混血の守護神

篠崎流

文字の大きさ
上 下
20 / 53

皇帝ネロ

しおりを挟む
二人はゆっくり観光しながら西に向かった。その為、成都付近に着いたのは更に半年後である

円はこの間も兎に角、自己向上に色々考えた。普段は使わないのだが「対魔」としては「百歩神拳」気力の類が有効で逆にこれは燃費が極めて悪い事から、あちこち泊まり歩きながらも、自身の気の上限上乗せの修行に時間を費やした

これは先の修行と同じなのだがもう一つの弱点改善のついでに一つ「仙術」も習得というか運用を変える。「集気」法である、これは元々ある基礎訓練でもあり、周囲の自然や他人から「気」を集める術だ

これを満タン状態から行い、少しづつ自身の許容量を上積みするという座禅からの訓練を毎日繰り返す

更に云えば、先のお役目の様に「使い切り」「ガス欠」からも急速充電が可能であり、ガス欠から動けない!という時間を極端に短縮出来る為だ

なんだかんだ、旅しながら成都に着いた頃にはこれらも「モノ」にしていた、つきそって居たヤオも呆れるばかりである

これは円が「拳武」を極めた所から事情が左程変わらない、もう仙術さえも頂点の近くに居た為習得にそれほど苦労が無いというだけの事だ

知識も技術も極みから難しく成る事は殆ど無い、そういう事だ

成都から少し離れた一般集落、つまり村の類に安い家を借りてそこで暫く住んだ。偶に首都に出て料理食ったり、護衛の類をして気楽に過ごした

ヤオは現地料理が気に入った

「なんだ、このごちゃごちゃした赤いのは」
「マーボー豆腐じゃない?赤いのは唐辛子系の練り物ね」
「ほう!辛い!」
「あ、やっぱ苦手?」
「いや、これはどこでも食った事が無い刺激が堪らん」

という事らしい。要するに、四川料理系の辛めがツボった。面白いので唐辛子粉や現在でいう豆板醤の類を購入して自宅に置いておいたら、おやつ代わりにかじるようになったり、通常の飯にもぶっ掛けて食うようになった。どうやらヤオは辛党らしい

何だかんだ平和で居心地が良いのと円も時々山や山林に入っての修行や、新しい書物なんかを新たに習得して読んでまた数年過ごした

途中ヤオも何日か居なくなったりしたが大抵一週間以内にまた何時の間にか家に戻っているの繰り返しだったが

「まあ、神様だしね、上で用事はあるのだろう」
と特に追求はしなかった

一通り過ごした後、小事はあった。第二代皇帝の即位である、ここから政治が崩れる事は無く、後漢末期まで安定する

何しろ面前に正しい政治、積み上げた結果があるだけに真似てるだけで維持は難しくない

ただ、秦の様に外に、露骨に誰でも分かる失敗や、目だって崩壊していないだけで実際はここから長い時間を掛けて内部から腐敗するのだが、それは当分先の話しである

ある日、そのまま過ごして居た家からまた「ヤオ」が消えたそして三日後戻った後、告げられる
「また、仕事じゃ」であった

そしてこの「お役目」はそれなりに急ぎだった。ヤオは円を抱えて、そのまま現地に跳び向かう事になる

向かった先は再びのヨーロッパだった。円とヤオが再会した「自宅」ルーマニア東まで跳んだが、既にそこに嘗ての家は無く別人の生家である

立派、と言うほどでは無いが、普通の石家に化けている、ここで円もまさかと思った、そう、ここはヨーロッパで最後にクロエ一家に譲ったものだ

勿論、あの家族が残っている訳ではないが、住んでいる一家の庭に居た女性を遠目に見て離れた、近所でその家の人たちの事をそれなりの年齢のお年寄りに聞いた

「ブラントさんかい?、大昔、西から移住してきたらしいが詳しくは知らないねぇ、ただ、ずっと同じ一族だよ」だった

「ま、年月が経ち過ぎているし、詳しくは分らないか」と円も軽く流して離れたが二人に成った所でヤオが教えてくれた

「間違いなく、クロエ嬢の血統じゃよ」
「分るの?!」
「まぁの、問題なく過ごして子、孫へと繋がっている様じゃ」
「そっか~」
「まぁ、政府側に行けば統計やら過去は分るじゃろうが」
「いえ、上手く行ったならいいわ」
「そっか」
「ええ」
「とりあえず、どこかに宿でも取りましょう」
「うむ」

そこから「それなりに急ぎ」から更に西に通常の移動、馬、徒歩、交互に西に向かう、つまり、再びローマである

正直円も驚きである、戻った、とか王朝がまだあるの?ではない、移動しながら得た国の事情である

「うわ~‥」としか言いようが無い、そう、丁度皇帝ネロの統治後期である

宿で自身が集めた前後資料と話を読んではそう云うしか無い程だ、何しろ悪い噂と謀略ではないか?と思われる部分が多い、皇帝になる年齢からライバルや前任者の不可解な死や

複数の妻や母への関係と、これも殺害や周囲人物への不祥事を立てての裁判で幾人も国外退去させたり

気に入った美女の類は「徴集」命令で無理矢理誘拐して置くなどおよそ君主、為政者とは思えない行いが多い

自身が芸術に興が深く、自称「芸術の守護者」等と評し、自ら芸術祭に出て、賞を自分に与えさせたり、いきなりコンサートホールの独断改築、自身の単独リサイタル。宮殿や芸術作品、首都の建築など。兎角やる事が「こうしたい」で全部やる傾向がある

