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しおりを挟む慌ただしく二人だけで出かけて行くのを見送った夏樹だが、その行動に違和感を抱いた。
勇人は兄さんのお気に入りではなかったのか?
しかも、『和也くん、は』て、何だよ。まるで勇人のことはことはどうでもいいような言い方・・・
何処かに連絡していたし・・目の色が違っていた。
あんなに動揺している兄を見たことはない。
それにこんな状況なのに、和也のところではなく一体どこに・・?
「何をしている、行くぞっ!」
高坂に急かされて思考が切れる。
そうだ、オレにできることは一刻も早くログハウスに向かうことだけだ。
大丈夫、和也も勇人も無事だ!
「ああ・・」
そう言い聞かせて正面玄関へと向かう。
そこには既に風紀委員が数人と真田と拓也が集まっていた。
運転は高坂が助手席には夏樹が後部座席には真田と風紀委員。そしてその後に拓也が続こうとしたが高坂が止めに入る。
「五十嵐はここで待機していろ!」
「え?・・でもオレ」
泣き出しそうな苦しそうな顔で高坂を見るが、彼は首を振り拒否をする。
「大丈夫だ。オレたちに任せろっ」
「でもっ―――」
それでも喰いつく拓也の夏樹は命令を下す。
「拓也、これは会長としての命令だ。お前はここに残れ・・」
「なっ、こんな――こんな時に何を言ってんのっ!」
弟を迎えに行くのになぜこんなことを言われるのか理解できないという怒り。
「オレが悪いんだ。オレがあの時、和也を追いかけていればこんなことにはならなかった。だから、謝ってこの手で抱きしめてやりたいんだっ!」
兄の弟に対する気持ちはよくわかる。わかるからこそ、連れて行くわけにはいかない。
「拓也、今のお前は冷静ではない。」
「でもっ!」
「はあ~・・ダメだ連れて行けない。見つけたら必ず連絡するから・・」
「五十嵐、時間がない。」
「・・・わかった」
渋々承諾するが、悔しくて俯きながら指を手のひらに強く握りこんだのを夏樹は見逃さなかった。
「・・・すまない」
できれば連れて行きたかったが、それだと親衛隊も不安がるだろう。
それにもし、和也に何かあったら拓也が冷静でいられるかどうか保証がない。
あの事件から立ち直った拓也をこれ以上傷つけたくないというのが二人の本音だった。
「行ってくる・・」
「頼む、よ」
車が発進してその姿が見えなくなるまで拓也は見送った。
二人が無事でいますように―――
そう願いながら・・・
雨はまだ止まない
それは彼らの気持ちをまるで代弁しているかのようだった―――
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