1 / 53
引き金
しおりを挟む
まだ日本が「日本」とすら呼ばれていなかった時代まで遡る歴史という「記録」すら余り残っていない頃から、この話は始まる
南の地方で生まれた彼女は地方豪族の子で、名を「円まどか」と云う、明確に残ったのはそれだけだ
見た目もまあ、長い黒髪と、当時にしてはパッチリした目に白い肌「外見上」の評価は幼い頃から良かった
まだ統一した国の概念や統治も明確で無い、ある意味割拠の様な状況にあった
とは云え飢餓とか不自由というのもそれ程無い、元々の国柄と言えるか農耕もあれば海もある、大昔から自然多く水の国、実り豊かで、温暖だったらしい
円は、当時としては変わった娘だった
12の頃に背は大きく大人に負けず見た目もまあ、美しかったろう、当時の常識の範囲では、そうでは無かったかもしれない、どちらかと云えば「今」の範疇だ、実際周囲の者からは「変わった娘」と噂されている
変わっているのは性格もだろうか、良く言えばおしとやかだが、悪く言えば消極的、置物の様で、口数も少ないが、好奇心は強いらしく自分のやってみたい事、には直ぐ動く
それでも、周囲の環境あって、そんな娘でも、生きる不自由はあまり無かった、まあ幸運で裕福な元に生まれ育ったと云えるだろうか、何しろ寝て過ごしても別に大して困らなかったのだから
一応、そういう立場だとしても、当人がどうであっても教育はした、字も書かせたり読ませたり、仕事も、裁縫、とはまだ言わぬが、女らしく服作りや、蔓でカゴ、自然の実りの収穫等は親はやらせた
自然の恵みを拾ってくるだけなら、娘にも出来るのでやらせたというだけだ、働かざるもの食うべからず、である
そもそも表面上でも動いてもらわぬと体面が悪い
両親がそれなりの立場だけに。
其の反動、という訳では無いが幸福から不幸に反転したのが、13才に成る手前の事である、とはいえ、それは見る者によってはそうではない、とも云う
ある、快晴の海岸で流れ着いた海産物を拾っていた朝、円は、船で魚を採っている若者を見て楽しそうだと思った、反面自分は一人で拾ってるだけ
そこで彼女は昼前に陸に戻った連中に、自分も乗ってみたいと云ってみた「午後はもう漁に出ないよ」と云われたが意味が分らなかった
それでも、その内一人の若者は乗るだけなら
と、三時頃、自分の用事を片付けてから船を出してくれた
無論、彼女が豪族の娘だからやってあげるのは、良い印象が残るというのもある
何が幸いして、何が災いするか人生は分らないモノだ、少し沖に出た所で、船が波に浚われ転覆する
特に悪天候でも高波でもないが、当時の船などイカダと変わらない、一本の木を彫って切り出した、今で言う大きめのカヌーの様なものだ
勿論、男は泳ぎは達者だし、別にそのまま死ぬ事も無いし船がひっくり返る等、事件でも何でもない、が、彼女はそうでないという事だ
ひっくり返った上下逆さまの船にへばりついて、どうにか溺れずに済んだが流されて行く、こりゃまずい、と彼も泳いで追うが速度が違う、一時間で、追った彼も手足が思うように動かなくなった、これ以上は自分も帰れなくなる、そういう判断で諦めた
船を出さない時間、この時期、この時間は波が引く、だから出さない、それを無理して出た事がそういう事態に成った
別に大げさ事態ではない
どこでも良くある海難事故、特にこの時代だ
そして救出も捜索も無い、海の向こうなんてどうなってるか分りはしない、特別な海難救助なんてある訳がないのである
この一連の報を受けた両親は勿論翌朝まで待ち、立場を使って、船を出させて捜索したが、既にこの時、娘はこの国の範囲には居なかった
尤も、それ程深刻な事ではない、両親の心情では無く元々「変わった子」、5人兄弟の末っ子、そして「当人が選んでこうなった」事、である
実際泣いたのは母親だけだった
それからこの時代、平均寿命もかなり低い、病気や事故も多く、ある日突然居なくなる事も珍しくない、現在と違って人命が重くない事もある
そもそも、事故や病気が起こったとしても対する対策が中世まで大抵無い、精精「神に祈る」くらいのものだろう。病にしろ、神隠しにしろ同じ対応しかないともいう
「円」はひっくり返った船にしがみつきながら只管耐えた、どうにか波の力も利用し、渾身の力で再び船を表に返して疲労困憊の中、体を船に乗せたそこで何とか、溺れず通常の船旅に戻る事と成る
が、記憶があったのはそこまでだった
仰向けにぶっ倒れて眠ると同時、意識を失った
寝るのも失神するのも、きっと大差ないだろう
南の地方で生まれた彼女は地方豪族の子で、名を「円まどか」と云う、明確に残ったのはそれだけだ
見た目もまあ、長い黒髪と、当時にしてはパッチリした目に白い肌「外見上」の評価は幼い頃から良かった
まだ統一した国の概念や統治も明確で無い、ある意味割拠の様な状況にあった
とは云え飢餓とか不自由というのもそれ程無い、元々の国柄と言えるか農耕もあれば海もある、大昔から自然多く水の国、実り豊かで、温暖だったらしい
円は、当時としては変わった娘だった
12の頃に背は大きく大人に負けず見た目もまあ、美しかったろう、当時の常識の範囲では、そうでは無かったかもしれない、どちらかと云えば「今」の範疇だ、実際周囲の者からは「変わった娘」と噂されている
変わっているのは性格もだろうか、良く言えばおしとやかだが、悪く言えば消極的、置物の様で、口数も少ないが、好奇心は強いらしく自分のやってみたい事、には直ぐ動く
それでも、周囲の環境あって、そんな娘でも、生きる不自由はあまり無かった、まあ幸運で裕福な元に生まれ育ったと云えるだろうか、何しろ寝て過ごしても別に大して困らなかったのだから
一応、そういう立場だとしても、当人がどうであっても教育はした、字も書かせたり読ませたり、仕事も、裁縫、とはまだ言わぬが、女らしく服作りや、蔓でカゴ、自然の実りの収穫等は親はやらせた
自然の恵みを拾ってくるだけなら、娘にも出来るのでやらせたというだけだ、働かざるもの食うべからず、である
そもそも表面上でも動いてもらわぬと体面が悪い
両親がそれなりの立場だけに。
其の反動、という訳では無いが幸福から不幸に反転したのが、13才に成る手前の事である、とはいえ、それは見る者によってはそうではない、とも云う
ある、快晴の海岸で流れ着いた海産物を拾っていた朝、円は、船で魚を採っている若者を見て楽しそうだと思った、反面自分は一人で拾ってるだけ
そこで彼女は昼前に陸に戻った連中に、自分も乗ってみたいと云ってみた「午後はもう漁に出ないよ」と云われたが意味が分らなかった
それでも、その内一人の若者は乗るだけなら
と、三時頃、自分の用事を片付けてから船を出してくれた
無論、彼女が豪族の娘だからやってあげるのは、良い印象が残るというのもある
何が幸いして、何が災いするか人生は分らないモノだ、少し沖に出た所で、船が波に浚われ転覆する
特に悪天候でも高波でもないが、当時の船などイカダと変わらない、一本の木を彫って切り出した、今で言う大きめのカヌーの様なものだ
勿論、男は泳ぎは達者だし、別にそのまま死ぬ事も無いし船がひっくり返る等、事件でも何でもない、が、彼女はそうでないという事だ
ひっくり返った上下逆さまの船にへばりついて、どうにか溺れずに済んだが流されて行く、こりゃまずい、と彼も泳いで追うが速度が違う、一時間で、追った彼も手足が思うように動かなくなった、これ以上は自分も帰れなくなる、そういう判断で諦めた
船を出さない時間、この時期、この時間は波が引く、だから出さない、それを無理して出た事がそういう事態に成った
別に大げさ事態ではない
どこでも良くある海難事故、特にこの時代だ
そして救出も捜索も無い、海の向こうなんてどうなってるか分りはしない、特別な海難救助なんてある訳がないのである
この一連の報を受けた両親は勿論翌朝まで待ち、立場を使って、船を出させて捜索したが、既にこの時、娘はこの国の範囲には居なかった
尤も、それ程深刻な事ではない、両親の心情では無く元々「変わった子」、5人兄弟の末っ子、そして「当人が選んでこうなった」事、である
実際泣いたのは母親だけだった
それからこの時代、平均寿命もかなり低い、病気や事故も多く、ある日突然居なくなる事も珍しくない、現在と違って人命が重くない事もある
そもそも、事故や病気が起こったとしても対する対策が中世まで大抵無い、精精「神に祈る」くらいのものだろう。病にしろ、神隠しにしろ同じ対応しかないともいう
「円」はひっくり返った船にしがみつきながら只管耐えた、どうにか波の力も利用し、渾身の力で再び船を表に返して疲労困憊の中、体を船に乗せたそこで何とか、溺れず通常の船旅に戻る事と成る
が、記憶があったのはそこまでだった
仰向けにぶっ倒れて眠ると同時、意識を失った
寝るのも失神するのも、きっと大差ないだろう
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる