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3.意外な依頼者

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昨日ダラスに言われて身なりを整えて馬車に乗り着いた先は

何と―――王宮だった。


「どういうことだよ?」


オレの呟きに答えてくれる人間は今はいない。ジェイクも馬車を降りたところで「私はここまでです」と言って別れたからだ。

そして、オレの前には知らない騎士が左右にも後にもいて取り囲まれた状態だ。

もしかして、本当にオレは何か罪を犯して断罪されるために呼ばれたんじゃないだろうかと思ってしまう。


緊張して体もうまく動けないし口の中がカラカラだし、いいことが何もない。

「帰りたい・・」

小さな声で呟いたつもりが距離が近いせいで騎士たちに聞こえたらしい。ピタッと止まって体をこっちに向けた。

「な、何をおっしゃるんですか?」
「そうです。帰りたいだなんて・・」
「お願いですからそんなこと言わないでください」
「アルト様は我々の希望なんですから?」


必死になってそんなことを言われたけど、希望ってなんのことだ?


中には涙を浮かべる者もいたりして、引いてしまう。

「あ、ああ・・わかった」

引き気味でそういうと嬉しそうに笑顔を輝かした。


これってどう見てもおかしい。迎えの騎士もそうだったが何で彼らはオレに敬語を使い崇めるんだ?

でも、ダラスは同じギルドだからかため口だったな。

それにしてもどこへ向かっているんだ?


歩き出してどれくらいたっただろうか、やがてオレたちは大きくて立派なドアの前まできた。
ドアの前には護衛もいることからこの先に依頼者がいるんだと理解した。


「アルト様をお連れした」

「はっ!」


先頭の騎士が告げると護衛は敬礼をして大きなドアを開けた。

その先には赤い絨毯が敷かれ眩い光を放つシャンデリアがいくつも並んでいた。その天井には細やかな細工が施しており感心していると前にでるよう騎士から指示がでた。


そして―――

部屋の奥には玉座があり―――



『国王』が―――いた。



おいおいおいっ!オレに会いたい人って国王だったのか?
そんなの聞いてないっていうか・・

何で誰も教えてくれなかったんだよ!


心の中で舌打ちするが後の祭りだし手遅れだ!


何なんだよ!こんな展開ありえねえだろっ!

オレ、やっぱり何かしたんじゃ?

一歩一歩踏み出すたびに足がガクガクして倒れそうになる。周りから見ればきっと滑稽だろう。バカにされてもいいからここから逃げ出したい!


何とか陛下の前まできて跪く。


「貴殿がアルトか?」
「はい、陛下。私は冒険者ギルドに所属しておりますアルトと申します。この度は私の様なものの迎えに魔道具の馬車を差し向けてくださり誠にありがとうございました。おかげで快適な旅を過ごすことができました。」

「うむ、そうか。気に入ってくれたか?」
「はい、あのような立派で快適な馬車はありません」

「うんうんそうであろう?」
「あの、それで私に会いたいというお方はどなたでしょうか?」

「ああ、その前に確認したいのだが」
「はい、なんなりと・・」
「そなた、魔の森で人型の魔物を倒したと聞いたが誠か?」
「あ、そのことですが。私はただその魔物の上に落ちただけです。その上でで向かってきたので倒したまでのことです」

「ふむ、落ちたとは・・なぜじゃ?」
「転移先がズレたのです」
「むっ、そなた転移魔法が使えるのか?」
「はい、近い距離ですが?」
「ほう、それは珍しいスキルじゃ・・で、その時傍に人間がいたであろう」
「はい、覚えております。」
「特徴を言ってみろ」
「えっと、確か金髪で青い瞳、金色のローブだったかと・・」

「うむ、あっておるな。どうだ王子よ」

「はい、彼に間違いありません」

そう言って玉座の後から青年が現れた。その容姿は先ほど言ったのとピタリと一致する。



「え、ええ――っ!!」




王子はオレに会えて嬉しいのかニッコリとほほ笑んだ。
しかも、顔を赤くして―――・・


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