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クリス3
しおりを挟むドクドクと鼓動の音が全身をざわつかせる。
忘れていた記憶が一気に流れ込んできた。
そして、思い出した。
奇襲を受けて、ルーベルト様が亡くなったことを―――
『余はルーベルトではない』―――
悲しそうにそう呟いた陛下の言葉を思い出す。
ああ、私はなんて愚かなんだろう。
エリック様をルーベルト様だと思い込んでいたなんて・・
でも、なぜ私は今まで誰にもそれを指摘されなかったのだろう?
「もしかして、正気に戻ったのか?」
不意にリム男爵が焦ったように声を出した。
「どういう意味だ?」
「いや、まさか・・・」
さっきの余裕がウソのように急にオロオロしだした。その様子から奇襲事件に何か関わっているのではないかと勘繰った。
そもそも、エリック様をルーベルト様だと思い込んでいたのがおかしいのだ。
まるで誰かに操られていたような、そんな錯覚さえ感じてしまうほどに・・
「リム男爵・・貴様何か隠しているな」
「な、何を?」
鋭い眼光を放つクリスにリム男爵は悲鳴をあげた。
「ひっ!わ、私は何もっ!」
怖気づき尻もちをついたリム男爵は逃げるようにその場から逃げ出していった。
「待て!貴様にはまだ聞きたいことがあるっ!奇襲事件の犯人は誰なんだっ!」
逃げるリム男爵を追うことができず、空しい声が牢屋にこだまするのだった。
「それは誠かっ?」
「はい、どうやらクリス様は陛下のおっしゃるとおり洗脳、あるいは記憶を操作された疑いが高いです。」
影の調査は速やかに行われ、わずか数時間でクリスのおかれた状況が報告された。
「やはり、そうであったか・・」
前々からクリスの様子がおかしいことはわかっていた。ただそれはルーベルトを失ったショックで一時的なことだと思い込んでいた。
まさか、洗脳されていたとは。だが一体誰がそんなことを?
「クリスにそんなことをしたのは誰だかわかるか?」
「はい。目星はつけておりますので、しばしお時間をいただければ、確実な証拠を掴んでみせます」
「うむ、わかった。それまでクリスは軟禁しておこう。宰相、よきに計らえ・・・」
「はい、陛下」
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