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皇国捕虜編
第18話 悪魔の一撃
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「久しぶり、ずいぶんやられてるね?」
そんな声が聞こえてきたのは、アウローラが地下牢に囚われてから四日が過ぎた時だった。
ないと思っていたリンチに遭い、食事は与えられず、天井から垂れる水を飲んで飢えを凌ぐばかりだったアウローラに投げかけられた、これまでとは違う色の宿った声。
聞き覚えのある声を聴いて、アウローラは膝の間からゆっくりと顔を上げた。
「……ホウエン?元気そうだね」
「そりゃあもう元気だよ。今では魔道具も触れるしねぇ」
ひらひらと手を振るホウエンは、けれどまったく笑っていない眼でアウローラを見ていた。自分のせいでホウエンまで悪意の対象にされているのだろうかと、もしそうなら申し訳ないことをしたと、そうアウローラは心の中で詫びた。声に出しても、ホウエンは謝罪を受け取るはずがないと理解していたから。
そこまで告げたホウエンは、相変わらず顔に張り付けていた微笑の仮面をはぎ取り、感情のうかがえない無機質な顔へと変わった。
暗闇を知る者の顔だと、アウローラはそう思った。そして多分、自分も同じような顔をしているだろうと。
「……この街は近日中に放棄される」
「…………放棄?」
そう、放棄だ――感情の無い声音で、ホウエンは繰り返す。放棄と聞いてアウローラがまず思い浮かべたのは、この街からの撤退。戦線において突出してしまっているこの街を、市民ごと守ることは困難を極めるもので、帝国に街を明け渡すというのは、作戦上おかしなことではないように思われた。
けれど、ホウエンの鉛のような視線が、そんな生易しい計画ではないという事実をアウローラに突き付ける。まるで自分で答えを導けと言いたげに、ホウエンは黙ったままアウローラの言葉を待っていた。
放棄。街の放棄。皇国が帝国に街を譲る――そんなはずがない、とアウローラは思った。多くの犠牲を出して勝ち取った街を、ただ放棄するのを皇国兵も、皇国の上層部の人間もよしとするはずがないと、そう確信して。
ではどうするかと、考えて。
結論は、一つだった。
放棄するという損害以上に、利益を得ればいい。この場合の皇国の利益は、もちろん帝国軍への打撃だ。帝国の拠点へと移ったこの場所で、帝国軍に重い一撃を食らわせる。
この場所を、帝国に与えることもなく、帝国軍を攻撃する方法――そんな悪魔じみた方法を、アウローラは一つだけ知っていた。
この街に入った帝国軍ごと、街を消し飛ばすこと。かつて、ユリーカと共にアウローラが受けた砦に対する魔法と同じことが、多くの民間人がいるこの街で行われる。
全身が、震えた。目から、無意識のうちに涙が出た。
昂る心が唇を震わせ、言葉になることのない声が異音として口から漏れた。
思い出す。ありがとうと、そう言ってくれた街の人たちのことを。
彼女たちを巻き添えに、帝国兵を焼き滅ぼし、この街を消し去る。
そんな行為があっていいのかと、神に問いかける面持ちでアウローラは何かに尋ねた。そんな悪魔的な、人道に反する行為が許されるのかと、その答えに否と告げる者はいない。
「近々、この街は消える。同じ捕虜として生きたボクからの、せめてもの手向けだよ」
それじゃあね、アウローラちゃん――
そう言って背を向けたホウエンの姿が闇の先へと消えていって。
ガシャン、と分厚い金属の扉が、地下へと続く道が、再び閉ざされた。
「あ、ああ……………」
滂沱のごとく涙を流しながら立ち上がったアウローラが、覚束ない足取りで牢屋の鉄格子に倒れこむように触れる。
ひんやりと湿った鉄格子の錆が手について、パラパラと床に落ちていった。
「……して、出して!ここから出して!助けに行くんだ!出して!守らないと!助けないと!ここから出して!救うんだよ、彼女たちを!私が、私だけが守れるんだよ!だから、だからお願い、出してよッ」
ガン、ガン、ガン、と何度も何度も、鉄格子を殴りつける。さび付いた鉄格子のささくれが、アウローラの拳を浅く切り裂いた。その痛みは、けれど張り裂けそうな心を止めるほどのものではなかった。
叩く。救いを求めて。
叫ぶ。救うために。
けれど、ここは遮音された地下の牢獄。扉が開かれることが無ければよほどの物音がない限り拠点に音が届くこともない、孤独の世界。
そして、アウローラの前に立ちはだかる鉄格子は、さび付いているとはいえたかが少女一人を閉じ込めておくには問題ない丈夫さを持っていた。
喉が枯れるまで、アウローラは叫んだ。叫んで、叩いて、叩いて、叩いて。
気づけばその傷はひとりでに癒えていて。
それにも気づかないまま、アウローラは鉄格子を殴り続けて。
長い、長い時間が経った気がした。
ガキンと、鉄格子の棒の一つが吹き飛び、床を転がった。
その隙間に、体を突っ込む。ぎりぎり、頭が通って、けれど、肩が通るには全く足りない幅しかないそこに、アウローラは無理やり体をねじ込む。
痛くて、苦しくて、けれどそんなことは気にならなかった。
とうに枯れたと思っていた涙があふれた。
鉄格子に切り裂かれた肌から血が溢れた。
肩が、外れて。肉が削げ落ちて。
そうしてアウローラは、痛みに絶叫しながら牢屋からの脱出に成功した。
地面に崩れ落ち、力の入らない四肢を動かして這い進む。
緑の光が、回復の光が、勝手にアウローラを包み込んで癒していく。
痛みが、消えて。明滅していた視界が元に戻り、手足に少しだけ力がはいって。
エネルギー不足に悲鳴を上げる体に鞭打って、アウローラは地下を飛び出した。
その視線の先に、人影を見つける。建物は、まだ燃えてはいなかった。
「無事、無事だ!」
かすれた、ほとんど息でしかない歓喜の声を上げる。
全身血だらけ、ぼろきれを纏ったアウローラを見て、ぎょっと見開く者たちの胸元を見る。
見覚えのある制服についた徽章は、ドラゴンと剣――帝国軍のもの。
一瞬にして、アウローラの顔が絶望に染まる。
ホウエンの言葉を聞いてどれだけ経ったのか――それは、わからなかった。けれど時間がないことだけはわかって。
アウローラは、近くにいた帝国兵へと――偶然その場を通りがかった回復兵へと、視線を向ける。
どこかで見た覚えがある人物な気がした。その人物が、最初の戦場にて一人に魔力を使いすぎだとユリーカを叱っていた壮年の女性だとは見抜けなかった。
彼女もまた、アウローラを目に留めて、恐怖と困惑に瞳を染め、けれど一抹の懐かしさを感じていた。
幽鬼のような足取りで女性に歩み寄ったアウローラがその両肩を強くつかんだ。
ヒィ、と女性の口から小さな悲鳴がもれる。
「時間、が、ないんだ。皇国が、この、街を――」
燃やす、とそう言いかけて。
次の瞬間、アウローラは莫大な魔力のプレッシャーを、あるいは濃密な死の気配を感じた。
どさりと、その場にしりもちをついて、開かれていた窓の外を見つめた。
そこには、炎のように橙色をした幾何学模様――魔法陣が、無数に空に積み重なっていた。一つ、また一つと、魔法陣が増えていく。
何事だと、怒号が響き始める。
もう、間に合わない。
ヒュゥとアウローラの喉が鳴った。涙が一筋、頬を伝って。
そして、破壊の炎が、街を覆って立ち上った。
そんな声が聞こえてきたのは、アウローラが地下牢に囚われてから四日が過ぎた時だった。
ないと思っていたリンチに遭い、食事は与えられず、天井から垂れる水を飲んで飢えを凌ぐばかりだったアウローラに投げかけられた、これまでとは違う色の宿った声。
聞き覚えのある声を聴いて、アウローラは膝の間からゆっくりと顔を上げた。
「……ホウエン?元気そうだね」
「そりゃあもう元気だよ。今では魔道具も触れるしねぇ」
ひらひらと手を振るホウエンは、けれどまったく笑っていない眼でアウローラを見ていた。自分のせいでホウエンまで悪意の対象にされているのだろうかと、もしそうなら申し訳ないことをしたと、そうアウローラは心の中で詫びた。声に出しても、ホウエンは謝罪を受け取るはずがないと理解していたから。
そこまで告げたホウエンは、相変わらず顔に張り付けていた微笑の仮面をはぎ取り、感情のうかがえない無機質な顔へと変わった。
暗闇を知る者の顔だと、アウローラはそう思った。そして多分、自分も同じような顔をしているだろうと。
「……この街は近日中に放棄される」
「…………放棄?」
そう、放棄だ――感情の無い声音で、ホウエンは繰り返す。放棄と聞いてアウローラがまず思い浮かべたのは、この街からの撤退。戦線において突出してしまっているこの街を、市民ごと守ることは困難を極めるもので、帝国に街を明け渡すというのは、作戦上おかしなことではないように思われた。
けれど、ホウエンの鉛のような視線が、そんな生易しい計画ではないという事実をアウローラに突き付ける。まるで自分で答えを導けと言いたげに、ホウエンは黙ったままアウローラの言葉を待っていた。
放棄。街の放棄。皇国が帝国に街を譲る――そんなはずがない、とアウローラは思った。多くの犠牲を出して勝ち取った街を、ただ放棄するのを皇国兵も、皇国の上層部の人間もよしとするはずがないと、そう確信して。
ではどうするかと、考えて。
結論は、一つだった。
放棄するという損害以上に、利益を得ればいい。この場合の皇国の利益は、もちろん帝国軍への打撃だ。帝国の拠点へと移ったこの場所で、帝国軍に重い一撃を食らわせる。
この場所を、帝国に与えることもなく、帝国軍を攻撃する方法――そんな悪魔じみた方法を、アウローラは一つだけ知っていた。
