混血の守護神

篠崎流

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絹の道

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北、今で言うモンゴルに着くのは結構掛かった特に急ぐでもない事もあったが

中国西、都の北西側から入った為結構ズレはある、これは元々地図上、国内から行きやすい所から移動した事にある

この辺りから道らしいものも少なく起伏もあまりない、平地、草原、石地が多い、そのまま特にアテも無く移動し街の様な物に入った

この辺りまで来ても見た目、人種的違いはそれほど感じず円は普通に馴染んで生活に紛れ込んだ

耀の件あって来てはみたもののこれと言って期待した部分は無かった、よくある「期待」。別にフロンティアでも無く桃源郷でもない、当たり前の話しだが

ただ、個人の範囲で生活はし易い、狩猟でも遊牧でもある為移動して生活する者が多くある意味、過干渉が無く確かに個人のレベルで移り住むのは楽だろう

そもそも国家概念が中国ほどカッチリしていないし、ここでも東西等に分かれて争いもある

度々北と南で争いはあり、騎馬民として非常に強力で勇猛であるが、円は現状それ程興味は引かなかった、これは地域の問題もある

秦の地図の外側、北から西まである国でもあるが当時は幾つか分かれて国があった、元々移動民に近い為、内治で戦争して勝ち負けでその中心は目まぐるしく変わる為である

そこで円は情報のまだありそうな方角西に向かう

というのも秦は当時から北や西とそれなりに繋がりがあった、主に道とか方角とか相手の情報、当時まだ月氏、と呼ばれて居たがこれと不戦や外交を行う流れもいくらかあった故である

自身の馬のまま移動の生活を続け現地人から聞きながら、それ程労せず、明確な形で街の類に入る事になる

ここは中央アジアの交易地で自然、人が集まる。まだ、中国側では開かれていないが後のシルクロードである、ここに個人として真っ先に、初めて辿り着いた

緑が多くないのだが整備された簡易な街が多い、円もそこに入り、暫くは言葉を基本的なモノだけ覚えつつ、のんびり過ごした

ここで再び秦から離れた事から音と武の両方を再開する、移動の交易商人の護衛に加わりつつ現地の珍しい物品も時々手に入れて別な糧も得た、金と絹だ

これは偶然だったのだが秦の金を両替した所、これが想像以上に価値が有る事が分り結構な現地通貨に化けた

もう一つが着替えでいくらか持って来た服や反物これも価値が高いらしく、殆ど言い値で売れる、絹だ。実際後のシルクロード中国交易もそれがメインになる「シルク」の由来も絹に由来する事で明らかである

西洋や中東からの道も繋がる重要な文化、交易を繋ぐ場で兎角、珍しい物が多く、色々な人種が居る

円の場合、この移動交易の商人の護衛だけでも食えるのだが学に興が深いだけに、アチコチの見た事もない書や文学、芸術品に興味を持った

勿論、この当時時点でも多くの他の物がある、香料、香辛料、種、書、宗、武器、芸術、もう、円も眼が休まる暇も無い程だ

だから仕事、護衛も移動と滞在の店の者等について、住みながらも色んな書物を読んで、別国の文字も覚える、宗教や文学、占いまで読み漁ってそれも頭に叩き込んだ

居心地の良いのもあって円はそのまま一年程現地で生活した、其の中で特に興味の転換から決断したのが

「ここから西も色々あるなら見てみたい」と思った、特に西洋文化である

無論、倭への帰還の道も無い訳ではないがこれは当初から「帰って良い事がある訳でもなし」そう考えて、ここでも、そこに変わりは無かった、既に5年以上経過しているし、戻って、良い生活な訳でもない

まして自身がこれまで得た情報でも本国への道、情報が薄く、船を出すにも金もコネも要るし、ルート不明なまま。故に、自身の興味関心のまま西方面に向かう事と成った

その為、そっちルートに帰る商人を探し、これを得たのが更に二ヶ月後、直ぐに格安で同道と護衛を受けて旅団に加わり、西への道を行く事に成った

これには元々の専属での商人に所謂従業員半々護衛の類が居るが円は「西に行けるなら金はいらん、腕には自信ある」として自分を捨てて「同行者」に近い形で加わった、兎に角、どんな条件でも行けるなら良いと考えた

