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23.海斗の災難5
しおりを挟むその頃、生徒会室では勇人が黙々と仕事をしていた。殺気立った空気を醸し出し、誰もが話しかけるのを躊躇するほどに・・。
その様子に夏樹はやれやれとため息を吐く。
一体何があったのかと聞けば、原田とケンカをしたとのこと。
食堂での騒動を注意されたことが原因らしい。それを聞いて呆れてしまう。
生徒会メンバーは食堂でめったに食事をすることはない。身の安全と騒動を起きることを回避するためだ。それでも一応、生徒会と風紀委員の特別席が設けてあるが利用することはほぼなくルームサービスの利用が多かった。
それを勇人は物足りなくなり、食堂に行ってもみくちゃにされたらしいと聞いた。
あの体育祭でのボンテージ姿を見た奴らは、きっと勇人に対して卑わいな妄想を抱いたに違いない。それを勇人はわかっていないのだ。ただでさえ、幸村家の人間で会長の弟で注目されているというのに自覚が足りない。
それを原田に注意されてケンカになったとは、頭が痛くなった。
仕事に集中してくれるのはいいが、この空気はよくない。
拓也は勇人に回す書類を持ったまま、どう声をかければいいか迷っていた。
手にしているのは今日中に風紀に回さなければならない書類で勇人のサインが必要なのだがとてもじゃないがそんな空気ではない。
困ったな・・・どうしよう。
チラッと会長を見れば苦笑しているだけで、勇人に声をかけてくれそうもない。
ううっ・・・仕方がない。怖いけど声をかけるしかないか。
もはや諦めムードで拓也は勇人に近づいて行った。
背中から声をかければちょっとはマシかもしれないと、恐る恐る声をかける。
「ゆ、勇人・・これ確認してサインをしてほしいんだけど・・」
腰が引けている姿は見れたものではないが、こんな彼に声をかけたことは称賛したい。
キーボードをたたいていた勇人の手が止まる。
よかった。話は聞いてくれるんだ。
そう拓也がホッとしたのもつかの間、振り向いた勇人の顔は見たこともないくらい不機嫌だった。
「何・・?」
「ひっ!」
思わず恐怖で声をあげるほど突き刺さる視線を向けらた拓也は持っていた書類から手を放してしまった。
バサバサバサバサ―――・・・
「・・・・・」
「・・・・・」
床に散らばった書類をただただ見つめて固まる拓也に、勇人は小さく息を吐きゆっくりと立ち上がった。
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