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実践
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家に戻って暫くしたある日、円は街の札が立ててある告知から試す対象を幾つか見つける、お上依頼というやつだ
「これだ」と思い早速都の軍部に向かい志願した。もちろん受付した兵にも「やめとけ」と云われた
「出来ると思うから来たのだが?」
「あのな、お嬢ちゃん、遊びじゃねーから」
だった、仕方無いので依頼の形を取らず詳細だけ聞いて帰ったがそれで諦める訳ではない
「別に報酬はどうでもいいか」で翌日朝から北にある山に向かう
そう札の告知募集は「大虎北の山林に出、12人被害、討伐武芸者求む」だった。まあ、門前払いは、それはそうだろう
実年齢は兎も角、どう見ても円は20前の小娘にしか見えない、実際に、16~17歳くらいから外見的年齢の進みは無い
いくら報酬目当てとは云え、馬鹿らしいとしか見えないし、そもそも、冷やかしにしか見えない
これも本来なら「軍なり官がやれよ」なのだが。この時代の光武帝は先の事情あって大幅に軍力を削いで「民」の生活に戻している
その為、一部治安が悪化したのだが、両方は取れない為こういう事、依頼が結構あったのだ
尤も、これは寧ろ「名を上げる」一般武芸者の類には有り難いが、この状況では円もだったろう。そうした成果から王なり皇なりの目に留まれば出世も有りえる、それだけに悪くは無かった
円は敢えて武器を持たず、木の実をいくばか採取しながら上がった。これもちなみに継続した修行の一つである
「米、肉、魚食わず」の仙術の基礎食、所謂現在で言う「精進食」てやつだ、これを山から下りた後もふつーに続けていた
別に苦だとも思わず、故郷に居る時からそんなに変わってない、所謂これも現在で云う「ベジタリアン」に近い食生活で、元々、山篭りでも余程困らない限りは動物を食ってない
ただこの「大虎」はそれなりに苦労した何しろ山、たって広いし中国大陸は色々規模がおかしい早々会うもんでもない
「ふむ、なら、この際なんでもいいか」と
夜も徘徊しながら向こうから動く反応待ちを続けたが犬の類にも会わず、拍子抜けだった
結局二日見て回ったが其れらしいものに会わず
「デマかなぁ、それとも移動したか‥」と諦め山を降りる
夕方から夜前、戻りの山道、ここで目的の者と会う、向こうから襲ってきたのである
勿論「やばい」ではない「きたか」だったが、その割には勝負は一手だった
山道の日が落ちる前で暗闇に近いがまず、ここで分った
「見えなくても、分る」のである、気と空気の流れだけで
虎は爪と牙、両方を使って前方に跳び、円を襲うが、これを円は、右に僅かにギリギリにかわす、狙ってそうする事が出来る程の余裕だった
相手を左面前に置いて、かわすと同時両方の武器を使ってがら空きに成った左腹部に右掌打を打ち込む
これで虎は悲鳴の様な、何かを吐き出す様な叫びを上げて山道を7,8メートル吹っ飛んで転がった。それで終りだった
そしてこれは「実験」でもある。円はそのまま転がった虎に歩み寄り屈んで触診して確かめた完璧だった
「殺しはしない、気脈を絶っただけだ」
撃ったのは掌打「だけではない」気功を乗せて相手の体内にぶち込み。相手の気を乱して、体の自由「だけ」を奪う、その他に不調は無い
初めて、生き物に使った為、半信半疑だったが完璧に効果を発揮した。そしてここで初めて分った
「私もかなり強くなったんだなぁ」と、マヌケな感想を呟いた
というのも、歴史上中国の豪傑とか武将とかは「単身虎を狩った」と書かれる故、それを自分が果した事でそのくらいのレベルには成っているのだろう、という「基準」を得たという事だ。尤も実際はもう、そんなレベルですらないのだが
円はそのまま二メートル弱の虎を抱えて山を下り都の前の大門の前に既に深夜だが、繋いで転がした
「これでいいだろう、私が殺す訳にもいかんし」とそのまま家に帰って寝た
本来なら「実験」でしかないが。この大虎は12人噛み殺している、何れ誰かに狩られるだろう。自身は逃がしたいがそういう訳にも行かなかった、ゆえ、だ
当然翌朝には都の正面出入り口は大騒ぎだが円は遠くから見て確認した後、そ知らぬ顔でまた自宅へ、だった
この一件から更に三日後
円はもう一つ「試しに」行く
今度は「官」を通さず直接向かう、敢えて。どうせまた冷やかしと思われるだろうし、そもそも名を上げる意味も報酬も彼女からすれば微々たる物だ
そして札の内容のもう一つ
「街道に夜盗有り、武芸者の募集、町民は日暮れの移動注意」である
円は事前の捜査で話しは既に聞いてある為、そのまま目的地へ向かう、一人、軽装、素手で
都の南にある山林の街道、正し「日暮れ注意」に従い、夕方から夜に向かう
これも別に苦労はしない「円には見える」
それを発見したのは山林の中、街道外れの300メートルの所、相手は五十人の騎馬、が、既に一仕事終えた後らしくキャンプで酒盛り
ここに堂々と一人で乗り込んだ。無論向こうは驚いたが円が女だと分ると笑みを浮かべた
「こんな所に女一人だぁ?」
「ええ、迷ったの、まぜてもらえる?」と近づき
対応した夜盗の一人が円の肩を抱こうと歩いて近づいた所そこに先制して、発勁の掌打を腹に「トン」と打ち込む
それで一人目が「ゴフ」と呼吸と飲んだばかりの酒を吐き出して前に崩れて落ちた
「な!?!?」と連中が声を挙げた瞬間、円も相手集団に飛び掛る
相手も次々刀を抜いて立ち上がって迎撃するが、略、一方的に円が相手の反撃すら間に合わせず次々と掌打の突きで倒す、これも一撃一殺
四方から囲まれ刀を突き出されるが円は全方位からの刀を全て見えない角度や後ろでも「示し合わせた様に」かわして突きを入れて吹き飛ばす
向こうも「何なんだ!?」としか云えない、武装した五十人が、素手の女一人に手も足も出ない、しかもこっちは鎧も着ている
それを突き抜けて吹き飛ばし、転がる、訳がわからなかった
これが「浸透勁」の効果、胸の鎧の防御を突き抜けて発剄を通し次々昏倒させる
だが、同時「実験」でもある、相手がボス一人に成った所、それも試す
ボスが大振り横に払う刀を、上に跳躍してかわし、相手の右肩に「トン」と片足で乗り、そのまま相手の後ろに飛ぶ、相手が後ろに振り返って返しの薙ぎ払いを繰り出すその刀をあえて円はそれを「待って」素手で防御、手刀で受け止める
「え!?」としか向こうも出なかった
振り向き様に放った横薙ぎの刀が「通らない」のだった
もう相手も震えて動けなくなった「化け物か‥!?」しか言いようが無い
円は最後の一人も胸に掌打を軽く当てて、昏倒させた
円も「わざと」やった本刀を受けた左手を見たがなんとも無かった「上手くいった」と
「が、武装と云っても粗末なモノだ、まともな相手なら分らんな」
そう言って落ちている相手の刀を拾い上げて見る。円が云った通り、湾曲刀のちゃんと精錬したものではない、キレイに斬れるものでもない
相手の鎧もなめし皮の貧乏臭い蛮族らしい装備だ、が、金属でも多分同じだろう「実験」には十分だった
そしてその「実験」も実戦で「仙術」と自分で思った有効そうな技を試しただけだ
一つ、発勁、打撃に気を乗せて放ち、相手の武装をスルーし無意味にする
二つ、気察、見えない方向から来る相手の攻撃を気を周囲に張って掴み「見る」所謂「レーダー回避」だ
三つ、軽身功、自身の体の重さを消し、数倍跳躍する
四つ、硬気功、体内に勁力を巡らせ、自身の肉体を鋼と化す
全て、実戦で成功した
其の後、倒した相手を触診して回り、これも「失神」だけに留めた。全員縛り上げるのも面倒なので、連中の馬の内一頭拝借して町に戻った
ここで都の衛兵に通報して自分は家に戻る、それで、都の兵が捕らえに行っても問題ない
「ま、半日は動けないでしょう」という事だ、朝まで眼は覚めない、それ自体調整出来る
ただ、その後「誰がアレを!?」と噂に成ったのは計算違いだった。しかも、夜とは言え、顔を結構見られている
その為、この実験結果もあり
そのまま家を出て再び山に篭った
「イチイチ大事にされたり、登用されたりしても面倒だ」と
「まだ習得できそうな仙術も残っているな」で
そういう行動を取った、要は
「また、ほとぼりが冷めるまで篭って置こう」程度である
「これだ」と思い早速都の軍部に向かい志願した。もちろん受付した兵にも「やめとけ」と云われた
