215 / 225
24-6
しおりを挟む海斗に急かされて、更衣室に来たものの渡されたナース服に困惑していた。なぜこんな衣装を用意されたのかかわらないが、体育祭での悪夢がこびりついてはなれない。
女装を見て何が楽しいのか理解に苦しむが、クラスメイトの大半がするのだから逃げるわけにもいかず、あきらめてナース服に袖を通した。
スカートの丈が短くて足元がスース―して落ち着かない。紙袋の奥にはご丁寧に聴診器まで用意されていて乾いた笑いがもれた。
「ん・・なんだこれ?」
聴診器に隠されるように小さな包み紙を見つけて取り出すが、経験からしてイヤな予感しかしない。
ピンク色の柔らかな袋にキレイなリボンでラッピングされているそれを机の上において見つめる。
指でつついてみると僅かにぷよぷよした弾力と硬い何かを確認した。
ゴクリと喉をならし、もう一度今度は手のひらに掴んで確かめる。
「こ、これは・・まさか」
震える指でリボンを解き、中の物を取り出してその正体が視界に入ると、がっくりと肩を落とした。
「何でだよ・・」
これはクラスで用意された衣装で拓也は関わっていないはず。なのに何でこれがここにあるんだよっ!
目の前にあるそれは上品なレースの下着のセットだった。もちろん女性物である。パンツの生地は少なくてスケスケでオレの息子は収まるのかどうか・・いやいやそうじゃなくてだな・・ブラジャーはカップの部分にはぷよぷよした物が分厚く縫い付けられていた。
「ぷよぷよの正体はこれか・・」
感心しながらその感触がおもしろくてしばらく楽しんでいたが「いや、そうじゃねえだろっ!」自身でツッコミを入れながら頭を抱えた。いくらなんでもこれはやり過ぎだ。
「はあ~・・何考えていやがるっ!!」
ふつふつと怒りが湧いてきて気が付けばそれをギュッと握り潰してしまった。
「あ・・」
若干の罪悪感にたいなものがあったが、こんな物を用意するほうが悪い。
「さて、もう他に変な物はねえよな?」
念のために袋を逆さにして確認するが、それ以上の物は出てこずホッとして靴下とナースシューズを履いて最後にナースキャップを被るために鏡の前に立ったとき、前ぶりもなく更衣室のドアが開いた。
「えっ・・」
「・・・あ」
相手は驚いたもののすぐに冷静な態度でオレに話かけてきた。
「なんだ、人がいたのか・・」
「・・・」
何だとは何だ!こいつ随分態度がでかいんだな。それに外に使用中の札を出してあったはずだ。
「使用中だ。出ていけっ」
「・・・はあ?」
イラっとしてついきつい言葉が出たが、この姿はクラスの模擬店の衣装で文化祭はまだ始まっていない。だから手の内を見せるわけにはいかない。
睨みつけるように視線を送ればそいつも不機嫌そうに目を細めた。
あれ、もしかしてケンカを売ったか?
オレの態度が気に入らなかったようで、長めの赤い前髪から僅かに見える鋭い眼光。耳にはたくさんのピアス。制服も着くずしていて真面目な生徒ではないとひと目でわかった。それによく見れば手に小さな箱のような物を隠し持っていた。
「それって・・・」
オレが何が言いたいかわかったのか慌ててそれを後ろに隠すが、もう遅い。
赤髪は舌打ちするとそれをお尻のポケットにねじ込んでドアを乱暴に閉めて更衣室から出ていった。
「何なんだよ・・」
0
お気に入りに追加
2,180
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!
慎
BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥
『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。
人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。
そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥
権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥
彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。
――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、
『耳鳴りすれば来た道引き返せ』
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる