晴海様の神通力

篠崎流

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事情

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更に一週間後の十月に入って直ぐの事である、事前にアヤネが云った通り、名雪も訪問する

早速上がって貰ってアヤネが先導し、晴海に紹介したが‥

「始めまして、睦 名雪で御座います」と

平伏して挨拶した。いわゆる武士の礼「真」というヤツで
両手指でひし形を作って鼻を地面に付ける様な形、まあ貴人などに対してする最高礼であるが

「あ‥、これはどうもご丁寧に‥」としか云い様が無いが
一応、晴海もこの手の礼節は知っているので
「表を上げて下さい」として早々にやめさせる

なんだかとても時代ががった人ではあるが、まあ、京極と陸は神宮寺と近い関係にあるし神宮寺に対して「敬う」という教育をされているのも知ってる、本心はどうなのかは知らないが自然こういう作法とか対応に成るのだろう

ただ挨拶と紹介以降はお堅いけど普通だった

「東は実戦部隊も人員もそう居ないという事で、家の方とも相談しましたが私は晴海様のお手伝いをして構わない、という事に成りました」
「そうなんだ、君も住むの?」
「晴海様のご自由に。同衾せよ、という事であればそうします」
「ああ‥そう‥」
「また晴海様の事情も多少聞いていますので、寝屋を共にする事も構いません、殿方を喜ばせる技の講義も受けています、どうぞお使いください」

と名雪が言った横でレイナとアヤネが同時にお茶吹いた、まあ、それはそうだろう

流石に晴海には手に余る人なのでここはアヤネに任せて調整してもらった、友人らしいので、晴海が聞かない方がいいだろう

要約するとだが、名雪は術と呼べる程、特殊な能力を持っている訳ではない、睦家自体が、体術と道具主体のどちらかと言えば物理戦闘系。ゲームで言う所のアサシンみたいなものなので、その技術だけで魔とある程度戦えるらしい。勿論、術もある事はある

当人の希望・要望で言えば、彼女は前線の希望、それ以外はあまり関心が無いらしい、つまり西は三家が近い範囲にあり
対応の幅と人員、組織はあるので、逆に対応が弱い東のが戦いの場はあるだろうという考えてコチラに志願したらしい

東、東京都や関東圏は公人、警察組織中心で動いているので逆に退魔の前線部隊が晴海らくらい、なので丁度いいと思っているそうだ

アヤネと友人ではあるのだが、一緒に住むというのは別に拘りは無いらしい、西側では元々一人行動だしそれなりに経験もあるので「どっちでもいい」そうだ。

彼女は素体退魔判定ではランクはDで霊力が人並みよりちょっと多いくらい、1を常人基準とすると1、2程度なので
心>技>体の影響でランクに影響する事を考えると、技と肉体の能力がそれだけ高い

Dの妖怪と戦って良い、という事なのでかなりの実力と才能を持っていると言って良い

戦い方は主に高い運動能力と身軽さと多種多様な武器と道具での戦い。蝶の様に舞い、蜂の様に刺す、というタイプ、古代から近代の武器の扱いと訓練も受けているので、基本オールラウンダーな対応も可能だ

刀、打撃武器、体術から投擲術、銃器の扱いも可能で機械にも強いし、移動も自分の改造バイクを操るので、現場に真っ先に駆けつけ、足止めなり奇襲なりの単体行動も可能という非常に優れた人物だ

余談だが「殿方を喜ばせる技術」の講義も受けていると云った通りで睦家の直系の娘なので「何れ神宮寺の男子が産まれれば嫁候補」という事で花嫁修業から作法、もちろん夜の御勤めも出来るそうだ。

勿論、そういう教育とか常識があるので晴海に対してああいう態度な訳である、即物的に云えば、家の者としての目標の一つとして「神宮寺の直系男子との間の子供を作るのも名誉」という世間ズレした常識もある

アヤネが一通り聞いて、晴海に報告しつつ、どう処するかというのもそれはそれで悩み所ではある

「一緒に住む事に拘りはないか、アヤネと友達なら一緒がいいかな?とも思ったけど」
「どちらかと言えば名雪さんは前線希望ですね、何しろあまりにもその才能に恵まれていますから」
「何となく、自由にしてもらっても構わないというか結果出せそうな‥」

うーん、と晴海も悩んでいたが、そこで閃いた

「公人側に任せた方がいいかも‥」
「というと?」
「高砂警視とかに預けたらどうだろう?」
「あ‥いいかも」

そこで名雪を呼んで聞いてみたが「構わない」だったので
高砂警視に連絡を入れ、彼女のバイクに乗り二人で向った

結論から言えば警視も歓迎ではある
以前自分からも要請した通り、退魔の専門家が居てくれると助かるし、名雪は殆どどんな武器でも扱える、つまり公人側の専門組織の護衛と武器の実験が同時に出来る

「いやはや助かりますよ」
「名雪さんは銃器の訓練も受けたそうなんで、試射とか実戦データも取れるかもと」
「宜しくたのむ」

そこでさっそくだが、射撃訓練場に向う、これは通常の訓練場ではなく、四方を防弾にした綺麗な且つ、化学実験室にも近い設備も備わっている

コンクリ打ちっぱなしでなく、密閉も可能で弾力のある保護シート等も壁にも床にも敷いてあり、実際の戦闘訓練も可能であり、様々な的も用意出来る、爆発物を使っても問題無く、被害が外に洩れないようになっている

