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早すぎる乱
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ここで円は借り家を借りて滞在する方針を見せた、理由は単純である
「王朝も成立して政も定まっているみたいだし、学もそこそこあるぽいから」という事、要するに興味と趣味の対象があって乱が無い事だ
ただヤオ的には割りと歓迎する事態だったとも云える適当に三人で入った地元料理店での「食い物」である
「む!!」
「??」
「辛い!」
「そこなの‥」
カリーに代表される様にインドは香辛料が豊富で大体何の料理を食っても辛い、尤もカリーという名称も多種多様なスパイス料理の極一部の調理法、表現でしかないが
「で?円はここで暫く生活するとして、どのくらいかの?」
「んー、なんともいえないけど一年以内て事はないわね、学べそうな学もそこそこあるし、何にしても習得に一定の時間は掛かると、思う」
「んじゃ、ウチも一旦上に戻るか回収した魔を届けて報告せんとな」
「オッケー」
「フィルは?」
「そーねー、折角だから一緒に勉強する?何か仕事、て訳にもいかないし」
「うん」
グプタ朝の都パータリプトラに住み始めるが先に述べた通り、この時期のインドは比較的安定している、この土地の歴史も大体、外からの流入や外敵、或いは内乱で国の状況や王がコロコロ変わる為常時不安定が多い
何しろインドも、マウリヤ朝滅亡から前180年~約500年の分裂状態が続く土地でそれが一時収まった時代、ある意味「丁度良い時期に来た」という事情がある
特に文、教、芸術の普及始めの頃で円の趣味、興味面でもうってつけだった
ナーランダ僧院等も建立されおりヒンドゥー教発展の初期で学ぶべきモノは多々あったということ
そこで円らは地元家を拠点にしながら料理店等で軽く働きつつ地元調理法も覚えた、年単位で移動しつつ働き先も変えて土地に普及し始めた、教、文も覚えていった
ヤオが再び戻って3人になったのが早く離れてから二ヵ月後、そのままホントに長期滞在になった、円とフィルはやる事も多いしヤオは兎に角料理が好きだった
この頃に成ると円のキャンプ料理も家庭料理から、プロのレベルまでなっており態々外に食べに行く必要もなく家で略なんでも調理が可能だった
円自身もフィルやヤオが「美味い美味い」と食べているのを見て楽しくなっていた
「他人の為に美味しい物を作るていうのは案外楽しいなぁ」
そう思った、ついでに云えば自分で作れた方が安上がりでもある
円が文教の書物から文字と文学、一部芸術を覚える間に何時の間にかフィルもサンスクリット文学を習得していた特別円が指導した訳ではないのだが何時もどおり家で書物を読み漁るついでにフィルもなんとなく読んで覚えた
この辺りでフィルも何時の間にかどこぞから路銀を稼ぐようになっていて、ちょくちょく外に出ては色々調達してくる
これは円の世界の旅でも有用だった「家庭教師」である、そこまでちゃんとしたものではないが、アチコチの同年くらいのあまりに裕福でない子らに文学を教えて、親御さんから食物や僅かながら駄賃を貰う事
フィルも欧州の多くの地域の読み書きが出来る為、他の部分でも有用だった。北から流れて来た人間や、遠方移動の商人の類の通訳等、広い地域の言語が出来るだけでもかなり需要があった
別に円はフィルに関しては何か働けとは云わず自由にさせていたのだが、アチコチ当人が遊び回っている間に、この様な事になった
「優秀ね」
「優秀じゃな」
「なんとなく、暇だったし、偶然だけどアチコチの言葉が使えると自然と呼ばれる感じ?」
「確かに貴重よね、言葉が出来ないと商業も成り立たないし、世は人の世界だしね」
「コミュニケーションは全ての一歩目だからのう」
「ところで、今後は?」
「んー、特に何も見えんな、この土地もかなり先まで乱の類は無いだろう」
「かなり先までとは?」
「確定ではないので何とも云えんが数十年くらいかの」
