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実験体
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宮の決定後、直ぐに都に移送されるが、街や宮中ではなく北にある孤立施設に運ばれ、そこでまた牢に入れられる
昼間であったが窓も小さい、暗く、五人も入れない様な狭い場所だった、所謂個人を対象にしたモノでそこでも両手足に枷を付けられて転がされる
一見すると、即処刑を免れたとも云えるが、これは寧ろ「その場で斬り殺された方がマシ」だったと云えるだろう
それが始まったのは翌日朝からだ
牢に転がる動けぬ円の所に立派な着物の男と左右に兵が訪れる、兵は両側から円の肩を掴み上半身を起こし口が開けっ放しに成るようにする機械を差し込む
立派な着物の男はその口に小さな粒を二、三入れた後精製した水を流して、円にそれを強制的に飲ませる
思わず「ゲフッ」と声を挙げて咳き込んだがどうなるもんでもない
それが終ったら一同は口の惧を外して再び牢に円を転がして外に出た、それだけだ「何なの一体‥」円もそうとしか云えなかった
そのまま、特に何も無く、また放置される
数日すると、また同じ様に連中が牢に入り、また違った物を飲まされる、という具合に単にそれが繰り返されるだけだった
時々、円の体調の調査で診断が行われる程度、後は一日一回不味い粗末な飯だけ出て何もする事もなく転がされているだけ
効果、というか不調が出たのが一月後くらいだろうか、円はめまいや手足の不調を訴えだす
が、担当者もそれはそうだろうな、としか思わなかった。これまで何度もやってきた事だ、これもダメかとしか思わなかった
それが繰り返され、円が立て無くなったのが更に翌週寝返りすらまともに自分の意思で出来なくなった、そして起きている時でも幻覚を見る様になった
これは露骨に、のまされた薬のせいである
「不死の秘薬」の実験薬である
そう、不死の秘薬は時の権力者が幾度かやっている、その中身も漢方をベースにした現在で言えば唯の毒だ
不調が出るのは量が多くないので早くは無いが、中身は漢方の類をベースに混ぜられた、水銀やアヘン、硫黄等である当然、飲まされた側は徐々に体調が悪化し中毒に陥る
が、別にこれは不思議な事ではない、それで出来ると「信じられていた」のだ現に皇帝も微量摂取を行い、最終的には死に至っている。検体とはこういう事なのだが余りに馬鹿らしい
そしてそこからは地獄だ、体は思うように動かないし起きていながら夢を見る、強烈なだるさと倦怠感。最悪の状況だ
これは当然で主に水銀中毒と麻薬中毒である、神経系をやられる、脳も異常をきたす
円の年齢なら微量づつなら摂取を止めて自然に体外排出は起こり、回復する事もあるが一定の間隔でこれを摂取「させられ続ける」ゆえ一度始めたら検体としての役割が無くなるまで終りは無い、そう、死ぬまで
動けなくなったのは更に翌週
もう声も出なかった、というよりそんな気力もない「あ」と「う」しか云えない程不調をきたした
そして終りが来た
彼女の担当だった学士医師が牢に入って検診そこで見切りを付けられた、深刻な状況で長く持たないとされた
視点も定まらず、寝たままの彼女の手を持ち上げて離してそのまま落ちる。ツボを強く押しても反応無し、問うても何も返らない、そういう状況だった
「もう、数日もつかどうかだな、処理の用意だけしておけ」そう、そいつは云って、左右に控えた兵も黙って頷いた
同じ日の深夜、だろうか、小さな窓から星が見える、それも幻覚かも、夢かもしれなかった。円は一度だけ、その時間覚醒した
誰かが来る、そう「見えた」それも現実に居るのか判らない、もう何度も、そういう「幻」は見た、だからまたかとしか思わない、既に、現実かどうかの判断なんかつきはしない
牢の扉は閉まったままだった、でも彼女、円を見下ろす「誰かが居た」頭と目を少しだけ動かして追って確認した
本当に馬鹿らしかった、牢は閉まったまま、でも面前に「子供」が居たのだ、10歳くらいだろうか、小さい、赤毛の、多分女の子で北方系の衣装、今でいうチャイナドレスみたいな衣装の子だった。それこそまたか、としか思わなかった
