晴海様の神通力

篠崎流

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箍が外れる

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残りの問題、ネルガルに対してだが、継続して晴海は強化をする必要はあるとは思い、これも止めずに業の習得なども続ける

意図は正直何を考えて目的としているかも不明、晴海や雹も言った通りで、あくまで人側からの感想に近いが非常に幼稚にも見える

「五月蠅い」で少なからず関わってきただろう泰斗もあっさり殺したし
「お前とやってもめんどう」と晴海とも戦わなかった。私的な感情が優先で、それ以外の事はあんまり気にしていない、直ぐ気に入る入らないで捨ててしまえるが、これは過去雹も言った通りで「妖怪に仲間意識はない」個人主義のバラバラの生物ではあるから

知的生命体には属するのだろうが、これはあまりに子供ぽい
が、これも晴海も雹も言った通りでそれだけに危険で読みにくくはある

計画性も薄いだろうし、その日の気分で暴れるか殺すのもおそらく厭わない、それが中途半端な知恵を持つと返って恐ろしい

分別の無い子供に強力な武器なり権力を与えるようなモノだ
何をするか分からない

ただ「初期に戻った」というとおりで、散発的な少ない予報しか起きず。時間は多くあったので、修練の時間もあったし、長としての行動も多く出来たともいえる

一つは襲撃事件で蛍が使ってた天駆であるが、これは神宮司の万錬霊法の。肉体に付与して強化する、初期に近い業だそう、本質的に晴海の早駆けもそうで。本来は手足に何らかの効果を付与し発揮する、で藤原の秘術として伝えられているのはこれに大分近い

その為藤原の秘術ではあるのだが、蛍子にお願いして教えを受けるが、どちらかと言えば晴海向きな業ではある。直接霊力を操るのは適正が高いから

理屈上は簡単で、天駆は霊力の付与を自身全体に掛けて、これを直接操って高速移動などするそう

極端に言えばだが、将棋盤に晴海というコマがあり、これを霊力という手を作る、その手でコマを掴んで強制的に目標点に移動させて指すみたいな感じらしい

自身でなんとかして移動するでなく、自身は肉体を行使せず霊力をその物を乗り物にして乗っかって霊力の方を移動させて目標点に移動する

「そんな事出来るのかな…」とはもちろんあるが天駆自体は早駆けと運用が違わないで覚えなくていい、高速移動できるのは違わないし、天駆のが距離は短いから

視覚範囲の近距離にテレポートしたかのような移動が可能なだけで、そこまで晴海には有益な業ではない、問題なのは、霊力の扱い方でこれが出来ると別な使い方も可能になる

それが最初期の業の総称大系である万錬法の根源になってるから、例えば、霊力を構築し乗っかるボードでなく、前方に壁として作れたら自身に硬くして纏わせたら、それが盾となり、鎧とする事も可能になる、そう、神宮司の法具の、刀で盾を作る、陣羽織で守る、の原始でもある

その為、藤原の秘術の初期訓練を習う
これも実は気訓練と互換性がある

集中し、手で丸を作る、気を練って手の中にボールを作るイメージをする、実際具現化する。これでボールが作れれば投げる事も可能だし、そのまま気砲になる、このボールを別な形、板なら前に縦に置いて壁になるという段階があるからだ
これが意図の通りに作れれば、そのままダイレクトに刀にするも、盾にするも拳にナックルみたいのを作って可能、と理屈上は単純であり、現代で使われている業がそれらの発展改善型なのも明らかである

これも可能な限りの時間を使って開発部の施設、メイや蛍子に教わりながら必死で訓練する。何故そこまで急ぎかというと晴海は何れ必ずネルガルと対する事になるのは必然だし、結局ネルガルをどうにかしないと全ては終わらないから

「もしかして元々はアッチの業なのかな…ネルガルも使ってたし、雹も意識せず使えてる」
「そう考えると初代は物の怪の嫁から得たのかもしれませんね…」

そう考えると何だか色々感慨みたいな感想もある、全てはそこから始まっているとも言えるから。

弐つは神宮司の御大としてのやる事だが、これも基本的に今までやってきたことの積み重ねがあり、急ぎの事も殆ど無い

武具も開発部やアスカから配備され一定数は支家に回されている、兵も通常の訓練に加えて、希望する人、上を目指したいという人も、四家、特に京極の教練に参加するのも良しとした

