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その後、問題も無く年明けから四日目、其の日は何もなく、落ち着いた穏やかな日であったが。前日、というか同日だが昼ごろ起きて普通に家事をしてメイにご飯を上げて何時も通り軽く以前綾辻から貰った書籍等を読んだ
それは前回の事件があったからだ
「本当に僕らは何も分ってない、妖怪同士でも捕食するんだ‥」
「でも何が目的?糧?餌?争い?これって自爆行為だよね同じ種族で共食いとか」
「相手も人間と同じで色々なのか?あの子は妖怪だよな‥?」
「僕は何であんな状態に稀に陥るんだ?」
進めば進む程、謎は深まるばかりだが自身、人間側は何も分らないのだ
が、そうして山の様な書籍・資料の中から古いレポートに近い資料を見つける、検証とか調査がされてもいない、個人が書いた記録考慮論に近い10枚程度のファイルブックである
其れは神宮寺に関する考慮を手書きしたファイルで
本家にあるモノだ、内容は単純、神宮寺の成り立ち、対魔家としての起こり、初代から十代辺りまでの簡易な歴史と人物伝の様なモノでこれは晴海も以前皆で共有された知識で知っているが、問題は初代からの簡易紹介である
「神宮寺初代 冬扇 皇宮の遠縁でその立場は後剥奪されている、理由は諸説あるが、邪法を操って異界と交流したとの説がある、其の後、後年、都で乱が起こる、これが対魔の始まりとされる、つまり人との争いでなく妖怪の登場である」
「冬扇は現在言う高い霊力の持ち主であり邪法であると認定されたモノを使いこれを討伐する。対抗する唯一の力の持ち主であり家と立場を与えられ、主に裏での乱の主体となった」
「何故その様な力と技を持ったのか。交流の結果ではないかとする説が有力である、というのも、彼は一人で優れた訳ではない。彼が対魔師として頭角を表したのは婚姻の後である。そして常に彼の傍には「雹」という娘が居た、経歴、前歴、家族構成等も一切不明である、が、飛び抜けて美しく
人成らざる力を持っていたともされる」
「心を読み、明日を見、病魔を癒して、雨を降らす、人は彼女を物の怪の嫁、とも呼んだからだ。無論根拠の無い表立って口にはしない噂だがそう考えると全ての辻褄が合うだろう」
これはまあ秘密、という程の事でもない、神宮寺の本家や4家の一部で血族の者なら知っている人も居る話しだ、ただ「口に出して示す事でもない」という範囲の話し
しかも物証はないし、この記録自体も後年書かれたモノだ
それ以前のモノは消失しているから
晴海も「馬鹿馬鹿しい」とは半分あったが、確かにそれだと今現在の自分の力も、起こっている状況も説明が付きやすい安易に「こじつけ」とも言えない伝承だ
「そうなると‥妖怪て一概に全て敵とは断定できないのかも?」
「人間だって人間を殺すし奪いもする、それと同じ様なモノが向こうにあっても可笑しくない」
「現在の人類だって国と人種で争っているし‥」
「そうなると初代みたいに実際、物の怪の嫁てのもそこまで変な妄想でもないよね」
辻褄が合う、と読んだ通り、あらゆる事態の説明が付きやすい
「初代が妖怪側の子と結婚した、それで力を得たとしたら、その子孫である、僕に起こってる力もその恩恵なのかも」
「そういえばあの子も人と容姿にそう違いはなかった‥過去
同じ様な事例があって、交流を持って、愛し合って、交わっても不思議じゃない」
そこまで考えて整理して、これは一旦おしまいにした。理由がつけ易いし、核心にも近いのだろうが、それで事態が解決する訳ではないしあくまで「考慮」の切っ掛けとか取っ掛かりで納めた方がいい話だろう
何れ、調べていけば、明らかになる事だしあまりこういう考慮に傾倒しても現実を軽視し過ぎるからだ。ただ「もっと知っていこう」「聞いてみよう」という方向性は得たと言える
五日の夕方にはアヤネとレイナも戻り、先の事件と自身が読んだ資料の事もちゃんと説明した。隠匿は宜しくないのもあるし自身の積極性を損なう、ともアスカにも言われた事もあるから
「そうですか、大事に発展しなくてよかった」
「で、この逸話みたいな話しなんだけど」
「わたくしは知っています、というより、晴海様の御付の命を受けた際そういう話しは聞きました、慶様の側近の方から」
「そうなんだ」
「アタシは知らないなぁ、そこまで昔の事に興味ないし」
「ええ、そもそも内容が怪しいですし「一説には」とも当時言われましたし」
「けど、話しとしては内容の説明は付きやすいよな」
「それに実際僕は先日の事件で妖怪を助けた」
「うーん‥しかし交流が可能なのかどうか‥確かにニュートラルに近い種が居るという説も聞いた事はありますし」
「そうなんか??」
「ええ、ウチは登場した妖怪・魔物の資料があります、勿論現代の生物分類ではないので特徴とか絵ですけど「一部生物」には違い無いので」
「ふむ」
「つまり特徴が全く異なりますが、我々の側で言う自然の動物的差異が其々あるという認識もありますね」
「アフリカの自然動物みたいな?」
「簡単に言うとそうですね、猛獣も居れば逆も居る、という感じです。ですが、あくまで餌は捕食である、その対象に人間は入っているのも確かなので、尤も、襲ってこない、害を齎さない種は現実には明確に確認されてません」
「ああ、つまり生存の為に他の妖怪を食す事もある訳か」
「はい、それよりは人間とか其れ以外の動物を食した方が良い、他の妖怪と生存競争するより弱いので美味しい獲物、という見解もありますね」
「じゃあ単純にエネルギー摂食の人間とそんな違いはないのか」
「端的に言ってしまえばそうですね、何故人間が捕食対象なのかは不明ですけど。単純に弱いからなのか、其れ以外の理由があるのか」
「結局《分らない》なんだな」
「残念ながら接触はあっても交流も調査も不能ですから‥」
「確かにね‥今までは全部結局戦闘になったし‥交流出来そうなのは先日のが初だったし」
「その意味、先日の晴海様の会った「子」というのは確保出来れば劇的に不明部分も明らかに成る可能性もあります」
「連れて帰った方が良かったのかなぁ‥」
「それは何とも‥、偶々同族に捕食されかけ、身動き取れない程被弾した、だから晴海様を襲わなかった、その余裕も無かった可能性もありますし。隠して逃がした、というのも間違った判断とは言えません」
「だよね‥」
「例えば、人類側でもそういうのはあります、狼や熊を飼う人も居ますが、しつけたから安全で人を襲わない、とは言い切れないので」
「妥当の範囲、だったとも云えるか‥」
「それと現実には、というのは?」
「ええ、妖怪も逸話があるでしょう?必ずしも人間を敵視していない例もあります、まあ、所詮物語ですが」
「なるほど‥妖孤とか、西洋では妖精みたいな?」
「はい、ですが、それも事実は分りませんので」
「何れにしろ、まだまだ確証の無い事ばかりだな‥」
「前進はしていますのであまり深く悩まない方が良いかと」
「うん、分ってる」
として、一旦この報告会はお開きにした
事実は事実に触れなければどっちにしろ確証は得られないし、あれこれ論考する事はあるが、全て仮定でしかないから
前進はしている、とアヤネも言った通り事実と物証はちゃんと得ている、それを繰り返していけばより正解には近づく。点は何れ線へ、という事だ
「もう一つはやはり移動手段かなぁ、このままの対処を続けるにしてもコレをどうにかしたい」
「アタシと名雪とアスカさんは自分の足があるけどね」
「はぁ‥まあ、私の紙犬にでも乗ります?」
「乗れるの?いや‥無いな‥」
「乗るのは乗れますけど、地面を走る訳で‥かなり目立ちますが」
「だよね‥」
「僕らも免許取ろうか?」
「年齢的には行けますけど、まあ、他の紙術を覚えれば‥」
「他の紙術があるの?そんな便利なモノ」
「ええまあ、知識上はあります《白翼の心》という紙術や、犬以外の鳥系のもあるんですが」
「あるんですが?」
「ええと、私が使えるかは別にして、紙で鳥の翼みたいのを構築して装着し実際羽ばたいて跳ぶ、というのがあります教本にあるだけで使える人とか使った人は殆ど歴史上居ません‥祖父なら使えるか、知ってるかな、と」
「うーん、一応聞いてみてもらっていい?」
「構いませんよ」
「僕も色々実家で聞きたい事が出来たし」
「そうですね‥幸いまだ冬休みですし、明日にでも行きましょうか?」
「往復させて申し訳ないけど」
「いえ」
そういう事情で二人は翌日、高速列車に早朝乗って向う事になった、晴海は別に帰りたくは無いのだが、この際そんな事も言っていられないのもある
それは複数疑問がある、先に読んだ「伝承」的な初代の逸話の真偽、自身の力 戦闘で突如として冷徹に成る事の意味、また、神宮寺には特別な業は残っていないのか、現在の対処を続けて良いのか、など山程知る事が増えたからだ
昼前に神宮時の本家屋敷に辿り着き、早速慶に面会を申し出る、基本的に慶は他人から見たらどうかは知らないが息子をちゃんと気にしている、ただ世間ズレしているだけなので、この要請にも直ぐに応じて、アヤネと共に部屋に通された
勿論、内密の話しなので三人だけでだ
早速、晴海もまず「伝承」初代からの自身が読んだ記録と懸念について実直に問うた、ただ、慶も御大であるが、晴海の懸念と疑問と情報と見識はそれほど変わらなかった
「ワシもそれは知っている、が お前の持つ情報以上の事を多く持っている訳ではない」
それは事実で、そもそも余りにも古い話しだし、記録も殆ど残っていない、残っているのは後に書かれたもので信憑性に問題がある記録ばかりだからだ
「今の形、神宮とその他四家の形に成ったのは二代目からだ
皇室直々に任命され、まだ多く妖怪と呼ばれる者も登場したからだ。神宮寺だけでは対処が足りず、他四家が任命され全国共闘したのが本格的な始まりだ」
「お前の見解の通り、初代の血を継いだ二代が継承した業と力を持って裏で討伐を指揮し、一時かなりの規模と権限を得た、それが続いている」
「では、物の怪の嫁は?」
「何しろ記録はないし、当時の者もおそらく口に出来る事ではない、仮に事実を知っていたとしても神宮寺の妻は魔物だ、とは言えまい、だからそもそも其の点は表の記録には出ない、と考えて居る」
「なるほど‥確かにそうですね」
「ただ、その見解は辻褄が合う、ので、とりあえず事実と今は語られている、当時は誰も言えないが、今は言える、そういう事だな」
「では僕、いえ、稀に神宮寺の直系に特殊な力が発現されるのも?」
「そうとしか考えられないが、事実かという確証は無い、調べようが無いからな」
「ですよね‥では、僕が戦闘中、突如冷静に且つ、強くなるのも」
「あくまでワシの憶測だが、お前は血の影響が強く出た、故にアチラ側の様な部分も出やすい、と考えられる」
「初代、二代がその血が強いですか」
「さてね‥何れにしろ憶測だ」
「では、初代、二代が妖怪から得た力、若しくは業とは?今は無いのですか?」
「あるにはある、が「初代はこういう事をした」というだけの記録で手法、やり方はない、知るのは構わんが得る事は出来まい」
「そうですか‥」
「まあ、その点は書籍があるのはある。ただワシには意味がない、ワシは単に血統相続で今居るだけで、晴海の様に、優れた血も能力もないからな後で用意させよう」
「宜しいのですか?」
「それもただの逸話だ、何か活路がある訳でもないし、絶対秘密なモノでもない」
「それでも取ってはあるんですね」
「‥ワシには意味がないが、晴海にはあるかも知れん、何時か、そういう時が来た時の為だ」
「あ、有難う御座います」
「別に礼を言われる事でもない、が、ワシの見解だけ言わせて貰う」
「はい?」
「気、魔力、霊力、これは何れも何処にでもあるのは知っているな」
