
もしかしたらあれ以上の・・・
ゴクリ―――――っ!
誰もが喉をならし顔を赤く染めた。
そして、意見が一致する。
うん、これは教えないほうがいい――と・・・
こうして勇人は知らないところで委員長の生贄にされたのである。
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