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序曲
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そうして気訓練を続けていくとある程度は可能にはなってくる、晴海がやると斜め上に効果を発揮する場合が多いのだが
毎日続けて集中的やった一週間後には紐のコントロールというか一応動かす事は成功する
最初は風に揺れたのかな?と勘違いする程度にピクっと動いた程度だが道具に入れて自身の一部として接続するの感覚をつかみつつあった
ただその調子で注入してくと一メートルくらいの紐が暴れて天井に「ビターン!」と吹き上がって張り付いたが
「動いた⁉」を飛び越えてすっ飛んでいった
「難しい…」
「まあ、動くようにはなったけどどうみても制御が甘いぞ」
「だよね…ごめんなさい」
戦闘的な事では平和な日々が続いたが、その間も別に一般的な生活ではないが
移譲も一定タイミングで行い、修行と教本からの業の習得、ECMでの業務や調整、判断、京極や睦や綾辻からの相談や人事など実際やる事は多いが故に、大変ではあるのだが充実はしているだろう
そうして20日月曜の午後に晴海の携帯にメール、泰斗からで
「空き日に一度オレの屋敷に来い、直接渡すモノがある」との電文がありOKの返信を出して翌日に向かう。
普通に火曜の平日なので学校を終えて、午後三時に高速列車に乗って奈良へ向かう。あまり時間的に余裕があるという訳でもないので誰かを伴ってでもなく、一人でいいだろうとし、どの道、そんな大きな用事でもないだろうとも思ってたし
大阪で降りて、タクシーを使い結果的に着いたのは午後五時手前くらい、そうして屋敷内に案内されて再び泰斗と対座
「来たか」
「どうしました?直接渡すモノとは?」
「内容的には大した事ではない、何れ当主という形が定まったのだからその知識を知る必要があると思ってな」
泰斗はそうして対面している晴海に、畳を滑らすようにファイルブックを投げてよこした
「これは?」
「うむ…神宮司の支家というのは知ってるか?」
「ええと、前回、調べもので本家屋敷に行った際、キラさんという方に大まかには聞きました、今は神宮司の支家は企業体で言う部署みたいな扱いとか」
「そうだな、実務を行う完全な補佐の、手足の家という扱い其々やる事や得意な事は違うが、皇室で言う宮内庁みたいなモノになっている」
「はい」
「まず一つはその支家の情報だ、基本神宮司家の当主、代表はその支家の集まり、部会に何をしろと通達する」
「らしいですね」
「ああ、で、命ずるだけではあるんだが各家の現状や所在地、伝達を先に行う、優先度などもある、これは代表に成る前には知っといた方がいい」
「なるほど、いざ当主になってもこれらを知らないと命令も出せないと」
「まあ、基本的に一ノ瀬か黛の誰かに伝達すれば向こうが勝手にやるんだがそれもあまり知らないでは困るのでな」
「わかりました、けど直接である理由は?」
「ああ…実はそれは元々口伝でやっていた。親から子へ代々伝授の形に近い、それで交代前に子が支家の情報と伝達手段、面通しというか、双方に認知する」
「伝統的なモノですね」
「まあな、儀式的なモノでもあるが、直系の当主かそれに類する者しかこれはやらん、なので知る範囲も狭い必要がある」
「つまり兄さんと僕と」
「そういう事だ、目を通して置け」
「はい、借りてもいいんですか?」
「オレは記憶している、持っていってお前も覚えろ。とまでは要らんか」
「今日日は電子メールを登録でもいいですしね…」
「まあ、一応そういう事だから、目録を見て挨拶くらいはしておくといい」
「はい」
そうして貰った資料をペラ見していくと6家支家は奈良の範囲にあるのは一ノ瀬の1つ、例外的にある獅童の二つで
他は各地に散っている
「近い所にある訳じゃないんですね」
「まあな。今日日はそれでも問題ないが昔と違ってとりあえず通信手段があるのでオレの場合こうしろと通達するだけではあるし」
「兎に角、一度訪問してみます」
「うむ」
「それから、次代の事なんだけど…」
「なんだ?」
「僕がやるのはいいとして兄さんはどういう立場になるの?」
「お前次第だろうな、序列が逆になるので全体の命令とか戦略とかはお前が扱う事になる」