「はい」
「各家にも他国の専門家も技術はある、が、其れを使えるのはその家に《名を残す偉人》という才能を持った人間だけだ」
「??」
「此れは無形であり、根本的に自由である、秘術はあるが発動させるのはそのエネルギーを十分持っている人間に限定される」
「つまり、僕なら可能性があると?」
「そう、だから《その時が来たときの為》に保全されている」
「なるほど‥」
「他人には価値の無いモノだが、ある特定の人間には価値があるという事だ、それから、無形である、とはどうとでも変化出来る」
「水や空気の様な?」
「そうだ、暖めれば沸騰するし、冷やせば凍る、秘術とはそういうモノを利用した業である、それは他国、他の系統の術や業も同じだ。その全ての前提に成るのが水であり空気である。それを忘れるな、そして形に拘るな神宮寺の武具が何故、形を留めないのか分るハズだ」
「は、はい‥」
「それともう一つだけ」
「なんだ?」
「今現在の形を続けていいのでしょうか?」
「それはワシが決める事ではない。お前が良いと思う形にすればいい」
「では、都で僕が僕の集団を持ちたい、と言っても構わないのですか?」
「状況に寄るが、基本的にそれでもよいし、幾つか権限を与えても良い、とは言え、既にお主は「我々の側」から見れば特化集団には近くなっているがな」
「そうかもしれない‥」
「敢て「本家」という形に拘る事もない。退魔の組織で重要なのは退魔師としての力だ。その需要は何時、どの時代でも変わらないし保全される」
「つまり僕は敢て家に拘らなくてもいいと?」
「意識はしていないだろうが、既に実績と名声はある。例えば最前線の部隊、集団、組織として活動したい、と言っても通じる」
「わかりました、ではその点も考えてみます」
「うむ。こちらに出来る事は色々あるが、とりあえずやってみろ、お前が何か求めるなら通知も走らせる。神宮寺は公的組織にも権限が効く可能な事はやろう」
「助かります、けどなるべく自分の範囲でやってみます」
「それでいい、これも意識していないだろうが、お前はもう
晴海個人ではない、多くの協力者を得ている、その判断を優先してみろ」
「は、はい」
として会談を終えた。意外ではあるが慶の話からして彼は彼なりに考えて居る事、冷徹なだけでも無い事も認知した
そして晴海が過去史を読んで予想した事も家では「略事実」として扱われている、であれば。先の事件での事もアヤネの言った事も真理に近いのかもしれない
アヤネは晴海が座を去ってから、残って自身の報告
が、慶は既にアヤネに命じる段階に無いと判断していた
「分った、一応順調という事だな」
「はい」
「今後はお主の自由にするがいい」
「え?」
「晴海は子供だ。が、愚かではないが脇が甘いし聊か実直に過ぎる」
「そう‥かもしれませんね」
「うむ、アヤネの方が沈着である、アレの緩和剤に成ってくれ」
「は、はっ」
「アレも今後も難題に挑むだろう、だがそれは本質的に正しい、全ての物事を己の信念と良心に従って進んできた、がそれが正しく無い事もある」
「分りました‥今後共支えます」
「うむ、京極の家としても自身の判断で使うべきだろう、また、お主はその立場もある」
「宜しいのでしょうか‥」
「基本的に命はしないし、ワシに許可を取らずとも良いお主も好きに行動してみろ」
「有難う御座います」
「ああ、ではな」
とだけ短い会談を終らせた
そのまま暫く客室で滞在、昼食を出されて終った後、慶の側近等の女性三人が部屋に入って片付けし、次に厳重に封をした桐箱が持ち込まれる、それほど大きいモノではない、縦横五十程度のモノだ
「これは?」
「書籍だそうです。御大がお持ちになる様にと」
「そうか、ありがとう」
そう「我々には価値が無いがお前にはある」とした資料や教本の類だろう
「一部は複製品がありますが、其れ一つしか無い古く貴重なモノもありますご注意を」
「わ、わかった」
そうして背負いのリュック等も用意され
コレを晴海が背負って本家を後にした
それは前回の事件があったからだ
「本当に僕らは何も分ってない、妖怪同士でも捕食するんだ‥」
「でも何が目的?糧?餌?争い?これって自爆行為だよね同じ種族で共食いとか」
「相手も人間と同じで色々なのか?あの子は妖怪だよな‥?」
「僕は何であんな状態に稀に陥るんだ?」
進めば進む程、謎は深まるばかりだが自身、人間側は何も分らないのだ
が、そうして山の様な書籍・資料の中から古いレポートに近い資料を見つける、検証とか調査がされてもいない、個人が書いた記録考慮論に近い10枚程度のファイルブックである
其れは神宮寺に関する考慮を手書きしたファイルで
本家にあるモノだ、内容は単純、神宮寺の成り立ち、対魔家としての起こり、初代から十代辺りまでの簡易な歴史と人物伝の様なモノでこれは晴海も以前皆で共有された知識で知っているが、問題は初代からの簡易紹介である
「神宮寺初代 冬扇 皇宮の遠縁でその立場は後剥奪されている、理由は諸説あるが、邪法を操って異界と交流したとの説がある、其の後、後年、都で乱が起こる、これが対魔の始まりとされる、つまり人との争いでなく妖怪の登場である」
「冬扇は現在言う高い霊力の持ち主であり邪法であると認定されたモノを使いこれを討伐する。対抗する唯一の力の持ち主であり家と立場を与えられ、主に裏での乱の主体となった」
「何故その様な力と技を持ったのか。交流の結果ではないかとする説が有力である、というのも、彼は一人で優れた訳ではない。彼が対魔師として頭角を表したのは婚姻の後である。そして常に彼の傍には「雹」という娘が居た、経歴、前歴、家族構成等も一切不明である、が、飛び抜けて美しく
人成らざる力を持っていたともされる」
「心を読み、明日を見、病魔を癒して、雨を降らす、人は彼女を物の怪の嫁、とも呼んだからだ。無論根拠の無い表立って口にはしない噂だがそう考えると全ての辻褄が合うだろう」
これはまあ秘密、という程の事でもない、神宮寺の本家や4家の一部で血族の者なら知っている人も居る話しだ、ただ「口に出して示す事でもない」という範囲の話し
しかも物証はないし、この記録自体も後年書かれたモノだ
それ以前のモノは消失しているから
晴海も「馬鹿馬鹿しい」とは半分あったが、確かにそれだと今現在の自分の力も、起こっている状況も説明が付きやすい安易に「こじつけ」とも言えない伝承だ
「そうなると‥妖怪て一概に全て敵とは断定できないのかも?」
「人間だって人間を殺すし奪いもする、それと同じ様なモノが向こうにあっても可笑しくない」
「現在の人類だって国と人種で争っているし‥」
「そうなると初代みたいに実際、物の怪の嫁てのもそこまで変な妄想でもないよね」
辻褄が合う、と読んだ通り、あらゆる事態の説明が付きやすい
「初代が妖怪側の子と結婚した、それで力を得たとしたら、その子孫である、僕に起こってる力もその恩恵なのかも」
「そういえばあの子も人と容姿にそう違いはなかった‥過去
同じ様な事例があって、交流を持って、愛し合って、交わっても不思議じゃない」
そこまで考えて整理して、これは一旦おしまいにした。理由がつけ易いし、核心にも近いのだろうが、それで事態が解決する訳ではないしあくまで「考慮」の切っ掛けとか取っ掛かりで納めた方がいい話だろう
何れ、調べていけば、明らかになる事だしあまりこういう考慮に傾倒しても現実を軽視し過ぎるからだ。ただ「もっと知っていこう」「聞いてみよう」という方向性は得たと言える
五日の夕方にはアヤネとレイナも戻り、先の事件と自身が読んだ資料の事もちゃんと説明した。隠匿は宜しくないのもあるし自身の積極性を損なう、ともアスカにも言われた事もあるから
「そうですか、大事に発展しなくてよかった」
「で、この逸話みたいな話しなんだけど」
「わたくしは知っています、というより、晴海様の御付の命を受けた際そういう話しは聞きました、慶様の側近の方から」
「そうなんだ」
「アタシは知らないなぁ、そこまで昔の事に興味ないし」
「ええ、そもそも内容が怪しいですし「一説には」とも当時言われましたし」
「けど、話しとしては内容の説明は付きやすいよな」
「それに実際僕は先日の事件で妖怪を助けた」
「うーん‥しかし交流が可能なのかどうか‥確かにニュートラルに近い種が居るという説も聞いた事はありますし」
「そうなんか??」
「ええ、ウチは登場した妖怪・魔物の資料があります、勿論現代の生物分類ではないので特徴とか絵ですけど「一部生物」には違い無いので」
「ふむ」
「つまり特徴が全く異なりますが、我々の側で言う自然の動物的差異が其々あるという認識もありますね」
「アフリカの自然動物みたいな?」
「簡単に言うとそうですね、猛獣も居れば逆も居る、という感じです。ですが、あくまで餌は捕食である、その対象に人間は入っているのも確かなので、尤も、襲ってこない、害を齎さない種は現実には明確に確認されてません」
「ああ、つまり生存の為に他の妖怪を食す事もある訳か」
「はい、それよりは人間とか其れ以外の動物を食した方が良い、他の妖怪と生存競争するより弱いので美味しい獲物、という見解もありますね」
「じゃあ単純にエネルギー摂食の人間とそんな違いはないのか」
「端的に言ってしまえばそうですね、何故人間が捕食対象なのかは不明ですけど。単純に弱いからなのか、其れ以外の理由があるのか」
「結局《分らない》なんだな」
「残念ながら接触はあっても交流も調査も不能ですから‥」
「確かにね‥今までは全部結局戦闘になったし‥交流出来そうなのは先日のが初だったし」
「その意味、先日の晴海様の会った「子」というのは確保出来れば劇的に不明部分も明らかに成る可能性もあります」
「連れて帰った方が良かったのかなぁ‥」
「それは何とも‥、偶々同族に捕食されかけ、身動き取れない程被弾した、だから晴海様を襲わなかった、その余裕も無かった可能性もありますし。隠して逃がした、というのも間違った判断とは言えません」
「だよね‥」
「例えば、人類側でもそういうのはあります、狼や熊を飼う人も居ますが、しつけたから安全で人を襲わない、とは言い切れないので」
「妥当の範囲、だったとも云えるか‥」
「それと現実には、というのは?」
「ええ、妖怪も逸話があるでしょう?必ずしも人間を敵視していない例もあります、まあ、所詮物語ですが」
「なるほど‥妖孤とか、西洋では妖精みたいな?」
「はい、ですが、それも事実は分りませんので」
「何れにしろ、まだまだ確証の無い事ばかりだな‥」
「前進はしていますのであまり深く悩まない方が良いかと」
「うん、分ってる」
として、一旦この報告会はお開きにした
事実は事実に触れなければどっちにしろ確証は得られないし、あれこれ論考する事はあるが、全て仮定でしかないから
前進はしている、とアヤネも言った通り事実と物証はちゃんと得ている、それを繰り返していけばより正解には近づく。点は何れ線へ、という事だ
「もう一つはやはり移動手段かなぁ、このままの対処を続けるにしてもコレをどうにかしたい」
「アタシと名雪とアスカさんは自分の足があるけどね」
「はぁ‥まあ、私の紙犬にでも乗ります?」
「乗れるの?いや‥無いな‥」
「乗るのは乗れますけど、地面を走る訳で‥かなり目立ちますが」
「だよね‥」
「僕らも免許取ろうか?」
「年齢的には行けますけど、まあ、他の紙術を覚えれば‥」
「他の紙術があるの?そんな便利なモノ」
「ええまあ、知識上はあります《白翼の心》という紙術や、犬以外の鳥系のもあるんですが」
「あるんですが?」
「ええと、私が使えるかは別にして、紙で鳥の翼みたいのを構築して装着し実際羽ばたいて跳ぶ、というのがあります教本にあるだけで使える人とか使った人は殆ど歴史上居ません‥祖父なら使えるか、知ってるかな、と」
「うーん、一応聞いてみてもらっていい?」
「構いませんよ」
「僕も色々実家で聞きたい事が出来たし」
「そうですね‥幸いまだ冬休みですし、明日にでも行きましょうか?」
「往復させて申し訳ないけど」
「いえ」
そういう事情で二人は翌日、高速列車に早朝乗って向う事になった、晴海は別に帰りたくは無いのだが、この際そんな事も言っていられないのもある
それは複数疑問がある、先に読んだ「伝承」的な初代の逸話の真偽、自身の力 戦闘で突如として冷徹に成る事の意味、また、神宮寺には特別な業は残っていないのか、現在の対処を続けて良いのか、など山程知る事が増えたからだ
昼前に神宮時の本家屋敷に辿り着き、早速慶に面会を申し出る、基本的に慶は他人から見たらどうかは知らないが息子をちゃんと気にしている、ただ世間ズレしているだけなので、この要請にも直ぐに応じて、アヤネと共に部屋に通された
勿論、内密の話しなので三人だけでだ
早速、晴海もまず「伝承」初代からの自身が読んだ記録と懸念について実直に問うた、ただ、慶も御大であるが、晴海の懸念と疑問と情報と見識はそれほど変わらなかった
「ワシもそれは知っている、が お前の持つ情報以上の事を多く持っている訳ではない」
それは事実で、そもそも余りにも古い話しだし、記録も殆ど残っていない、残っているのは後に書かれたもので信憑性に問題がある記録ばかりだからだ
「今の形、神宮とその他四家の形に成ったのは二代目からだ
皇室直々に任命され、まだ多く妖怪と呼ばれる者も登場したからだ。神宮寺だけでは対処が足りず、他四家が任命され全国共闘したのが本格的な始まりだ」
「お前の見解の通り、初代の血を継いだ二代が継承した業と力を持って裏で討伐を指揮し、一時かなりの規模と権限を得た、それが続いている」
「では、物の怪の嫁は?」
「何しろ記録はないし、当時の者もおそらく口に出来る事ではない、仮に事実を知っていたとしても神宮寺の妻は魔物だ、とは言えまい、だからそもそも其の点は表の記録には出ない、と考えて居る」
「なるほど‥確かにそうですね」
「ただ、その見解は辻褄が合う、ので、とりあえず事実と今は語られている、当時は誰も言えないが、今は言える、そういう事だな」
「では僕、いえ、稀に神宮寺の直系に特殊な力が発現されるのも?」
「そうとしか考えられないが、事実かという確証は無い、調べようが無いからな」
「ですよね‥では、僕が戦闘中、突如冷静に且つ、強くなるのも」
「あくまでワシの憶測だが、お前は血の影響が強く出た、故にアチラ側の様な部分も出やすい、と考えられる」
「初代、二代がその血が強いですか」
「さてね‥何れにしろ憶測だ」
「では、初代、二代が妖怪から得た力、若しくは業とは?今は無いのですか?」
「あるにはある、が「初代はこういう事をした」というだけの記録で手法、やり方はない、知るのは構わんが得る事は出来まい」
「そうですか‥」
「まあ、その点は書籍があるのはある。ただワシには意味がない、ワシは単に血統相続で今居るだけで、晴海の様に、優れた血も能力もないからな後で用意させよう」
「宜しいのですか?」
「それもただの逸話だ、何か活路がある訳でもないし、絶対秘密なモノでもない」
「それでも取ってはあるんですね」
「‥ワシには意味がないが、晴海にはあるかも知れん、何時か、そういう時が来た時の為だ」
「あ、有難う御座います」
「別に礼を言われる事でもない、が、ワシの見解だけ言わせて貰う」
「はい?」
「気、魔力、霊力、これは何れも何処にでもあるのは知っているな」
「はい」
「各家にも他国の専門家も技術はある、が、其れを使えるのはその家に《名を残す偉人》という才能を持った人間だけだ」
「??」
「此れは無形であり、根本的に自由である、秘術はあるが発動させるのはそのエネルギーを十分持っている人間に限定される」
「つまり、僕なら可能性があると?」
「そう、だから《その時が来たときの為》に保全されている」
「なるほど‥」
「他人には価値の無いモノだが、ある特定の人間には価値があるという事だ、それから、無形である、とはどうとでも変化出来る」
「水や空気の様な?」
「そうだ、暖めれば沸騰するし、冷やせば凍る、秘術とはそういうモノを利用した業である、それは他国、他の系統の術や業も同じだ。その全ての前提に成るのが水であり空気である。それを忘れるな、そして形に拘るな神宮寺の武具が何故、形を留めないのか分るハズだ」
「は、はい‥」
「それともう一つだけ」
「なんだ?」
「今現在の形を続けていいのでしょうか?」
「それはワシが決める事ではない。お前が良いと思う形にすればいい」
「では、都で僕が僕の集団を持ちたい、と言っても構わないのですか?」
「状況に寄るが、基本的にそれでもよいし、幾つか権限を与えても良い、とは言え、既にお主は「我々の側」から見れば特化集団には近くなっているがな」
「そうかもしれない‥」
「敢て「本家」という形に拘る事もない。退魔の組織で重要なのは退魔師としての力だ。その需要は何時、どの時代でも変わらないし保全される」
「つまり僕は敢て家に拘らなくてもいいと?」
「意識はしていないだろうが、既に実績と名声はある。例えば最前線の部隊、集団、組織として活動したい、と言っても通じる」
「わかりました、ではその点も考えてみます」
「うむ。こちらに出来る事は色々あるが、とりあえずやってみろ、お前が何か求めるなら通知も走らせる。神宮寺は公的組織にも権限が効く可能な事はやろう」
「助かります、けどなるべく自分の範囲でやってみます」
「それでいい、これも意識していないだろうが、お前はもう
晴海個人ではない、多くの協力者を得ている、その判断を優先してみろ」
「は、はい」
として会談を終えた。意外ではあるが慶の話からして彼は彼なりに考えて居る事、冷徹なだけでも無い事も認知した
そして晴海が過去史を読んで予想した事も家では「略事実」として扱われている、であれば。先の事件での事もアヤネの言った事も真理に近いのかもしれない
アヤネは晴海が座を去ってから、残って自身の報告
が、慶は既にアヤネに命じる段階に無いと判断していた
「分った、一応順調という事だな」
「はい」
「今後はお主の自由にするがいい」
「え?」
「晴海は子供だ。が、愚かではないが脇が甘いし聊か実直に過ぎる」
「そう‥かもしれませんね」
「うむ、アヤネの方が沈着である、アレの緩和剤に成ってくれ」
「は、はっ」
「アレも今後も難題に挑むだろう、だがそれは本質的に正しい、全ての物事を己の信念と良心に従って進んできた、がそれが正しく無い事もある」
「分りました‥今後共支えます」
「うむ、京極の家としても自身の判断で使うべきだろう、また、お主はその立場もある」
「宜しいのでしょうか‥」
「基本的に命はしないし、ワシに許可を取らずとも良いお主も好きに行動してみろ」
「有難う御座います」
「ああ、ではな」
とだけ短い会談を終らせた
そのまま暫く客室で滞在、昼食を出されて終った後、慶の側近等の女性三人が部屋に入って片付けし、次に厳重に封をした桐箱が持ち込まれる、それほど大きいモノではない、縦横五十程度のモノだ
「これは?」
「書籍だそうです。御大がお持ちになる様にと」
「そうか、ありがとう」
そう「我々には価値が無いがお前にはある」とした資料や教本の類だろう
「一部は複製品がありますが、其れ一つしか無い古く貴重なモノもありますご注意を」
「わ、わかった」
そうして背負いのリュック等も用意され
コレを晴海が背負って本家を後にした
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