46 / 53
一対三万
しおりを挟む
「数時間後」と言った通り、ヤオらが南進してくる軍の先行部隊に接触したのは直ぐだった。即座に二人共身を隠して遠目から、まずヤオが探査するのだが、ここでは不穏当な気配も力も感じなかった。
その為、更に後から来る本体にも向かう、そうして同じ様に遠目から探査を掛けるが、そこでも不明確だった
「確かに僅かに何かを感じるのだが‥」
「予知は?」
「変わりない‥コレは困ったのう」
「干渉して動かした、なら、やっぱり指揮官じゃないの?」
「むう、だとは思うのだが、魔の気配、予知に出てこない何なんだこれは‥」
「此処にも居ない??」
そうフィルにも云われてヤオも混乱というか迷った、ここまで直前まで、相手に近い所に居て不確定、且つ誰に取り付いているのか分らないというのも初だ
本来なら自身の特殊能力のみを信じて動けば良いのだが自身にも、その能力自体に懐疑的に成らざる得ない
「何か別の要素があるのか?妨害でもされているのか?」
「ウチの頭がポンコツにでもなったのか?」
そういう疑念や迷いだ
そして不確定、且つどこに、誰に魔が干渉して動かしているのか、それが明確でもないのに、デタラメに追い出しを掛ける事も出来ない
目の前を軍隊が通り過ぎていく、その隊列の最後尾を見送りながら、必死に集中して探す、そして僅かな「力」の気配を掴んだ
「む!?」と反射的に声が出て正面、遠くを見た
「分ったの??」
「ああ!こっちだ!」と即、ヤオは北西に向かって飛んだ
ヤオ、フィルは飛翔しながら離れている分身を通し、円にも説明する、ただ、フィルには半分しか分らなかったが
何しろ、過去にあった、フィルが使徒に成る前の事件の繋がりだから
「分らんハズじゃ、干渉ではあるが、やってるのは「向こう側」じゃない直接でもない」
「乗り移ってどうこうじゃない、歴史分岐に出て、相手が分らん、それが可能なのは限定される「奴」じゃ」
「妲己、か」
「じゃろうな」
「けど大丈夫なの?」
そう、円の云った通り、妲己の力はまだ不確定な部分が多い、その上、肝心の円は持ち場を離れる事が出来ない、既に分担してしまっている
そして過去に云った事「交渉の余地あり」も今回に限っては無理だろう、更にフィルが相手出来る相手なのか、という事
「む~、仕方無い、円、そっちの分身を消すウチも臨戦態勢で挑む必要がある、力が減ったままでは不味い、一旦戻すぞ」
「ええ」
「こっちが片付いたら直ぐ言葉を飛ばして合図するギリギリまで相手軍と事を構えるな」
「分った、そっちも気をつけて」
そうして会話出来る環境を切って、そのままフィルにも説明する
「今回の相手は魔側ではない、単純な武力勝負でない事もある、かく乱戦法に注意しろ」
「わ、わかった」
としたが、正直フィルに兵法やかく乱戦法の具体例、対処法を伝えようが無い、注意しろ、としか云い様が無い
円とは違い、戦い、場数が多くなく臨機応変な対応は出来ない
そこから五分くらいだろうか、ヤオは丘の上、岩と草の荒地の高台にソレを発見して降り立った、略同時、棒を出して構える
予想通り、相手は女「妲己」だったが、相手も少々驚いていた様だ
「へぇ‥呼んだつもりも無いのだけれど‥よく気がついたわね?ヤオだったかしら?」と
「左様。無駄だと思うが一応聞く、北方民族を操って歴史干渉を起こしたのは貴様だな、直ぐこんな事は止めよ」
「フ‥、止めてもあまり意味は無いわよ、もうこの流れは止まらない、そもそも私が動かしたのはもっと上だもの、あの軍は操られているのではない、人、もっと上からの命令で動いている」
「‥やはりか。だが、何れにしろお主にはお灸が必要だな」
「クク‥知っているわよ。貴女武力はそこいらの兵士レベルでしょ?どう私とやり合うの?」
妲己は薄ら笑いで腰の物に手を掛けた、略同時だろう、後ろに居たフィルが瞬間移動でもしたかの様な速度で妲己とヤオの間に立った。それで妲己とフィルが対峙して明らかに不快な顔を見せた
「話しには少し聞いたが、ソイツが新たな使徒か‥」
「云っとくがフィルは強いぞ」
「グ‥」
おそらく妲己も相手の力を知る術はあるのか、動物的感なのか、それが嘘でない事は即座に察した、だから歯噛みして唸った
「何者だ‥、聖でも魔でもない実体があるくせに異常な力だ、かと云って単純に人間の選抜された使徒でもない‥」