「うーん…なんか今とあんまり変わらない感じになりそうだけど、どの道兄さんにこっちは任せる事になると思うし」
「ふむ、お前は東京を動かんか」
「魔の対処を考えると基本そうなると思う、兄さんは西を統括はそんなに変わらないし」
「そうかも知れんな、だが、ダブルトップという訳にはいかない、何れにしろ、名目上だけにしろどちらかが代表に納まる」
「組織としてはそうだろうね社長二枚というのは分断の元だし」
「世間でもよくあるしな、創業一族で回すにしてもその中で権力争いのようなモノは小さい規模でもある。そういうのは消して置くべきだろう」
「そうですね…」
「まあ、どの道会合で方針は決まっている、諦めて精進するんだな」
「ええ、不承ではありますがそのつもりです」
「なら結構」
「はい、では」
と、泰斗から資料を貰い屋敷を出た。
そうして帰りのタクシーを拾って、資料を読みつつ
携帯でキラに電話してみるが結論から言えば
「挨拶ですか?それは就任の際にあると思うのでそこまで必要ではないかと…」と返信される
「我々の方から式の際、本家等に集まってこちらから挨拶すると思います、勿論事前に面通しするのも構わないのですが」
「そうなんだ」
「基本支家其々がどのような役割を受け持っているかだけ知っておけばよいかと」
「キラさんと連絡出来れば問題ないと言えば無いか…」
「そうですね、もし事前に会いたいという事でしたら、伊勢の黛くらいでしょうか」
「それは?」
「会社で言えば一ノ瀬は経理や事務ですが、黛は総務というか、実働部隊も持ちますので」
「なるほど、支家で言えば双璧て感じかな」
「我々は命を受け、そう達成するだけですから本来は必要ではありませんが交流を持ちたいという事であれば、そうしても良いという感じです」
「了解、丁度帰りのルート近くだし、聞きたい事もあるし一応行ってみるよ、ありがとう」
「はい」
そういう流れでそのままタクシーの目的地を変更、所在地や連絡網は資料にある為、ついでに向かう事にした
「実際は必要ない」との事だが、晴海は家の者とはそもそも感覚が違う、命じて後は勝手にやっておけ、という対応が出来ないともいう、なので何れにしろ挨拶回りはするつもりではあるが
なんだかんだ車を使った為、到着は18時過ぎ、大きな日本式の屋敷について呼び鈴を押し、名乗って中に通された
大広間みたいな座敷で対面したのは現在当主である男性で
比較的若くまだ20代だろう
案の定平伏されて挨拶された
「黛 咲也で御座います」
「あ、晴海ですどうぞ普通にしててください」
そうして双方正座で顔合わせしたが、咲也はまだ23才で、中々の美形で長めの髪、身長も高めで涼し気で優しそうな印象がある
「して?本日はどのような?」
「はい、次代の事は聞いていますか?」
「はい」
「僕はこれまで一般社会側で育てられたので家の事に疎い、神宮司の支家というのもあまり知らないので事前に確認と挨拶をと」
「…それはまた珍しいですね、我々は直下の支家ではあるんですが、本家当主と会う事もそうない」
「みたいですね…命じて下がやるそうですけど、僕はそれが極端な気がしたので」
黛家は二代目神宮司の妹の血統で、既に神宮司と名乗ってなく、血統的にはもうずいぶん離れているが遠い血族には違いないらしい
会社で言えば総務という感じと説明されたが、実際はもっと範囲は広い
全体の調整役でありながらも資産・商売も広く行っており、実働部隊も持つ、との通りであくまで神宮司に限った範囲でしか兵員は出さないが本家屋敷の警備なども行っており、武の側面もある
現代でいう警備任務や事態が発生すれば戦う用意もあり訓練なども行う。ただ退魔の業的なモノがある訳ではなく獅童とはまた違ったアプローチでの武闘派ではあるが
「じゃあ退魔の事はやらないんですね」
「そこは四家が主導か、獅童家の領分でしょうかね、独自に業を与えられているので」
「その点についてはどう思われます?」
「役割分担なのでそれはそれでよいとは思います、我々の範囲に限ってはですが、部署としてやることが違うのは当然ですし、あまり混合しない方がよいかと」
「今の神宮司は他所に退魔業を与えられる環境にもないですしね」
「それもあります、一方、こないだの襲撃事件のような事があると問題ではないかともありますね」
「同感です」
「神宮司の支家というのは他所と違って役割を明確化することによって衝突を避けている面もあります、あくまで晴海様次第ではありますが」
