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1-3.魔道具の馬車
しおりを挟むジェイクに案内されて馬車に乗り込んだのはいいが、これ普通の馬車ではなかった。
中に入ると、結構広くて5~6人ぐらいは乗れそうだし座面がふかふかでこれだとお尻を痛めることもないなと安心していたら一番後ろにどういうわけかドアがあった。
「何でこんなところに・・?」
一緒にいたジェイクに質問すると中に入るように勧められた。
「どうぞ・・」
「え、いいのか?」
「はい、長旅になりますがアルト様には宿ではなく馬車で過ごして頂くことになります。そのためこの馬車を用意させていただきました」
「宿に泊まらないのか?」
「はい、依頼主のご意志です」
無表情で答えるジェイクに何かあるんだろうと思うが彼を責めても仕方がない、か・・。
気分を改めてドアを開けると、
そこは―――豪華絢爛の別世界だった。
「・・・・・・・・・はっ?」
え、なにこれ?
床はふかふかな絨毯が敷かれ、イスとテーブルは白くてベッドは高級な宿にあるような白いシーツに豪華な刺繍入りだった。天井にはきらびやかなシャンデリアが馬車内だというのに灯りをともしていた。
それだけでなく簡単な料理ができるように小さなキッチンまであり、本棚には古書がたくさんあった。背表紙しかここからでは見えないが、貴重な魔術書もいくつかあるようだった。
「ちょっと、これって・・・」
「はい、すべてアルト様のために主が用意されたものです。」
「へ・・・へえ~・・」
こんな豪華で貴重な馬車を用意するなんて一体何者なんだよ!
怖いっ!怖すぎるっ!
どうしよう、使用料でも要求されたら・・?
ただの冒険者にそんな金なんてねえぞっ!
まさか、オレを奴隷にでもする気だったりして・・?
いや、さすがにそれはないか。
王都では奴隷は禁止されているしな・・
「アルト様?」
オレの様子がおかしいと感じたのかジェイクはソファーに座るようにいってきた。
そのソファーも見事な刺繍がしていて生きた心地がしない。
「アルト様、驚かれたと思いますが、ここを王都までご自由にお使いください」
「え、あーいや、何と言うかこれは・・」
「わかります。私も貴族の端くれですがこれほど見事な魔道具は初めてです」
「魔道具・・?」
「はい、これはこの世界でも極めて貴重な素晴らしい魔道具です」
ニコニコしながらそう説明してくれるが益々居心地が悪くなった。
やっぱり、帰りたいっ!
「王都までここで生活していただくのですが、約束してほしいことがあります」
「な、何?」
「私以外の者が来ても決してドアを開けないでください」
「・・・・何かあるのか?」
「それは私からは申し上げられません。でもアルト様のためですので・・」
真剣な目でそう訴えられるとイヤとは言えない。だけどすごく気になる。
それに宿は取らないなら騎士団の彼らはどうするんだ?
まさか、野宿でもするのか?
「私たちは魔道具のテントを使いますからご安心を・・あと、食事は私が運びますので。それと何か御用がございましたらこれをお使いください」
そういって渡されたのは小さなベルだった。これも魔道具らしく聞こえるのはジェイクだけらしい。ちなみに外の様子は鏡に映るらしい。随分と都合のいい魔道具だと感心していたらジェイクは持ち場に戻って行った。
一人残されたオレはというと、遠慮しながらも気になった魔術書に手をかけた。
こんな立派な魔道具をオレのために用意してくれたんだ。
こうなったら王都まで楽しんでやろうじゃないか!
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