「そう、ところでヤオはこっちに?」
「正直、新たな使徒を探す必要も無いしな、暇と云えば暇だ、干渉が起こらないならそれはそれでいい」
「フィルもふつーに強いし、というか完成させているというか」
「それでもまあ、なんらかの武具は要ると思う」
そこで円も腕を組んで考え込んだ
「んー、聞いただけ、なんだけど前回のやり方を見る限り暗器やってもいいかも、接近戦は多分問題ないし」
「あんき?」
「流星錘とか、飛び道具とか」
「円おえねちゃんのやってたやつ?」
「そうそう、剣の類だとどうしてもケガの具合が大きいし」
そうしてフィルは接近戦では元々持っているナイフの変わりに扱いが近く、殺傷の部分を排除した短い棒、隠し持てる「寸鉄」を与え、所持し
遠距離。持って歩いて不審がられない事と、投擲のコントロールがやたら良いとの事から今で言う銭投「羅漢銭」や小さい鉛球を指で弾いて投げる「指弾」等をチマチマ練習する事になった
銅のコインの類を直接、或いは周囲を鋭利に削った物を相手に投げ、切ったり打撃したりして戦力を奪うものだ
元々暗器だけに殺傷を目的としたものだがこれもコントロール出来る為である、急所を外せばまず死ぬ事もないという所からだ
滞在についてはやはり同じ所に長期という訳にはいかない、見た目が変わらない事はデメリットではある、目立つ事も出来ないし精精目立たない様に生活するとしても数年くらいが限度だろう
逆に言えば記録は無く、記憶に残る部分が問題な訳で目立たない様に行動し、同じ国でも地域を移動して転居すれば、まず、問題には成らない
例えば現代、日本の様に広くも無い国土だとしても個人的繋がりが無い他人なら一生で二回会う事は無いし、そもそも相手も覚えていない事の方が多い
人種が同じなら余程特徴が無ければ覚えないだろう、だから「知名度」に気をつければそれ程問題は無いとも言える
特にインドは当時、王朝が一応出来て最盛期ではあるが、アチコチに小州があり、完全な統一国家という訳ではないし、収まったと言っても今で言うインドの北半分だけだ、そこから再び割拠になるのだが、それはまだあとの話しだ
そうして円らは、なんだかんだ州を跨いで転居しながら此処での生活を続けた、割り合い、落ち着いた、穏やかだったが、それが反転したのが更に五年後。国の状況がどうこうでもあり「お役目」の部分でもある
「これは首都に戻った方がええの」とヤオが言った事だ
「もしかして‥予知?」
「うむ、だが、なんだろうなこれ?急に道が出てきた」
「何時もはそうじゃないの?」
「道を歩いて近づくのと同じで始めはモヤモヤとしたもん、風景が出る、だから先に何となくあるな、という感じで早い段階で分るの事もあるが、今回に限って目の前にいきなり出て来た感じだ」
「何時もの干渉で間違いないのかしら?」
「うむ」
「という事は、急な計画とかなのかな?」
「多分な」
「分った、とりあえず都に行こう」
「なるべく急ぎだな」
と其々荷を纏め始める、首都への道の中途で、干渉の内容を聞き、急に出て来た分岐の割り、大きな物である事も分った
移動の中途でもヤオは分った事を説明しながら語り円も聞きながら対策を相談した
「本来なら、この王朝はまだ暫く安泰のハズだったがそれが数十年縮まる事になる」
「つまりかなり先の出来事が手前に来るという事ね」
「左様、グプタ朝は後年北方民の流入から崩れが始まるのだが、それが大幅に手前に来る」
「元々インドはそれで支配体制が変わるのが多かったわね」
「まあの、中国北でもそうだが、中央アジアの騎馬民族は大抵強いしの」
「ん?という事は干渉は北方民族側?」
「たぶん」
「たぶん‥か」
「まあ、時間はまだありそうだし、追々ハッキリしてくるだろう」
「わかった」
そうして一向は再び首都に戻って適当な宿を取ったが、追々、の通り、内容も明らかに成ってくる
「時間」はあると思われたが、あまり宜しくは無い内容でもあった、そして、既に事は動き始まっていた
円らが首都に入って10日後には王朝側で軍事の用意が始まり兵も集められる、街でも動揺が起こり、噂から状況の動きの早さを掴む事になる
北から大規模な軍の移動が起こり南下の姿勢、これに対応して王朝も軍備が整えられる、一方的な相手側の行動に対応して、防衛という流れだ
「本来」ならば、この争いはそれ程問題無いが、乱れの始まり、と言った通り、ここからインド内あちこち分かれている州での内乱に発展し長い年月を掛けて、衰退していく
その切っ掛けの最初でもあるのだが、ここでヤオの予想予知はかなり深刻な事態と捉えていた
「本来なら防衛に成功するのだが、敗れる道もある、そこから内部争いも劇的に進む」
「戦争の結果すら変わる程の、という事ね」
「うむ、これは干渉も問題だが、後の文、医にも深刻なダメージが出る」
「ええ?!」
「ここからグプタ王朝は長い安定期で西から文化流入し、天文、文学、医療で劇的発展するがこの干渉を許すとそれらも流れる事になる」
「‥成る程、それは責任重大ね」
「ただまあ、こちらのメンツと、道は多くない事、基本的に北からの行動を抑えれば良いので、ややこしくはない」
「そうね、先の分断とか別働みたいのが無いなら単純ね」
「うむ、だが今回は相手の規模がな」
「うーん‥軍隊丸ごと?よね?漢の光武帝の時と似てるのかしら、指揮官をどうにかすれば良い?」
「うーん‥」とそのままヤオも瞑想する
「いや、向こうの代表者界隈だろう」
「王様の類?」
「ここは残念ながらハッキリせんな、どうも一人、という訳でもなさそうだが、それもハッキリしない」
「そっか。まあ仕方無いね、兎に角行こう」
「うむ」
と一向は当日には支度を整え、夜半には旅立った「時間的猶予」は一週間はあるとの事だったが余裕という程でもない
その為、直ぐに動いたのだが、現地、戦場の予定地とされた北の石ばかりの平地に午前、辿りついて、予定外の事が起こる
「なに?!」とヤオが驚いていきなり発した事で
「どうしたの?」
「‥予想予知が盛大にズレた、いや、道の手前にいきなり新しい物が来た」
「え?!」
「どういう事?」
「グプタ朝の軍と北方異民族、五日後、ここで当たるハズだったのだが大幅に日時が狂った‥」
「?!」
「い、何時?!」
「数時間後には相手が此処を通過する」
「相手が急な変更した、という事なのかしら‥」
「新たな予知は?」
「そのまま異民族軍は南進、首都に近い所でおそらく決戦、とある」
「不味いわね‥インド側はまだ準備途中でしょ?」
「うむ、そして市街戦に近くなりインド側は大敗退、そのまま、王朝も無くなる道もある‥」
「く‥何でいきなり‥もう相手側が動いているという事は、相手の指揮官の類の干渉を今から止めても、元に戻るかどうか微妙な所ね‥」
「どうするの?」
「まあ落ち着け」とヤオも再び瞑想する。が
「むう、円の云う通りじゃな‥、既に道が確定されつつある、ウチらが相手の干渉、乗り移って操作してる奴を倒してもおそらく結果があまり変わらん‥」
これには流石のヤオも苦い顔をせざる得ない
「何れにしても向こうの干渉は止める、が、本来の歴史に戻すにはあまり手が無いの‥」
「本来の歴史はどうなの?」
「形としては同じだが、どっちがどう勝つという事もなく膠着しながら長期へ、それでどっちも疲弊するが、その結果、崩れるのはインド王朝という事になる」
「‥」円も流石に返す言葉が無い、数分、だろうか、考慮した後、大胆な手を提案した
「なら‥北方民族のこの南進を無かった事にしてしまえば‥」
「え?!」
「どうするつもりじゃ?」
「本来の歴史、ではこの戦いは無いのでしょ?」
「うむ‥」
「なら、向こうの干渉を止めるはヤオとフィルに、止まらない軍隊の方は私が止める」
「‥正気か?」
「本来無かった歴史、ならこれが丸ごと無かった事としても問題ないハズ、撤退させるか侵攻不可能にする、すれば後の戦いも止まる」
「確かにそうじゃが‥かなり難しいぞ‥」
「そうねぇ‥何万居るのか知らないけど、ある程度倒して殺すのも不味いし、けどまあ‥今回が初めてでもないし、二割くらい削れば軍事では基本撤退でしょ、そのくらいならなんとかなる、かも?」
「そうかなぁ‥」
「いや、だが、確かに余り手が無いし、基本的にユダヤ戦争の時と条件は似ては居るか」
「ええ、あの時の20倍くらい相手して倒せば戦闘継続も不可能でしょ、やれなくはない、と思う」
「いくら円おねぇちゃんでも無茶なんじゃ‥」
「んー‥時間的余裕が無い、のも事実じゃしな」
「いえ、でもギリギリまで待つわ、だからフィルとヤオは干渉の大元を探して、そして取り除けて止まるならそれでいいし、私も動かなくて済む」
「なるほど、保険って事だね」
「そそ、それで止まらなければ、私がやる」
「分った、今はそれしかないみたいだね」
「問題は更に道の変更が有った場合?」
「いや、それは無かろう、有ったとしても、此処を止めればこの後も動かん訳じゃし」
「なるほど~」
「そういう事、この流れ自体遮断すれば水も下流に行かない、そしてこの水は無くなっても歴史に影響は無い、ただ遮断するか押し戻せばいい」
「うむ」
「という訳で慌しいけど二人共、御願い」
「う、うん」
そうして最低限の確認事項だけ伝え、円はその場で脇の岩場に隠れ待機、ヤオは分身して両者に置き、フィルと共に影響の大元を探る、取り除く為に北に駆けた
「王朝も成立して政も定まっているみたいだし、学もそこそこあるぽいから」という事、要するに興味と趣味の対象があって乱が無い事だ
ただヤオ的には割りと歓迎する事態だったとも云える適当に三人で入った地元料理店での「食い物」である
「む!!」
「??」
「辛い!」
「そこなの‥」
カリーに代表される様にインドは香辛料が豊富で大体何の料理を食っても辛い、尤もカリーという名称も多種多様なスパイス料理の極一部の調理法、表現でしかないが
「で?円はここで暫く生活するとして、どのくらいかの?」
「んー、なんともいえないけど一年以内て事はないわね、学べそうな学もそこそこあるし、何にしても習得に一定の時間は掛かると、思う」
「んじゃ、ウチも一旦上に戻るか回収した魔を届けて報告せんとな」
「オッケー」
「フィルは?」
「そーねー、折角だから一緒に勉強する?何か仕事、て訳にもいかないし」
「うん」
グプタ朝の都パータリプトラに住み始めるが先に述べた通り、この時期のインドは比較的安定している、この土地の歴史も大体、外からの流入や外敵、或いは内乱で国の状況や王がコロコロ変わる為常時不安定が多い
何しろインドも、マウリヤ朝滅亡から前180年~約500年の分裂状態が続く土地でそれが一時収まった時代、ある意味「丁度良い時期に来た」という事情がある
特に文、教、芸術の普及始めの頃で円の趣味、興味面でもうってつけだった
ナーランダ僧院等も建立されおりヒンドゥー教発展の初期で学ぶべきモノは多々あったということ
そこで円らは地元家を拠点にしながら料理店等で軽く働きつつ地元調理法も覚えた、年単位で移動しつつ働き先も変えて土地に普及し始めた、教、文も覚えていった
ヤオが再び戻って3人になったのが早く離れてから二ヵ月後、そのままホントに長期滞在になった、円とフィルはやる事も多いしヤオは兎に角料理が好きだった
この頃に成ると円のキャンプ料理も家庭料理から、プロのレベルまでなっており態々外に食べに行く必要もなく家で略なんでも調理が可能だった
円自身もフィルやヤオが「美味い美味い」と食べているのを見て楽しくなっていた
「他人の為に美味しい物を作るていうのは案外楽しいなぁ」
そう思った、ついでに云えば自分で作れた方が安上がりでもある
円が文教の書物から文字と文学、一部芸術を覚える間に何時の間にかフィルもサンスクリット文学を習得していた特別円が指導した訳ではないのだが何時もどおり家で書物を読み漁るついでにフィルもなんとなく読んで覚えた
この辺りでフィルも何時の間にかどこぞから路銀を稼ぐようになっていて、ちょくちょく外に出ては色々調達してくる
これは円の世界の旅でも有用だった「家庭教師」である、そこまでちゃんとしたものではないが、アチコチの同年くらいのあまりに裕福でない子らに文学を教えて、親御さんから食物や僅かながら駄賃を貰う事
