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国の行く末4

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リリア王女の一行にお仕置きをして少しはスッキリできたかと思ったアリアだったが、まだ肝心のレイルに言いたいことを言ってなかったのでレイルの元へと向かっていた。


そもそも、レイルがちゃんとアランに説明していなかったのが原因だ。していればアランが姿を消すなんてことはなかったはずだ。

「まったく、いくら忙しいからって王妃を放置しておくなんて信じられないわ。こうなったらアランと離縁させて公爵家に戻して当主にしようかしら」

なんてことを考えてしまうのも無理はない。これはレイルが押し切ってした結婚だったのだから。

リリスが魅了を使ったことは王宮内に広まり、知らぬ者はいない。だが、王妃が不在なことはまだ知れ渡っていないことは幸いだった。


「アリア様、お帰りでしたか」
「ええ、陛下はいるかしら」



執務室の前に控えていた護衛に聞くが、何か迷っているような仕草をする。


「そ、その・・おられますが・・今は・・」

何か言われているんだろうけど、この対応はダメね。


「いるの?いないの?ハッキリしなさいっ!」
「―――っ!!」

アリアの威圧に護衛は体を震わせ、怯える。

このぐらいの威圧で怯えるなんて情けない。護衛、失格ね。うちの新人でも耐えるわよ。


「どうした、騒がしいぞっ!」

アリアに威圧を察知したレイルが顔を出す。そして、アリアがいるのを確認すると顔をしかめた。


「何のようだ?」
「ようがなければ来てはいけないのかしら?」
「・・・・はあ~・・入れ」


機嫌の悪いのはアリアだけではない。レイルだって王女の後始末とアランがいなくなったことで頭を悩ませていた。

ムスッとしたままソファーに腰掛けたレイルと無言で座るアリア。それを目の前で見ている宰相はある意味とんだとばっちりだ。

ああーーっ、なぜアリア様がここにっ?
さっき連絡を入れたところなのに・・。

アリアが弟思いなのは誰もが知っている事実。その弟が姿を消したと知って急いで駆け付けたのだろうが・・早すぎる。


「さて、アランがいなくなったと聞いたのだけど、どうしてそうなったのか教えてもらえるかしら?」
「・・・・・・そ、それは」
「聞いたところによると、親善大使できたリリア王女と呑気にお茶会をしていたそうね。アランを放置して・・」
「・・・・・・」
「どういうつもりで王女とお茶会を?」
「・・・・・・・」
「まさか、浮気・・なんてことはないわよね?」
「・・・それはない」
「ならどうして、アランはいなくなったのかしら?」
「・・・・わからぬ」
「はっ?わからない・・?」
「そうだ。お互いに忙しいことはわかっていた。だから会えなくてもわかっていると思っていたのだが・・」
「ふ~ん・・それで?」
「いや、その・・だからアランがなぜいなくなったのか理解できん」


この男、本気で言ってるのかしら?


「あなた、アランに側近を一人しかつけなかったと聞いたけど、それに護衛も・・それはなぜ?」
「・・それは、今探しているところだった?」
「今探してですって?結婚して王妃になって一年もたつのに?」
「適任者がいなかったんだ。仕方ないだろ?」
「だったらどうして私に相談しないのよ?そんなの騎士団から選んでもよかったでしょうがっ!」
「それはあいつがイヤがったからだ」
「イヤがった?」
「そうだ、いつまでも姉上に甘えるわけにはいかないって言ってな・」

あの子は時々、間違ったことをする。それさえなければ優秀なんだけどなあ~

「まったく、騎士団なんて王族のためにあるっていうのに、何を遠慮しているのよ」
「まったくだ・・」

ホントに、ズレてるんだから。仕方のないこだわ


「側近と護衛の件はわかったわ」
「そうか・・」

ホッとしたレイルだが、アリアの話はまだ続きがあった。


「じゃあ、王女との関係を聞こうかしら?」


ニッコリと笑みを浮かべているアリアだが、彼は知っていたこれはもの凄く怒っていることを・・

レイルは冷や汗を流し、宰相は恐怖で委縮した。
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