12 / 15
婚約者の求愛
しおりを挟むカチカチと小さな音を立てながら会食は進んでいく。
時々、たわいない会話はするもののなかなか続かず三人とも少し焦っていた。
昨日までとは違う立ち位置に戸惑っているのはルークだけではない。
「ル、ルーク様。その・・学園ではどのような生活を?」
何とか話を続けようとユリアスは自分の知らない彼のことを聞いてみた。ラルクが知っていて自分が知らないのは不公平だと感じたからだ。
「学園か・・そうだな。勉強は面白かったかな。後、剣術は苦手だった。でも魔法は結構頑張れたと思う」
「そうですか・・」
「王宮で学んだこと以外でなかなか興味深いものもあったな」
「それはどのような?」
「う~ん・・市井とか教会とか他国の物産とか。特に隣国の料理は食べてみたいと思った」
「確かに、隣国では色々な物産がありますよね。特に私は果物の中で黄色い細長い皮のバナナというのを食べてみたいです」
「へえ~ラルクは果物が好きなんだ」
「はい、訓練中なら片手で食べれそうですから・・」
「ハハハ・・訓練中にか。ラルクらしいな」
「ユリアスは好きな食べ物は?」
「私は甘い物がすきです。そのバナナも食べてみたいです」
「たしか、甘いって聞いたことがあるな」
「でしたら、商人に買い付けるように言っておきましょう」
「それは、楽しみだ」
たかがバナナされどバナナ・・・・
おかげで緊張していたのが和やかな会話でほぐれた。
どうしよう・・バナナの話などしている場合ではないのに。
二人の気持ちを聞かなきゃいけないのに・・。
俯いて黙りこんだルークにユリアスが声をかける。
「ルーク様、婚約の件ですが・・」
「う、うん・・」
「そ、その・・ラルクと話し合ったのですが・・」
そこまで言ってユリアスは一旦会話と止めた。
何・・?もしかして、やっぱり他に誰か好きな相手がいるのか?
そんな考えが頭の中をぐるぐる回り気持ちが沈んでいく。
王太子だからとかそんなのは関係なくルークは自分が思っている以上にこの二人のことが好きだったようだ。
ただでさえ不安定な心が揺れ動く。
「この婚約を・・」
断られる!そんな言葉は聞きたくない!
思わず耳をふさいだルークにラルクは彼の左手をユリアスは右手を取り膝魔づいて手の甲に自身の唇を当てた。
「ふぇっ・・」
このポーズは求愛。
ユリアスは頬を赤くしながらこう述べた。
「ルーク様、あなたが小さい頃からお慕いしておりました。どうかこの私と結婚してください」
「ルーク様、あなたの護衛につきずっとお傍にいる内にあなたに魅かれました。愛してます。結婚してください」
二人からの求愛にルークの心は歓喜した。
「いいの?オレでいいのか?」
こぼれそうな涙をグッとこらえて笑みを浮かべた。
「はい、あなたしかいません」
「私もです。あなた以外考えられません」
その言葉に涙が零れ落ちる
「ありがとう。オレも二人以外はないと思っていた。好きだ。結婚してくれ・・」
「「はい・・」」
不安定だったルークの心をしっかり繋ぎとめることができてユリアスもラルクも安堵した。
泣き笑うルークの顔は股間に来るものがあった。できればこのまま寝室へといきたいところだが婚約式まで一か月。それまでは我慢しようと二人で決めていた。
公務もあり会う時間は少ないがそれまでデートをしたいということで、近いうちに市井に出かけることになった。
もしかしたら、バナナにあうかもしれないと心が躍るルークだった。
*************
イチャイチャまで後もう少し・・・。
281
お気に入りに追加
1,531
あなたにおすすめの小説


幸せになりたかった話
幡谷ナツキ
BL
このまま幸せでいたかった。
このまま幸せになりたかった。
このまま幸せにしたかった。
けれど、まあ、それと全部置いておいて。
「苦労もいつかは笑い話になるかもね」
そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。


婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる