境界線の知識者

篠崎流

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ロベルタ戦勝パーティー翌日。報せを聞いたグランセルナ本国の軍官らも唖然だった、シルバの独断専行からの戦死も。反面ハーベストの余りに華麗でいやらしい戦術での大勝利も完全に予想外である

「陛下とメリル参謀長のなんたる確かな目か‥」

フォレスとメリルにとっては意外でも何でもない、最初から「自分がハーベストと戦ったら」という目で見ていたからだ、その上で「最もめんどくさい相手」「徹底して欠点を突いてくる相手」と判断して選んだ

兎に角、東方面は当分安心だろう、直ぐに用意していた軍の出撃命令も却下停止して戻した

「今後だが?」
「ティア待ちだな、メリルが居ないとこっちの内政がやり難い、ロベルタは当面安心だろう、が、兵力全体としては結構減ってる、今は動かせるものもないな」
「そうか」
「陛下、シルバの事ですが‥」
「ん?まあ、普通に戦死してるし、罰則も無かろう、そもそもインファルも「好きにしろ」でやらせた訳だし、どこが罪とかでもないし違反とかも必要ないな、当事者が判断を誤っただけだ、見舞金も出そう」
「わ、わかりました」
「陛下の選抜眼の確かさに感服致しました、我々軍も誤った判断を反省しています」
「別にいいさ、それに運が悪かった、分っていながら押え役を付けなかったオレにも責任はある」
「そのような‥」

「それと、ロベルタ方面の軍力が回復するまで支えなければ成らないな戦時後の対応も色々ある」
「そうですね」
「志願兵はどうなってる?」
「このペースですと、月五百~は増えるかと」
「そうだなぁ、とりあえず軍側は新兵・予備兵からの育成から主力に上げられる様にで」
「ははっ」

「こうなると、もう少し兵も欲しくなるな」
「そうだな、ハーベストがあそこまで使えるならそのまま軍を与えていいし」
「んー‥戦術はそうなんだけど、あの子は足りないところが多いからなぁ‥誰かしらつけるかしないと‥今の軍もオレの直軍だし」
「ふむ、リコもまだ兵がなぁ」
「まあ、増えてからでいいか‥、どうせ攻めてくる事も暫く無いだろうし、とりあえず今の所そんなもんで、解散」
「はっ」

フォレスは会議室から、そのまま王座の間へ、座って横にオルガが付いた

「今日は意見の類は二件です、それとティア様の件ですが、こちらに住民ごと来られます、輸送軍から連絡です」
「分った」
「今後ですが、ロベルタの戦後対応がありますが」
「インファルが居るし大丈夫だろう、こっちが過剰に口出しするのもアレだし」
「そうですね、戦勝国でもありますし、どういう交渉にしろ、もめはしないかと」
「だな、何れにしろ、問題があれば逐次対応でいいな」
「はい、それと、騎士団の方が‥」
「あー‥そうだったな、とりあえずマギを戻そう、姉もこっちに居るしあまり長期離すのも問題だ」
「かしこまりました、連絡を出します」

その後そのまま、面会者と会って午前中の公務を終え、昼食を軽く取った後私室でゴロゴロしていた、午後三時にはティアが戻り長老と中央庁舎に上がってフォレスと面会した、長老は真っ先に頭を下げて礼を言った