つまり思い立ったらやる、が、それを認めさせる為に権力でも裏でも手段を問わず「必ず実現する」という人物である

だが、一方で政治面や統治では発展や復興で評価も高く。二面性がある、現在も残る公共施設等では彼が着手を始めた物も多い

在位は長くないのだが代表的で個性的な皇帝で非常にインパクトが強い、そして今回のヤオの「お仕事」の内容の通り宗教弾圧者としても有名である

「だが、まあ、問題はそこではない」

ヤオは現地料理のスープを啜りながら云った

「どゆこと?」
「この皇帝がトンデモなのは別にいいし、今後やる事もどうでもいい」
「うん?つまり?」
「ウチらがやるのは資料を逃がす事じゃな」
「?」
「この後、災害があるんじゃが、そこにかこつけて地元聖堂や宗教家を迫害する。で、書やブツも全部叩き潰す」
「ちょ!?ええ?それって、こっちの役目なの?てことは」

「いや、皇帝は元々そうじゃ、裏のやりあいで「操られて」ではない」
「ふむぅ‥」
「問題はドサクサに紛れての下の暴走」
「なるほど、それを防ぐのね」
「うーん、だが、やる事が二つあるんじゃな」
「へ?」
「当然宗教団体が帝国に抵抗しても無駄じゃ、信者らが重要資料を逃がす、持って一部東に逃げる、これを援護する」
「それって魔の側が聖書や資料を邪魔だって?」
「まあ、それもあるかもな、こっちにとってもこういうのは困る何しろ、大宗教だしの、ただこの事件は難しい」
「それは?」

「宗教迫害での一件は寧ろ、公権力側の評価を落とす事であり、そこから反転して、流れが変わり、ネロ自体の失脚に繋がる。従って干渉して防ぐ必要は無い」
「ああ、迫害されて同情されるわけね‥色んな人から」
「そうでは無いが、まあ、それは更に後の話しで別にいい。これは道照らし、予想予知では関わってない」
「ふーん‥ま、それはいいとして、私は何をすれば?護衛??、戦うの?」

「そうじゃ、信徒と書を守り逃がす、んでだな、お主は向こうに潜り込んで貰うのが早い、これは歴史には残る事件じゃが直接お前が関わっても問題ない」
「ああ、裏じゃなくて表でいいのか」
「でだな、ウチの道照らしに寄る分岐は、迫害から逃げる信徒が全員捕まって処刑死亡と、生き残って貴重な資料が別の国にも流れるだが」
「まぁ、そこは単純ね、分った」
「うむ、ただ、難しくはある」
「そうねぇ‥教会側について、直接迫害は防がず参加せず一部、逃げる信徒と資料を守って護衛しながら外へか‥しかも味方の「目」もあるし派手に力を見せられない、と」

「更に云えばだが、追っ手の類に「魔」が混じってても仙術を使いまくっても目立ちすぎるし、相手が一人とも限らん」
「まぁ、そこはそれほど‥仙術と言っても打撃に乗せて出すのが殆どだしイザと成れば、ヤオが前後の記憶を消せるでしょ」
「じゃな、だが、少ないに越した事はない」
「まあ、分ったけど、人員不足感はあるわね‥」

「ウチが参加するにしても、大して戦えんしのう」
「その見た目で戦われても困るけど‥」

ヤオと円はある程度の流れを把握してローマに潜入する。云っても、ふつーに旅人で入れるが。円にとっては二度目だが、これも見て驚きである

「うわ~、デカイ」である

当時は都市に百万と云われ、様々な文化宗教も同時に存在している。ローマ帝国も領土が馬鹿デカイ、地中海中心に周辺を全て領土として抑えている

家は木造と石で分かれているが超、人口密集地で上に伸びて建てられている、つまり、二階とか三階とかの家だのが多い

円は東から西に来るまでに過去「貯蓄」していた金を回収して現地通貨に変えてヤオと共に、首都の宿を借りた

金の便利な所は「どこでも普遍の価値である」という事である
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

殿軍<しんがり>~小説越南元寇録~

平井敦史
歴史・時代
1257年冬。モンゴル帝国の大軍が、当時のベトナム――陳朝大越に侵攻した。 大越皇帝太宗は、自ら軍を率いてこれを迎え撃つも、精強なモンゴル軍の前に、大越軍は崩壊寸前。 太宗はついに全軍撤退を決意。大越の命運は、殿軍を任された御史中将・黎秦(レ・タン)の双肩に委ねられた――。 拙作『ベルトラム王国物語』の男主人公・タリアン=レロイのモデルとなったベトナムの武将・黎輔陳(レ・フー・チャン)こと黎秦の活躍をお楽しみください。 ※本作は「カクヨム」の短編賞創作フェスお題「危機一髪」向けに書き下ろしたものの転載です。「小説家になろう」にも掲載しています。

不屈の葵

ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む! これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。 幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。 本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。 家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。 今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。 家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。 笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。 戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。 愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目! 歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』 ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!

蘭癖高家

八島唯
歴史・時代
 一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。  遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。  時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。  大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを―― ※挿絵はAI作成です。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

【架空戦記】蒲生の忠

糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。 明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。 その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。 両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。 一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。 だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。 かくなる上は、戦うより他に道はなし。 信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。

処理中です...