晴海様の神通力

篠崎流

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襲撃

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そうして当日は本家の屋敷に充てられた客間に滞在、雹は只管テレビを見て「アレ何?コレ何?」とその都度質問するので晴海も其れに付き合い教えながら割とゴロゴロしながら過ごした

就寝は早く21時くらいだろう、そして事の起こりはおそらく零時前後

「ハルミ起きて」と雹に揺さぶられて起きた
「ん…どうしたの?」
眼を擦って体を起こして時計を見たが丁度その時間だった

「なんか変な匂いする…」
「匂い?…特に変な匂いはしないけど…」
「うーん…よくわかんないけど、刺さるみたいな、結構強いよ」

そう言われてもさっぱりなのだが、まだ雹は表現が上手くなく要領を得ない、けど晴海が感じなくても彼女がそう云うならまるで無視も出来ないだろう、起きて着替えて、客間の庭側のふすまを開けて通路、外を見回す

既に時間が時間なので静かではあるが晴海も違和感を感じる、静かが無音空間に近い、風も虫も鳴いていない、まるで真空のように錯覚する

「僕も分かった…なんだこれ」そう呟き直ぐに陣羽織とヘッドギアと刀を装備して雹と共に庭から出て、屋敷の外門に向かい霊力探知機とサーモも起動。

残念ながら西には予報装置はまだ無いので範囲警戒は通知されないが異常な霊力値が表示され流石に晴海も最大警戒態勢を取る其れも当然だ何しろ

「な⁉…五百二⁈、何だコレ!?」だったので驚いて口に出たくらいだし

「故障…じゃないよね?」
「違うと思う、なんか強いのが居るのは分かるし」
「もしかして雹は察知できるの?」
「察知?とは違うと思う、危機感??みたいな」
「何れにしろ…表示明確に方向も距離も出てる…確認しないと」
「う、うん」

神宮寺本家は山というか低い丘下方にあり、表示は上を指している、深夜の真っ暗闇でも問題はないし、ライトは不要だろう、サーモグラフの調整で暗視装置に近い事も出来るし、隠密行動のが良い

距離は近い、対象との距離も1㎞も無いので静かに目標点に接近しつつ、その行程で一応ECM等にも伝文、メールを入れる。あまり会話出来る状況でもないので伝えるだけ伝えて
向うに対処してもらう

10分くらい、慎重且つ急ぎで現場に向かい丘の中腹にある開けた神社の様な場所に着くが此処も勿論神宮寺の一部施設ではあるが、建物と広い境内というか整備された庭のような場所

晴海は建物と庭周囲の木々等に隠れながら移動し離れた所から、表示されている場所をサーモグラフで「上」を見る。そう表した通り、対象は建物の屋根の佇んいたが、特別な今までのような奇異な形、怪物的外形はしてないだろう

ただ、そうして隠密で此処まで来たが、本質的には殆ど無意味ではあったが、何故なら、隠れて接近した晴海らを向うは「霊力」で察知していたから

ソイツは屋根からフワッと飛び降り、スーと地面を滑空、飛ぶように晴海らの前に来て八メートル距離を取って木の裏に隠れた晴海と対峙した。バレてるなら仕方ないだろう、と晴海と雹は姿を晒し武器を構えた

サーモグラフを外して裸眼でソイツを見たが、見姿は略人型で晴海側の認識する女性体だろう

ただ人間ぽいだけで、そうではないのは明らかで、紫に近いロングの髪と褐色に近い肌、半裸に近い服というか、スリングショット水着に見える形の衣装に黒のラバーベルトの様なモノを無数に巻き付けているが勿論布でも皮でもない

顔も人とあまり違いなく、かなり整った作り物の様で異常に無表情で生気が薄い、特に印象が強いのは狐目三白眼で射貫くような紫の眼、既存知識で言う女性系の悪魔という感じだ

「君は…」思わずそう問いかけて構えも自然に緩んだが幸い相手は好戦的ではないらしい、ただ雹の時と同じなのか、意思は疎通しているようだが言語に寄るコミュは不自由にも感じる

「…お前、何だ」と片言の言語で返して首を傾げる様な仕草をしただけだ

「なんだ?て、僕の事かい?その、晴海だけど…」
「晴海…」

見姿が妖怪、獣的でもないのもあるが、一応会話のキャッチボールが可能なので略無意識で霊刀の発動を消し、一歩接近するが。これを雹が止めた、晴海と相手の前に立ちはだかり、前傾で構えて威嚇する

「雹?」
「ダメ…敵意は無いけど危険」
「それはどう…」
「餌て認識してる」

相手は雹が前に出て威嚇したので、そのまま滑るように少し下がって特に表情の類を変える事もなく

「こちらにもお前のような者が居るか」

と何を意味しているのか分からない事言ってスーッと飛ぶように離れてそのまま跳躍、空の闇の中に混ざる様に消え。探査機からの表示も消えた、おそらく反面側に帰ったのだろうか

数間置いて晴海も警戒を解いた

「雹、一体何が?あの子は?何か遣り取りを?」
「何も、でも感じる、強い欲求みたいのを向けた」
「それで餌と」
「近い感覚、兎に角無闇に接触しちゃダメ」
「わ、わかった…」

一応そのまま周囲をサーモグラフや装置で調べたが何も無く晴海らも一旦戻る事にした。残念ながら、今自分に出来る事も、分かる事もないだろう

「それにしてもあんなに大きな数値の妖怪?なのかな、初めて見た、その割には危険そうでもないけど」
「見た目はそう、でも平坦でも無い気がする」
「どういう意味?」
「雹にも分からない、いろんな感情的?なモノを出してる戦うのかも知れない」
「じゃあ安全な訳でもないという感じなのか…」

