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4-6.子供のころの記憶ってあてにならないよね
しおりを挟むオレが悔しくて泣きそうになっていると、姉上が困ったような顔をして声をかけてきた。
「ねえアラン。あなたレイル様に何かされたの?」
「何って、子供のころ散々酷い嫌がらせをされたんだよっ」
「……例えばどんな?」
昔のことなんて口にも出したくないけど説明をしないといけないか。
「あれは王宮で初めてのお茶会の日。緊張していたオレの背後に来て、いきなりオレのズボンを引きずり下ろしたんだよっ!しかも令嬢がいる目の前でだっ!」
「まあ……」
目を見開いて驚いているのは姉上だけじゃない。ハインツも陛下もそれになぜか当人のレイルまでもが驚いていた。
そして、何か思い当たるふしがあるのか陛下が困ったような顔でオレとレイルを見る。
姉上は小さく息を吐くと
「それって本当にレイル様だった?」
「えっ?」
何でそんなことを聞くのか意味がわからない。
だって、ちゃんと顔も覚えている。
「髪の色は?」
「プラチナブロンドだった……」
「……そう。じゃあ瞳の色は?」
「瞳‥‥?瞳の色はグリーンだった」
瞳の色を聞いた姉上の様子がおかしい。
「間違いないわね……」
「ああ、そうだね……」
ハインツも同意している。
それに、陛下の顔色は青いし、レイルはムッとしているみたいだ。
そりゃあ、自分のした嫌がらせを暴露されたら不機嫌になるよな。
でもな、オレは悪くないぞ!
でもこれで婚約も結婚もないよな?
僅かな期待に笑みがこぼれるが、そうは簡単にはいかないようだ。
「アラン…あのね」
「何、わかってくれた?」
「ええ、あなたがレイル様を嫌っているのは、その嫌がらせが原因なのよね?」
「そうだよ。わかってくれるよね?」
「じゃあ、その嫌がらせをしたのが別人だったら?」
「…………は?」
別人ってどういうこと?
そんなのあり得るわけないだろ?
何を言ってんの?
必死になっているのに何で姉上はそんな意味不明なことをと思うとちょっとムッとした。
「別人だなんて、何でそんなことを言うんだよ。オレがウソをついているとでも言うの?」
「そうじゃないわ。レイル様をよく見て……」
「はあ?今更何をっ?」
姉上に言われてレイルの顔をよく見てみるとオレが覚えているのとは違うところがあった。
「あれっ、えっ!何で―――!」
何で――何で違うんだよ!
オレが間違って覚えていた?
イヤ……それは、ない―――
じゃあ姉上の言う通り、あれは別人だったっていうのか?
だとしたら―――あれは一体誰だったんだ?
今まで信じて疑わなかった自分の記憶が違ったら誰だってショックを受けるだろう。
オレが今まさに、その状態だった。
そう、嫌がらせをしていたレイルの瞳の色は確かに『グリーン』だった
なのに、目の前にいるレイルの瞳の色は―――『キレイなブルー』だったのだ。
あれれ……?
一体何がどうなってんだ………?
何で―――何で、瞳の色が違うんだよっ!
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