上 下
146 / 225

18-4

しおりを挟む




トイレから戻る途中海斗に呼び止められ、引きずるように連れて来られたのはこれから始まる百メートル走の列の最後尾だった。


「何でオレが・・?」

「いいから並んでいろ」


ケガか何かした奴の代走だということはわかるけど、何でオレなんだよ?準備やなんかで忙しくてやっとゆっくりしたいたところだったのに・・


「ごめんな幸村。迫田さこたがケガして出れなくなったんだ」


申し訳なさそうに謝られたらイヤとは言えない。


「いや、別にいいけどそいつ大丈夫なのか?」

「ああ、たいしたことはないんだけど優勝目指しているからな」


う~ん・・・確かそんなことを夏樹兄さんが言ってたよな。じゃあ、あれか夏樹兄さんのせいでオレは代走に?


「他の奴らでもよかったんじゃ?」

「確かにそうなんだけど、海斗の奴が勇人は早いからって・・」

「・・・」


海斗の奴余計なことをしやがって!

「オレ、そんなに早くねえぞ」

「へ・・そうなのか?でも今更変更はできないし・・」

少し考えてから岡田は

「まあ、いいんじゃないか?幸村なら会長も何も言わないと思うし・・」


うんうんと一人で納得した岡田は動き出した列について行った。

何だか騙された気分になったが、まあいいかと割り切って後へと続いた。

人数が多いのでグランドに入りきれず、前半後半と別れてスタートすることになっていた。

勇人は後半の最後で、きっと盛り上がるに違いないだろう。もしかして海斗はそれを狙っているのかもしれない。


最初のスタートのホイッスルが鳴ると、一斉に走り出すとともに黄色い声があがる。


「キャアアアアア―――っ」


随分離れているにもかかわらず聞こえて来る応援の声にこっちも興奮してくる。

色々あったけど、今はこうやって楽しめばいいんじゃないかと思った。オレはまだ十六歳の高校生だ。これからいくらだって道は選べるはずだ。

幸村家の人間だからというのが全てではないはずだ。

ごちゃごちゃ考えても仕方がない。


「オレは、オレの道を選んでみせるっ」


こうして勇人の迷いは消え、視界が明るく開けていくような気がした。




気が付けば前半の半分ぐらいは終わっていて、スタート地点に高坂さんがいるのが見えた。

風紀委員も生徒会も競技には参加しているのだからおかしくはないが、間地かに彼の姿を見つけて顔が赤くなった。

伸びた髪を後に流して前だけを見ている姿に周りは興奮していた。


「キャアアアアア―――っ!!」

「高坂さまあああーーーっ!!」

「頑張ってええええ―――っ!!」
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

学園の支配者

白鳩 唯斗
BL
主人公の性格に難ありです。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

病んでる僕は、

蒼紫
BL
『特に理由もなく、 この世界が嫌になった。 愛されたい でも、縛られたくない 寂しいのも めんどくさいのも 全部嫌なんだ。』 特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。 そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。 彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 最初のみ三人称 その後は基本一人称です。 お知らせをお読みください。 エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。 (エブリスタには改訂前のものしか載せてません)

処理中です...