「なるほど、経理が営業までやったらオカシイというか」
「そうですね、権力バランスというか、発言権が増減しますので、そうなると余計な分裂になりえますので。黛に限っては全体統括の面もあるので裁量が広いのはありますが、それ故に自制的である必要もあります」
「だから上下を明確に設定しているとも言う」
「そういう事になります、神宮司本家は大御所、我々はその下で裁量を任されているに過ぎない、そういうのは時代錯誤ですが必須ではあります」
「今僕は東京で独自の専門部隊を持っているんですがそこで家の垣根を越えて、業や手法の伝授とかしてますが、これをこちら側でやるのはどうでしょう?」
「そうですね…それは四家の特異性を壊しかねないので実際は難しい、京極は紙術があるから京極であるとも言いますから」
「そうかもしれないですね」
「もしそのつもりであるなら神宮司の物である必要がある」
「例えば一閃みたいな?」
「そうなります、獅童家は神宮司に与えられた専用の業がある、故に直属の支家としての、退魔の役割があるとも言いますから」
「やっぱり僕が掘り起こして支家に与える、という事になるのかな…」
「どういう事でしょう?」
「ええと、神宮司の業て殆ど失われていますよね、けど僕はどうも霊力というか才覚的には初代~に類する方向性を持ってて、結構色々習得出来ている。なので現代で、過去やっていたような僕から兵とかに伝える、なら可能かなと」
「なるほど、確かにそれならいいかもしれませんね、私的な事を言えば、神宮司の支家であり、それなりに武力を有する
のに、退魔の事件、事態があった場合、我々は何も対応手段を持たないというのは聊か極端には思います」
「ですよね、父さんの事件みたいのがあったら自己防衛も出来ないとか、どうかなと思います」
「出て行って退魔事件を直接対応するでなくても防衛の業とかはあってもよいかと」
「それなんですが、神宮司の支家て兵も育成してるんですよね?具体的にどのような形で?」
「一般的と言えるか謎ですが、希望者は棒術か剣術を殆どの者が覚えます、あとは警護の決まり事とかマニュアルとかです、そこから退魔師としても学びたいと言う者は京極などの教練に参加させてもらう事はありますね、それも数名でしょうか?」
「棒術、確かに現代では妥当なのかな、そうなると睦の三法ぽいモノになるか」
「仮に晴海様の方針があったとして習得して我々が専門術として得て少なくとも退魔に対しても、最低限防衛するとなるとそれも敷居が高くありますな、元々退魔師としての力を得たいと修行する者は少ないからです」
「そうだね…元々支家の領分があるし、神宮司の業て霊力消費がおかしいし」
そうして一通りの質疑、時間が時間なのもあり夕食を用意され、これも現状確認などしながら比較的和やかに会談を終え
咲也とも直接の携帯の番号の交換を行い退出する
既に20時だが「送る」とされたが
「いいよ、一人で帰れるから」とこれも拒否して帰る事にした
幸い伊勢から高速列車があるのでこれに乗り後は東京に向かうだけだ
座席で業の方のファイルを開き先の会談で出た部分も調べる
「基本棒術や剣術を一般の護衛とかには教えてるらしいけど、それに類するモノてあったかな…」という点だが
やはり限定したモノはないらしいし、過去精々使ったのは刀剣類で、これに付与して使った事があるいう程度で確立した業という事でもない
現在晴海が使っている霊刀が基準なように武器を用いてもその方面になる
ただ睦に伝えた秘術、三法の打真は元は神宮司の業で現在使ってる霊刀も力の方向性を変えて現在の形になってるだけで
本来獲物を選ばないそう
例えば刀という形に拘らずとも、常に丁度良い武器がある訳でもなく先人は適当な道具に付与して効果を発揮したらしい
石を拾ってこれを投擲操作とか、手ごろな棒があればこれにも付与して使った、原始はもっと形を決めていない、応用性が広い形で業を行う事も多々あったし、何も無ければ徒手でも可能なそう
「うーん…じゃあ敢えて刀でなく手ごろな物干しざおとかそういうのでも一応イケルのか、その操作と霊力があればだけど…」
「あるいは、近代装備を入れてしまうか、それなら別に特異な才能は必要ないし、ま、何れにしろもう少し開拓しないとな…」
そうブツブツ言いつつも読んでいたが、名古屋を越えて暫くの所で予報が通知される
「え⁈」と思いスクリーン表示するが、それも5秒も経たず消える
晴海の場合線量計と同時に予報通知もグラスの方に出している為、誤報かと思われる通知も見れたのもある、実際予報はこうした事が偶にあるが
「次の豊橋手前か、一応確認してみようと」
と中途で電車を降り蒲郡駅で線量計で探査する、正直街中だと線量計は効果が不安定で対象が人間を含めて多く発生してしまうから
極端に言えばだが、主観表示で言えば150~とすると面前のスクリーンに対象〇が山の様に出てくるので生物が多いとまず絞れない
これを数字を200、300と対象調整し、距離範囲も拡大縮小を繰り返しそれっぽいもの?の候補が絞れる
北東方向にかなり強い数字が表示された為、これら情報も無線を入れ、スケートに履き替え表示方向に早駆けで向かった
既に22時近く、街から離脱し自然地帯に向かうと一気に人も減りハッキリしてくる300以上の対象が1
幸い表示上の数は少ないので大規模な対応が必要かは微妙だ、そもそも西は警察の対応自体関東と違い積極的に連携して動いている訳ではない、通達命令から退避封鎖の類もし難い
専用回線無線で周囲通知して応対したのが自身の警戒範囲にある睦で直接音声の返信を受ける、相手も驚いていたようだが
「え?晴海様ですか?どうして愛知方面に?」
「神宮司本家に用事があってその帰りだよ、そうしたら一瞬だけ予報が出た、近隣で降りて線量計で捜査してたらこっちへ」
「詳細は⁉」
「線量計捜査では300以上が1、今向かっている」
「300⁉、分かりました周辺に居る睦の人員を回します」
「方角的に御堂山付近だと思う対応できる?」
「陸路が少ないので可能とは思います、警察組織にも要請します」
「一応頼むよ」
「はっ」
そうして早駆けで20分程で山に入り、距離的にも近い所まできて着地。間に障害物が多い程、晴海の早駆けは有効ではある。ただ、一人で来たのは軽率だろう、遠征地ではあるから仕方なくはあるんだが
毎日続けて集中的やった一週間後には紐のコントロールというか一応動かす事は成功する
最初は風に揺れたのかな?と勘違いする程度にピクっと動いた程度だが道具に入れて自身の一部として接続するの感覚をつかみつつあった
ただその調子で注入してくと一メートルくらいの紐が暴れて天井に「ビターン!」と吹き上がって張り付いたが
「動いた⁉」を飛び越えてすっ飛んでいった
「難しい…」
「まあ、動くようにはなったけどどうみても制御が甘いぞ」
「だよね…ごめんなさい」
戦闘的な事では平和な日々が続いたが、その間も別に一般的な生活ではないが
移譲も一定タイミングで行い、修行と教本からの業の習得、ECMでの業務や調整、判断、京極や睦や綾辻からの相談や人事など実際やる事は多いが故に、大変ではあるのだが充実はしているだろう
そうして20日月曜の午後に晴海の携帯にメール、泰斗からで
「空き日に一度オレの屋敷に来い、直接渡すモノがある」との電文がありOKの返信を出して翌日に向かう。
普通に火曜の平日なので学校を終えて、午後三時に高速列車に乗って奈良へ向かう。あまり時間的に余裕があるという訳でもないので誰かを伴ってでもなく、一人でいいだろうとし、どの道、そんな大きな用事でもないだろうとも思ってたし
大阪で降りて、タクシーを使い結果的に着いたのは午後五時手前くらい、そうして屋敷内に案内されて再び泰斗と対座
「来たか」
「どうしました?直接渡すモノとは?」
「内容的には大した事ではない、何れ当主という形が定まったのだからその知識を知る必要があると思ってな」
泰斗はそうして対面している晴海に、畳を滑らすようにファイルブックを投げてよこした
「これは?」
「うむ…神宮司の支家というのは知ってるか?」
「ええと、前回、調べもので本家屋敷に行った際、キラさんという方に大まかには聞きました、今は神宮司の支家は企業体で言う部署みたいな扱いとか」
「そうだな、実務を行う完全な補佐の、手足の家という扱い其々やる事や得意な事は違うが、皇室で言う宮内庁みたいなモノになっている」
「はい」
「まず一つはその支家の情報だ、基本神宮司家の当主、代表はその支家の集まり、部会に何をしろと通達する」
「らしいですね」
「ああ、で、命ずるだけではあるんだが各家の現状や所在地、伝達を先に行う、優先度などもある、これは代表に成る前には知っといた方がいい」
