24 / 40
新米剣士編
第24話 月夜
しおりを挟む
アウローラがイエルに剣を習い始めてからはや一か月。見違えるような剣技を披露するアウローラを眺めながら、イエルは自家製の酒に口をつける。
木剣の舞いが真ん丸な月明かりに照らされて美しく影を動かす。もしその手にある剣が銀の光を放っていたらきっともっと幻想的な光景になっただろうとイエルは思った。
アウローラの動きに合わせて紅葉が舞い散り、渦を描く。風になびく黒髪が、月夜に照らされて天使の輪を作り出す。
目の奥にわずかな痛みを覚えて、イエルは酒杯を置いて手で目を覆った。懐かしい顔を見た気がした。追い求めた、恋人の顔。
その顔はもう、目の前にはなくて。けれどそこには、あるいは恋人よりも強い輝きを放つ少女の姿があった。
やっぱり似ている――イエルはそんな既視感を抱きながら、真剣に剣を振るアウローラの顔を見る。恋人の顔は、そこにはもう重なっていなくて。酒でわずかに緩んだ脳は、必死に答えを探る。
月がゆっくりと雲に隠れて世界に影が落ちる。
光の消えたモノクロの世界、前へと踏み込むアウローラの姿が、かつて見た影に重なった。
死地の記憶がよみがえる。右腕を失った、過去の記憶。
帝国の砦にて味方の姦計にはまった際に見た、美しい仲間の絆。大切な者を助けるために走る少女の姿が、アウローラに重なっていた。
そんなはずが、ないのに。
あの少女はそのすぐ後に、天井の崩落に巻き込まれて死んだはずだ。百歩譲って死ななかったとしても、その後に襲い掛かった皇国の大規模魔法を受けて無事でいるはずがなかった。
その思いは、幻想のはずで。あの少女たちが生きていればと、そんな美しい月夜が生み出した感傷だと言い聞かせて。
それでも、一度浮かんだ疑念が晴れることはなかった。
もし、その少女が本当にアウローラだったとしたら――イエルは考える。
当時すでに恐るべき回復能力を、ドラゴンのブレスに直撃しても生き残るほどの自己回復魔法の腕を持っていたとしたら、アウローラは――
そこまで考えて、イエルはかぶりを振った。アウローラの過去を詮索するつもりはなかった。自分が、アウローラに話せないことはたくさんあったから。
それでも、アウローラのつらい過去を勝手に予想してしまったことを恥じて、イエルは自分の昔話をアウローラにすることにした。
「……アウローラ、英雄イエーリの伝説を知ってるか?」
「……イエーリ?イエルの、名前の由来、ですか?」
短い呼吸を繰り返しながら、その合間にアウローラは尋ねる。酒でどこかぼんやりした頭で、そうだ、とイエルはうなずいた。
「これは皇国で広く知られる伝説的な人物の話だ。凶悪な魔物たちに追い詰められていたある村で生まれ育ったイエーリが、やがて多くの人を救う物語……まぁ、民間伝承の形で各地で伝わる英雄伝説だ」
懐かしむように、空を見上げる。雲の切れ間から顔をのぞかせた月が、美しく光り輝いていた。
イエルが風を斬る鋭い音が響く。
「……英雄イエーリは、幼いころ食糧不足に陥って死を予感したんだ。果ての見えない荒野をさまよい、魔物の襲撃に何度もあって、死にそうな思いをしたらしい」
魔物の襲撃――そう聞いてドラゴンの姿を思い出したアウローラ。その思考が手に取るようにわかって、イエルは苦笑を浮かべた。
「まあドラゴンなんて大物だったかは知らないが……寒い夜が、イエーリの体を凍えさせ、エネルギー不足で手足には力が入らなくて、魔力だって尽きていて……」
そういいながら、イエルは月へとその手を伸ばす。雲から飛び出した真ん丸な月をつかむように、その大きな手を掲げる。
「もうだめだと、あきらめた時。そこに、まばゆい黄金の光をイエーリは見たそうだ。それをつかもうと手を伸ばして、こぶしを握って、イエーリは立ち上がって再び歩き始めたらしい」
ぎゅっと、イエルはその手を握る。月は、イエルの手になんて収まることなく空に浮かんでいて。けれどイエルは、何かあたたかな力がその手に握れた気がした。
「……それが、イエーリの、イエルの、心の芯?」
「いいや、俺の心には、もうそんな光は灯ってないな。……まあ、そういう偉大な英雄の名をもらって、俺たちはイリェンスって名前で冒険者をしていたんだよ。そういう意味では、かの英雄は、俺たちの旅の芯だったのかもな」
イリェンス……に、イエーリ――アウローラが小さくつぶやく。気づけばその手は止まっていて、イエルと同じ方向を、空に光輝く月を見上げた。
夜の旅人を導く、大きな月。天空をめぐるその偉大な星は、イエーリの心の導きになったのだろうか――そう、思って。
「……アルバ」
ふと、懐かしい単語がアウローラの口から零れ落ちた。
「アルバ?」
「私の名前の由来だよ。アウローラ、暁っていう意味。太陽が昇る少し前の、まだ薄暗い夜明けのこと。訪れた今日に向かって歩いて行けるように……そんな意味なんだって」