この街に入った帝国軍ごと、街を消し飛ばすこと。かつて、ユリーカと共にアウローラが受けた砦に対する魔法と同じことが、多くの民間人がいるこの街で行われる。
全身が、震えた。目から、無意識のうちに涙が出た。
昂る心が唇を震わせ、言葉になることのない声が異音として口から漏れた。
思い出す。ありがとうと、そう言ってくれた街の人たちのことを。
彼女たちを巻き添えに、帝国兵を焼き滅ぼし、この街を消し去る。
そんな行為があっていいのかと、神に問いかける面持ちでアウローラは何かに尋ねた。そんな悪魔的な、人道に反する行為が許されるのかと、その答えに否と告げる者はいない。
「近々、この街は消える。同じ捕虜として生きたボクからの、せめてもの手向けだよ」
それじゃあね、アウローラちゃん――
そう言って背を向けたホウエンの姿が闇の先へと消えていって。
ガシャン、と分厚い金属の扉が、地下へと続く道が、再び閉ざされた。
「あ、ああ……………」
滂沱のごとく涙を流しながら立ち上がったアウローラが、覚束ない足取りで牢屋の鉄格子に倒れこむように触れる。
ひんやりと湿った鉄格子の錆が手について、パラパラと床に落ちていった。
「……して、出して!ここから出して!助けに行くんだ!出して!守らないと!助けないと!ここから出して!救うんだよ、彼女たちを!私が、私だけが守れるんだよ!だから、だからお願い、出してよッ」
ガン、ガン、ガン、と何度も何度も、鉄格子を殴りつける。さび付いた鉄格子のささくれが、アウローラの拳を浅く切り裂いた。その痛みは、けれど張り裂けそうな心を止めるほどのものではなかった。
叩く。救いを求めて。
叫ぶ。救うために。
けれど、ここは遮音された地下の牢獄。扉が開かれることが無ければよほどの物音がない限り拠点に音が届くこともない、孤独の世界。
そして、アウローラの前に立ちはだかる鉄格子は、さび付いているとはいえたかが少女一人を閉じ込めておくには問題ない丈夫さを持っていた。
喉が枯れるまで、アウローラは叫んだ。叫んで、叩いて、叩いて、叩いて。
気づけばその傷はひとりでに癒えていて。
それにも気づかないまま、アウローラは鉄格子を殴り続けて。
長い、長い時間が経った気がした。
ガキンと、鉄格子の棒の一つが吹き飛び、床を転がった。
その隙間に、体を突っ込む。ぎりぎり、頭が通って、けれど、肩が通るには全く足りない幅しかないそこに、アウローラは無理やり体をねじ込む。
痛くて、苦しくて、けれどそんなことは気にならなかった。
とうに枯れたと思っていた涙があふれた。
鉄格子に切り裂かれた肌から血が溢れた。
肩が、外れて。肉が削げ落ちて。
そうしてアウローラは、痛みに絶叫しながら牢屋からの脱出に成功した。
地面に崩れ落ち、力の入らない四肢を動かして這い進む。
緑の光が、回復の光が、勝手にアウローラを包み込んで癒していく。
痛みが、消えて。明滅していた視界が元に戻り、手足に少しだけ力がはいって。
エネルギー不足に悲鳴を上げる体に鞭打って、アウローラは地下を飛び出した。
その視線の先に、人影を見つける。建物は、まだ燃えてはいなかった。
「無事、無事だ!」
かすれた、ほとんど息でしかない歓喜の声を上げる。
全身血だらけ、ぼろきれを纏ったアウローラを見て、ぎょっと見開く者たちの胸元を見る。
見覚えのある制服についた徽章は、ドラゴンと剣――帝国軍のもの。
一瞬にして、アウローラの顔が絶望に染まる。
ホウエンの言葉を聞いてどれだけ経ったのか――それは、わからなかった。けれど時間がないことだけはわかって。
アウローラは、近くにいた帝国兵へと――偶然その場を通りがかった回復兵へと、視線を向ける。
どこかで見た覚えがある人物な気がした。その人物が、最初の戦場にて一人に魔力を使いすぎだとユリーカを叱っていた壮年の女性だとは見抜けなかった。
彼女もまた、アウローラを目に留めて、恐怖と困惑に瞳を染め、けれど一抹の懐かしさを感じていた。
幽鬼のような足取りで女性に歩み寄ったアウローラがその両肩を強くつかんだ。
ヒィ、と女性の口から小さな悲鳴がもれる。
「時間、が、ないんだ。皇国が、この、街を――」
燃やす、とそう言いかけて。
次の瞬間、アウローラは莫大な魔力のプレッシャーを、あるいは濃密な死の気配を感じた。
どさりと、その場にしりもちをついて、開かれていた窓の外を見つめた。
そこには、炎のように橙色をした幾何学模様――魔法陣が、無数に空に積み重なっていた。一つ、また一つと、魔法陣が増えていく。
何事だと、怒号が響き始める。
もう、間に合わない。
ヒュゥとアウローラの喉が鳴った。涙が一筋、頬を伝って。
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