「なるほど、いざ当主になってもこれらを知らないと命令も出せないと」
「まあ、基本的に一ノ瀬か黛の誰かに伝達すれば向こうが勝手にやるんだがそれもあまり知らないでは困るのでな」
「わかりました、けど直接である理由は?」
「ああ…実はそれは元々口伝でやっていた。親から子へ代々伝授の形に近い、それで交代前に子が支家の情報と伝達手段、面通しというか、双方に認知する」
「伝統的なモノですね」
「まあな、儀式的なモノでもあるが、直系の当主かそれに類する者しかこれはやらん、なので知る範囲も狭い必要がある」
「つまり兄さんと僕と」
「そういう事だ、目を通して置け」
「はい、借りてもいいんですか?」
「オレは記憶している、持っていってお前も覚えろ。とまでは要らんか」
「今日日は電子メールを登録でもいいですしね…」
「まあ、一応そういう事だから、目録を見て挨拶くらいはしておくといい」
「はい」
そうして貰った資料をペラ見していくと6家支家は奈良の範囲にあるのは一ノ瀬の1つ、例外的にある獅童の二つで
他は各地に散っている
「近い所にある訳じゃないんですね」
「まあな。今日日はそれでも問題ないが昔と違ってとりあえず通信手段があるのでオレの場合こうしろと通達するだけではあるし」
「兎に角、一度訪問してみます」
「うむ」
「それから、次代の事なんだけど…」
「なんだ?」
「僕がやるのはいいとして兄さんはどういう立場になるの?」
「お前次第だろうな、序列が逆になるので全体の命令とか戦略とかはお前が扱う事になる」
「うーん…なんか今とあんまり変わらない感じになりそうだけど、どの道兄さんにこっちは任せる事になると思うし」
「ふむ、お前は東京を動かんか」
「魔の対処を考えると基本そうなると思う、兄さんは西を統括はそんなに変わらないし」
「そうかも知れんな、だが、ダブルトップという訳にはいかない、何れにしろ、名目上だけにしろどちらかが代表に納まる」
「組織としてはそうだろうね社長二枚というのは分断の元だし」
「世間でもよくあるしな、創業一族で回すにしてもその中で権力争いのようなモノは小さい規模でもある。そういうのは消して置くべきだろう」
「そうですね…」
「まあ、どの道会合で方針は決まっている、諦めて精進するんだな」
「ええ、不承ではありますがそのつもりです」
「なら結構」
「はい、では」
と、泰斗から資料を貰い屋敷を出た。
そうして帰りのタクシーを拾って、資料を読みつつ
携帯でキラに電話してみるが結論から言えば
「挨拶ですか?それは就任の際にあると思うのでそこまで必要ではないかと…」と返信される
「我々の方から式の際、本家等に集まってこちらから挨拶すると思います、勿論事前に面通しするのも構わないのですが」
「そうなんだ」
「基本支家其々がどのような役割を受け持っているかだけ知っておけばよいかと」
「キラさんと連絡出来れば問題ないと言えば無いか…」
「そうですね、もし事前に会いたいという事でしたら、伊勢の黛くらいでしょうか」
「それは?」
「会社で言えば一ノ瀬は経理や事務ですが、黛は総務というか、実働部隊も持ちますので」
「なるほど、支家で言えば双璧て感じかな」
「我々は命を受け、そう達成するだけですから本来は必要ではありませんが交流を持ちたいという事であれば、そうしても良いという感じです」
「了解、丁度帰りのルート近くだし、聞きたい事もあるし一応行ってみるよ、ありがとう」
「はい」
そういう流れでそのままタクシーの目的地を変更、所在地や連絡網は資料にある為、ついでに向かう事にした
「実際は必要ない」との事だが、晴海は家の者とはそもそも感覚が違う、命じて後は勝手にやっておけ、という対応が出来ないともいう、なので何れにしろ挨拶回りはするつもりではあるが
なんだかんだ車を使った為、到着は18時過ぎ、大きな日本式の屋敷について呼び鈴を押し、名乗って中に通された
大広間みたいな座敷で対面したのは現在当主である男性で
比較的若くまだ20代だろう
案の定平伏されて挨拶された
「黛 咲也で御座います」
「あ、晴海ですどうぞ普通にしててください」
そうして双方正座で顔合わせしたが、咲也はまだ23才で、中々の美形で長めの髪、身長も高めで涼し気で優しそうな印象がある
「して?本日はどのような?」
「はい、次代の事は聞いていますか?」
「はい」