イエルの名前の由来を聞いて、優し気な祖母の顔を思い出した。あたたかなぬくもりが、自然と涙をこぼさせる。
おばあちゃんは無事だろうか――ただ空に浮かぶ月は、答えてはくれなかった。
「それで、アルバっていうのはなんだ?」
「同じだよ。昔使われていた、夜明けって意味の言葉なんだって。それでね、思ったの――」
先ほどのイエルと同じように、アウローラは視線の先に手を伸ばす。だが、その手は空高くに伸びる月へは向いていなかった。
風が吹き抜ける。赤や黄色に染まった枯れ葉が強い風に吹かれて飛び散った。まるで、アウローラのその手の先へと、導くように。
月の光を受けた紅葉はまるで一つの道のように、アウローラの手の先へと続いていく。東へ。
その先には、帝国が、アウローラの故郷が、そして、太陽が昇る土地がある。
「夜明け……昇ってくるあたたかな黄金の光。イエーリっていう昔の人は、世界をあたたかく包み込む太陽に、希望を見出したんじゃないかな?」
風に揺れる黒髪の先で、アウローラは微笑む。月の光を受けて輝く金色の瞳が、まっすぐイエルを見つめていた。
「……夜明け、か」
小さくイエルはつぶやいて。そして、昇ってくるはずの太陽をじっと待った。当然、まだ夜になってさほど経っていない今、東から太陽が昇ることはない。
けれどイエルは、その先から世界を照らす、あたたかな黄金の光を見た気がした。
「……そういえば、イエルの戦う理由って、芯って何だったの?」
少し聞きづらそうに、アウローラがそんなことを尋ねてきて。
答える代わりに、イエルはわしわしとアウローラの髪をかきまぜた。
ふわりと、アウローラがつぼみのように微笑んだ。
その笑みに高鳴る心を静めながら、そろそろ寝るぞ、とイエルはアウローラに背を向けて歩き出した。
「うん!」
高い声が、夜の森に響いて消えていく。
魔物はびこる危険なその世界には、けれどあたたかな日常があって。
もう少しだけこんな日々が続いてほしい――そう願いながら、アウローラは目を閉じた。
木剣の舞いが真ん丸な月明かりに照らされて美しく影を動かす。もしその手にある剣が銀の光を放っていたらきっともっと幻想的な光景になっただろうとイエルは思った。
アウローラの動きに合わせて紅葉が舞い散り、渦を描く。風になびく黒髪が、月夜に照らされて天使の輪を作り出す。
目の奥にわずかな痛みを覚えて、イエルは酒杯を置いて手で目を覆った。懐かしい顔を見た気がした。追い求めた、恋人の顔。
その顔はもう、目の前にはなくて。けれどそこには、あるいは恋人よりも強い輝きを放つ少女の姿があった。
やっぱり似ている――イエルはそんな既視感を抱きながら、真剣に剣を振るアウローラの顔を見る。恋人の顔は、そこにはもう重なっていなくて。酒でわずかに緩んだ脳は、必死に答えを探る。
月がゆっくりと雲に隠れて世界に影が落ちる。
光の消えたモノクロの世界、前へと踏み込むアウローラの姿が、かつて見た影に重なった。
死地の記憶がよみがえる。右腕を失った、過去の記憶。
帝国の砦にて味方の姦計にはまった際に見た、美しい仲間の絆。大切な者を助けるために走る少女の姿が、アウローラに重なっていた。
そんなはずが、ないのに。
あの少女はそのすぐ後に、天井の崩落に巻き込まれて死んだはずだ。百歩譲って死ななかったとしても、その後に襲い掛かった皇国の大規模魔法を受けて無事でいるはずがなかった。
その思いは、幻想のはずで。あの少女たちが生きていればと、そんな美しい月夜が生み出した感傷だと言い聞かせて。
それでも、一度浮かんだ疑念が晴れることはなかった。
もし、その少女が本当にアウローラだったとしたら――イエルは考える。
当時すでに恐るべき回復能力を、ドラゴンのブレスに直撃しても生き残るほどの自己回復魔法の腕を持っていたとしたら、アウローラは――
そこまで考えて、イエルはかぶりを振った。アウローラの過去を詮索するつもりはなかった。自分が、アウローラに話せないことはたくさんあったから。
それでも、アウローラのつらい過去を勝手に予想してしまったことを恥じて、イエルは自分の昔話をアウローラにすることにした。
「……アウローラ、英雄イエーリの伝説を知ってるか?」
「……イエーリ?イエルの、名前の由来、ですか?」
短い呼吸を繰り返しながら、その合間にアウローラは尋ねる。酒でどこかぼんやりした頭で、そうだ、とイエルはうなずいた。
「これは皇国で広く知られる伝説的な人物の話だ。凶悪な魔物たちに追い詰められていたある村で生まれ育ったイエーリが、やがて多くの人を救う物語……まぁ、民間伝承の形で各地で伝わる英雄伝説だ」
懐かしむように、空を見上げる。雲の切れ間から顔をのぞかせた月が、美しく光り輝いていた。