「出来ると思うから来たのだが?」
「あのな、お嬢ちゃん、遊びじゃねーから」
だった、仕方無いので依頼の形を取らず詳細だけ聞いて帰ったがそれで諦める訳ではない
「別に報酬はどうでもいいか」で翌日朝から北にある山に向かう
そう札の告知募集は「大虎北の山林に出、12人被害、討伐武芸者求む」だった。まあ、門前払いは、それはそうだろう
実年齢は兎も角、どう見ても円は20前の小娘にしか見えない、実際に、16~17歳くらいから外見的年齢の進みは無い
いくら報酬目当てとは云え、馬鹿らしいとしか見えないし、そもそも、冷やかしにしか見えない
これも本来なら「軍なり官がやれよ」なのだが。この時代の光武帝は先の事情あって大幅に軍力を削いで「民」の生活に戻している
その為、一部治安が悪化したのだが、両方は取れない為こういう事、依頼が結構あったのだ
尤も、これは寧ろ「名を上げる」一般武芸者の類には有り難いが、この状況では円もだったろう。そうした成果から王なり皇なりの目に留まれば出世も有りえる、それだけに悪くは無かった
円は敢えて武器を持たず、木の実をいくばか採取しながら上がった。これもちなみに継続した修行の一つである
「米、肉、魚食わず」の仙術の基礎食、所謂現在で言う「精進食」てやつだ、これを山から下りた後もふつーに続けていた
別に苦だとも思わず、故郷に居る時からそんなに変わってない、所謂これも現在で云う「ベジタリアン」に近い食生活で、元々、山篭りでも余程困らない限りは動物を食ってない
ただこの「大虎」はそれなりに苦労した何しろ山、たって広いし中国大陸は色々規模がおかしい早々会うもんでもない
「ふむ、なら、この際なんでもいいか」と
夜も徘徊しながら向こうから動く反応待ちを続けたが犬の類にも会わず、拍子抜けだった
結局二日見て回ったが其れらしいものに会わず
「デマかなぁ、それとも移動したか‥」と諦め山を降りる
夕方から夜前、戻りの山道、ここで目的の者と会う、向こうから襲ってきたのである
勿論「やばい」ではない「きたか」だったが、その割には勝負は一手だった
山道の日が落ちる前で暗闇に近いがまず、ここで分った
「見えなくても、分る」のである、気と空気の流れだけで
虎は爪と牙、両方を使って前方に跳び、円を襲うが、これを円は、右に僅かにギリギリにかわす、狙ってそうする事が出来る程の余裕だった
相手を左面前に置いて、かわすと同時両方の武器を使ってがら空きに成った左腹部に右掌打を打ち込む
これで虎は悲鳴の様な、何かを吐き出す様な叫びを上げて山道を7,8メートル吹っ飛んで転がった。それで終りだった
そしてこれは「実験」でもある。円はそのまま転がった虎に歩み寄り屈んで触診して確かめた完璧だった
「殺しはしない、気脈を絶っただけだ」
撃ったのは掌打「だけではない」気功を乗せて相手の体内にぶち込み。相手の気を乱して、体の自由「だけ」を奪う、その他に不調は無い
初めて、生き物に使った為、半信半疑だったが完璧に効果を発揮した。そしてここで初めて分った
「私もかなり強くなったんだなぁ」と、マヌケな感想を呟いた
というのも、歴史上中国の豪傑とか武将とかは「単身虎を狩った」と書かれる故、それを自分が果した事でそのくらいのレベルには成っているのだろう、という「基準」を得たという事だ。尤も実際はもう、そんなレベルですらないのだが
円はそのまま二メートル弱の虎を抱えて山を下り都の前の大門の前に既に深夜だが、繋いで転がした
「これでいいだろう、私が殺す訳にもいかんし」とそのまま家に帰って寝た
本来なら「実験」でしかないが。この大虎は12人噛み殺している、何れ誰かに狩られるだろう。自身は逃がしたいがそういう訳にも行かなかった、ゆえ、だ
当然翌朝には都の正面出入り口は大騒ぎだが円は遠くから見て確認した後、そ知らぬ顔でまた自宅へ、だった
この一件から更に三日後
円はもう一つ「試しに」行く
今度は「官」を通さず直接向かう、敢えて。どうせまた冷やかしと思われるだろうし、そもそも名を上げる意味も報酬も彼女からすれば微々たる物だ
そして札の内容のもう一つ
「街道に夜盗有り、武芸者の募集、町民は日暮れの移動注意」である
