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15.逃亡・・・そして奪還
しおりを挟む目的地が近いらしく外の様子が慌ただしい。
色んなもの音の中で足音が近づいてきて目の前で止まる。
これから事態がどう転ぶかと思うと緊張する。
ガチャン―――!
ドアが開き、銃も持った数人の男たちが部屋に入って来た。
「両手を出せ」
この部屋に来た時と同じように手錠で拘束される。
「出ろっ!」
背中を押されて久しぶりに太陽の下に出ると、甲板には既にあの男がいて傍まで連れて行かれた。
「ここはどこだ?」
「知りたいか?」
「ああ・・」
「詳しくは言えないが、南の島ってことだけ教えといてやる」
「南の島?」
それってどの辺だ?
船が島に近づくにつれ建物が見えて来た。
港らしい傍には大きな建物がいくつもあり、大勢の男たちがいてその中に派手なスーツを着た年配の男が待ち構えていた。
どうやらあいつが首謀者らしい。
遠目で人相まではわからないが、胸くそ悪かった。
自分の欲望のままオレを利用しようとする奴に吐き気がした。
そんなオレの様子を見てとなりの男はへらへらと笑う。
「何だよ・・」
「昨日までと態度が変わったな・・何か企んでいるのか?」
「別に・・」
チっ!さすがに鋭いな・
「ふ~ん・・まあいい。だが、無事に帰りたかったら無茶なまねはしないことだ」
「何だよ、どういう意味だ?」
「あの男は人を人だけ思っちゃいねえ、くそ野郎だ」
「・・そのくそ野郎にオレを引き渡すのか?」
「・・・」
「おい・・何とか言えよ」
「・・・」
さっきまで何の躊躇もなくオレに向かっていたのに、時計ばかり見て辺りを見回す。
こいつだけじゃない、周りの男たちもだ。
何かあるのか?
「あのじじぃにお前をくれてやるつもりはねえよ」
「へ・・?」
「じじぃはゲイで少年愛好家だ」
「げっ!マジか・・」
「ああ・・」
「冗談じゃねえ!絶対イヤだっ!!」
「だよな~、あんなじじぃよりオレの方がいいよな?」
「はっ?」
アゴを掴まれ頬をペロッと舐められ背中がぞわっとした。
「冗談はよせ」
「いや、冗談のつもりはねえよ。」
耳元で囁かれ逃げ腰になるオレに男は大人の色気をだし更に呟いた。
「逃がしてやろうか」
と――――・・
えっ――――?
それって本気かと疑ってしまうのも無理はないと思う。
「自分が何を言ってんのかわかってんのか?」
「ああ、わかってるさ。」
真剣な顔でそう言われては言葉を無くす。だけど、こいつがオレに寝返れば逃げ出すことも可能かもしれない。
「わかった・・・」
だから賭けてみるのも悪くはない。
「名前は何て言う?」
「そうか言ってなかったな。オレの名前は桐生だ」
「・・桐生、オレを助けろ」
「フフフ、その願い、受けてやる」
こうしてあっけなく最悪の敵から最高の味方になった桐生は満面の笑みをオレに向けたのだった。
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