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しおりを挟む拓也を残してオレたちは勇人が起動した風紀委員専用のGPSの発進地点に向かっている。
それは止まっておらず、ゆっくりだが移動していた。しかも舗装された道ではなくて山道を移動していることから二人の身に何か起こっているのは明白だった。
なのに兄さんはオレたちに任せて、園田とどこかに行ってしまった。
理事長なんだから先頭にたってもおかしくない事態なのに。
しかもお気に入りの勇人だというのに。
オレも知らないところで何かが起こっているのか?
あんなに慌てる兄さんを見たのは、弟がいると聞いた時以来だ。
『弟』―――か・・
佐川のことがあって以来考えないようにしてきたが、はやとは一体誰なんだ?
なぜ名乗り出ない?
何か理由でもあるのか?
わかっているのは『はやと』という名前だけで、父さんも兄さんも会わせてくれなかった。
それは、自分で探せということだ。
名簿を見たが見つからなかった。
そこで、ふと思い出した。
名簿といえば、勇人のプロフィールには空白の部分があったな。
こちらでわかっているのは名前と家族構成。
その家族も母親が最近再婚したってことだけで名前は無記名だった。
普通、そういうことはない。しかも、彼は一般人だ。
なぜ、隠す必要がある?
「・・・・・」
何か引っかかる・・?
隠したのは誰だ・・?
―――兄さん、かっ!
そこで夏樹は初めてある考えに行きついた。
まさか―――勇人が・・
今すぐにでも確かめたいがそのすべが今はない。
「本人に聞くしかないか」
呟いた声は小さかったげ真田の耳には入っていた。
確かめるって、一体何を?そう思うほど夏樹の言葉は意味不明だった。
車のライトが暗い夜道を照らす。覆い繁る木が映し出され流れて消えていく。
雨足は弱くなったもののアスファルトには大きな水たまりができており通るたびに飛沫を上げる。
車体が揺れる度に身体も揺れてシートベルトを握りしめた。
スマホの画面にはだんだんと距離が縮まっているのがよくわかった。
だが、ここから先は舗装された道ではなくて山道に入る。
「揺れるぞ・・」
高坂のひと言でその道へと進んでいく。
バチバチバチっ!
木々の枝に溜まった雨が風に吹かれて車の屋根に落ち大きな音をたて、所々に穴の開いた泥道にタイヤが取られ車体が大きく揺れた。
普段、舗装された道しか通ったことがない彼らには、大袈裟だが経験のないことで少し戸惑っていた。
「何だよ、この道」
「山道だから仕方がないだろ」
「でも・・」
「使うことを想定していないからな。」
「ここは森の中だ。手を加えれば自然を壊すことになる」
「・・・そうだな、すまない」
「いや、わかればいい・・」
「それより、GPSの反応が近い。見逃さないように気を付けてくれ」
「了解っ!」
高坂の言葉に全員外を目を凝らした。
だが、真暗で何も見えはしなかった。
「ダメだ、何も見えない」
「車を止めて、歩こう」
「わかった・・」
全員、懐中電灯を持って外に出ると、雨は止み夜空が雲の間から見えるようになってきた。
この調子だと月も顔をだすだろう。そうなったら探しやすい。
スマホの画面には、すぐ近くに勇人たちがいることを示していた。
「よし、行くぞ」
「ああ、迷惑かけたことをとっちめてやる」
「うんうん・そうだな」
「お二人ともケガなどしてなければいいですが・・・」
「大丈夫だろ・・あの勇人だし」
「そうそう、ちょっとやちょっとのケガでどうにかなる奴じゃないよ」
「うんうん、なんせあれだし・・」
「あれって、何だよ?」
「知らねえのか?相良のやつ『氷の夜叉』って呼ばれてたらしいぞ」
「はっ?何それ・・」
「ふたつ名ってやつか?」
「なんかあいつ、中学時代は無敵だったらしい」
「へえ~・・知らなかった」
「まあ、オレも地元の後輩に聞いただけだけどな・・」
風紀委員の話を聞いていた高坂と夏樹と真田は初耳だった。
あの勇人にそんな秘密があったなんて、でもあの強さに納得した。
そして、ますます勇人という人間に興味がわいた。
高坂は―――好意を・・・
真田は―――憧れを・・・
そして、―――
夏樹は―――疑念を・・・抱いた。
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