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しおりを挟む「オレに歯向かうのか?」
狂っているとはいえまだ本気でなかった男は、勇人に拒否されたことで抑えが効かなきなった。
いわゆる、キレたというやつだ。
目を吊り上げ怒りのオーラを吐き出し、憎しみへと変化する。
体重を全て勇人にかけ、手を首へと伸ばした。
「・・何を」
「このオレが目をかけてやっているのに・・オレを否定するのか?」
男の手に力が入り、勇人の喉が徐々に締まっていく。
「グっ―――うぅ・・」
苦しさから顔が歪む。それを見て男は興奮した。
「アハハっ!いいな、その顔。興奮するっ」
笑いながら勇人の顔をペロリと舐めた。
息が・・・でき、ない・・
オレは、死ぬ・・のか?
視界が歪み意識が遠のいて行く。
ああ・・・もう、ダメだ―――兄さん・・夏樹兄さんに弟だと言いたかったな・・
死を覚悟した瞬間、突然男の手が離れて空気が入り込んできた。
「ゴホッ・・ゴホッ・・く、ハアハア・・ぐっはあ・・」
何が起こった?
咳き込みながら顔を上げると、そこには息をきらした桐生がいた。
「桐生・・」
首をしめられていたので声がかすれる。
「勇人、大丈夫か?」
「うん・・」
ホッとした表情でオレの頭を撫でてくれて安心した。
必ず、助けに来てくれると信じていたが、できればもう少し早く来てほしかった。
手錠を外してもらい身体を起こすと視界に入ったのはボコボコにされた男の姿。どうやらオレが意識を失いかけた時に桐生が手にかけたらしい。
「こいつ、誰なんだ?」
「え、知らなかったのか?」
「ああ、名前言わなかったし・・」
「そうか、こいつあれだ・・野村産業の息子だ。」
「野村・・・て、あいつかっ?」
学校にいた時はがっちりした体格だったのに、今はぶくぶくに太っていたので全く気付かなかった。
あれか、ラグビーを辞めたのが原因か?
じーっと野村を見ていたら桐生がクローゼットを荒らしてパーカーを投げてよこした。
「それでも着ていろ」
「え・・」
「そんな恰好で出て言ったら、晴広さまに・・」
最後まで言い切らず顔を背けられた。
シャツのボタンは全て外され肌が丸見えのうえ、奴がつけた赤い斑点が苦々しく自己主張していた。
「ゲッ!何だよこれ!!」
桐生が来るまで何もかも諦めかけていたオレだがこうやって助かったことで自身の状況を把握して冷静になれた。
だからこいつがしたことが胸糞悪く怒りが湧いた。
まだ、高坂さんでさえ触れたことがないのに、こんな奴に先にやられるなんてっ!
許せねえっ!!
伸びている奴の腹に蹴りを入れてやると、「うっ」と唸り声をあげて意識を取り戻した。
「よう、地獄にようこそ」
奴を見下ろしながら、これでもかというくらいな笑顔を向けてやった。
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