嫌われものの僕について…

相沢京

文字の大きさ
上 下
9 / 9

9. 五日目④

しおりを挟む



 あれは…何だ?

 白く光る物体は、ボロボロになった教室内をグルグルと飛び回る。
 先程とは違う悲鳴が飛び交う中、それは突然東吾の前で止まりやがて人型へと変型していった。

 目の前で起こっている現象に誰もが驚き声が出ない。

 そして形がハッキリしたとき、東吾の顔が緩んだ。

 「…涼介か……涼介なのか?」

 震える声で手を伸ばすと、我にかえった理事長も側へと駆け寄る。

「やっと見てくれた…」
「涼介…」
「涼介…」

 再会を喜び涙をこぼしながら手を取ろうとするが、お互い触れることはできない。

「えっ…あれっ何で……」

 目の前に東吾とじいちゃんがいて、やっと僕を見てくれたのに。
 不思議に思いながら、自分の手をじっと見ると、透けていることに気がついた。

「…何これ…?」


 動揺している僕にクラスメイトたちが騒ぎ出す。

「りょ、涼介…なのか?」
「ほ、ホントに?」
「で、でも涼介は…」

 驚きの言葉を口々にする彼らに振り向くと視線が合う。そして仲のよかった加藤と村瀬が泣きながら嬉しそうに近寄ってきた。

「涼介…お前、なんて姿してんだよ」
「本当…何て言っていいかわかんねえよ」

「僕がわかるの?」

 静かに頷く二人に嬉しくて泣きそうになった。

「僕、ずっとここにいたのに誰も僕をみてくれなくて、寂しかった…悲しかった」

 今まで独りぼっちで泣きたいのを我慢していたせいか一気に涙が溢れてきた。

「何で、みんな僕を無視してたの?」

 僕のそんな気持ちを伝えると、みんなが驚く。

「ずっと…ここにいなのか?」
「いたよ…」
「いつから?」
「えっと…」

 いつからと聞かれて、そういえばいつからだろう?

「あれ…思い出せない…」

 何かを忘れているような気がするんだけど、何だったかな?

 こんな僕をみてじいちゃんが真剣な顔で話し出す。

「涼介…ずっとここにいたなら、さっきの話も聞いていたんだな?」

さっきの話って、木村が誰かを屋上から落としたってやつかな?

「それって木村の話?」
「ああ、そうだ…」
「確かに聞いてたけど…」

 何でその話を今するんだろう?

じっとじいちゃんの顔を見てたら何か言いたげで、だけどよくわからなくて首を傾けた。

「屋上から落ちた生徒だか…」
「…うん?」
「それは…お『わああああ──っっ!余計なこと言うんじゃねえっ!』」

 
 何か言いかけたじいちゃんに木村が大声を出して邪魔してきた。

「おい!」
「こいつ、邪魔すんなよっ!」

 加藤が怒って彼の口を塞ぐが、モゴモゴと唸って抵抗する。

「あ、これ使えよ」
「……んんっ」

 投げられたタオルで口を塞ぐとやっと静かになって話を再開することができた。

「はぁ…まったく手のかかる奴だ」
「………ホントに」





 


 




しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。 一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。 最終的にはハピエンの予定です。 Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。 ↓↓↓ 微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。 設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。 不定期更新です。(目標週1) 勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。 誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

婚約破棄をしようとしたら、パパになりました

ミクリ21
BL
婚約破棄をしようとしたら、パパになった話です。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

もう遅いなんて言わせない

木葉茶々
BL
受けのことを蔑ろにしすぎて受けに出ていかれてから存在の大きさに気づき攻めが奮闘する話

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...