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国の行く末14
しおりを挟む「えっ?」
医者が告げた言葉が理解できず思考が停止する。
「ですから、ご懐妊おめでとうございます」
ご懐妊?・・それって何だっけ?
ポカンとしているとレイルも同じような反応だが言葉が続く。
「ご懐妊とは何だ?何かの病気か?」
「「えっ?」」
驚きの声を上げたのはアリアとハインツだ。
「あなた何を言ってるの?」
ムッとしているレイルにアリアは正気かと疑う。
「陛下、懐妊とはその・・」
「・・・オレ何の病気なの?」
「へっ・・?」
説明しようとした矢先にアランが涙ぐむ。
あれーっ?もしかして意味を知らないなんてことは・・ないわよね?
「姉上・・グスン」
「えっと、アラン・・まさか懐妊の意味を知らないなんてことはないわよね?」
「意味・・?」
グズグズ鼻をすすりながらアリアの顔を見るアランにイヤな予感は的中する。
「・・・・・うん、知らない」
「ウソでしょう?あなた・・」
王妃教育の際に学んだはずなのに知らないなんてあり得ない。いやもしかしたら不要だとして省かれたのかもしれない。だけど・・・まさか知らないなんて我が弟ながら情けない。
「アラン、懐妊というのはね。おめでたってことよ。」
「おめでた?ますます意味がわかんないよ。ハッキリ言ってよっ!何かの病気なの?」
「いや、だからね・・ああっもう、妊娠したってことよっ!もっと簡単に言えば赤ちゃんができたってことよっ!!」
何で私がこんなこと言わなきゃいけないのよっ!
全く教育係は誰よ!
アリアに妊娠したことを告げられてアランは固まる。
「え、妊娠・・赤ちゃん・・?」
「そうよ、おめでとう。あなたも母親になるのよ」
「こ、子供ができた?アランが母親ってことはオレは父親ってことか?」
「そうよ、レイル。おめでとう・・先を越されちゃったわね」
「アランっ!でかしたぞ!ハハハ、オレが父親かっ!」
大声で笑い喜んでいるレイルに対しアランは実感がないのか未だに呆けている。
「オレが妊娠・・?母親になる、のか?このオレが・・?」
子供を作れる体ってことはわかっていたが、まさか本当に妊娠するなんて思っていなかった。正直、どうしたらいいのかわからない。アランの場合女性の妊娠とは違うのだ。
「アラン様、おめでとうございます。これから医者のチームを作り全力でサポートさせていただきますのでご安心を」
「そうよ、アラン。ケイン先生の腕は一流だから安心しなさい」
オレを落ち着かせようとしてくれるのは嬉しいけどやっぱり不安だ。
「不安なら実家に帰る?母上もいるし安心できるんじゃない?」
確かに母上が傍にいてくれれば安心するけど・・・でも・・
「公務ならオレと宰相で何とかなるが、実家の戻るのはマズイ。」
「何故だ?」
「ゲイル派の残党は片づけたがまだ完全ではない。アリア、義母上に王宮に来てもらうことはできないか?」
「う~ん、聞いてみないとわからないけど、たぶん問題ないと思うわ。」
「なら、頼んでもいいか?」
「わかったわ。急いで連絡してみるわ」
マジかっ!このオレが妊娠していたなんて。あ、じゃあもしかして急に不安になったり涙もろくなっていたのはこのせいだったのかぁ!
まだ実感はないけど・・そうか、母親かっ・・フフフ、何だかくすぐったいな。
へへへ・・
こうして、オレの妊娠が発覚し母上の登城が急遽、決定したのだった。
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