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「兄さんっ!」

「勇人っ!」


がっちり抱き合い再会を噛みしめている二人の隣で桐生は膝まずく。


「勇人さまを奪還しました」

「ご苦労、桐生。次の指示があるまで待機していろ」

「はいっ」


勇人の頭を優しく撫でながら唇を落とす。


「くすぐったいっ」

「すまない。ところで、ケガはしていないか?」

「うん、さっきも言ったけど大丈夫。どこもケガはしていないよ」


笑みをうかべながら答える勇人に晴広はやっと安心した。いくら電話で無事だと言われてもこの目で確認しなければ気が納まらなかったからだ。

それに何気なくいったあの言葉の意味を確認したかった。


「そうか、よかった。安心したよ。それで、さっき言ってたことなんだが・・」

「ん?何・・」


さっき言ってたことって何だ?

無意識で言ったことだから勇人には心当たりがない。


「仕返しは桐生がしたって、何があったのかな?」


ニコニコしながらそう言われて勇人はギクッとした。

不意打ちとはいえあんなことをされたのだから、黙っているわけにはいかない。というか、何で気が付くの?


「ええーっと・・・」

「ん・・?」


何から言えばいいんだろう。あんな怖い思いをしたことを身内に話すのはためらう。それは恥ずかしいとかそんなやわなものではない。強姦されかかったのは事実で思い出しただけでも身体が震える。


「・・・」

「・・・勇人?」

「あ・・あのな・・オレ・・あいつに・・強姦されそうに、なって・・」

「なっ、何だとっっ!!」


たどたどしい言葉だが、それだけで十分だった。


「晴広さま、医者の手配をしておきます」

「ああ、頼む」


慌ただしく園田が電話をかける。

「え、あの・・兄さん、オレ」

「大丈夫だ、後のことは任せなさい。」


もう一度勇人を抱きしめると今度は頬ずりしてこめかみにキスをチュッと音をたてて何度も繰り返す。


「え、でも・・・」

「帰ったら医者に隅々まで診てもらうな・・」


えっ?隅々までって・・どこまで?

何か凄い誤解をしているような・・・


「兄さん、オレ診察にてもらわなくても大丈夫だよ。」

「勇人・・お前はなんて健気なんだ」

「えっ?」

「あのくそ野郎にどこまでされた?まさか、お尻、か?」

「え、いや、あのね・・」

「そうなのか?」

「いや、だから・・」

「お尻なのか?そうなんだな?あの野郎、オレの勇人にィいい――っっ!」


勇人は強姦されそうにはなったがお尻には入れられていない。その前に桐生が来たから。

だが、興奮している晴広には聞こえていない。というか、勇人の話を聞く余裕がない。


「ちょっと、ちゃんと聞いてよっ」


揺さぶってみるが、一人で行っちゃってる晴広の頭には野村に報復しかなかった。


「潰してやるっ!徹底的に潰して復活できないようにこの世から完全に消してやるっっ!」


報復の炎を燃やす晴広。

えーっと、これっていいのかな?

と、戸惑うのだった。


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