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18-23
しおりを挟む勇人を入場門に連れて行ったあと、彼は校舎の隅で一服していた。
「はあ~・・癒される・・」
ここに来てから大分減ったものの、まだ手放せないでいた。
煙でバレるとヤバいので電子タバコを口に加えて、グランドの方に意識を向けているといつものことながら歓声にうんざりしていた。
勇人が転校してきてからその歓声が増していることに本人は知る由もないが、海斗は中学時代を思い出しこれも腐れ縁だと半分諦めていた。
「ん・・・何か今・・会計の悲鳴が聞こえたような・・」
イヤな予感がして海斗は生徒会テントへと急いだ。
あのチャラ男のことだ、まさかと思うが勇人に何か仕掛けたのかもしれない。勇人は普段は通常の思考で物事を判断できるが、一旦キレるとヤバいことをすることがある。それがここにきてまだ見ていない。もうそろそろキレる頃かろかもしれない。
「ちょっと、待って!ね、オレが悪かったからあああーーっ!」
「落ち着け、勇人っ!」
夏樹を盾にして逃げている光景をみて海斗は舌打ちした。
「あの、バカ仕出かしやがったかっ」
急いでテントへと入ると視界に入った人物に一瞬固まった。
「・・何している・・・て、・・勇人なのか?」
黒いボルテージ姿で鞭を振るい落とす姿に思考が停止する。
「は、原田ああああーーーっ!」
海斗に気づいた夏樹が頭だけこっちに向けて助けを求めてきたが、そんなことより何でこんな姿でいるのか理解ができなかった。
「何て恰好してんだ?」
「・・・・・」
現れた海斗を見ても勇人の動きは止まらない。長い鞭を拓也めがけて振り回す。
「逃げんなよっ!殺されてえのかあ?」
「ひっ!」
怯える会計、盾にされている会長。地面でのびている副会長。中原と和也の姿がどこにもないことから彼らは拓也を見捨てて避難したと踏んだ。
「勇人、おちつけ・・」
「うるせーっ!こんな仕打ちをされて黙っていられるかってえんだよっ!」
静かにキレている時ほど厄介なものはない。何か手だてはないのかとふと頭に浮かんだのはあの人だ。彼なら勇人を止められるかもしれない。グランドを見回すがその姿を見つけることはできない。
もしかして、見回りか?
探しに行くべきかと迷っていると、夏樹が拓也を説得しているところだった。
「こうなったのはお前の責任だから勇人に謝れっ!でないとお前を生徒会メンバーから外すぞっ」
「え、何でそうなるの?」
「バカ野郎!お前が勇人を怒らしたからだろうがっ!」
「・・だって、オレ頼まれたんだもん」
拓也の発言に夏樹も勇人も海斗も衝撃を受けた。
「頼まれたって・・誰に?」
「あっ」
口を滑らせたことに気づいた拓也の顔色が悪くなる。
「えっと・・それは、その・・」
「・・・・・言えねえのか?」
「拓也、白状したほうが身のためだぞ」
夏樹が盾から外れ拓也と向き合うと勇人も鞭を下ろして近づく。
「誰に頼まれたんだ・・んん?」
「そ、それは・・」
ここまでくればもはや尋問に近い。
海斗といえば、勇人が落ち着いたようなので黙ってその状況を見守っていた。
しかし、一体誰に頼まれたんだろう。生徒会に頼み事をしてそのことを彼が庇うなんて一般生徒や親衛隊でないとことは確かだ。
「まさか・・・理事長とか?」
まさかなと思いながらも口に出た人物に拓也がパッと顔をあげた。
「何で・・・」
何でわかったの・・と言葉は続かなかった。
それは、そこにタイミングがいいのか悪いのか当の本人が現れたから。
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