インカムも導入させ、最低限兵と支家間ので連携も可能に対応の範囲と幅も広がっているし、仮に後の時代、また襲撃事件のようなモノがあってもある程度の範囲は対応可能にした

本来は本家屋敷が拠点ではあるが、これも使わなかった、晴海には今は必要なく、各家との連携も通信連絡網を構築しているし、ECMのカウンター特化組織としてのポジションを優先する、少なくともこの一連の事態が片付くまではだが

年末から年明けまで平和ではあった、事件も予報も接敵も何れハグレの霊力値百前後の小物しか出てないし、戦闘も発生前に向こうが逃げて戻る事のが多いから

もう何も無ければいい、そう夢想するくらいの時間だった


が、一月の十日、夜に都内で予報が発生する「大」である、しかも場所が悪く綾辻の本拠に近い

幸いECMの学生組は冬休みで、レイナもマコトも綾辻の実家に戻っていたが距離的にはECMから行くのも遠い

予報ではあるので綾辻も即応し、レイナとマコトと配下の戦える者も、可能な限り車両で出ると同時、予報予想点である奥多摩町の人的規制と自主退避を警察から勧告

綾辻は本拠にこれまで開発している近代装備と設備を備える為ドローン機を編隊で飛ばし先に物理的対応を行かせる

丁度ECMにも人が薄く、晴海と雹も現場に向かうがかなり時間が掛かるだろう

「雹が行く!」として彼女が先に向かう、晴海の早駆けも早い事は早いが奥多摩手前までは30分~は掛かる

予報大だが、これは先の例、鬼の集団とかでなく相手は一匹、幸い消えたまま移動しているらしく、綾辻の本家に歩いて向かってるそう。霊力値は三百超えで実際対応できるか謎である

予報から15分、幸いというか街からそのまま前進し綾辻の実働部隊も間に合い、情報も伝達される

森の中の綾辻本家への一本道路を移動、これを綾辻の兵が包囲しながら見送る、というのもヘタに手を出すと他への被害も出かねない

なにしろソイツはサーモでの捜査では、人型で5メートルはあろうかという巨人だそう、しかも霊力値320で、普通に兵員が戦っても無駄である

その為、時人の指示で「こちらに向かっているなら敷地内周辺まで引き込む」とした、相手は遅いのでかなり時間は稼げるし引き込んでの兵器での攻撃なら対応可能と考えた

レイナらもバイクで一定距離を取って後退しながら監視追尾する

そうして相手と直接攻撃は空路、ドローンを使っての爆撃を打ち込みを交互に行い、足を止めるが、あんまりそれ自体効いてないらしく姿を現して構わず前進する

巨人ではあるのだが、白い紙で作った屈強なゴーレムみたいな感じらしい

「どうすんだよコレ…」としかレイナもいいようがない

一応地上をズシンズシンと歩いているのでそこから、ドローンの上空の攻撃に対応手段を持たないので手を払うが届くこともない

一方的に狙撃出来るが打撃としては弱く、火炎瓶火薬弾に近い放り爆撃なので、そんなに効果がないが嫌がらせとか気を反らすとかは出来ている

綾辻の本家屋敷に到達したのは更に30分後

門とかも何もないかのように踏み壊して正面の広い庭に侵入、これだけ時間を稼げているとこちらの準備も整っている、周囲を車両を壁にし数十人で囲んで、遠距離から其々空気砲で一斉射撃する

とんでもない量の着弾を受けて動けなくなるが、それでもあんまり被弾してないらしく、二分、数百発の射撃が終わったとたん。クロスブロックのガード姿勢から両手を広げて伸ばして殴ってくる

ロケットパンチみたいな感じというか、一反木綿の伸びる手の攻撃に似た反撃を打ってくる。それで左右に盾に配した車両を吹き飛ばして人員も巻き込まれて吹き飛ぶ

「ヤバイ!離れろ!」とレイナも指示して、前に出て囮になり、ゴーレムみたいのと対峙するが攻撃してどうにかなるもんでもない、そもそもデカすぎて殴れるのが相手の腰くらいの高さだし

そうして自身が囮になるが、相手もそれに付いてくる、相手の足元、周りを駆け抜けて打撃剣で殴りつつ、マコトが霊矢で狙撃

多分そっちのが効果があるらしい、巨人の頭に誘導命中し爆砕と共に、着弾点周囲のパーツというか欠片が飛散する

が、被弾しても基本お構いなしなのが面倒な所だ、動きは鈍いのでレイナを追っかけつつ旋回して殴ってくるが、回避は出来てるがそんなに続けられる訳ではない

8回、手の攻撃を避けてその都度マコトの霊矢も五発当てて被弾させているが、頭が半分無くなっても構わないらしい

9度目の手の攻撃、これをレイナは籠手で反らしたが威力があり過ぎてそのまま引っかかるように飛ばされた

当たりは浅いので大けがには成って無いし籠手の「弾き」効果で一応防げたが10メートルくらい吹っ飛んで3回転がった

「痛った⁉」と流石に直接ダメージを消せても
吹っ飛んで地面を転がったダメージは受け身するが消せない

止めの10回目のパンチが来るが幸い、時間稼ぎが功を奏したか雹が間に合う

パンチを打つ前に後ろから飛んで来て流星のような速度と勢いでゴーレムをドロップキックのように蹴り飛ばして止めて前に倒した

「レイナ逃げる!」

言って雹がレイナと代わる、相手ものっそりと起きて雹と対峙だが、ランク上はこれも雹のが上

パンチを伸ばして打ってくるが横に走って回避しつつ「ミギャ!」とか猫みたいな声で霊圧爪の遠距離切り裂きを返して頭を両断した

そこまで被弾しても平気で反撃してくるのだが、通常生物と違ってどこを破壊すれば機能停止するのか死ぬのかさっぱりなのが困る


基本的にスペックで上回る雹は高速で走り避けて切り裂きを打ち足元を切り崩す。巨人も体を削られ、支えられなくなり片手と膝を突いて動けなくなっていく

「チャンス」と見たレイナとマコトも九十九針と霊矢で狙撃、前後左右から連続で被弾し巨人も徐々に崩れていく

最終的には、面射撃で体をはぎ取られ、後ろに倒れながら下に崩れて粉々になった

陶器を落として壊れる、そんな最後となったが
基本残骸と化してもそれは残らない崩れ崩壊した体も徐々に消失していく

「あぶねー…こりゃダメかと思ったわ」

レイナが言って時人が直ぐに被害状況の確認、少なくともパンチに巻き込まれての人的被害も出てる

幸い死者は出てないが、車を吹っ飛ばして巻き込まれた兵が三人程負傷しているので、回復剤を打って医療施設に運ばれる

これらの後、晴海が到着するがギリ間に合わなかったという感じだが、片付いたのは片付いたのでやり方次第ではあのクラスの相手でもなんとかなるのは分かった

「…事前の準備が功を奏しましたな、足止めや時間稼ぎは可能なので援軍が間に合う、戦略方針通りの結果にはなりましたな」
「ですね、でもいきなり遠くに大物が出ると結構危ないですね」
「まあ、我々は妖怪に対する手段が元々薄いですからな、それでもどうにかなった。というのが現実に分かったのは大きい」
「とは言え、酷い事になってるなぁ…」

晴海も言った通り、目視では結構酷い惨状ではある大門をぶち壊されて車両も二台破壊負傷者も三人出てるし、あの相手でそれくらいなのは少ないと言えるのかどうか

「物理的な被害はどうという事もない直せますからな、やむを得ない範囲ではありましょう。問題なのは何時何処で起きるか本質的には分からない所でしょうか」
「そうですね、民間に出たらとんでもない事になってる」
「まあ、兎に角一般に被害が出なかったのは幸い、何れの事として撤収しましょう」
「はい」
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