嫌われものの僕について…

相沢京

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6. 五日目

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 いつもよように席に着いたがこの日は何だか騒がしかった。

 廊下で何人もの大人の姿が出入りしていて、みんな何事かと興味津々だ。


「なあ、何で今日は見知らぬ大人がウロウロしているんだ?」
「…さあ、何だろうな」
「おい、あれって…」

 ひとりの生徒が指差す先には東吾がいた。しかも理事長といっしょに。

「東吾─」

 思わず声を出したらまわりの空気が変わった。

「お、おい、今…なんか声が聞こえなかったか?」
「…ま、まさか…気のせい、だろ」
「で、でも…」

 ガタガタと震えて真青になっているのは一人や二人ではない。

「だ、大丈夫だ」
「う、うん…そうだよな」
「気のせいだ!」


 その先の言葉は言わなくてもわかっている。だけど、それを言ってしまうと取り返しのてかないような気がして無理やり飲み込んた。

 そこに遅れて木村が教室に入って来た。

「なあ、さっき東吾を見かけたんだけと、いっしょにいるのは誰なんだ?」


 木村のあり得ない言葉にみんなの思考が停止する。

「おい!聞いてんのか?あれは誰だって聞いてんだよっ!」

 怒りだす木村にみんながハッとする。

「何言ってんだ?」
「…寝ぼけて、はなさそうだな…東吾がわかったぐらいだし……」
「と、なると………」


 自分を理事長の孫だと公言しておきながら、誰だなんて聞くのはおかしいと当然みんなは思った。

「お前、理事長の孫だって言ってたよな?」
「ん…?ああそうだ。オレは理事長だぞ」
「それって、この学校の理事長だよな?」
「もちろん、そうに決まってんだろ」
「……こいつ、認めたぞ」
「ああ、確かに聞いた」
「オレも…」
「オレもだ…」

 真顔で木村を取り囲みその距離を縮めていく。

「な、何だよ!」
「オレたちがバカだった…こんな奴に騙されるなんてな…」
「ああ、あいつの言うこは正しかったんだな…」
「何の話だよっ!」

 そう叫ぶ木村の顔は強ばりあきらかに焦っているのが見え見えだった。

「お前、ウソついてるだろ?」
「は?」

 木村は目の前のクラスメイトの言葉に凍りついた。

「な、何でそんなことを?」

 さっきまでの勢いはどこへやら、声が小さくなっていく。
 まさか、バレた──?
でも、何で?完璧だったはずなのに…?

「何でって顔だな」
「………」

 頭がグルグルとしてまとまらない。
何か言わなくてはと思うのに言葉が出てこない。

「理事長の孫だっていうなら、なぜあの人の顔を知らないんだ?」
「…えっ?」
「東吾の隣りにいた人は…理事長だ」
「…えっ………う、ウソ…」

 理事長な顔は写真でちゃんと確認した。だから間違えるはずがない。

「お前、もしかして前の理事長と勘違いしたんだろ?」
「え…、前の?」
「その顔は、知らなかったみたいだな」
「半年前に今の理事長に変わったんだよ」
「ウソ…だろ」

 ショックで頭が真白になって、その場に崩れ落ちてしまった。

「…ニセモノ」
「ウソつき…」
「ウソつき…」
「ウソつき…」
「ウソつき…」

 クラスメイト全員から責められヒザを抱えて体を丸くする。
 
「ニセモノ…」
「ニセモノ…なあ、どう落とし前をつける気だ?」
「え、ああっ…」

 泣きながら震えている木村にみんなの視線が集中する。
 憎しみと怒りがこめられた視線は木村の心をパッキリとへし折ったのだった。




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