オレが受けなんてありえねえ!

相沢京

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「お前は、気に入らないことがあればいつもこんな酷いことをするのかっ!」

「う、うるさいっ!」

「駄々をこねて、癇癪をおこして・・これじゃあただの我儘なガキしゃねえかっ!」

「うるさいっ!」

「謝れっ!」

「はっ・・何言ってんの?何でオレが謝らないといけないの?」


自分のしたことの重大差がわからないなんて、小さな子供じゃあるまいし・・ホント、腹が立つ!


「ふん!そもそもオレにそんな口の利き方をするなんて、生意気なんだよっ!」

「いい加減にしろ!このクソガキがあっ!」

「なんだと!誰がクソガキだ!」


売り言葉に買い言葉!オレと和也の仲は最悪の展開になろうとしていた。

オレだってできればこんなケンカなんかしたくはない。だけど、自分のしたことに対して良し悪しがわからない年じゃないだろう・・それに親衛隊を侮辱したことが許せなかった。

殴りたいのを必死で我慢していたら思わぬことがおきた。


パシンっ―――!


シンと静まり視線は会計に集まる。

「やめろ!これはお前が悪い・・」

「な、何で・・・」

いつもヘラヘラしている男とは思えないほどの真剣な顔つきで弟を叩いたその姿に、不謹慎だが目をキラキラさせている親衛隊たち・・・まあ、自分たちを庇ってくれたのだから感激したんだろうな・・

でも、何かな・・うん、まあいいか・・・。


叩かれた頬を手で押さえながらショックで固まる和也。


「何で、何でオレが叩かれるんだよ!」


目に涙をいっぱい溜めて今にもこぼれそうだ。


「和也・・」


その涙を見ておろおろする拓也。


「兄さんのバカああああああ―――!」


泣きながら走って行った。


「あ、おい!」


追いかけようとしたら会計に止められる。


「ダメだ、行くな!」

「でも・・」

「頭が冷えたら戻って来るさ・・それよりごめんね。カレーダメにしちゃって・・」

気丈に振る舞ってはいるが、その手が震えているし、笑顔も引きつっている。

何だよ、気になるなら追いかけろよ。

そう言ってやりたいが、自身の気持ちをひた隠しにしている会計にこれ以上はなにも言えなかった。


カレーのショックはどこにいったのか、会計に謝られてキラキラモードで真赤になっている親衛隊たち。

会計って、やっぱり・・・タラシ、なんだな・・・

和也のことが心配だがもうそろそろ片付けを始めないと日が暮れてしまう。


「じゃあ、片付けようか」

「「「は~い」」」


大量にあった食器や道具もみんなでやれば早くてその作業も楽しみながらすることができた。

でも、これだけ大勢いれば小競り合いもあったたりするわけだが、周りの者だけで十分対応できるようになってきた。

いい傾向だなと、自然と顔が緩む。


「ゴミ、もうないか?」

「これで、最後です」


片付けも終わりごみを集めていると空からポタリと冷たい雨が落ちて来た。


「降ってきたか・・」


全員テントの集めて点呼を取るが一人足りないことが判明。


「おい、誰がいないんだ?」


ざわざわした中で、みんなで確認しあう。


「会長、和也がいませんっ!」

「何!もしかしてあれから戻っていないのか?」

「誰か、見てないか?」


会計が聞いてみるが誰も声をあげない。


「真田はいるか・・」

「・・はい、ここに」

「真田、お前はみんなを連れて先に戻れ」

「ですが・・」


和也さまが行方不明になられるとは思いもしなかった。てっきり戻られているとばかり・・

さっき会計さまが止められたけど、やはり探しに行くべきだった。

これは総隊長として失格だ。

会長さまはこれから恐らく生徒会の方たちだけで探しにいかれるのだろう。

私は何もしなくて・・・いいのか?

でも、今日は大勢の隊員たちがいる。彼らだけでも安全なところに連れて行くのも私の責任だが・・。


「これは命令だ」

いつになく強気な発言に私は従うことにした。

ここで、勝手なマネをすれば信頼関係にひびが入りかねない。


「わかりました。」

「戻ったら、警備に連絡して人手を手配するよう伝えてくれ」

「承知しました・・会長」

「ん、何だ・・」

「決して無理はなさらないでくださいね」

「・・・ああ、わかっている」


心配してくれる真田に笑みを浮かべ真田と見つめ合う。ここに来てから真田と会長の間には信頼関係ができつつあった。

まさか、それがこんな形で発揮するとは思わなかったが・・・。


「みなさま、お気をつけて!」

「ああ、心配するな和也は必ず無事に見つけ出す」

「では、私たちは別荘でお待ちしております」


真田は遠山を呼び、グループごとに避難するように命令をだした。

その間にも雨足が強くなっていく。


「イヤな予感がする・・」

「勇人・・?」

「会長、急いだほうがいいです。早く探しにいきましょう」


オレたちは二人一組になって森に入って行った。






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