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1-5.赤い悪魔と呼ばれる男
しおりを挟む盗賊団のお頭は目の前にいる『赤い悪魔』に体の震えが止まらなかった。
以前、荷馬車を奇襲した時護衛についていた冒険者がアルトだった。
体つきはがっちりしているが、相手はたった一人だったため舐めてかかっていた。だが、それが間違いだったことにすぐに気づく。
襲い掛かった手下を風と火の魔術であっという間に蹴散らしたのだ。あの時総勢70名はいたはず。
一瞬だった――
タバコに火をつける間のほんの数秒で全滅したのだ。
あの時のアルトは赤い炎に身を包み、その瞳は金色に光っていた。
その光景から盗賊団では『赤い悪魔』と異名をつけられ恐れられていた。
「・・・げ、ろ」
震える声は他の手下に届かないほど小さかった。
「ウインドーカッター・・」
剣から放たれたそれは次々に仲間を襲う。
「「ギャアっ!!」」
「ファイヤーボール・・」
そして、業火がその体を焼きつくし逃げ惑う。
まさに地獄のような光景に騎士たちも茫然と立ち尽くした。
「あれが・・あれがAランクの実力なのか?」
容赦のない攻撃にジェイクは息を呑む。
主からアルトの実力は聞いていたがまさかここまでとは思っていなかった。
「奴らを拘束しろっ!」
動けなくなった奴らを騎士たちが慌てて拘束する。
「痛えよっ!」
「助けて」
「お頭あ~」
敵とはいえ泣きわめく奴らに同情さえしてしまう。
やがて一カ所に集められた盗賊団にアルトは回復魔法をかける。
なぜそんなことをするのかというと殺す必要はないからだ。
「エリアヒール・・」
金色の小さな粒が奴らだけでなく負傷した騎士たちにも降りかかるとアルトはホッとしたのか笑みを浮かべた。
「これでいいな・・」
「あ、アルト様は風、火、回復魔法・・一体いくつの属性を持っておられるのですか?」
興奮しながらも聞かずにはいられなかった。
王都でもこれほどの実力者はいない。
もしかして彼を呼んだのは―――
そんなイヤな勘繰りさえしてしまう。
「いくつって・・あー・・・それは言えねえな。」
頭を掻きながら困った顔でそう答える。
そう言われて自分が失礼な質問をしたと気づいて恥た。
「申し訳ございません。属性を聞くなど無粋な真似を・・」
跪き謝罪するジェイクに慌てたのはアルトの方だ。
「あ、いや・・気にしなくていい。こういうのには慣れている」
少し寂しそうに話アルトに同情だろうか胸がチクッと痛んだ。
そして、手のひらから魔法で金色の鳥を飛ばす。
「それは・・?」
「ああ、うちのギルマスへの連絡だ。こいつらをこのままにしておけねえからな・・」
伝達魔法はたいての者なら使える。だが、問題なのはその色が金色だということだった。
まさか、この方は―――
ジェイクが抱いた疑惑はその後、王都で大勢の前で証明されることになる。
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