けど今日の幻覚はタチが悪い
向こうから一方的に話かけてきたのだ
「おい、小娘、聞こえるか」と
子供は口すら動かしてない、けど言葉だけ投げてきた、あまりに非常識で馬鹿らしい事に円も笑うしかなかった、けど表情も口も動かなかった
「お前のが小娘だろう」と思って可笑しかったが、乾いて、疲労して、極めて悪い体調で口と眼で笑みを作る事すら出来なかった
子供は腰に手を当てて溜息を深くついた
「まあ、死ぬ直前じゃしな、答えられんかほんとにめんどくさい」
「おい、娘、聞こえるか、聞こえたら合図しろ目と頭くらい動くじゃろ?」
そう、言葉を投げた。円も応じて云われた通り、瞼をゆっくり閉じて顎を僅かに下にずらして答えた
「うん」と
それで子供は確認して更に問うた
「お前、もう直ぐ死ぬぞ、お前が飲まされた奴らの自称薬は猛毒じゃ」
云われて、そうだよね、としか思わなかった
「古書で見た事がある、そういう作り方で、過去にやったと」
無論、言葉は出ないので思っただけだ。だが、円のその「頭で思った事」で会話が成立する。別に不思議だとも思わなかった「どうせ夢か幻覚だ」
「アホウな連中じゃ、あんな物で、不老不死等成るものか」
「そうね‥」
「うむ、多分朝までもたんぞお前」
「そう」
「んでじゃな、このまま死ぬのもむかつくじゃろうちと取引しろ」
「何の?」
「お前を助けてやる、代わりにお前、ウチの部下になれ」
もう意味不明過ぎて訳が分らない
「はぁ‥どういう意味?」
「だ か ら!お前は死なない、ウチがどうにかしてやる。その代わり、ウチに従えと云ってる!」
全然説明になってない気がするが、どうせ死ぬのだから、と思った。大体、マジメに考えて答えるのも馬鹿らしかった
「貴女の手下になればいいのね、んで、従うそれで助けてやる、と」
「おう!受けるか?」
「いいよ、どうせ死ぬんだし」
まあ、意思疎通がイマイチ成り立っていないのだが
子供はそれで満足した様だ
そのまま彼女はしゃがみこんで円の鼻を詰まんで、口を開けさせたそこに何か押し込む子供
「ほれ、飲め、薬じゃ」
「また、毒じゃないでしょうね?」
「約束は守る、こっちもお前も」
そう云われ、何だか分らないが従って飲み込んだ、感触から多分、丸薬、錠剤だろう、結構デカイ、兎に角それを胃に無理矢理、押し込んだ
再び子供は立って腰に手を当てて偉そうなポジションに戻って見下ろすまま云った
「ま、契約成立じゃ、後は好きにしろ、こっちの用事が出来たら、また会いに来てやる、それまで精精壊れるなよ、また無駄足は御免じゃ!」
それだけ一方的に云って歩いて出て行った
閉まったままの牢屋の扉すら開けずにすり抜けて
円も可笑しいながらも疲れ、またそのまま寝た、意識があるだけで強烈な体調不良だ、寝るか失神してるほうがまだ楽だ、というだけの事だ
次に起こされたのは朝だろう
円は両脇を兵士抱えられ、持ち上げられて引きずられていく
、そこでようやく目を覚ました
もう感覚も殆ど無い、ずっとだるいまま眠たいまま、しかも今朝は何時もの比じゃない。ただ、何時もの、目の前で起こる光フラッシュの様な物と、キツイ痛みの類は無かった
円は冷静に分析していた
「ああ、死ぬ前て、痛みも和らぐのか」と
そのまま円は抱えられ、外まで引っ張って行かれる。外に置いた車輪付きのカートの様な物に仰向けに乗せられた
兵ら二人はそのまま台車を引っ張って運ぶ。更に、北側、山の方へ
それが何十分かしたかの所で止まる。円は首すら動かなかったのでずっと青い空だけ見ていた
そのうち、其の体勢のまま「ガクン」と台車がゆれ乗っていた円も地面に落ちた、そのまま、兵は円を再び人力で抱え「下」に転がした
崖の様な場所なのだろうか。身動き一つ出来ないまま、滑る様に転げでどこかに落ちた。兵らも確認して「やれやれ」とそのまま放置して帰った
円は身動き一つ出来ないので一応仰向け体勢のまま目だけで確認した
そう、そこはゴミ捨て場。と言っても周りはゴミじゃない「人間の死体」だらけだ。中にはまだ「う‥」と声を出す者も居る
ようするに円と立場は同じ「検体」の処分場「処分」と連中は云っていたが、これは捨ててそのまま鳥か獣にでも食われろという話だ
