6 / 9
6. 五日目
しおりを挟むいつもよように席に着いたがこの日は何だか騒がしかった。
廊下で何人もの大人の姿が出入りしていて、みんな何事かと興味津々だ。
「なあ、何で今日は見知らぬ大人がウロウロしているんだ?」
「…さあ、何だろうな」
「おい、あれって…」
ひとりの生徒が指差す先には東吾がいた。しかも理事長といっしょに。
「東吾─」
思わず声を出したらまわりの空気が変わった。
「お、おい、今…なんか声が聞こえなかったか?」
「…ま、まさか…気のせい、だろ」
「で、でも…」
ガタガタと震えて真青になっているのは一人や二人ではない。
「だ、大丈夫だ」
「う、うん…そうだよな」
「気のせいだ!」
その先の言葉は言わなくてもわかっている。だけど、それを言ってしまうと取り返しのてかないような気がして無理やり飲み込んた。
そこに遅れて木村が教室に入って来た。
「なあ、さっき東吾を見かけたんだけと、いっしょにいるのは誰なんだ?」
木村のあり得ない言葉にみんなの思考が停止する。
「おい!聞いてんのか?あれは誰だって聞いてんだよっ!」
怒りだす木村にみんながハッとする。
「何言ってんだ?」
「…寝ぼけて、はなさそうだな…東吾がわかったぐらいだし……」
「と、なると………」
自分を理事長の孫だと公言しておきながら、誰だなんて聞くのはおかしいと当然みんなは思った。
「お前、理事長の孫だって言ってたよな?」
「ん…?ああそうだ。オレは理事長だぞ」
「それって、この学校の理事長だよな?」
「もちろん、そうに決まってんだろ」
「……こいつ、認めたぞ」
「ああ、確かに聞いた」
「オレも…」
「オレもだ…」
真顔で木村を取り囲みその距離を縮めていく。
「な、何だよ!」
「オレたちがバカだった…こんな奴に騙されるなんてな…」
「ああ、あいつの言うこは正しかったんだな…」
「何の話だよっ!」
そう叫ぶ木村の顔は強ばりあきらかに焦っているのが見え見えだった。
「お前、ウソついてるだろ?」
「は?」
木村は目の前のクラスメイトの言葉に凍りついた。
「な、何でそんなことを?」
さっきまでの勢いはどこへやら、声が小さくなっていく。
まさか、バレた──?
でも、何で?完璧だったはずなのに…?
「何でって顔だな」
「………」
頭がグルグルとしてまとまらない。
何か言わなくてはと思うのに言葉が出てこない。
「理事長の孫だっていうなら、なぜあの人の顔を知らないんだ?」
「…えっ?」
「東吾の隣りにいた人は…理事長だ」
「…えっ………う、ウソ…」
理事長な顔は写真でちゃんと確認した。だから間違えるはずがない。
「お前、もしかして前の理事長と勘違いしたんだろ?」
「え…、前の?」
「その顔は、知らなかったみたいだな」
「半年前に今の理事長に変わったんだよ」
「ウソ…だろ」
ショックで頭が真白になって、その場に崩れ落ちてしまった。
「…ニセモノ」
「ウソつき…」
「ウソつき…」
「ウソつき…」
「ウソつき…」
クラスメイト全員から責められヒザを抱えて体を丸くする。
「ニセモノ…」
「ニセモノ…なあ、どう落とし前をつける気だ?」
「え、ああっ…」
泣きながら震えている木村にみんなの視線が集中する。
憎しみと怒りがこめられた視線は木村の心をパッキリとへし折ったのだった。
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の僕が学園を去る話
おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。
一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。
最終的にはハピエンの予定です。
Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。
↓↓↓
微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。
設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。
不定期更新です。(目標週1)
勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。
気にしないで。邪魔はしないから
村人F
BL
健気な可愛い男の子のお話
,
,
,
,
王道学園であんなことやこんなことが!?
王道転校生がみんなから愛される物語〈ストーリー〉
まぁ僕には関係ないんだけどね。
嫌われて
いじめられて
必要ない存在な僕
会長
すきです。
ごめんなさい
好きでいるだけだから
許してください
お願いします。
アルファポリスで書くのめっちゃ緊張します!!!(え)
うぉぉぉぉぉ!!(このようにテンションくそ高作者が送るシリアスストーリー💞)
元生徒会長さんの日常
あ×100
BL
俺ではダメだったみたいだ。気づけなくてごめんね。みんな大好きだったよ。
転校生が現れたことによってリコールされてしまった会長の二階堂雪乃。俺は仕事をサボり、遊び呆けたりセフレを部屋に連れ込んだりしたり、転校生をいじめたりしていたらしい。
そんな悪評高い元会長さまのお話。
長らくお待たせしました!近日中に更新再開できたらと思っております(公開済みのものも加筆修正するつもり)
なお、あまり文才を期待しないでください…痛い目みますよ…
誹謗中傷はおやめくださいね(泣)
2021.3.3
超絶美形な俺がBLゲームに転生した件
抹茶ごはん
BL
同性婚が当たり前に認められている世界観のBLゲーム、『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』略して白薔薇の攻略対象キャラである第二王子、その婚約者でありゲームでは名前も出てこないモブキャラだったミレクシア・サンダルフォンに生まれ変わった美麗は憤怒した。
何故なら第二王子は婚約者がいながらゲームの主人公にひとめぼれし、第二王子ルートだろうが他のルートだろうが勝手に婚約破棄、ゲームの主人公にアピールしまくる恋愛モンスターになるのだ。…俺はこんなに美形なのに!!
別に第二王子のことなんて好きでもなんでもないけれど、美形ゆえにプライドが高く婚約破棄を受け入れられない本作主人公が奮闘する話。
この作品はフィクションです。実際のあらゆるものと関係ありません。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
なぜか第三王子と結婚することになりました
鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!?
こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。
金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です
ハッピーエンドにするつもり
長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる