上 下
47 / 225

7-12

しおりを挟む



「何ですか、それはっ・・そんな報告うけてませんよ」


高坂を睨みながら罵倒する副会長と驚くチャラ男。そして何を思ったのか高坂に視線を向ける会長。


「高坂・・どういうつもりだ」

「どうもこうも、これはオレらの仕事だ。それにその事件は一応報告書は渡してある」


それを聞いて二人はチャラ男の方を見る。


「拓也、お前・・」

「えっと、ごめん・・忙しくて見落としたかも・・ハハハ」


苦笑いをしながらも正直にミスを告白する。


「それにしても、こいつラグビー部の野村だよね?その時それを勇人が一人でやっつけたの?」

「あー、うん」


風紀委員と違って生徒会メンバーは勇人のケンカの腕を知らない。

あの細身の腕でこのごつい男を、しかもラグビーで鍛えられた筋肉バカをどうやってやっつけたのか気になるのも無理はなかった。


「何か、武道の心得でもあるのですか?」

「えっと、実は空手を・・でも、これは高坂さんが・・」

「そうなんだ・・」


チャラ男こと五十嵐拓也は勇人が空手をしていて腕っぷしが強いことを知って、少々焦っていた。

うそ~・・勇人が空手ええーーっ!

どうしうよう、これじゃあ襲うのは無理かな?

なんて不謹慎なことを頭が駆け巡る。


そして、副会長こと早瀬浩太もまた・・

はあ~・ただでさえ体格差があるのに空手とは・・

と、ショックを受けていた。


「わかりました。この男の処分は風紀にお任せします・・」


内心叶わないかも、とかでも諦めたくないとか色々なことを考えながらそんな素振りは見せないところはさすがだと言いたい。

誰もホメてくれないけれど・・


「ああ・・」


今更任せると言われもそんなの関係ない。

こっちはこっちで秩序を守るだけだ。

それにしても、幸村は相良に何の用が・・?

チラッと見れば何か思いつめたような顔をしている。


「そういえば、会長は勇人と何の話をしていたのですか?私としてはそちらが気になります」


グイっと会長との距離を縮めて迫る早瀬に会長こと幸村夏樹は気まずくなる。

まさか、佐川のことでもめたとは言いずらい。

ただでさえ、早瀬は佐川のことをよく思っていないのだ。


「会長・・?」

「・・いや、別に話すことじゃない」


プイっと顔を背けていることから、早瀬はもしかしてあの生徒のことかと勘繰った。

でも、ここでそれを言うのは躊躇われた。

勇人を見れば彼も同じような反応で、自分の勘に間違いないと思いながらこれ以上は何も言わなかった。



勇人と言えば

やべええええーーーっ!!

佐川のことは誰にも言いたくねえし

会長だって同じだろう?

でも、なぜわざわざオレを探しに来てくれたんだ?

罪悪感?

罪滅ぼし?


それとも、けん制か?

「・・・・」

どっちにしてもオレにはいいものじゃねえな・・


さっきまで忘れていた『偽者』という問題を思い出して段々と気分が沈んでいく。


帰りたい・・・

早く帰って・・何も考えずに眠りたい・・・


あ、でも調書があるか・・!


できれば明日にしてほしいなと思いながらみんなでその場を後にしたのだった。





しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

学園の支配者

白鳩 唯斗
BL
主人公の性格に難ありです。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

病んでる僕は、

蒼紫
BL
『特に理由もなく、 この世界が嫌になった。 愛されたい でも、縛られたくない 寂しいのも めんどくさいのも 全部嫌なんだ。』 特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。 そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。 彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 最初のみ三人称 その後は基本一人称です。 お知らせをお読みください。 エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。 (エブリスタには改訂前のものしか載せてません)

処理中です...