「僕はこれまで一般社会側で育てられたので家の事に疎い、神宮司の支家というのもあまり知らないので事前に確認と挨拶をと」
「…それはまた珍しいですね、我々は直下の支家ではあるんですが、本家当主と会う事もそうない」
「みたいですね…命じて下がやるそうですけど、僕はそれが極端な気がしたので」
黛家は二代目神宮司の妹の血統で、既に神宮司と名乗ってなく、血統的にはもうずいぶん離れているが遠い血族には違いないらしい
会社で言えば総務という感じと説明されたが、実際はもっと範囲は広い
全体の調整役でありながらも資産・商売も広く行っており、実働部隊も持つ、との通りであくまで神宮司に限った範囲でしか兵員は出さないが本家屋敷の警備なども行っており、武の側面もある
現代でいう警備任務や事態が発生すれば戦う用意もあり訓練なども行う。ただ退魔の業的なモノがある訳ではなく獅童とはまた違ったアプローチでの武闘派ではあるが
「じゃあ退魔の事はやらないんですね」
「そこは四家が主導か、獅童家の領分でしょうかね、独自に業を与えられているので」
「その点についてはどう思われます?」
「役割分担なのでそれはそれでよいとは思います、我々の範囲に限ってはですが、部署としてやることが違うのは当然ですし、あまり混合しない方がよいかと」
「今の神宮司は他所に退魔業を与えられる環境にもないですしね」
「それもあります、一方、こないだの襲撃事件のような事があると問題ではないかともありますね」
「同感です」
「神宮司の支家というのは他所と違って役割を明確化することによって衝突を避けている面もあります、あくまで晴海様次第ではありますが」
「なるほど、経理が営業までやったらオカシイというか」
「そうですね、権力バランスというか、発言権が増減しますので、そうなると余計な分裂になりえますので。黛に限っては全体統括の面もあるので裁量が広いのはありますが、それ故に自制的である必要もあります」
「だから上下を明確に設定しているとも言う」
「そういう事になります、神宮司本家は大御所、我々はその下で裁量を任されているに過ぎない、そういうのは時代錯誤ですが必須ではあります」
「今僕は東京で独自の専門部隊を持っているんですがそこで家の垣根を越えて、業や手法の伝授とかしてますが、これをこちら側でやるのはどうでしょう?」
「そうですね…それは四家の特異性を壊しかねないので実際は難しい、京極は紙術があるから京極であるとも言いますから」
「そうかもしれないですね」
「もしそのつもりであるなら神宮司の物である必要がある」
「例えば一閃みたいな?」
「そうなります、獅童家は神宮司に与えられた専用の業がある、故に直属の支家としての、退魔の役割があるとも言いますから」
「やっぱり僕が掘り起こして支家に与える、という事になるのかな…」
「どういう事でしょう?」
「ええと、神宮司の業て殆ど失われていますよね、けど僕はどうも霊力というか才覚的には初代~に類する方向性を持ってて、結構色々習得出来ている。なので現代で、過去やっていたような僕から兵とかに伝える、なら可能かなと」
「なるほど、確かにそれならいいかもしれませんね、私的な事を言えば、神宮司の支家であり、それなりに武力を有する
のに、退魔の事件、事態があった場合、我々は何も対応手段を持たないというのは聊か極端には思います」
「ですよね、父さんの事件みたいのがあったら自己防衛も出来ないとか、どうかなと思います」
「出て行って退魔事件を直接対応するでなくても防衛の業とかはあってもよいかと」
「それなんですが、神宮司の支家て兵も育成してるんですよね?具体的にどのような形で?」
「一般的と言えるか謎ですが、希望者は棒術か剣術を殆どの者が覚えます、あとは警護の決まり事とかマニュアルとかです、そこから退魔師としても学びたいと言う者は京極などの教練に参加させてもらう事はありますね、それも数名でしょうか?」
「棒術、確かに現代では妥当なのかな、そうなると睦の三法ぽいモノになるか」
「仮に晴海様の方針があったとして習得して我々が専門術として得て少なくとも退魔に対しても、最低限防衛するとなるとそれも敷居が高くありますな、元々退魔師としての力を得たいと修行する者は少ないからです」
「そうだね…元々支家の領分があるし、神宮司の業て霊力消費がおかしいし」
そうして一通りの質疑、時間が時間なのもあり夕食を用意され、これも現状確認などしながら比較的和やかに会談を終え