イエルが風を斬る鋭い音が響く。
「……英雄イエーリは、幼いころ食糧不足に陥って死を予感したんだ。果ての見えない荒野をさまよい、魔物の襲撃に何度もあって、死にそうな思いをしたらしい」
魔物の襲撃――そう聞いてドラゴンの姿を思い出したアウローラ。その思考が手に取るようにわかって、イエルは苦笑を浮かべた。
「まあドラゴンなんて大物だったかは知らないが……寒い夜が、イエーリの体を凍えさせ、エネルギー不足で手足には力が入らなくて、魔力だって尽きていて……」
そういいながら、イエルは月へとその手を伸ばす。雲から飛び出した真ん丸な月をつかむように、その大きな手を掲げる。
「もうだめだと、あきらめた時。そこに、まばゆい黄金の光をイエーリは見たそうだ。それをつかもうと手を伸ばして、こぶしを握って、イエーリは立ち上がって再び歩き始めたらしい」
ぎゅっと、イエルはその手を握る。月は、イエルの手になんて収まることなく空に浮かんでいて。けれどイエルは、何かあたたかな力がその手に握れた気がした。
「……それが、イエーリの、イエルの、心の芯?」
「いいや、俺の心には、もうそんな光は灯ってないな。……まあ、そういう偉大な英雄の名をもらって、俺たちはイリェンスって名前で冒険者をしていたんだよ。そういう意味では、かの英雄は、俺たちの旅の芯だったのかもな」
イリェンス……に、イエーリ――アウローラが小さくつぶやく。気づけばその手は止まっていて、イエルと同じ方向を、空に光輝く月を見上げた。
夜の旅人を導く、大きな月。天空をめぐるその偉大な星は、イエーリの心の導きになったのだろうか――そう、思って。
「……アルバ」
ふと、懐かしい単語がアウローラの口から零れ落ちた。
「アルバ?」
「私の名前の由来だよ。アウローラ、暁っていう意味。太陽が昇る少し前の、まだ薄暗い夜明けのこと。訪れた今日に向かって歩いて行けるように……そんな意味なんだって」
イエルの名前の由来を聞いて、優し気な祖母の顔を思い出した。あたたかなぬくもりが、自然と涙をこぼさせる。
おばあちゃんは無事だろうか――ただ空に浮かぶ月は、答えてはくれなかった。
「それで、アルバっていうのはなんだ?」
「同じだよ。昔使われていた、夜明けって意味の言葉なんだって。それでね、思ったの――」
先ほどのイエルと同じように、アウローラは視線の先に手を伸ばす。だが、その手は空高くに伸びる月へは向いていなかった。
風が吹き抜ける。赤や黄色に染まった枯れ葉が強い風に吹かれて飛び散った。まるで、アウローラのその手の先へと、導くように。
月の光を受けた紅葉はまるで一つの道のように、アウローラの手の先へと続いていく。東へ。
その先には、帝国が、アウローラの故郷が、そして、太陽が昇る土地がある。
「夜明け……昇ってくるあたたかな黄金の光。イエーリっていう昔の人は、世界をあたたかく包み込む太陽に、希望を見出したんじゃないかな?」
風に揺れる黒髪の先で、アウローラは微笑む。月の光を受けて輝く金色の瞳が、まっすぐイエルを見つめていた。
「……夜明け、か」
小さくイエルはつぶやいて。そして、昇ってくるはずの太陽をじっと待った。当然、まだ夜になってさほど経っていない今、東から太陽が昇ることはない。
けれどイエルは、その先から世界を照らす、あたたかな黄金の光を見た気がした。
「……そういえば、イエルの戦う理由って、芯って何だったの?」
少し聞きづらそうに、アウローラがそんなことを尋ねてきて。
答える代わりに、イエルはわしわしとアウローラの髪をかきまぜた。
ふわりと、アウローラがつぼみのように微笑んだ。
その笑みに高鳴る心を静めながら、そろそろ寝るぞ、とイエルはアウローラに背を向けて歩き出した。
「うん!」
高い声が、夜の森に響いて消えていく。
魔物はびこる危険なその世界には、けれどあたたかな日常があって。
もう少しだけこんな日々が続いてほしい――そう願いながら、アウローラは目を閉じた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
龍青学園GCSA
楓和
青春
学園都市の中にある学校の一つ、龍青学園。ここの中等部に、先生や生徒からの様々な依頼に対し、お金以外の報酬で請け負うお助け集団「GCSA」があった。
他学校とのスポーツ対決、謎の集団が絡む陰謀、大人の事情と子どもの事情…GCSAのリーダー「竜沢神侍」を中心に巻き起こる、ドタバタ青春ラブコメ爽快スポ根ストーリー。
※龍青学園GCSA 各話のちょっとした話しを書いた短編集「龍青学園GCSA -ぷち-」も宜しくお願い致します。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる