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5. 四日目
しおりを挟む意識が飛んだ後、気がついたら翌日だった。
しかも教室で自分の席に座っている。
えっ?
何で?
どういうこと───?
辺りを見回すけど、いつもと変わらず誰もこっちを見ようとはしない。
机には木村が置いたと思われる一輪挿しの花瓶に白い菊の花。
もしかして先生が運んでくれたのかな。でも、そうなら家に連絡がいくはずで、ここで目が覚めるのもおかしい。
混乱する頭を抱えたまま色々考えるけど何ひとつ浮かばない中、やっぱり置き去りにされた確実が高いなあ…と行きつく。
担任としていや人としてその行動は無責任だと思うけど、あの涙と言葉の意味は一体なんだったんだろうと、そっちのほうが気になって仕方がなかった。
さて──時は四日前にさかのぼる。
「校長、例の件はどうなっていますか?」
「…ち、調査中です」
「……いつまで、かかりそうですか?」
「そ、それは…、なんとも…」
理事長室に呼び出された校長は焦っていた。学校内で起こった事故の調査が思ったよりもなかなか進まないからだ。
ひとりの生徒が起こした事故ともいえる事件から一ヶ月。これ以上長引くのはさすがにマズイと思っていたが……
「はぁ…どこまでつかめましたか?」
「そ、それが………」
理事長がイラ立っているのが声の調子でわかった。
「これ以上進展がないなら警察の介入を許すことになりますが…?」
警察と聞いて、校長はますます焦りだす。
「そ、そんな…待ってください。!」
必死にすがりつく校長に理事長はイラ立ちを隠せなくなっていた。
「これ以上何を待てと?」
「…うっ……ええっと…」
何か納得してもらえる言葉があればいいのにそれが全く浮かばない。苦労してここまで登りつめた地位をこんなことで失いたくはない。人というものはこんな時醜い心を覗かせる。
私利私欲──自分の利益や自分の欲求を満たすことだけを考えて行動すること
彼は『校長』という地位を失いたくないため愚かな行動に走ることになる。それが、地獄への入り口だと気づかずに
「もう少し時間をください。必ず納得していただける調査結果をお持ち致します」
「…………わかりました。一週間待ちましょう。」
理事長は校長に期待しているわけではない。ほとんど見捨てているといったほうが早い。ただこちらの事情もある。簡単にいえば単なる時間稼ぎで、彼が私利私欲に走るのもお見通しだった。
そんな理事長の思惑も知らない校長は準備にとりかかる。
その欲望に走った彼の口角は不気味に上がっていた。
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