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あり得ない再会2
しおりを挟むオレが人形のようになりかけた時、救ってくれたのはあいつらだ。オレに構いたおし溺愛し求愛してくれた。
だけど、オレは異世界人で魔王を倒したら帰還することになっていた。召喚とはそういう仕組みらしい。
二度と来るはずのなかったこの世界に呼ばれた理由は何だ?魔王が復活したのか?いや、なら勇者を召喚するはずだ。
コンコンコン───
ノックがなり約束の時間だと気づく。
「はい、誰だ?・・」
「ドイルです。お召し換えを・・」
「わかった。入れ・」
「失礼します。」
ドイルに続き10人くらいの使用人が入ってくると、その中に見覚えのある顔があった。オレが帰還する前に入った奴だ。名前は確か・・・?
「神子さま、これから入浴の準備をいたします。体を清めた後はこの衣装を着ていただき、謁見の間へで貴族たちと会っていただきますが、よろしいでしょうか?」
「貴族とか・・」
「はい・・・」
「う~ん・・・」
貴族どもと会うのは別にいいが、問題は誰に会うかだ。あのクロム公爵と会うのだけは勘弁してほしい。
あいつのせいで、求婚なんてことに発展したんだからな。まあ、まさか子供の姿に求婚するバカはいないと思うが警戒することに越したことはない。
「わかった・・」
オレが承諾したことにホッとしたのかドイルの目が微かだが見開いた。
おいおい、何でそこで安心するんだよ。何かあんのかと思っちまうだろう・・
「では、失礼しますね」
ヒョイとオレを抱き上げると浴室へと歩き出す。
「え、おいっ!」
抗議するがドイルは笑みを浮かべるだけで何も言わない。
「さあ、神子さま・」
え、何かイヤな予感がするんだけど・・まさか、お前がするなんてことはねえよな?
ぶかぶかのシャツはあっという間に脱がされると、イスに座らされてお湯をかけられる。
「え、ちょっと」
「頭を先に洗いましょうね。大丈夫ですよ、これは勇者様が携わって作られた物ですから。お気に召されると思いますよ」
ああ、あれか。オレがシャンプーが存在しないのが我慢できずに、試行錯誤で作ったあれか。うまくこの世界に馴染んだんだな。言われてみればドイルの髪もサラサラで艶がある。
目を閉じながら昨日も風呂に入ったし、そんなに汚れてはいないはずだ。
あっ――そうか、雨に濡れて階段からも落ちて泥だらけだったんだ。
「気持ち、いい・・」
人にしてもらうのって理容院に行ったときぐらいだから、気持ちが和らぐ。
「そうですか。よかったです。神子さま、何とお呼びしたらよろしいですか?」
「う~ん・・?」
「ずっとこのまま神子様とお呼びしてもいいのですが、教会と王家との契約の際にお名前が必要になります」
それを聞いて思い出した。あの時、何も知らずに契約書に名前を書いた。あれはオレを契約で縛って人形にした最悪の契約だった。思い出したくもないイヤな過去だ。
その契約でまたオレを縛るのか?
「契約の内容は?」
「私には知らされておりません。ですが、陛下は神子様を悪いようにはしなと思います」
「そうか・・サインが必要なのは理解した。だが、内容次第では教えない」
「え・・ですが」
「オレの神子としての力が必要なら協力はする。だが、サインも名前も教えるつもりはない」
教えてしまえば、この世界でオレの自由はないからな。
それに───今のオレは桜井雄介じゃないしな・・・
正体がバレても帰還して契約は切れているはずだから何の問題ないはずだ。
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