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銀色の腰巻き3
しおりを挟むただの腰巻きと思っていたそれが王太子の持ち物だと知れてシャルルは混乱した。
つまりはこの場に本物の王太子がいるということだ。
「シャルル、そなた王太子だったのか」
何も知らない男爵の息子は自分が王太子と結婚できると思い込み嬉しそうに微笑んだ。
「えっ・・ち、違う・・」
真青な顔でガタガタと震えているシャルルを感激していると勘違いした男爵の息子はよせばいいのにルークのことを持ち出した。
「陛下、お願いがございます」
「・・何だ、申してみよ」
「あそこにいるルークを追放してください。」
「ん・・?どういうことか説明せよ」
「ルークは婚約者である私とシャルルとの仲を嫉妬したのです。ルークお前はシャルルが子を孕むことができることに嫉妬して虐めたんだろう?」
得意げに投げかける言葉にルークは俯き、肩を震わせた。
「そなたは何を言っておる。」
「え、ですから、ルークと婚約破棄をしてシャルルとの結婚を認めてほしいのです」
「だ、ダメだ・・それ以上は・・」
絶望で涙があふれ彼を止めようとしたが既に遅い。
「シャルルは王太子ではないぞ・・」
「え・・でも、その腰巻きは王太子の物って・・」
「確かに、これは王太子の物だ」
「だったら・・」
「・そなたたちは学園で何を学んできた。」
頭に手をあ当てて呆れる国王に男爵の息子は混乱してシャルルを改めて見た。
「シャルル、どううことだ?」
肩を揺さぶり聞き出そうとするが、目の焦点が合っておらず廃人のようにふらふらと床に崩れ落ちた。
「宰相、教えてやれっ」
「はい、お任せを・・」
男爵の息子に近づくと、彼を見下ろしながら冷たい視線で話し出した。
「この銀色の刺繍が入った腰巻きはこの世に一枚しかない。それは王太子だけしか持つことを許されていないからだ。成人の儀で祝福を受けた後、王太子の印である指輪に認められれば初めてお披露目となる。その間は王子だと名乗ることが許されず、姿も魔道具で偽り過ごされる。そして今日がその日だ。祝福を受けたにも関わらず容姿が変化しないお前はもちろんその者も王太子ではない。真っ赤な偽物だ・・」
シャルルが王太子でないと聞いた男爵の息子は混乱した。腰巻きが王太子のもので容姿に変化がないシャルルは何者なんだ?なぜ腰巻きを持っていた。
「しかし・・シャルルは・・」
「・・王太子の腰巻きを持っていたということは…盗んだ疑いがある」
「そ、そんな・・」
「それともうひとつ。ルーク様はお前の婚約者ではない」
「えっ・・?」
その言葉に反応したのはシャルルだった。
「お前の婚約者はミラ男爵の息子のクリスだ・・」
「えっ・・・いや、私は父からルークだと・・」
「ミラ男爵の長男が同じ名前のルークだったと記憶しておる。おそらく行き違いがあったと推測される」
「そ、そんな・・・」
鼻をフンとならし男爵の息子虫けらのように睨むと同時に王太子を愚弄したことが許せなかった。
男爵の息子はシャルルが王太子だと知りこれで王族の仲間入りできると歓喜したが一瞬で絶望へと落とされた。
まさに天国から地獄へである。
がっくりと項垂れる男爵の息子に回りの人々は哀れみと憎しみの視線を浴びせる。
うまくいったと思っていた計画は男爵の息子のせいであっけなく破綻した。
「お前のせいで、計画がめちゃくちゃだ・・」
小さな声でつぶやいたのはシャルルだ。
「お前がルークの婚約者だから破棄したいからって言うから協力したのに・・勘違いだっただとっ!!そんなの許されるわけがないだろうっ!!!!」
「シャルル・・何を?」
「お前のせいで・・」
自棄になったシャルルは何を思ったか駆け寄って玉座の近くに配置していた王太子の印である指輪に手をかけた。
それは王族である証の紫色の宝石が入った金色の指輪だった。これをはめて指輪が光輝いたら正真正銘王太子だと証明することになる。だが、それには恐ろしいトラップがあった。
「よせ、それをはめるでないっ!」
国王が止めようとするもシャルルの耳には入らず血走った目で指輪を見つめ一気に中指にはめてしまった。
それはまばゆい光を放ちシャルルは歓喜した。
「見ろ、指輪が私を認めて・・・」
光ったせいで、シャルルは指輪に認めてもらえたと思った。だが、次の瞬間ドス黒い煙を放ちシャルルの体を覆いつくす。
「な、なにこれ・・?
黒い煙はやがてシャルルの体の中に入り中から彼の体を蝕んでいく。
「きゃあああああああ―――――っ!いやあ―――っ!な、何これ?た、たすけ・・・て」
人々が見つめる中、指輪のドス黒い煙で怯えるシャルル体を覆いつくすと一瞬で消し去った。
それはあっという間の出来事で誰も動くことができずシャルルは消えてなくなった。
「シャルル・・・・シャルルっ!どこだ、どこに行った・?」
男爵の息子がシャルルがいた場所の床を必死に手を当てて探すが、何の痕跡もなくカツンと指に当たった指輪がルークの前に転がって来た。
それはまるで導かれたかのように。
ルークはそれを何の躊躇もなく拾い上げ国王の前に跪いた。
「陛下・・申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに・・」
「そなたのせいではない・・安易に指輪を置いていたこちらにも非はある。
「私としたこがと、彼を止められませんでした」
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