84 / 225
13-2
しおりを挟む「お前は、気に入らないことがあればいつもこんな酷いことをするのかっ!」
「う、うるさいっ!」
「駄々をこねて、癇癪をおこして・・これじゃあただの我儘なガキしゃねえかっ!」
「うるさいっ!」
「謝れっ!」
「はっ・・何言ってんの?何でオレが謝らないといけないの?」
自分のしたことの重大差がわからないなんて、小さな子供じゃあるまいし・・ホント、腹が立つ!
「ふん!そもそもオレにそんな口の利き方をするなんて、生意気なんだよっ!」
「いい加減にしろ!このクソガキがあっ!」
「なんだと!誰がクソガキだ!」
売り言葉に買い言葉!オレと和也の仲は最悪の展開になろうとしていた。
オレだってできればこんなケンカなんかしたくはない。だけど、自分のしたことに対して良し悪しがわからない年じゃないだろう・・それに親衛隊を侮辱したことが許せなかった。
殴りたいのを必死で我慢していたら思わぬことがおきた。
パシンっ―――!
シンと静まり視線は会計に集まる。
「やめろ!これはお前が悪い・・」
「な、何で・・・」
いつもヘラヘラしている男とは思えないほどの真剣な顔つきで弟を叩いたその姿に、不謹慎だが目をキラキラさせている親衛隊たち・・・まあ、自分たちを庇ってくれたのだから感激したんだろうな・・
でも、何かな・・うん、まあいいか・・・。
叩かれた頬を手で押さえながらショックで固まる和也。
「何で、何でオレが叩かれるんだよ!」
目に涙をいっぱい溜めて今にもこぼれそうだ。
「和也・・」
その涙を見ておろおろする拓也。
「兄さんのバカああああああ―――!」
泣きながら走って行った。
「あ、おい!」
追いかけようとしたら会計に止められる。
「ダメだ、行くな!」
「でも・・」
「頭が冷えたら戻って来るさ・・それよりごめんね。カレーダメにしちゃって・・」
気丈に振る舞ってはいるが、その手が震えているし、笑顔も引きつっている。
何だよ、気になるなら追いかけろよ。
そう言ってやりたいが、自身の気持ちをひた隠しにしている会計にこれ以上はなにも言えなかった。
カレーのショックはどこにいったのか、会計に謝られてキラキラモードで真赤になっている親衛隊たち。
会計って、やっぱり・・・タラシ、なんだな・・・
和也のことが心配だがもうそろそろ片付けを始めないと日が暮れてしまう。
「じゃあ、片付けようか」
「「「は~い」」」
大量にあった食器や道具もみんなでやれば早くてその作業も楽しみながらすることができた。
でも、これだけ大勢いれば小競り合いもあったたりするわけだが、周りの者だけで十分対応できるようになってきた。
いい傾向だなと、自然と顔が緩む。
「ゴミ、もうないか?」
「これで、最後です」
片付けも終わりごみを集めていると空からポタリと冷たい雨が落ちて来た。
「降ってきたか・・」
全員テントの集めて点呼を取るが一人足りないことが判明。
「おい、誰がいないんだ?」
ざわざわした中で、みんなで確認しあう。
「会長、和也がいませんっ!」
「何!もしかしてあれから戻っていないのか?」
「誰か、見てないか?」
会計が聞いてみるが誰も声をあげない。
「真田はいるか・・」
「・・はい、ここに」
「真田、お前はみんなを連れて先に戻れ」
「ですが・・」
和也さまが行方不明になられるとは思いもしなかった。てっきり戻られているとばかり・・
さっき会計さまが止められたけど、やはり探しに行くべきだった。
これは総隊長として失格だ。
会長さまはこれから恐らく生徒会の方たちだけで探しにいかれるのだろう。
私は何もしなくて・・・いいのか?
でも、今日は大勢の隊員たちがいる。彼らだけでも安全なところに連れて行くのも私の責任だが・・。
「これは命令だ」
いつになく強気な発言に私は従うことにした。
ここで、勝手なマネをすれば信頼関係にひびが入りかねない。
「わかりました。」
「戻ったら、警備に連絡して人手を手配するよう伝えてくれ」
「承知しました・・会長」
「ん、何だ・・」
「決して無理はなさらないでくださいね」
「・・・ああ、わかっている」
心配してくれる真田に笑みを浮かべ真田と見つめ合う。ここに来てから真田と会長の間には信頼関係ができつつあった。
まさか、それがこんな形で発揮するとは思わなかったが・・・。
「みなさま、お気をつけて!」
「ああ、心配するな和也は必ず無事に見つけ出す」
「では、私たちは別荘でお待ちしております」
真田は遠山を呼び、グループごとに避難するように命令をだした。
その間にも雨足が強くなっていく。
「イヤな予感がする・・」
「勇人・・?」
「会長、急いだほうがいいです。早く探しにいきましょう」
オレたちは二人一組になって森に入って行った。
1
お気に入りに追加
2,194
あなたにおすすめの小説


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。

俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話
ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる