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苦悩2
しおりを挟む「調べはついたか?」
「はい・・どうやら陛下が思っていた通りでした。あの王女は・・・」
寝静まった王宮でレイルとハインツの密談が行われていた。
国王となってまだ一年。
レイルは自国では有能であったが、外交は宰相に任せきりなことがあり情報が不足していたのだ。
だから、隣国であった王族のトラブルを知らなかった。
「そうか・・」
「どうしますか?」
「ああ、そうだな。アリアの手を借りてもよいか?あやつが一番頼りになる」
「ええ、構いませんよ。アリアも喜ぶでしょう」
「任せたぞ」
「はい・・それから王妃はどうされてますか?話してないのでしょう?」
「ああ、だが今はあいつに話せない」
「でも・・・いえ。わかりました。」
ハインツが帰ってからアランの部屋の窓を見るが灯りはともっておらずもう就寝したのかと残念な気持ちになった。
アランには側近はランスしかつけていないのには理由があった。
王宮でしか知らない秘密を国外に誰かがもらした形跡があった。
それは、アランが子を孕むことができるという極秘事項だった。
容姿も頭脳も優れているアランを狙っている者がいる。それがレイルには許せなかった。だからハインツに調査を命じた。犯人はまだわからないが必ず捕まえて見せる。
そう決意したレイルだがこの時、アランが傷つき姿を消したことを知らなかった。
翌朝―――
レイルの執務室に護衛についたばかりのハンスが慌てた様子で訪ねてきた。
「陛下、王妃の護衛のハンスが話があると・」
「・・ハンスが?何の用だか聞け」
「―――です!」
「な―――と!―――せ!」
バタバタとハンスが駆けていく音が騒々しいなと思っていたら
「陛下、大変です!」
「どうした?」
「お、王妃が・・」
側近の顔色は悪く、彼に何かあったのだと察知した。
「・・・アランがどうかしたのか?」
「王妃様が――いなくなりました」
「――――っ!!」
ふらっと目眩がして目の前が真っ暗になった。
「アランが・・いない、だと!」
「ハンスの報告によると、昨日の夕食前から見かけていないと」
「あいつは、何をやってたんだっ!!」
机をバンっと叩いて怒りを露わにする。
「王妃様が不要だと護衛を断っていたそうです。」
「なっ!あのバカ!自分の立場をわかってないのかっ!」
「陛下、王宮中を捜索させておりますので、落ち着いてくださいっ!」
「クソッ!!オレも探す」
「待ってください!陛下が動けば周りが不審に思います」
「しかし、アランがっアランがいなくなったんだぞっ!これが落ち着いていられるかっ!!」
アランに何も告げず一人にしていたことを痛く後悔したレイル。
そして、この非常事態はハインツからアリアの耳に入ることになる。
だが、これがきっかけで事態は一転していくのだった。
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