これも残念だが雹には同種的に皮膚感覚で分かる事はあるのだが、其れを言葉で表現する事が出来ないので詳しい事も分からないし、検証は後回しだろう

そうして屋敷に戻るが、外門の手前まで来た所でまた違和感を感じる、出た時も耳鳴りがしそうな静寂だったが、今度は静寂と闇の中に異常な重苦しさを感じる、咄嗟に霊力計と暗視装置を起動し警戒

そして直ぐ数字で緊急事態で有る事も知る。百m範囲に二百以上の霊力値が複数、晴海も霊刀を発動して庭に駆け込むが略同時に悲鳴の後、屋敷の中から外へ転がるように人が出て倒れる、本家の警護人や世話の者の女性だ

「なんだ?!」と驚いたが、同時に、うつ伏せで転んだ女性の後頭部に上から白い尖ったドリルのようなモノがストンと軽くだが、貫通して断末魔の声すら挙げさせず殺した

先に戦った一反木綿の紙のような手での一撃に近い。そちらを見ると屋内から付き殺した相手が出て来て晴海らを見つけ、ゆっくり向き直る

一応二足歩行の人型だが、形容する言葉がない、逆三角の同体に小さい足、手だけ異常に長い無機物の宇宙人、イカのような姿で同体にギョロと目がある

あまりの事態に晴海も硬直したが、相手はそんな事はお構いなしだ、先ほど女性を殺したように、直ぐ両手を尖らせ伸ばして攻撃する

が、手が晴海に到達する前に雹が前に飛び出し爪で横に払って退けた

守ろうとしたというより、敵意を向けて来たイカに対して瞬時に戦闘状態、迎撃態勢に入ったに近い、その証拠に雹は相手の突きを払い飛ばすと同時にもう前に駆けて近接で殴りに行っている

ただ今の雹は数字だけで言えばそこいらのC以下の妖怪ではもう勝てない、イカは二百前後、雹は三百後半~四百な訳で

イカの二撃目の左の攻撃も切り払いつつ両断し瞬時に相手の懐に入ってイカの胴体部分と近くにある右目も切り裂いた

そうして両者取っ組み合いのまま転がり回り主導権を取り合うが雹のが力も速度も上だ

イカを地面に倒して馬乗りになり頭を掴んで爪で裂き潰しながら地面にぶつける様に何度も叩きつける

側から見ると巨大イカと小娘の殴り合いの滑稽な光景だが音がグロい。雹に掴まれ地面に叩きつけられるイカが抵抗しながらも
「ドカン!ドカン!」という爆音と地響きで解体されている訳で

無論妖怪に痛みも何も無く解体されながらも抵抗するが段々イカも動かなく成って行く。抵抗の意思があろうと体が破壊されれば機能はしないという事だ

最後にヘロヘロで動けなくなったイカの胴体真ん中に右手を突っ込んで重要器官、パーツを引き抜く様に破り捨て分解して、イカも絶命した

ただ、其れで終わった訳でもない「複数表示」と云った通りで少なくとも敷地範囲内にはまだ他の妖怪が居るハズで、感覚的に分かっているのか。雹も戦闘態勢まま周囲を見回し屋敷の上、屋根を睨む

晴海も半ば茫然としていたが、ようやく落ち着き刀を構えながら霊力計で敵を探し雹と同じ「上」を見た

視線の先には見えるだけで5匹のこれもまた形容しがたい生き物が今にも飛び掛からん姿勢で晴海らを見下ろしていた。が、敵意は向けているが躊躇しているようにも見える

「来るのか?」と晴海も霊刀を火焔に発動して迎撃態勢を取るが奴らはそのまま怒り顔のまま、一匹づつ、闇の中に後退するように下がって消えていった

略同時くらいだろう「晴海様!」と大声で呼びかけられて背後方向から桜子と護衛5人が庭に躍り込み、桜子も妖怪を見て刀を構えるが、それで連中も諦めたのだろうか、グラスの表示も次々消えていく

援軍が来たから逃げた訳ではない、向うから見ても晴海と雹は強いと分かるので、交戦は不利と判断しただけだ。ただとりあえずは終わっただろう。もう表示はどこにもない

「本部から連絡を受けてとりあえず参上致しましたが、一体何が!?」
「いや、僕にも分からない…ただ…」

と、先ほど惨殺された本家の在住の者と解体された妖怪を指した

「まさか…集団で襲撃?!」

そう言われて初めてそういう事なんだろうか、と認知し、これまでの経緯を説明、桜子も自身の兵に指示して現状把握の対処を命じる

「敵がまだ居る可能性もある、警戒しつつ屋敷周囲と内部の調査を!」
「はっ!」

そうして事態の把握に動く。其々桜子の兵らも屋敷内外にフラッシュライトを点灯し侵入。

状況が分かったのは10分後で、その間に桜子は晴海から前後の詳細を聞き、兵らの報告を受け、公的機関にも通報を入れた

「その…申し上げ難い事ですが…幾人か生存者は居るのですが殆ど全滅に近い状況と…」
「え…じゃあ」
「慶様と周囲護衛・側近も略やられているとの事です…」
「!?」
「お気を確かに。安全の為一旦移動します、こちらへ」
「わ、わかった」

として、一旦全員で屋敷外へ。更に15分後警察隊と救急車両が到着し保護のような形で晴海らも車両内へ、桜子は主導して今分かってる事を伝えて、専門家に任せた
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