円は事前の捜査で話しは既に聞いてある為、そのまま目的地へ向かう、一人、軽装、素手で
都の南にある山林の街道、正し「日暮れ注意」に従い、夕方から夜に向かう
これも別に苦労はしない「円には見える」
それを発見したのは山林の中、街道外れの300メートルの所、相手は五十人の騎馬、が、既に一仕事終えた後らしくキャンプで酒盛り
ここに堂々と一人で乗り込んだ。無論向こうは驚いたが円が女だと分ると笑みを浮かべた
「こんな所に女一人だぁ?」
「ええ、迷ったの、まぜてもらえる?」と近づき
対応した夜盗の一人が円の肩を抱こうと歩いて近づいた所そこに先制して、発勁の掌打を腹に「トン」と打ち込む
それで一人目が「ゴフ」と呼吸と飲んだばかりの酒を吐き出して前に崩れて落ちた
「な!?!?」と連中が声を挙げた瞬間、円も相手集団に飛び掛る
相手も次々刀を抜いて立ち上がって迎撃するが、略、一方的に円が相手の反撃すら間に合わせず次々と掌打の突きで倒す、これも一撃一殺
四方から囲まれ刀を突き出されるが円は全方位からの刀を全て見えない角度や後ろでも「示し合わせた様に」かわして突きを入れて吹き飛ばす
向こうも「何なんだ!?」としか云えない、武装した五十人が、素手の女一人に手も足も出ない、しかもこっちは鎧も着ている
それを突き抜けて吹き飛ばし、転がる、訳がわからなかった
これが「浸透勁」の効果、胸の鎧の防御を突き抜けて発剄を通し次々昏倒させる
だが、同時「実験」でもある、相手がボス一人に成った所、それも試す
ボスが大振り横に払う刀を、上に跳躍してかわし、相手の右肩に「トン」と片足で乗り、そのまま相手の後ろに飛ぶ、相手が後ろに振り返って返しの薙ぎ払いを繰り出すその刀をあえて円はそれを「待って」素手で防御、手刀で受け止める
「え!?」としか向こうも出なかった
振り向き様に放った横薙ぎの刀が「通らない」のだった
もう相手も震えて動けなくなった「化け物か‥!?」しか言いようが無い
円は最後の一人も胸に掌打を軽く当てて、昏倒させた
円も「わざと」やった本刀を受けた左手を見たがなんとも無かった「上手くいった」と
「が、武装と云っても粗末なモノだ、まともな相手なら分らんな」
そう言って落ちている相手の刀を拾い上げて見る。円が云った通り、湾曲刀のちゃんと精錬したものではない、キレイに斬れるものでもない
相手の鎧もなめし皮の貧乏臭い蛮族らしい装備だ、が、金属でも多分同じだろう「実験」には十分だった
そしてその「実験」も実戦で「仙術」と自分で思った有効そうな技を試しただけだ
一つ、発勁、打撃に気を乗せて放ち、相手の武装をスルーし無意味にする
二つ、気察、見えない方向から来る相手の攻撃を気を周囲に張って掴み「見る」所謂「レーダー回避」だ
三つ、軽身功、自身の体の重さを消し、数倍跳躍する
四つ、硬気功、体内に勁力を巡らせ、自身の肉体を鋼と化す
全て、実戦で成功した
其の後、倒した相手を触診して回り、これも「失神」だけに留めた。全員縛り上げるのも面倒なので、連中の馬の内一頭拝借して町に戻った
ここで都の衛兵に通報して自分は家に戻る、それで、都の兵が捕らえに行っても問題ない
「ま、半日は動けないでしょう」という事だ、朝まで眼は覚めない、それ自体調整出来る
ただ、その後「誰がアレを!?」と噂に成ったのは計算違いだった。しかも、夜とは言え、顔を結構見られている
その為、この実験結果もあり
そのまま家を出て再び山に篭った
「イチイチ大事にされたり、登用されたりしても面倒だ」と
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注:権謀術数と祟りと政治とちょっと禁断の恋的配分で、壬申の乱から平安京遷都が落ち着くまでの歴史群像劇です。
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故里となりにし奈良の都にも色はかはらず花は咲きけり
(小さな頃、故郷の平城の都で見た花は今も変わらず美しく咲いているのですね)
『古今和歌集』奈良のみかど
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