「ほう‥これはいい設備だな」
「そうでしょう?とりあえず殺傷力の低いゴム弾の銃があるのでどうぞ、的もランダム射出可能です。固定的とクレー型がありますがどうします?」
「では、クレー型で」
「了解です」

と、名雪はグロックを受け取り、施設内に入って真ん中に移動する、部屋自体もちょっとしたバッティングセンターゲージくらいあるので大抵の事は此処で可能だ

合図と共に、まず正面、右から左へ射出される皿のマトを打つが問題なく全弾命中させ。 次に前後左右からランダムに射出されるマトも難なく打ち落とした

「確かにいい腕ですね‥」
「武芸もかなりのモノ、という事なので」
「これは実戦でも見てみたいですなぁ‥」

近代兵器が使える、というのが一番のポイントなので
そこはまあ追々でいいだろう

高砂らと中に入って合流してOKである事を伝えて略決まりだ

「ただ、扱いが難しいですな。民間人ではありますし」
「問題ない、私は公人組織にも籍がある」
「へ?」

として名雪も「家」ともう一つある身分証を提示した、そこには「警視庁特別捜査官」と表示されている

「ええ?!」
「一応階級は巡査だが、「家」の方と合わせて事件がどっちかの場合に寄っては指揮してもよい事に成っている。現場や組織の垣根の面で不自由なので両方保持している」
「おお‥」
「なので転属は容易い」
「成る程、分りました、早速書類を」

その後、書類を受け取り
名雪の装備等も提示した、普段どう戦っているのか?という
擦り合わせみたいなもんだ

完全に第三者的に晴海も傍観したがこっちに連れて来たのは正解らしい、何しろ彼女自身も詳しい

「どこにそんなに武器仕舞ってるんだよ」というくらい
テーブルに並べて説明するが、基本的に物理特化には違い無い

投擲様のナイフ十本(というかクナイ)
ガードナイフ、二本(忍者ナイフとも言う)
電子警棒、煙幕弾、特殊なのは、左手に装備している強化プラスチックの籠手で、これは高砂も見るのは初らしい

「これはどう使うんですか?」
「まあ、銃弾じゃない射撃武器だな、弾ではなくアルミカッターを複数射撃する、もう一つはワイヤー等も打ち出せる」
「捕縛用ですか??」
「それもあるが、壁登りにも使う」

そこで実際装備して、マトを要請、これに左手を伸ばして突き出して、逆手でトリガーを引く、すると「バシッ」と音を立てて、対人マトに三センチくらいの片が数十、纏めて刺さった。ガラス片を浴びせた様な感じだろう

「ほほう、ショットガンみたいですな」
「実際の銃は基本持ち歩かない、使うのも事後処理も面倒だし、どの道、妖怪には大して効果がない」
「ふむむ、やはり面での攻撃のが有効ですか‥」
「経験上はそうだと思う、尤も相手にも寄る。そちらに有効な装備があるなら敢てこの形には拘らない」
「それはお任せを、色々と開発していますので」
「うむ、では見せて貰おう」

と、なにやらマニアックな話しに成ったので、ここはヲタ‥専門家同士に任せた方がいいだろうと思い晴海も退出して待たせて貰う事にした

大よそ両者間で話しが終ったのが三十分後
再び合流して、後の事も双方に任せる事になった

「住家はコチラの寮がありますがどうします?」
「折角だからアヤネの所に厄介になる、住家はいい」
「了解です、書類も揃いましたので署名と身分証を」
「頼む」

特に口を挟む余地も無く、大体決まった。そのまま、再び晴海らのマンションにバイクに乗って戻り一通りの説明

直ぐ手続きが終る訳でもなく、数日は掛かるのでその間アヤネと友人という事もあるので、とりあえずマンションに滞在する事になるが
「アヤネの所に厄介になる」と言っても同部屋でずっとという訳にも行かない

その為、同マンションの別階の空いている所を確保して
準備が整ったらそちらに入る事になった

「それまでは部屋はわたくしの所でいいですか?」
「構わんよ、そう長い事でもない」
「はい」
「それにしても、各家の令嬢ばかり集まったな。これはアレかやはり皆嫁か?」
「いえ、そういう事では‥」
「アタシも「家」の常識的なモノは知ってるが違う。ぼっちゃんの周囲に人員が足りない、それからアタシは武芸の指導と相手だから違う」
「そうか、想像していたのと違うな」
「な、名雪さん、とりあえず部屋に案内しますね」

とアヤネが自分の部屋に連れて行った

「微妙にズレてるよね」
「そうだな、ま、分らなくも無いけど。大昔の風習というか常識みたいのが西三家は強いからああなるんだろ」
「そうだねぇ、側室が何人も居るなんて普通だった訳だしね‥」
「目的は家の子孫を残すとか増やすみたいな感じだしな」
「まあ、頼りに成るには違いないけど」
「だね」
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