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婚約者の求愛
しおりを挟むカチカチと小さな音を立てながら会食は進んでいく。
時々、たわいない会話はするもののなかなか続かず三人とも少し焦っていた。
昨日までとは違う立ち位置に戸惑っているのはルークだけではない。
「ル、ルーク様。その・・学園ではどのような生活を?」
何とか話を続けようとユリアスは自分の知らない彼のことを聞いてみた。ラルクが知っていて自分が知らないのは不公平だと感じたからだ。
「学園か・・そうだな。勉強は面白かったかな。後、剣術は苦手だった。でも魔法は結構頑張れたと思う」
「そうですか・・」
「王宮で学んだこと以外でなかなか興味深いものもあったな」
「それはどのような?」
「う~ん・・市井とか教会とか他国の物産とか。特に隣国の料理は食べてみたいと思った」
「確かに、隣国では色々な物産がありますよね。特に私は果物の中で黄色い細長い皮のバナナというのを食べてみたいです」
「へえ~ラルクは果物が好きなんだ」
「はい、訓練中なら片手で食べれそうですから・・」
「ハハハ・・訓練中にか。ラルクらしいな」
「ユリアスは好きな食べ物は?」
「私は甘い物がすきです。そのバナナも食べてみたいです」
「たしか、甘いって聞いたことがあるな」
「でしたら、商人に買い付けるように言っておきましょう」
「それは、楽しみだ」
たかがバナナされどバナナ・・・・
おかげで緊張していたのが和やかな会話でほぐれた。
どうしよう・・バナナの話などしている場合ではないのに。
二人の気持ちを聞かなきゃいけないのに・・。
俯いて黙りこんだルークにユリアスが声をかける。
「ルーク様、婚約の件ですが・・」
「う、うん・・」
「そ、その・・ラルクと話し合ったのですが・・」
そこまで言ってユリアスは一旦会話と止めた。
何・・?もしかして、やっぱり他に誰か好きな相手がいるのか?
そんな考えが頭の中をぐるぐる回り気持ちが沈んでいく。
王太子だからとかそんなのは関係なくルークは自分が思っている以上にこの二人のことが好きだったようだ。
ただでさえ不安定な心が揺れ動く。
「この婚約を・・」
断られる!そんな言葉は聞きたくない!
思わず耳をふさいだルークにラルクは彼の左手をユリアスは右手を取り膝魔づいて手の甲に自身の唇を当てた。
「ふぇっ・・」
このポーズは求愛。
ユリアスは頬を赤くしながらこう述べた。
「ルーク様、あなたが小さい頃からお慕いしておりました。どうかこの私と結婚してください」
「ルーク様、あなたの護衛につきずっとお傍にいる内にあなたに魅かれました。愛してます。結婚してください」
二人からの求愛にルークの心は歓喜した。
「いいの?オレでいいのか?」
こぼれそうな涙をグッとこらえて笑みを浮かべた。
「はい、あなたしかいません」
「私もです。あなた以外考えられません」
その言葉に涙が零れ落ちる
「ありがとう。オレも二人以外はないと思っていた。好きだ。結婚してくれ・・」
「「はい・・」」
不安定だったルークの心をしっかり繋ぎとめることができてユリアスもラルクも安堵した。
泣き笑うルークの顔は股間に来るものがあった。できればこのまま寝室へといきたいところだが婚約式まで一か月。それまでは我慢しようと二人で決めていた。
公務もあり会う時間は少ないがそれまでデートをしたいということで、近いうちに市井に出かけることになった。
もしかしたら、バナナにあうかもしれないと心が躍るルークだった。
*************
イチャイチャまで後もう少し・・・。
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