「魔族と人間のハーフらしいよ」
「かなりの高級種とのな」
妲己はそこで、平静を取り繕い武器から手を離した
「フン‥まあいい、今回の私の役目はもう、終っている貴女達と戦う意味も無いわ」
「何?‥」
「云ったでしょ、操ったのは上だって。軍隊が此処まで来た以上もう今更命令撤回しても間に合わないし止まらない、既に操作も解いている、転がり始めた巨石は途中で止まらない」
だが、それは円の予想、懸念と略同じ、干渉を止めても止まらない可能性は既に示唆されている
従ってこういう分担をしたのだから、今更驚く事ではない、だからヤオは続けて問う
「が、お主はそれで何の得がある?、アッチに味方しても全く意味がない」
「前に云わなかったかしら?」
「取引、とは言った、が。その内容に見合うものなのか?」
「見合う訳ではないわ、けど、こちらも飲まざる得ない条件もある」
「ほう‥」
「ま、何れにしろ、貴女達に話しても仕方無い、貴女達には何も出来はしないのだから」
そうして妲己はジリジリ下がって距離を取る
勿論、少なくともフィルはこの状況で逃がすつもりもない、何時でも飛び掛れる体勢だ
そしてヤオはこの短い遣り取りで分った事も多くあった、故に「お灸を据える」部分の優先度は下げフィルに明確に動く指示は避けた
もう一つが、現在の状況に置いて1番は反れた歴史と円の事だ
、この際、妲己の事は後、仕切りなおして次の機会でも良い、その為フィルに伝心しながら、こう説明した
「妲己がこちらに仕掛けて来ないなら逃がしてよい」と
「え?でも敵だよね」
「うむ、だが今優先すべきは既に確定しつつある歴史の道を戻す事、それに円を失う訳にもいかない、既に妲己は干渉を止めている、そして彼女と相対する事は二度と無い訳ではない」
「そうだね‥おねぇちゃんのが心配だ」
「そうだ、出来れば妲己も捕らえたいが、あまりここで手間取るのも不味いし、今はそうする意味も薄い」
「わかった」
そういう頭の中での遣り取りあって、フィルも構えたまま、妲己が下がるのに合わせて自身も下がった
それは相手にも分ったのだろう、薄っすら笑って、正面をこちらに向けながらバックジャンプしつつ、飛び離れた
そうしてヤオらもそのまま見送った、口惜しくもあるが、妲己に拘っても全体利益は殆ど無い「今は」これで良い
ヤオは直ぐに轡を返し、妲己とは逆方に飛ぶ、それに続くフィル、距離の関係もあるが一方的に言葉を飛ばして円にも一連の事態を伝える
が、タイミング的には略ギリギリだった、妲己を捨てて、円の側を優先したのは正しい、彼女の側は面前を軍が通過する所だった
ヤオは飛びながらフィルに伝える
「フィル、ウチは先に円の所に跳躍する」
「う、うん、お願い」
略同時、ヤオは懐から指輪の様な物取り出し、人差し指に嵌めて唱えた
「該人的地方,飛行情況」と、それでフィルの面前から「フッ」と消える
次の瞬間に現れたのは円の右隣だった「間に合ったか!」と、丁度円も仮面を付けた所だった
「なんとかね」
「相手は妲己じゃった、だがウチが対峙した時には干渉は解いている、軍の中にも魔の類の気配無しじゃ!」
「つまり、もう私が止めるしか流れを阻む方法は無い、という事ね」
「あるかも知れんが何れにしろもう時間が無い」
「そうね‥まあ、行って来るわ‥」
「ウチも援護はする」
と二人同時に立って平地に飛び出した、つまり軍の前に
何時もの様に交渉等しない、既に道は明らかであるし、相手は更に上から命令を受けてやっているだけの事だ、引けと言って引く訳ではない
円は軽く三度深呼吸して気を充填させた後
問答無用で相手、先頭集団に駆けた
無論相手軍も「な?なんだ!?」としか云い様が無い、いきなり面前に飛び出してきた人間、おそらく女が走って突撃してくる奇襲とすら思わないだろう
円は先頭集団の列、三段目と四段目の間に飛び降りた。同時、爆裂気功で発気して回りの集団30人吹き飛ばした。
そしてその場で一回くるりと横回転しながら、流星錘も両手で引き抜き、前進しながら手前の相手の足を叩いてその場の崩れさせる
「て、敵襲!」と誰かが叫んで、其々個別に槍や弓を構えるが相手が余りにも少数、一人である為全体に状況確認が出来ない、既に混乱の極みだった
それでも其々が槍を構え、逐次的に、条件反射的に、命令どうこうに関係なく円を突きに行くが射程に入る前に手足を叩かれ、次々転がる
数えた訳ではないが相手は軽く三万は居るだろう、が、数が多いだけに、一度混乱すると収拾がつかない
前線のこの戦いの状況が指揮官に伝わったのが円の突撃から7分も後だ
報告を受けた彼も「馬鹿を言うな!」としか云い様が無い、だが、その瞬間正面遠くに「今起こっている事」を確認出来た
円は四方から突き出される槍をかわし、上空へ飛んで逆立ち状態のまま紐を操って地面に居る兵を殴り倒した所だ
降りる手前に軽身功を展開して落下速度を調整しながら更に空で流星錘を前後左右に打って最期にこれを放棄
もう見なくても分る、感触だけで壊れたと判断して素手に切り替える
降りた途端、そのまま低く跳躍し空中で右に高速回転、竜巻の様な旋風脚を叩き込んで相手の騎馬も5人落馬させる
着地と同時、クロスブロックの構えで集気法で回りから気を集める、ここで動きが止まり円は捕まる。周囲一斉に6本の槍と無数の矢を同時に突き立てられた
「やった!?」と言うより「当った!」だろう
だが、その喜びすら次の瞬間には恐怖に変わる。兵らの持っていた槍が突き立てたまま折れたのだ
そして矢も円の体に通らず、枯れ木枝の様にバラバラと落ちる、そう、硬気功、たかが槍等早々通らない
これで周囲兵は円を中心に後ずさりガチガチ震えて顔面蒼白、個別に逃げ出したのだ
一部始終を見た、見てしまった指揮官も思わず叫んだ
「後退!、撤退!」と、指揮がどうこうではない、まず自分が逃げたかったのだ
円は軍が方々に逃げていくのを確認し、呆然とするヤオの所に歩いて戻って仮面を外した
「あっきれた奴じゃの‥」としかヤオも云い様が無い、援護する所かやる事もなかった
「どうかな、短時間で引いてくれたし、手持ち武器も壊れた、続けてたら危なかったと思う」
「そじゃな」
実際相手の数に比して円が倒した、戦闘不能にした数は少ない、二百名弱、戦闘時間も十四分、それで撤退「してくれた」のだ無論死者ゼロで
「兎に角、一旦離れましょう」
「うむ」と二人は戦場を離脱
更に5分後、インド側に引いて周囲自然に隠れて待機した円らにフィルが合流する
「‥終っちゃった?」
「だね」
その後一向も同じ場所で野営しつつ、再侵攻の類も監視したが「次」は起こらなかった
ヤオも「うむ、略本道に戻った」と云った事でこの地を離れたのである
その為、更に後から来る本体にも向かう、そうして同じ様に遠目から探査を掛けるが、そこでも不明確だった
「確かに僅かに何かを感じるのだが‥」
「予知は?」
「変わりない‥コレは困ったのう」
「干渉して動かした、なら、やっぱり指揮官じゃないの?」
「むう、だとは思うのだが、魔の気配、予知に出てこない何なんだこれは‥」
「此処にも居ない??」
そうフィルにも云われてヤオも混乱というか迷った、ここまで直前まで、相手に近い所に居て不確定、且つ誰に取り付いているのか分らないというのも初だ
本来なら自身の特殊能力のみを信じて動けば良いのだが自身にも、その能力自体に懐疑的に成らざる得ない
「何か別の要素があるのか?妨害でもされているのか?」
「ウチの頭がポンコツにでもなったのか?」
そういう疑念や迷いだ
そして不確定、且つどこに、誰に魔が干渉して動かしているのか、それが明確でもないのに、デタラメに追い出しを掛ける事も出来ない
目の前を軍隊が通り過ぎていく、その隊列の最後尾を見送りながら、必死に集中して探す、そして僅かな「力」の気配を掴んだ
「む!?」と反射的に声が出て正面、遠くを見た
「分ったの??」
「ああ!こっちだ!」と即、ヤオは北西に向かって飛んだ
ヤオ、フィルは飛翔しながら離れている分身を通し、円にも説明する、ただ、フィルには半分しか分らなかったが
何しろ、過去にあった、フィルが使徒に成る前の事件の繋がりだから
「分らんハズじゃ、干渉ではあるが、やってるのは「向こう側」じゃない直接でもない」
「乗り移ってどうこうじゃない、歴史分岐に出て、相手が分らん、それが可能なのは限定される「奴」じゃ」
「妲己、か」
「じゃろうな」
「けど大丈夫なの?」
そう、円の云った通り、妲己の力はまだ不確定な部分が多い、その上、肝心の円は持ち場を離れる事が出来ない、既に分担してしまっている
そして過去に云った事「交渉の余地あり」も今回に限っては無理だろう、更にフィルが相手出来る相手なのか、という事
「む~、仕方無い、円、そっちの分身を消すウチも臨戦態勢で挑む必要がある、力が減ったままでは不味い、一旦戻すぞ」
「ええ」
「こっちが片付いたら直ぐ言葉を飛ばして合図するギリギリまで相手軍と事を構えるな」
「分った、そっちも気をつけて」
そうして会話出来る環境を切って、そのままフィルにも説明する
「今回の相手は魔側ではない、単純な武力勝負でない事もある、かく乱戦法に注意しろ」
「わ、わかった」
としたが、正直フィルに兵法やかく乱戦法の具体例、対処法を伝えようが無い、注意しろ、としか云い様が無い
円とは違い、戦い、場数が多くなく臨機応変な対応は出来ない
そこから五分くらいだろうか、ヤオは丘の上、岩と草の荒地の高台にソレを発見して降り立った、略同時、棒を出して構える
予想通り、相手は女「妲己」だったが、相手も少々驚いていた様だ
「へぇ‥呼んだつもりも無いのだけれど‥よく気がついたわね?ヤオだったかしら?」と
「左様。無駄だと思うが一応聞く、北方民族を操って歴史干渉を起こしたのは貴様だな、直ぐこんな事は止めよ」
「フ‥、止めてもあまり意味は無いわよ、もうこの流れは止まらない、そもそも私が動かしたのはもっと上だもの、あの軍は操られているのではない、人、もっと上からの命令で動いている」
「‥やはりか。だが、何れにしろお主にはお灸が必要だな」
「クク‥知っているわよ。貴女武力はそこいらの兵士レベルでしょ?どう私とやり合うの?」
妲己は薄ら笑いで腰の物に手を掛けた、略同時だろう、後ろに居たフィルが瞬間移動でもしたかの様な速度で妲己とヤオの間に立った。それで妲己とフィルが対峙して明らかに不快な顔を見せた
「話しには少し聞いたが、ソイツが新たな使徒か‥」
「云っとくがフィルは強いぞ」
「グ‥」
おそらく妲己も相手の力を知る術はあるのか、動物的感なのか、それが嘘でない事は即座に察した、だから歯噛みして唸った
「何者だ‥、聖でも魔でもない実体があるくせに異常な力だ、かと云って単純に人間の選抜された使徒でもない‥」
「魔族と人間のハーフらしいよ」
「かなりの高級種とのな」
妲己はそこで、平静を取り繕い武器から手を離した
「フン‥まあいい、今回の私の役目はもう、終っている貴女達と戦う意味も無いわ」
「何?‥」
「云ったでしょ、操ったのは上だって。軍隊が此処まで来た以上もう今更命令撤回しても間に合わないし止まらない、既に操作も解いている、転がり始めた巨石は途中で止まらない」
だが、それは円の予想、懸念と略同じ、干渉を止めても止まらない可能性は既に示唆されている
従ってこういう分担をしたのだから、今更驚く事ではない、だからヤオは続けて問う
「が、お主はそれで何の得がある?、アッチに味方しても全く意味がない」
「前に云わなかったかしら?」
「取引、とは言った、が。その内容に見合うものなのか?」
「見合う訳ではないわ、けど、こちらも飲まざる得ない条件もある」
「ほう‥」
「ま、何れにしろ、貴女達に話しても仕方無い、貴女達には何も出来はしないのだから」
そうして妲己はジリジリ下がって距離を取る
勿論、少なくともフィルはこの状況で逃がすつもりもない、何時でも飛び掛れる体勢だ
そしてヤオはこの短い遣り取りで分った事も多くあった、故に「お灸を据える」部分の優先度は下げフィルに明確に動く指示は避けた
もう一つが、現在の状況に置いて1番は反れた歴史と円の事だ
、この際、妲己の事は後、仕切りなおして次の機会でも良い、その為フィルに伝心しながら、こう説明した
「妲己がこちらに仕掛けて来ないなら逃がしてよい」と
「え?でも敵だよね」
「うむ、だが今優先すべきは既に確定しつつある歴史の道を戻す事、それに円を失う訳にもいかない、既に妲己は干渉を止めている、そして彼女と相対する事は二度と無い訳ではない」
「そうだね‥おねぇちゃんのが心配だ」
「そうだ、出来れば妲己も捕らえたいが、あまりここで手間取るのも不味いし、今はそうする意味も薄い」
「わかった」
そういう頭の中での遣り取りあって、フィルも構えたまま、妲己が下がるのに合わせて自身も下がった
それは相手にも分ったのだろう、薄っすら笑って、正面をこちらに向けながらバックジャンプしつつ、飛び離れた
そうしてヤオらもそのまま見送った、口惜しくもあるが、妲己に拘っても全体利益は殆ど無い「今は」これで良い
ヤオは直ぐに轡を返し、妲己とは逆方に飛ぶ、それに続くフィル、距離の関係もあるが一方的に言葉を飛ばして円にも一連の事態を伝える
が、タイミング的には略ギリギリだった、妲己を捨てて、円の側を優先したのは正しい、彼女の側は面前を軍が通過する所だった
ヤオは飛びながらフィルに伝える
「フィル、ウチは先に円の所に跳躍する」
「う、うん、お願い」
略同時、ヤオは懐から指輪の様な物取り出し、人差し指に嵌めて唱えた
「該人的地方,飛行情況」と、それでフィルの面前から「フッ」と消える
次の瞬間に現れたのは円の右隣だった「間に合ったか!」と、丁度円も仮面を付けた所だった
「なんとかね」
「相手は妲己じゃった、だがウチが対峙した時には干渉は解いている、軍の中にも魔の類の気配無しじゃ!」
「つまり、もう私が止めるしか流れを阻む方法は無い、という事ね」
「あるかも知れんが何れにしろもう時間が無い」
「そうね‥まあ、行って来るわ‥」
「ウチも援護はする」
と二人同時に立って平地に飛び出した、つまり軍の前に
何時もの様に交渉等しない、既に道は明らかであるし、相手は更に上から命令を受けてやっているだけの事だ、引けと言って引く訳ではない
円は軽く三度深呼吸して気を充填させた後
問答無用で相手、先頭集団に駆けた
無論相手軍も「な?なんだ!?」としか云い様が無い、いきなり面前に飛び出してきた人間、おそらく女が走って突撃してくる奇襲とすら思わないだろう
円は先頭集団の列、三段目と四段目の間に飛び降りた。同時、爆裂気功で発気して回りの集団30人吹き飛ばした。
そしてその場で一回くるりと横回転しながら、流星錘も両手で引き抜き、前進しながら手前の相手の足を叩いてその場の崩れさせる
「て、敵襲!」と誰かが叫んで、其々個別に槍や弓を構えるが相手が余りにも少数、一人である為全体に状況確認が出来ない、既に混乱の極みだった
それでも其々が槍を構え、逐次的に、条件反射的に、命令どうこうに関係なく円を突きに行くが射程に入る前に手足を叩かれ、次々転がる
数えた訳ではないが相手は軽く三万は居るだろう、が、数が多いだけに、一度混乱すると収拾がつかない
前線のこの戦いの状況が指揮官に伝わったのが円の突撃から7分も後だ
報告を受けた彼も「馬鹿を言うな!」としか云い様が無い、だが、その瞬間正面遠くに「今起こっている事」を確認出来た
円は四方から突き出される槍をかわし、上空へ飛んで逆立ち状態のまま紐を操って地面に居る兵を殴り倒した所だ
降りる手前に軽身功を展開して落下速度を調整しながら更に空で流星錘を前後左右に打って最期にこれを放棄
もう見なくても分る、感触だけで壊れたと判断して素手に切り替える
降りた途端、そのまま低く跳躍し空中で右に高速回転、竜巻の様な旋風脚を叩き込んで相手の騎馬も5人落馬させる
着地と同時、クロスブロックの構えで集気法で回りから気を集める、ここで動きが止まり円は捕まる。周囲一斉に6本の槍と無数の矢を同時に突き立てられた
「やった!?」と言うより「当った!」だろう
だが、その喜びすら次の瞬間には恐怖に変わる。兵らの持っていた槍が突き立てたまま折れたのだ
そして矢も円の体に通らず、枯れ木枝の様にバラバラと落ちる、そう、硬気功、たかが槍等早々通らない
これで周囲兵は円を中心に後ずさりガチガチ震えて顔面蒼白、個別に逃げ出したのだ
一部始終を見た、見てしまった指揮官も思わず叫んだ
「後退!、撤退!」と、指揮がどうこうではない、まず自分が逃げたかったのだ
円は軍が方々に逃げていくのを確認し、呆然とするヤオの所に歩いて戻って仮面を外した
「あっきれた奴じゃの‥」としかヤオも云い様が無い、援護する所かやる事もなかった
「どうかな、短時間で引いてくれたし、手持ち武器も壊れた、続けてたら危なかったと思う」
「そじゃな」
実際相手の数に比して円が倒した、戦闘不能にした数は少ない、二百名弱、戦闘時間も十四分、それで撤退「してくれた」のだ無論死者ゼロで
「兎に角、一旦離れましょう」
「うむ」と二人は戦場を離脱
更に5分後、インド側に引いて周囲自然に隠れて待機した円らにフィルが合流する
「‥終っちゃった?」
「だね」
その後一向も同じ場所で野営しつつ、再侵攻の類も監視したが「次」は起こらなかった
ヤオも「うむ、略本道に戻った」と云った事でこの地を離れたのである
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
陸のくじら侍 -元禄の竜-
陸 理明
歴史・時代
元禄時代、江戸に「くじら侍」と呼ばれた男がいた。かつて武士であるにも関わらず鯨漁に没頭し、そして誰も知らない理由で江戸に流れてきた赤銅色の大男――権藤伊佐馬という。海の巨獣との命を削る凄絶な戦いの果てに会得した正確無比な投げ銛術と、苛烈なまでの剛剣の使い手でもある伊佐馬は、南町奉行所の戦闘狂の美貌の同心・青碕伯之進とともに江戸の悪を討ちつつ、日がな一日ずっと釣りをして生きていくだけの暮らしを続けていた……
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
京の刃
篠崎流
歴史・時代
徳川三代政権頃の日本、天谷京という無名浪人者の放浪旅から始まり遭遇する様々な事件。 昔よくあった、いわゆる一話完結テレビドラマの娯楽チャンバラ時代劇物みたいなものです、単話+長編、全11話
No One's Glory -もうひとりの物語-
はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `)
よろしくお願い申し上げます
男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。
医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。
男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく……
手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。
採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。
各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した……
申し訳ございませんm(_ _)m
不定期投稿になります。
本業多忙のため、しばらく連載休止します。
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
北武の寅 <幕末さいたま志士伝>
海野 次朗
歴史・時代
タイトルは『北武の寅』(ほくぶのとら)と読みます。
幕末の埼玉人にスポットをあてた作品です。主人公は熊谷北郊出身の吉田寅之助という青年です。他に渋沢栄一(尾高兄弟含む)、根岸友山、清水卯三郎、斎藤健次郎などが登場します。さらにベルギー系フランス人のモンブランやフランスお政、五代才助(友厚)、松木弘安(寺島宗則)、伊藤俊輔(博文)なども登場します。
根岸友山が出る関係から新選組や清河八郎の話もあります。また、渋沢栄一やモンブランが出る関係からパリ万博などパリを舞台とした場面が何回かあります。
前作の『伊藤とサトウ』と違って今作は史実重視というよりも、より「小説」に近い形になっているはずです。ただしキャラクターや時代背景はかなり重複しております。『伊藤とサトウ』でやれなかった事件を深掘りしているつもりですので、その点はご了承ください。
(※この作品は「NOVEL DAYS」「小説家になろう」「カクヨム」にも転載してます)
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
三国志〜終焉の序曲〜
岡上 佑
歴史・時代
三国という時代の終焉。孫呉の首都、建業での三日間の攻防を細緻に描く。
咸寧六年(280年)の三月十四日。曹魏を乗っ取り、蜀漢を降した西晋は、最後に孫呉を併呑するべく、複数方面からの同時侵攻を進めていた。華々しい三国時代を飾った孫呉の首都建業は、三方から迫る晋軍に包囲されつつあった。命脈も遂に旦夕に迫り、その繁栄も終止符が打たれんとしているに見えたが。。。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる