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20.拓也の憂鬱

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19-3の勇人と海斗の会話を入れ替えました。

「どうした、海斗」→「どうした、勇人」

「い、いや別に」→「い、いや何でもない・・」

*******************




中間テストも終わり結果は勇人は一位を継続。海斗も五位の結果だった。

そして、学校はもうすぐ文化祭の準備へと入る。

ここ聖林では外部からの招待客はチケット制だが毎年プレミアがつき高値で取引されているらしい。

無料のチケットが高値で売れるのだから随分悪どい商売だろう。

それでも毎年大勢押し寄せ賑わいを見せていた。

財閥や大企業の息子がいることで、少しでもつながりを持とうとする会社役員や結婚して玉の輿を狙うOLや彼氏を作ろうとする女子生徒もこの一大イベントを楽しみにしていた。

まだ少し先だが、きっと今からおしゃれな洋服や小物探しに夢中になっていることだろう。

拓也は届けられた手紙を見て大きなため息を吐いていた。

彼の母親は有名なデザイナーでその才能を受け継いでいる彼は時々デザインを提供していた。

手紙の内容は文化祭が終わったら仕事を手伝うように、との依頼だった。


「手伝えって、言ってもなあ・・」


文化祭が終われば期末テストがあるし、生徒会の仕事も忙しくそれどころではない。

大学を卒業したら留学して後を継ぐのだから今は自由にさせてほしいとあれほど約束したのに・・。


「何でこうなるかな・・」


好きな相手には振られて落ち込んでいるというのに、この手紙を見て更に凹んでしまった。

ベッドに倒れこんで天井を見つめていると、開いた窓から風が吹き込みカーテンを揺らす。


「本気、だったのに・・」

投げ出した手紙が風にあおられてバサバサと床に落ちるが、構わずに目を閉じた。

昔好きだった彼を忘れようと親衛隊と体を重ねてきたが忘れられずそこに現れたのが勇人だった。

アピールしてアタックして――結構、がんばったつもりだったのに・・

何がいけなかったんだろう?

何が高坂と違ったんだろう?

結局は、オレを理解してくれる人はいないってことなのかな?

自問自答しても答えはなく、心がスーッと冷えて行く。


ピロロン―――


だが不意に鳴ったスマホの通知音で、思考が引き戻された。


「ああ―――っ!ダメだダメだダメだっ!」


頭を掻きむしりながら暗い沼に落ちて行くのを声を出して自身で阻止する。

こういう時、声を出すだけで随分違うことをオレは知っている。

落ちて行くだけだった心を何とか救いあげれてホッとする。


「はあ~・・・・・・・・・・・危ない、ところだった・・・」


振られたからといって、ここまで落ちこむなんてらしくない。

スマホを見れば通知の相手は勇人。


『ごはん、一緒にたべよう』


たったそれだけの言葉に口元が綻ぶ。


『すぐ行く・・』


と、返信してオレは部屋を出た。




さっまでの落ち込みはどかに吹き飛んでいた。

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