そこで旅団の責任者も受け同道するが割り合い出来た人物で
「そこまで行きたいなら雇うよ」としてこれを容認し、普通に護衛と同行者としていく事に成った

彼は所謂ペルシア系、今で言うイラン辺りの人物、ここまで来ると見た目、人種的外見差もかなりある

「オウトツのハッキリした顔だなぁ~」と円も思ったが相手からすれば同じだろう、こうして円は西へ向かう

この時代は「戦」を避けて、というのも難しい、大体紀元前1~3世紀はどこでも多かれ少なかれ争っているし、どこに行っても一定の間隔で王朝やら帝国やらが激しく滅亡と建国を繰り返して、入れ替わっている

「何が面白くて戦してるのか」と思わざる得ない

旅は結局、快適、という事は少ない、何しろ当時も今も厳しい乾燥地帯で砂漠に近い自然環境ではある、馬車の類での移動中心であるが暑く、砂地が多い

どうにかペルシャに着いたが円は留まらず北に向かった、これは海に沿って進んだ事、自然環境が宜しくない事と現地の言葉がやたら難しいなぁと、個人的に感じたからだ

ペルシャ北のカスピ海周りに沿って動いてそのまま北に抜ける、シルクロードから合わせて、総計半年の旅の後、最終的に抜けて定住したのがヨーロッパだった

ウクライナ、ルーマニアの中間辺りで人口が多すぎない、現地の町に紛れて生活を始めるがこの辺りまで来ると円も露骨に異国人である、何しろ外見的差異が大きい

この辺りは生活、文化レベルも高く書も豊富だったので退屈もしなかった、もう逃げる必要も隠れる必要も無くやりたいように生きるだけだったが違いも大きかった

まず、円の持っている生きる技術自体、差が大きい言葉も文字もそれ程苦労しなかったがこれまでと違い、教えは通じなく、教師、という訳にもいかなったし、武と言っても日常的にそれ程使わない

特に大抵この地域は先生が居るし、そこに通わない場合は親族が教えている、つまり基礎学問の部分で入る余地が少ない

その為糧を得る為に色々形を変えて行う、これが結構長い期間だった住家を変えながら職も、農、工、商を主に勤め人に近い身軽な立場を取ったが

そんな中でもアチコチから集めた本から色々習得を重ねていった

これは自分が「面白いから」で大抵そうする、特にヨーロッパは既に哲学、数学があるし宗教も独特だった、これを読むのも面白く、数年過ごす内に再び「教師」の立場が得られる

主にボランティアに近いがアチコチの小さい子の教師、変わりに金で無く、食を得られる事が多い

そこで真摯に勤めて信任を得ればまた、別な繋がりも出来、次も段々困らなくなっていくと、円自身の生活は向上していく事になる

ただ、ここでも社会全体で云えば不安はある、というのもやはり戦争だ。円も別に関わるつもりも無く、無視して自分の生活に集中しそれなりに楽しんだが過去の例あっての事で、こう考えていた

「どうせ戦争だの繰り返しだし、自身が関わっても何も影響が無い」という真理に近い部分から相変わらず、情勢に興味関心が薄かった

「所詮、多数の中の一人だし、どこかに深く関わってもいいこともないだろう」そういう事だ

今現状、安定しているし、新しい物、文化学問も沢山ある、それで楽しいならそれでいいやくらいにしか思わなかったのである

そこからまた「音」「武」の部分の関心も出て来る、それは現地には弦がある、所謂、琴とか笛、これを街で見て即購入した

もう一つの「武」の方は細剣である、これは見た目も東アジアの物と違い非常に美しい芸術的な価値もあった

殆ど言語と同じく独学だが、それ程苦労も躓きも無く覚えた。音に関しては言語と同じパターンで有る事に気がついた

西洋文はアルファベットに代表される様に文字数が少ない、それの組み合わせで全ての文体が構成される為、書も直ぐに得られた、国が違っても読み取れる事が多い

音もそれと違いは余り無い、所詮全ての音楽は「ドレミ」で構成されているし楽器もそれを出す為の物だ

楽譜の読み方と、触ってみてどれがどの音を出すかと、弾いている人の「音」を真似て情緒の面を真似していけば、それなりの形になる、音の強弱と長短である。後は自己錬だけでよかった

剣にしてもあまり変わりがない、槍の「突き」「払い」で剣も操れるし、ベースはそれ程違いが無い事に気がついた、手持ち武器は殆ど違いは無い

極端に云えば「点と線」突くか横に払うか、これを基本に後はそれを極めればいい、棒術でやってきた事と同じ如何に早く打ち、自分を乱さないか

基本人間の小戦闘では「防いで」「打つ」であってそれ以外が必要になるのは相手が名人か一対多数くらいだ

個人の範囲や修練で言えば、その「攻」「防」がどれだけ早いかとか強いか、という部分になる、だから武器を持ち替えても変わりない、基礎をここでもやった

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