咲也とも直接の携帯の番号の交換を行い退出する
既に20時だが「送る」とされたが
「いいよ、一人で帰れるから」とこれも拒否して帰る事にした
幸い伊勢から高速列車があるのでこれに乗り後は東京に向かうだけだ
座席で業の方のファイルを開き先の会談で出た部分も調べる
「基本棒術や剣術を一般の護衛とかには教えてるらしいけど、それに類するモノてあったかな…」という点だが
やはり限定したモノはないらしいし、過去精々使ったのは刀剣類で、これに付与して使った事があるいう程度で確立した業という事でもない
現在晴海が使っている霊刀が基準なように武器を用いてもその方面になる
ただ睦に伝えた秘術、三法の打真は元は神宮司の業で現在使ってる霊刀も力の方向性を変えて現在の形になってるだけで
本来獲物を選ばないそう
例えば刀という形に拘らずとも、常に丁度良い武器がある訳でもなく先人は適当な道具に付与して効果を発揮したらしい
石を拾ってこれを投擲操作とか、手ごろな棒があればこれにも付与して使った、原始はもっと形を決めていない、応用性が広い形で業を行う事も多々あったし、何も無ければ徒手でも可能なそう
「うーん…じゃあ敢えて刀でなく手ごろな物干しざおとかそういうのでも一応イケルのか、その操作と霊力があればだけど…」
「あるいは、近代装備を入れてしまうか、それなら別に特異な才能は必要ないし、ま、何れにしろもう少し開拓しないとな…」
そうブツブツ言いつつも読んでいたが、名古屋を越えて暫くの所で予報が通知される
「え⁈」と思いスクリーン表示するが、それも5秒も経たず消える
晴海の場合線量計と同時に予報通知もグラスの方に出している為、誤報かと思われる通知も見れたのもある、実際予報はこうした事が偶にあるが
「次の豊橋手前か、一応確認してみようと」
と中途で電車を降り蒲郡駅で線量計で探査する、正直街中だと線量計は効果が不安定で対象が人間を含めて多く発生してしまうから
極端に言えばだが、主観表示で言えば150~とすると面前のスクリーンに対象〇が山の様に出てくるので生物が多いとまず絞れない
これを数字を200、300と対象調整し、距離範囲も拡大縮小を繰り返しそれっぽいもの?の候補が絞れる
北東方向にかなり強い数字が表示された為、これら情報も無線を入れ、スケートに履き替え表示方向に早駆けで向かった
既に22時近く、街から離脱し自然地帯に向かうと一気に人も減りハッキリしてくる300以上の対象が1
幸い表示上の数は少ないので大規模な対応が必要かは微妙だ、そもそも西は警察の対応自体関東と違い積極的に連携して動いている訳ではない、通達命令から退避封鎖の類もし難い
専用回線無線で周囲通知して応対したのが自身の警戒範囲にある睦で直接音声の返信を受ける、相手も驚いていたようだが
「え?晴海様ですか?どうして愛知方面に?」
「神宮司本家に用事があってその帰りだよ、そうしたら一瞬だけ予報が出た、近隣で降りて線量計で捜査してたらこっちへ」
「詳細は⁉」
「線量計捜査では300以上が1、今向かっている」
「300⁉、分かりました周辺に居る睦の人員を回します」
「方角的に御堂山付近だと思う対応できる?」
「陸路が少ないので可能とは思います、警察組織にも要請します」
「一応頼むよ」
「はっ」
そうして早駆けで20分程で山に入り、距離的にも近い所まできて着地。間に障害物が多い程、晴海の早駆けは有効ではある。ただ、一人で来たのは軽率だろう、遠征地ではあるから仕方なくはあるんだが
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これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
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忍者の血を引く重清は、無事正式に忍者となることがでにるのか。そして彼は何を目指し、どう成長していくのか!?
これは忍者の血を引く普通の少年が、ドタバタ過ごしながらも少しずつ成長していく物語。
初投稿のため、たくさんの突っ込みどころがあるかと思いますが、生暖かい目で見ていただけると幸いです。
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