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しおりを挟む部屋には時計がなかったので正確な時間はわからなかったが、何となく時間帯だけは肌で感じ取ることができた。
食事のメニューがパターン化していたからだ。
さっきは、ハンバーグにポテトサラダに味噌汁とご飯だった。その前はパスタ。その前はパンとサラダとコーヒーだった。そのことから今は夜だと判断した。逃げ出すには今しかない。
古典的な策だが、迷ってはいられない。
そこまで通用するかも難しいところだか、やってみる価値はあると判断した。
トイレに座り腹を押さえて苦しそうに唸ってみた。
「くぅ・・・ハアっ・・・痛い・・お前ら、メシに何を入れやがったっ!オレを、殺す気かあっ!」
渾身の演技でカメラを睨みつける。時々苦しそうに床を見つけるのも忘れない。
さすがに冷や汗はかけないけど、外からカギを開ける音が聞こえてきたときは思わずにやけそうになった。
黒服の男たちが慌てて飛び込んできた。
「おい、しっかりしろ!」
上手くひっかかったのは二人。一人が肩を抱き覗き込んだその瞬間に腹に一発くらわし、もう一人には顔面に拳をふるってやった。
誘拐犯だから手加減はなし。下手をすればこっちがケガをする。
床の伸びた男たちを端に追いやり、開いたままのドアから外を窺うが、人影はなく逃げるなら今のうちだと外へと飛び出した。
逃げたことはすぐに気づかれる。それまでが勝負だ。
「急がねえと・・」
連れて来られて三日ぐらい経っている。
オレのために父さんに後継者争いから降りて欲しくはない。
おかしい・・なんだろう?
走りながらこの建物に違和感を抱いた。
廊下が狭すぎる。階段の幅も最小限しかない。床も壁も金属製だ。
疑問を感じながら最上階まであがり出口を見つけてドアを開けた。
すると、そこに見えたのは・・・
海―――――だった・・・
水平線に陸は見えない。
それは海上の真只中で、つまり・・オレの逃げ場はどこにもない。
絶望へと落ちる感覚に膝が崩れ落ちる。
「そ、そん・・な」
これが、違和感の正体―――!
まさか、ここが海だったとは・・・くそっ!クソッ!クソッ!
「クソっおおおおおおおお―――――っ!!」
バタバタバタバタ―――
悔しがる背後から近づいて来る足音。
だがオレはどこに隠れても意味がない。
やがて、後頭部ち突き付けられたのは
――――銃口
そして、聞こえたのは―――あの声・・
「随分、舐めたマネをしてくれたなあ~?」
怒りを含んだ声にオレは追い詰められていた。
「だが、これでお前に逃げ場がないことがわかっただろう?」
「・・・・」
―――緊迫した空気
男は銃を外しオレの正面に回り込むとグイッとアゴを持ち上げた。
―――交差する視線
見覚えのない奴は目を細め口元は歪んでいた。
―――見下したような表情
「お前、よく見ればキレイな顔をしているなあ~?」
ギラギラと獲物を狙うような目とその言葉にぞわっと寒気がした。
「は、離せ・・」
顎を掴む手を引き剥がそうと掴んだら反対の手で阻止される。
「フフフ。なあ~オレといいことしねえか?」
「なっ・・ふ、ふざけんなっ!」
今まで感じたことのない身体中にまとわりつくドロドロした感情に情けないが手が震えた。
「・・なんだ、怯えてるのか?」
「―――っ!」
感情を見抜かれてサーっと血の気が引く。
「かわいいな・・」
舌で指をペロリと舐められてペキッと固まる。
「誘ってんのか?」
ねっとりする嫌らしい視線にぞわぞわと背筋に嫌悪感が走った。
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