「気持ちわる‥」と当然思うが、自分も其の中の一部しかも指一本動かない、どうする事でも出来ず諦めた。幸い記憶があったのはそこまでだった
ゆっくり眼を閉じて死ぬのを待つだけだ
そうして、再び意識を失った
昼間であったが窓も小さい、暗く、五人も入れない様な狭い場所だった、所謂個人を対象にしたモノでそこでも両手足に枷を付けられて転がされる
一見すると、即処刑を免れたとも云えるが、これは寧ろ「その場で斬り殺された方がマシ」だったと云えるだろう
それが始まったのは翌日朝からだ
牢に転がる動けぬ円の所に立派な着物の男と左右に兵が訪れる、兵は両側から円の肩を掴み上半身を起こし口が開けっ放しに成るようにする機械を差し込む
立派な着物の男はその口に小さな粒を二、三入れた後精製した水を流して、円にそれを強制的に飲ませる
思わず「ゲフッ」と声を挙げて咳き込んだがどうなるもんでもない
それが終ったら一同は口の惧を外して再び牢に円を転がして外に出た、それだけだ「何なの一体‥」円もそうとしか云えなかった
そのまま、特に何も無く、また放置される
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時々、円の体調の調査で診断が行われる程度、後は一日一回不味い粗末な飯だけ出て何もする事もなく転がされているだけ
効果、というか不調が出たのが一月後くらいだろうか、円はめまいや手足の不調を訴えだす
が、担当者もそれはそうだろうな、としか思わなかった。これまで何度もやってきた事だ、これもダメかとしか思わなかった
それが繰り返され、円が立て無くなったのが更に翌週寝返りすらまともに自分の意思で出来なくなった、そして起きている時でも幻覚を見る様になった
これは露骨に、のまされた薬のせいである
「不死の秘薬」の実験薬である
そう、不死の秘薬は時の権力者が幾度かやっている、その中身も漢方をベースにした現在で言えば唯の毒だ
不調が出るのは量が多くないので早くは無いが、中身は漢方の類をベースに混ぜられた、水銀やアヘン、硫黄等である当然、飲まされた側は徐々に体調が悪化し中毒に陥る
が、別にこれは不思議な事ではない、それで出来ると「信じられていた」のだ現に皇帝も微量摂取を行い、最終的には死に至っている。検体とはこういう事なのだが余りに馬鹿らしい
そしてそこからは地獄だ、体は思うように動かないし起きていながら夢を見る、強烈なだるさと倦怠感。最悪の状況だ
これは当然で主に水銀中毒と麻薬中毒である、神経系をやられる、脳も異常をきたす
円の年齢なら微量づつなら摂取を止めて自然に体外排出は起こり、回復する事もあるが一定の間隔でこれを摂取「させられ続ける」ゆえ一度始めたら検体としての役割が無くなるまで終りは無い、そう、死ぬまで
動けなくなったのは更に翌週
もう声も出なかった、というよりそんな気力もない「あ」と「う」しか云えない程不調をきたした
そして終りが来た
彼女の担当だった学士医師が牢に入って検診そこで見切りを付けられた、深刻な状況で長く持たないとされた
視点も定まらず、寝たままの彼女の手を持ち上げて離してそのまま落ちる。ツボを強く押しても反応無し、問うても何も返らない、そういう状況だった
「もう、数日もつかどうかだな、処理の用意だけしておけ」そう、そいつは云って、左右に控えた兵も黙って頷いた
同じ日の深夜、だろうか、小さな窓から星が見える、それも幻覚かも、夢かもしれなかった。円は一度だけ、その時間覚醒した
誰かが来る、そう「見えた」それも現実に居るのか判らない、もう何度も、そういう「幻」は見た、だからまたかとしか思わない、既に、現実かどうかの判断なんかつきはしない
牢の扉は閉まったままだった、でも彼女、円を見下ろす「誰かが居た」頭と目を少しだけ動かして追って確認した
本当に馬鹿らしかった、牢は閉まったまま、でも面前に「子供」が居たのだ、10歳くらいだろうか、小さい、赤毛の、多分女の子で北方系の衣装、今でいうチャイナドレスみたいな衣装の子だった。それこそまたか、としか思わなかった
けど今日の幻覚はタチが悪い
向こうから一方的に話かけてきたのだ
「おい、小娘、聞こえるか」と
子供は口すら動かしてない、けど言葉だけ投げてきた、あまりに非常識で馬鹿らしい事に円も笑うしかなかった、けど表情も口も動かなかった
