上 下
51 / 225

8-4

しおりを挟む




アナウンスで助かったと思った勇人は慌てて立ち上がる。


「ほ、ほら・・つ、着きましたよ」


少し面白くなかったがこのまま留まることもできず仕方なく立ち上がって送迎車から降りた。


外に出た途端、遮っていた太陽の光が眩しくて目を細めた。

眩しっ・・!

降りてすぐに入り口へと向かう。

みんな嬉しそうにしながら歩いていくのを見ながら勇人はチラッと高坂を盗み見る。

高坂に『恋してる』と自覚した勇人の態度は挙動不審だ。

目を泳がしたり、顔を赤らめたりと忙しそうだ。

そんな勇人に高坂は笑いを堪えて、後へと続く。

その先には幸村と佐川の姿があった。

顔を赤らめて幸村と話しながら楽しそうだ。

ただ、彼らの周りには親衛隊が囲んでいた。

高坂が動き出したことを知った彼らは、

ここで何とか引き離して決着をつけるつもりなのだと踏んでいた。


さて、どこで動き出すかな?


今日は鬼ごっこでデート券を獲得したペアが参加していた。本来なら高坂と勇人に参加券はないが警備という名目で強制参加させられていた。

まあ、高坂には都合がよかったので合意したが、何も知らされていない勇人にとっては迷惑かもしれない。


生徒会からは会長の幸村だけでなく、副会長も早瀬も会計の五十嵐も参加している。

まあ、早瀬と五十嵐は不本意だろうが・・。

さっきから二人がこっちを見て残念そうにしているのに気づいて、見せつけてやろうと勇人の肩を組むと悔しそうにしていた。

モテる二人だが、本気になったのは勇人が初めてのようだ。


「ど、どうしたんですか?」


何も知らない勇人が不思議そうに高坂を見る。

ああ、やっぱり・・こいつが勇人がほしい

心底そう思う高坂に対し勇人はからかわれてると気づいていた。

この人は何が面白くてオレをからかうんだ?

周りの奴らがどんな顔をしてオレらを見ているのか気づいてないのか?

気づかれないように小さくため息を吐きながら入り口に入ると

最上階まで長いエスカレーターがあってそれに乗っていく。

そこから長い下りのスロープになっていて真ん中の大きな水槽を巻き込むような作りになっていた。

中の水槽にはたくさんの魚が泳いでいた。


みんな目をキラキラさせてまるで小さな子供が宝物を見つけたような顔だった。


金持ちの彼らにはこんな庶民的な水族館は珍しいのかもしれないなとちょっと笑ってしまった。


「会長、あれ見てください。」


ゆびを指しながら声をあげているのは佐川だ。

そばには会長がいて、少し離れたところには親衛隊が冷たい目でそれを見ていた。
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

学園の支配者

白鳩 唯斗
BL
主人公の性格に難ありです。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

病んでる僕は、

蒼紫
BL
『特に理由もなく、 この世界が嫌になった。 愛されたい でも、縛られたくない 寂しいのも めんどくさいのも 全部嫌なんだ。』 特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。 そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。 彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 最初のみ三人称 その後は基本一人称です。 お知らせをお読みください。 エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。 (エブリスタには改訂前のものしか載せてません)

処理中です...