フィルも欧州の多くの地域の読み書きが出来る為、他の部分でも有用だった。北から流れて来た人間や、遠方移動の商人の類の通訳等、広い地域の言語が出来るだけでもかなり需要があった
別に円はフィルに関しては何か働けとは云わず自由にさせていたのだが、アチコチ当人が遊び回っている間に、この様な事になった
「優秀ね」
「優秀じゃな」
「なんとなく、暇だったし、偶然だけどアチコチの言葉が使えると自然と呼ばれる感じ?」
「確かに貴重よね、言葉が出来ないと商業も成り立たないし、世は人の世界だしね」
「コミュニケーションは全ての一歩目だからのう」
「ところで、今後は?」
「んー、特に何も見えんな、この土地もかなり先まで乱の類は無いだろう」
「かなり先までとは?」
「確定ではないので何とも云えんが数十年くらいかの」
「そう、ところでヤオはこっちに?」
「正直、新たな使徒を探す必要も無いしな、暇と云えば暇だ、干渉が起こらないならそれはそれでいい」
「フィルもふつーに強いし、というか完成させているというか」
「それでもまあ、なんらかの武具は要ると思う」
そこで円も腕を組んで考え込んだ
「んー、聞いただけ、なんだけど前回のやり方を見る限り暗器やってもいいかも、接近戦は多分問題ないし」
「あんき?」
「流星錘とか、飛び道具とか」
「円おえねちゃんのやってたやつ?」
「そうそう、剣の類だとどうしてもケガの具合が大きいし」
そうしてフィルは接近戦では元々持っているナイフの変わりに扱いが近く、殺傷の部分を排除した短い棒、隠し持てる「寸鉄」を与え、所持し
遠距離。持って歩いて不審がられない事と、投擲のコントロールがやたら良いとの事から今で言う銭投「羅漢銭」や小さい鉛球を指で弾いて投げる「指弾」等をチマチマ練習する事になった
銅のコインの類を直接、或いは周囲を鋭利に削った物を相手に投げ、切ったり打撃したりして戦力を奪うものだ
元々暗器だけに殺傷を目的としたものだがこれもコントロール出来る為である、急所を外せばまず死ぬ事もないという所からだ
滞在についてはやはり同じ所に長期という訳にはいかない、見た目が変わらない事はデメリットではある、目立つ事も出来ないし精精目立たない様に生活するとしても数年くらいが限度だろう
逆に言えば記録は無く、記憶に残る部分が問題な訳で目立たない様に行動し、同じ国でも地域を移動して転居すれば、まず、問題には成らない
例えば現代、日本の様に広くも無い国土だとしても個人的繋がりが無い他人なら一生で二回会う事は無いし、そもそも相手も覚えていない事の方が多い
人種が同じなら余程特徴が無ければ覚えないだろう、だから「知名度」に気をつければそれ程問題は無いとも言える
特にインドは当時、王朝が一応出来て最盛期ではあるが、アチコチに小州があり、完全な統一国家という訳ではないし、収まったと言っても今で言うインドの北半分だけだ、そこから再び割拠になるのだが、それはまだあとの話しだ
そうして円らは、なんだかんだ州を跨いで転居しながら此処での生活を続けた、割り合い、落ち着いた、穏やかだったが、それが反転したのが更に五年後。国の状況がどうこうでもあり「お役目」の部分でもある
「これは首都に戻った方がええの」とヤオが言った事だ
「もしかして‥予知?」
「うむ、だが、なんだろうなこれ?急に道が出てきた」
「何時もはそうじゃないの?」
「道を歩いて近づくのと同じで始めはモヤモヤとしたもん、風景が出る、だから先に何となくあるな、という感じで早い段階で分るの事もあるが、今回に限って目の前にいきなり出て来た感じだ」
「何時もの干渉で間違いないのかしら?」
「うむ」
「という事は、急な計画とかなのかな?」
「多分な」
「分った、とりあえず都に行こう」
「なるべく急ぎだな」
と其々荷を纏め始める、首都への道の中途で、干渉の内容を聞き、急に出て来た分岐の割り、大きな物である事も分った
移動の中途でもヤオは分った事を説明しながら語り円も聞きながら対策を相談した
「本来なら、この王朝はまだ暫く安泰のハズだったがそれが数十年縮まる事になる」
「つまりかなり先の出来事が手前に来るという事ね」
「左様、グプタ朝は後年北方民の流入から崩れが始まるのだが、それが大幅に手前に来る」
「元々インドはそれで支配体制が変わるのが多かったわね」
「まあの、中国北でもそうだが、中央アジアの騎馬民族は大抵強いしの」
「ん?という事は干渉は北方民族側?」
「たぶん」
「たぶん‥か」
「まあ、時間はまだありそうだし、追々ハッキリしてくるだろう」
「わかった」
そうして一向は再び首都に戻って適当な宿を取ったが、追々、の通り、内容も明らかに成ってくる
「時間」はあると思われたが、あまり宜しくは無い内容でもあった、そして、既に事は動き始まっていた
円らが首都に入って10日後には王朝側で軍事の用意が始まり兵も集められる、街でも動揺が起こり、噂から状況の動きの早さを掴む事になる
北から大規模な軍の移動が起こり南下の姿勢、これに対応して王朝も軍備が整えられる、一方的な相手側の行動に対応して、防衛という流れだ
「本来」ならば、この争いはそれ程問題無いが、乱れの始まり、と言った通り、ここからインド内あちこち分かれている州での内乱に発展し長い年月を掛けて、衰退していく
その切っ掛けの最初でもあるのだが、ここでヤオの予想予知はかなり深刻な事態と捉えていた
「本来なら防衛に成功するのだが、敗れる道もある、そこから内部争いも劇的に進む」
「戦争の結果すら変わる程の、という事ね」
「うむ、これは干渉も問題だが、後の文、医にも深刻なダメージが出る」
「ええ?!」
「ここからグプタ王朝は長い安定期で西から文化流入し、天文、文学、医療で劇的発展するがこの干渉を許すとそれらも流れる事になる」
「‥成る程、それは責任重大ね」
「ただまあ、こちらのメンツと、道は多くない事、基本的に北からの行動を抑えれば良いので、ややこしくはない」
「そうね、先の分断とか別働みたいのが無いなら単純ね」
「うむ、だが今回は相手の規模がな」
「うーん‥軍隊丸ごと?よね?漢の光武帝の時と似てるのかしら、指揮官をどうにかすれば良い?」
「うーん‥」とそのままヤオも瞑想する
「いや、向こうの代表者界隈だろう」
「王様の類?」
「ここは残念ながらハッキリせんな、どうも一人、という訳でもなさそうだが、それもハッキリしない」
「そっか。まあ仕方無いね、兎に角行こう」
「うむ」
と一向は当日には支度を整え、夜半には旅立った「時間的猶予」は一週間はあるとの事だったが余裕という程でもない
その為、直ぐに動いたのだが、現地、戦場の予定地とされた北の石ばかりの平地に午前、辿りついて、予定外の事が起こる
「なに?!」とヤオが驚いていきなり発した事で
「どうしたの?」
「‥予想予知が盛大にズレた、いや、道の手前にいきなり新しい物が来た」
「え?!」
「どういう事?」
「グプタ朝の軍と北方異民族、五日後、ここで当たるハズだったのだが大幅に日時が狂った‥」
「?!」
「い、何時?!」
「数時間後には相手が此処を通過する」
「相手が急な変更した、という事なのかしら‥」
「新たな予知は?」
「そのまま異民族軍は南進、首都に近い所でおそらく決戦、とある」
「不味いわね‥インド側はまだ準備途中でしょ?」
「うむ、そして市街戦に近くなりインド側は大敗退、そのまま、王朝も無くなる道もある‥」
「く‥何でいきなり‥もう相手側が動いているという事は、相手の指揮官の類の干渉を今から止めても、元に戻るかどうか微妙な所ね‥」
「どうするの?」
「まあ落ち着け」とヤオも再び瞑想する。が
「むう、円の云う通りじゃな‥、既に道が確定されつつある、ウチらが相手の干渉、乗り移って操作してる奴を倒してもおそらく結果があまり変わらん‥」
これには流石のヤオも苦い顔をせざる得ない
「何れにしても向こうの干渉は止める、が、本来の歴史に戻すにはあまり手が無いの‥」
「本来の歴史はどうなの?」
「形としては同じだが、どっちがどう勝つという事もなく膠着しながら長期へ、それでどっちも疲弊するが、その結果、崩れるのはインド王朝という事になる」
「‥」円も流石に返す言葉が無い、数分、だろうか、考慮した後、大胆な手を提案した
「なら‥北方民族のこの南進を無かった事にしてしまえば‥」
「え?!」
「どうするつもりじゃ?」
「本来の歴史、ではこの戦いは無いのでしょ?」
「うむ‥」
「なら、向こうの干渉を止めるはヤオとフィルに、止まらない軍隊の方は私が止める」
「‥正気か?」
「本来無かった歴史、ならこれが丸ごと無かった事としても問題ないハズ、撤退させるか侵攻不可能にする、すれば後の戦いも止まる」
「確かにそうじゃが‥かなり難しいぞ‥」
「そうねぇ‥何万居るのか知らないけど、ある程度倒して殺すのも不味いし、けどまあ‥今回が初めてでもないし、二割くらい削れば軍事では基本撤退でしょ、そのくらいならなんとかなる、かも?」
「そうかなぁ‥」
「いや、だが、確かに余り手が無いし、基本的にユダヤ戦争の時と条件は似ては居るか」
「ええ、あの時の20倍くらい相手して倒せば戦闘継続も不可能でしょ、やれなくはない、と思う」
「いくら円おねぇちゃんでも無茶なんじゃ‥」
「んー‥時間的余裕が無い、のも事実じゃしな」
「いえ、でもギリギリまで待つわ、だからフィルとヤオは干渉の大元を探して、そして取り除けて止まるならそれでいいし、私も動かなくて済む」
「なるほど、保険って事だね」
「そそ、それで止まらなければ、私がやる」
「分った、今はそれしかないみたいだね」
「問題は更に道の変更が有った場合?」
「いや、それは無かろう、有ったとしても、此処を止めればこの後も動かん訳じゃし」
「なるほど~」
「そういう事、この流れ自体遮断すれば水も下流に行かない、そしてこの水は無くなっても歴史に影響は無い、ただ遮断するか押し戻せばいい」
「うむ」
「という訳で慌しいけど二人共、御願い」
「う、うん」
そうして最低限の確認事項だけ伝え、円はその場で脇の岩場に隠れ待機、ヤオは分身して両者に置き、フィルと共に影響の大元を探る、取り除く為に北に駆けた
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榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
北武の寅 <幕末さいたま志士伝>
海野 次朗
歴史・時代
タイトルは『北武の寅』(ほくぶのとら)と読みます。
幕末の埼玉人にスポットをあてた作品です。主人公は熊谷北郊出身の吉田寅之助という青年です。他に渋沢栄一(尾高兄弟含む)、根岸友山、清水卯三郎、斎藤健次郎などが登場します。さらにベルギー系フランス人のモンブランやフランスお政、五代才助(友厚)、松木弘安(寺島宗則)、伊藤俊輔(博文)なども登場します。
根岸友山が出る関係から新選組や清河八郎の話もあります。また、渋沢栄一やモンブランが出る関係からパリ万博などパリを舞台とした場面が何回かあります。
前作の『伊藤とサトウ』と違って今作は史実重視というよりも、より「小説」に近い形になっているはずです。ただしキャラクターや時代背景はかなり重複しております。『伊藤とサトウ』でやれなかった事件を深掘りしているつもりですので、その点はご了承ください。
(※この作品は「NOVEL DAYS」「小説家になろう」「カクヨム」にも転載してます)
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
三国志〜終焉の序曲〜
岡上 佑
歴史・時代
三国という時代の終焉。孫呉の首都、建業での三日間の攻防を細緻に描く。
咸寧六年(280年)の三月十四日。曹魏を乗っ取り、蜀漢を降した西晋は、最後に孫呉を併呑するべく、複数方面からの同時侵攻を進めていた。華々しい三国時代を飾った孫呉の首都建業は、三方から迫る晋軍に包囲されつつあった。命脈も遂に旦夕に迫り、その繁栄も終止符が打たれんとしているに見えたが。。。
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