「お前のが小娘だろう」と思って可笑しかったが、乾いて、疲労して、極めて悪い体調で口と眼で笑みを作る事すら出来なかった
子供は腰に手を当てて溜息を深くついた
「まあ、死ぬ直前じゃしな、答えられんかほんとにめんどくさい」
「おい、娘、聞こえるか、聞こえたら合図しろ目と頭くらい動くじゃろ?」
そう、言葉を投げた。円も応じて云われた通り、瞼をゆっくり閉じて顎を僅かに下にずらして答えた
「うん」と
それで子供は確認して更に問うた
「お前、もう直ぐ死ぬぞ、お前が飲まされた奴らの自称薬は猛毒じゃ」
云われて、そうだよね、としか思わなかった
「古書で見た事がある、そういう作り方で、過去にやったと」
無論、言葉は出ないので思っただけだ。だが、円のその「頭で思った事」で会話が成立する。別に不思議だとも思わなかった「どうせ夢か幻覚だ」
「アホウな連中じゃ、あんな物で、不老不死等成るものか」
「そうね‥」
「うむ、多分朝までもたんぞお前」
「そう」
「んでじゃな、このまま死ぬのもむかつくじゃろうちと取引しろ」
「何の?」
「お前を助けてやる、代わりにお前、ウチの部下になれ」
もう意味不明過ぎて訳が分らない
「はぁ‥どういう意味?」
「だ か ら!お前は死なない、ウチがどうにかしてやる。その代わり、ウチに従えと云ってる!」
全然説明になってない気がするが、どうせ死ぬのだから、と思った。大体、マジメに考えて答えるのも馬鹿らしかった
「貴女の手下になればいいのね、んで、従うそれで助けてやる、と」
「おう!受けるか?」
「いいよ、どうせ死ぬんだし」
まあ、意思疎通がイマイチ成り立っていないのだが
子供はそれで満足した様だ
そのまま彼女はしゃがみこんで円の鼻を詰まんで、口を開けさせたそこに何か押し込む子供
「ほれ、飲め、薬じゃ」
「また、毒じゃないでしょうね?」
「約束は守る、こっちもお前も」
そう云われ、何だか分らないが従って飲み込んだ、感触から多分、丸薬、錠剤だろう、結構デカイ、兎に角それを胃に無理矢理、押し込んだ
再び子供は立って腰に手を当てて偉そうなポジションに戻って見下ろすまま云った
「ま、契約成立じゃ、後は好きにしろ、こっちの用事が出来たら、また会いに来てやる、それまで精精壊れるなよ、また無駄足は御免じゃ!」
それだけ一方的に云って歩いて出て行った
閉まったままの牢屋の扉すら開けずにすり抜けて
円も可笑しいながらも疲れ、またそのまま寝た、意識があるだけで強烈な体調不良だ、寝るか失神してるほうがまだ楽だ、というだけの事だ
次に起こされたのは朝だろう
円は両脇を兵士抱えられ、持ち上げられて引きずられていく
、そこでようやく目を覚ました
もう感覚も殆ど無い、ずっとだるいまま眠たいまま、しかも今朝は何時もの比じゃない。ただ、何時もの、目の前で起こる光フラッシュの様な物と、キツイ痛みの類は無かった
円は冷静に分析していた
「ああ、死ぬ前て、痛みも和らぐのか」と
そのまま円は抱えられ、外まで引っ張って行かれる。外に置いた車輪付きのカートの様な物に仰向けに乗せられた
兵ら二人はそのまま台車を引っ張って運ぶ。更に、北側、山の方へ
それが何十分かしたかの所で止まる。円は首すら動かなかったのでずっと青い空だけ見ていた
そのうち、其の体勢のまま「ガクン」と台車がゆれ乗っていた円も地面に落ちた、そのまま、兵は円を再び人力で抱え「下」に転がした
崖の様な場所なのだろうか。身動き一つ出来ないまま、滑る様に転げでどこかに落ちた。兵らも確認して「やれやれ」とそのまま放置して帰った
円は身動き一つ出来ないので一応仰向け体勢のまま目だけで確認した
そう、そこはゴミ捨て場。と言っても周りはゴミじゃない「人間の死体」だらけだ。中にはまだ「う‥」と声を出す者も居る
ようするに円と立場は同じ「検体」の処分場「処分」と連中は云っていたが、これは捨ててそのまま鳥か獣にでも食われろという話だ
「気持ちわる‥」と当然思うが、自分も其の中の一部しかも指一本動かない、どうする事でも出来ず諦めた。幸い記憶があったのはそこまでだった
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