「お久しぶりで御座います、以前もこの度も本当に本当に感謝を‥」
「いえ、大した事ではありません、どうか頭を上げてください」

と、返したがずっと頭を下げたままだった、中央砦南の空いている施設に案内して住民も丸ごとそこへ入った、当面そこに滞在して貰って今後についてティアと話し合った

「こっちに全員来た、て事は移住か?」
「お前の下なら安心だ、という意見が多いな、で、とりあえず全員来た訳だが」
「ふむ、エルフは森の住民でもあるが、人間社会にも馴染めるだろう」
「そうだな、ここは世界で最も差別の薄い土地でもある、そこでだが、街に住みたい者と森に住みたい者で分けていいと思うのだが?」
「ああ、人魔の森の反対側、南森は人も入ってない、そっちを使ってもいいぞ」
「基本アノミアらと同じ流れだな?」
「そうだ、森も多すぎて管理出来んし、後、同じ流れついでに協約も書くか?」
「そこまではいらんと思う、人魔と違って我々の種は別の土地でも普通に生きられるし」
「ふむ、では住民登録だけして、後は自由でいいか」
「いいと思う、皆、お前を尊敬しているし、信頼もしている、伝染病の一件も今回の事も。基本元の森の様に荒らされなきゃなんでもいいしな」
「分った、ではそうしよう」

「ああ、それと、私はバルクストに戻るが、私の下で働きたいという奴も数名居る」
「分った、その辺りの人事も自由にしていい、お前も仲間居た方がいいだろ」
「助かる」
「直ぐ戻るのか?」
「いや、2,3日は居る、それとお前に会わせろという奴が居るので後で連れて来る」

そして更に夕方、面会室兼王座で対面したのがエルフの青年である

「お初にお目にかかります陛下、クオーレ=デリィズ=スピリティで御座います」

長髪で背が高い大人な雰囲気とエルフのイメージ「高貴」をそのまま備えた、神々しいまでの美男子だった

「美形だなぁ、しかも名前も美しい」
「流石陛下です意味をご存知のようで‥」
「かなり昔の言語だな、精霊、心」
「はい、わたくしも学士ですので、陛下の様な知識者の下で働けるのはこの上ない幸せ」
「というからにはティアについて行くのか」
「ええ」
「私は嫌なんだがな、ただ、学問の専門家だし、精霊術が使える、居たらいたで便利だし、当人の希望だし」
「ふむ、嫌な理由は?」
「幼馴染という奴だ、それで軟派野郎だ」

「わたくしはティア一筋で御座いますが」
「の、割りに何時も人間の女を引っ張り込んでいるようだが?」
「アチラが付いてくるので」
「フッ‥ぬけぬけと云うやつだな」
「私はこの場で叩き切りたい所だがな」
「まあ‥優秀ならいいんじゃないか?、ティアも助かるだろう、丁度内政官が足りてない所だし」
「はは~、有難う御座います、今後共宜しくお願いします陛下」
「ああ」

と返して会談は終ってティアと共に戻ったが、帰り掛けに彼を見て女性から黄色い声が挙がる、それにもクオーレは笑顔で手を振って答えながらティアに引っ張られて去っていった

「ま、あの見た目じゃ付いてくるだろうな、なんもせんでも」
「確かに芸術の様なエルフですね」
「気に入ったか?オルガ」
「いいえ、わたくしは、頼りがいの有る方が好きなので」
「成る程、人は其々だな」
「ですが、美しい物を美しいと素直に云える心は忘れておりませんわ」
「そうだな、それも大事な心だ」

三日後にはティアがバルクストの統治に戻り、入れ替わりにターニャとメリルがグランセルナに帰還、ターニャは戻って早々騎士団の隊員らに捕まった

「ごうくろんさん」
「いえ、特に何もありませんでしたし」
「それはいいことだ」
「バルクストですが、志願だけなのですが一千程兵力が上乗せされています」
「うむ、現状だと、兵力が多いに越した事はないしな」
「はい、そこで派兵軍ですが‥」
「現状、ロベルトのおっさんとハーベストだけだしな、こっちの兵力が足りてない、とりあえず首都で軍としての錬度が終った一千と予備兵一千をリコに預ける、現状エミリアが居るからいいが」
「了解しました」
「エミリアに一万五千はいらんと思うし、これも再編が要るな、後で軍官会議もやるが何れにしろ、東が片付いてからだ」
「はい、では早速」

と離れたメリル、その間にフォレスに伝心が届く

「せんせー、東が直接裁定が必要なんだけど?今日会議があるから来て」

事情を聞くと共和側で色々意見が出ているらしい、先の戦闘から協和形態の維持に懐疑的と成っているとの事だった

「今日」と云われたのでやむなく、メリルとオルガに後を任せて、グランセルナとロベルタの間に設置した、転移陣から単身直接跳んだ

ロベルタ側に迎えられてロッゼの私室に案内された
そんでロッゼに抱きつかれた

「本当になんとお礼を言っていいのか‥」
「オレが何かした訳じゃない気にするな、で?」
「と、とりあえず、今から共和会議があるので、フォレス様も」

殆ど意味も分らず、直ぐに周辺国との合同会議に出された
。先の開戦で死亡して空席になったトロント領主の後任が決まらず、家族や後継者も拒否、選挙の類もまだ無く、いっそこのままロベルタへと言う流れが一つ

これも先の開戦の影響だが、共和形態では其々の領主国の軍隊では力を発揮せず、守るだけにしろ、バラバラで脆い、そこで共和を解散して新たにグランセルナ連合として纏まった方が良いのでは無いかという、略統一した両国側の見解

これまでこう言った事態も無く、戦後賠償もどこまでやればいいのかと、殆ど何も決まらなかった、成る程の事態ではある

「確かに、この一帯を連合としたほうが援軍や合同練習では楽だろうな、経過を見る限り、数合わせ感は強い、グランセルナの連合の方がこっちも援護派兵や援助はしやすい、共和側に異論が無いならウチとしては問題ないが?」
「はっ、我々も一本化のが良いかと考えます、ずうずうしいお願いですが、加えて頂ければと」
「分った、それでいい」
「それとトロントですが‥」

「トロントは先の暴発で著しく評価を落としたからなぁ‥後継者や領主が決まらないというなら、そのままロベルタに併合してもいいだろう」
「ロベルタの負担に成りませんか?」
「あると思うが、街道北横にあるしなぁ、比較的重要な位置でもある、が、これをロベルタ領にそのまま併合なら、戦略上の作戦は作りやすい、それとこのままだと、ベルーサ側にも付込まれる」
「確かにそうですねぇ」

「向こうの領民も不安だろうし、助けてやるなら最後までやっても良いと思う、多少面倒もあるだろうが、敵が攻め難い状況にはなる」
「と言うと?」
「例えばだが、先の作戦の様に、主軍で決戦しならがの横突きだな、街道十字路の西にあるし街の規模もそこそこある、あそこを軍事基地として強化すれば、逆のパターンにもなる、敵がトロントを狙えば、ロベルタ本国側から南から突くとか、色々選択肢は出るな」
「成るほど」
「多分、ベルーサも今回の一件で戦後賠償もそこを突いてくるので、併合の形で、ロベルタ領土にした方が因縁をつけ難い、それとトロントの暴発も防げるし」
「ご尤もですな‥開戦前にまた同じ事態に成っても困りますし」

「と、いう訳でロッゼの「見捨てない」という御意を叶える意味でそうしたほうが良いな」
「分りました、では連合への参加条約書も直ぐに」
「ああ、頼む」

各国の責任者も集まっている為、その場で連合国会議、書にして連合と成ったのである

「もう、知っていると思うが連合が其々の国の領地を守る事にある、統一した行動と助け合いだ、援助の類も出来る限りはするが、基本其々の国の判断を尊重する一方的な庇護ではないので了承願いたい」
「はっ」
「それと、暫くはオレがここに滞在する、向こう、ベルーサも中々の狸だ、交渉もこっちの代表としてやるがいいか?」
「グランセルナ側にやって頂けるのは有り難いですな、結構です」

と、あっさり纏まって終了と成った
その後ロッゼらと夕食会での雑談会議である

「せんせーが居ると話が早いわね」
「立場上決定権を預けても大丈夫と思われてるからな、こっちの軍力と経済力もある」
「以前言っていたペンタグラムの件ですね?」
「そうだな、あくまで中立で公正に近ければ、それでいて一定の力があれば、大抵従うだろう、多少強引でも、説得力と道義に劣らぬ道を示せば人はついてくる」
「アタシじゃデカイ事は云えないしね」
「立場上の問題があるからな」

「所で、今後ですが」
「とりあえず、トロントの視察と同時に併合だろうな、向こうの政策も見直す必要があるだろう」
「了解しました」

その後に、フォレスは例によってロッゼの私室で寝るまで付き合わされた、相変わらず二時間程楽しそうにロッゼはしゃべり続けて

フォレスもずっとうんうん聞いていた、そして与えれた客室に戻る所でまたもインファルに云われる

「ロッゼ様はせんせーに気があるようね」
「ティアにも云われたが‥」
「なんだ分ってたのかぁ」
「まさか嫁にする訳にもいくまいロベルタの君主なんだし」
「んー‥別に問題無いんじゃない?、今なら連合国同士だし、今後共良い関係を~で済むかと、それにロッゼ様は未婚だし後継者も居ないし」
「実質庇護国に等しいといえばそうかもな」
「そうそう、もうどっちもいい年なんだし」
「そんな年でもないが‥」
「ロッゼ様は25、せんせーは‥同じくらい?」
「一応23だが」
「ウッソ??」
「見た目で判断するな‥だが、話し合う必要があるな」
「あんま「国」とか気にしなくていいと思うけど」
「ふむ、東の事が片付いたら、そうしよう」

「ほんでロッゼ様をどう思ってるの」
「そうだなぁ、美人だし、清楚だし、なんとなくほっとけない感じはあるんだよね」
「それは皆そう思うわな」

翌朝、早速グランセルナ側とロベルタ側でトロントに向かった

それなりに急ぎの方が良いという事でグランセルナの馬車軍での出立である、丁度半日で辿り着きそのまま街に入った

降りた所で既に統制管理に当っているロベルタの官僚から報告書の類をロッゼの代わりに受け取った、そのまま領主の屋敷に歩きながらの会議に等しくなった

「人口はかなり居るな、だが、潤ってる感は少ない地勢的に、自然も多いし領地に集落等もあるし」
「少々税金を掛けすぎの様です‥」
「ロベルタは何%だ?」
「12%です、他国も15~20%の所も」
「ここは35%も取ってるのか‥それで民衆がイマイチ暗い、どこに金が消えてるんだ‥」
「それは、領主の館を見ていただければ」

そう政務官に云われて屋敷に辿り着いて入ったが納得だった、異常にデカイ、ほぼ城に近い個人邸宅、屋内も豪華な調度品で溢れかえっている、一行も思わずあんぐりする程の物だった

「中には一切手を付けて居りません、それと、隠し財産の類もかなり‥」
「要は、集めた税金の類はここに流れていたのか、それで先の戦争でも自分から動いた」
「どういう事なんでしょう?」

ロッゼには意味不明だったようなので説明しつつ対応も指示した

「トロントが落とされると当然接収される、領主て立場も危ういし、個人的な、まあ、横領と言えるかどうか謎だが、今までやってたこともバレる、となれば、ここに来る前に敵を叩く、それが公にならない内にな」
「なんと‥」
「それで勝手に動いたのですか‥たかがそれだけの為に?」
「という事になるかな、当人が死んでるので聞きようも無いが」
「呆れた話ですねぇ‥」
「ま、領主だからなぁ、多少好き勝手にしても問題は無いと云えば無いが‥」
「あの、もしかして個人軍の多さも?」
「多分な、反乱の類の鎮圧を考えての事だろう」
「信じられない‥」
「ま、過去の事を追及してもしょうがない、もうこっちの領土なのは決まっているし家族の類は?」
「小さい息子と、妻が、お会いに成りますか?」
「そうしよう、呼んでくれ、妻だけでいい」

そのまま領主の屋形の一室で妻と会談
相手は傅いて頭を下げたままだった

「申し訳御座いません、私にはどうする事も出来ず、夫の事を止められません」
「そこは別にいい、既に当人は亡くなっているし、トロントは併合だ、そもそも親や夫の罪を着せても意味が無い」
「は、はは~!」

だったがこの時点でフォレスは見切っていた、奥方も豪華な衣装と宝石、かなり太っている「止めようと」等思うならその生活を便乗、感受はしないだろう

「奥方様と嫡子はここに留まらない方がいい、どこか別の土地へ逃れるほうが安全だ、今のままこちらへ併合だと、個人的な恨みを持つ民も居るかも知れん、闇討ちされても仕方無い程の治世だ、移住をお勧めする」
「は、はい~!」
「屋敷の調度品の類を換金する、その分の金をそちらに渡す、それで「贅沢して」生きるには困らないだろう、そちらの罪は問わないので、それでいいだろう」
「陛下のご寛容には‥」

と奥方が言い終わる前に兵に指示して馬車を用意させて、護衛も用意させる、そのまま屋敷から追い出して適当な仮家に入れた

直ぐに調度品の売却額を計算させて、等価の金も馬車に積ませそのままトロント領土外に当日には去らせた

この対応自体かなり穏健で甘い処置だったといえる、王が王ならその場で切り捨てられかねない、若しくは住民の中に放り込んで住民に殺されるかのどちらかだ

それだけに官僚らも不満はあった
というより個人的な感情だ

「宜しいのですか?」
「構わん、アレは金にしか興味が無い「夫」の事等なんとも思っておらん、ここに置いてもどこかに登用しても不興を招くし、有利と見れば簡単に掌を返す、あまり過大な罰を与えても逆恨みするのが関の山だ、金与えて追い出すのが妥当だ」
「ふむ‥」
「そもそも実際やった当人は死んでる、奥方と子供には関係無い、一族処刑という訳にはいくまい、いくら俗物と云えど」
「そうですねぇ」
「ですが、やはり住民は納得しないのでは?」
「そこは別の方法で方向を逸らす、むしろ前が酷かっただけにロッゼを持ち上げるだろう」
「具体的にどの様な?」
「まず、10%の減税、ロッゼの声明で頼む、以下は1年毎に2%づつ、最終的にはロベルタと同じ税率まで続けて下げる、そこで同時兵の募集、これで人も集まるし、寧ろ感謝するだろう」
「なるほど‥わかりました」

「前領主個人資産はそのまま国庫にでいいだろう、何れ軍を整えなおすのに金は要る、こっちの人口は集落2つと合わせて20万は居る、1万程度までは楽に兵集めできるだろうが、その辺は給与待遇を良くして志願のみで補強する」
「はい」
「街の防備と施設の建設も要るがそれはこっちから屯田兵を出す、まだ先の戦争の残り兵も4000は居るし、ロベルタ本国から統制管理の人と軍を出して防衛でよかろう人員の選抜は任せる、ただ、何れにしろそれなりの将は要る」
「それからベルーサの外交官も直ぐ呼んでくれ、めんどうだからここに居る内に片付ける。そんなもんかなぁ?」

「それと、ペンタグラムの事が‥」
「うーん、前後の事情や会談の記録等も文章にしてまとめてペンタグラムへ、これはロッゼの正式謝罪文の形も添えよう、賠償金が入ったら2~3%程寄付してやれば多分文句も無いハズだ、実質原因はベルーサとトロントの前領主にあるし」
「了解しました」
「では頼む」
「ははっ!」

そこから二日後の夕方、呼びつけたベルーサの外交官が訪れ
会談、交渉となった「こちらの要求はこれだけだ」とフォレスは先に金額を提示

受け取って読んだベルーサ外交官も頷いた

「金銭賠償ですか、随分過大な要求ではありませんか?」
「少ない方だろ?他国なら倍は要求されている」
「‥そうでしょうか」
「今回はロベルタとグランセルナの分はそれ程要求して無い、兵への損害見舞金だけだ、何なら、正規に要求しなおしてもいいが」
「いえ、結構です」
「そうだろうな、額は軽く倍になる」

「‥ところで、何か忘れてはいませんか?」
「何かな?」
「トロントの事です、戦端はそちらから開かれています、戦の原因もそちらにあります」
「もうトロントの領主も家族も居ない、トロントもロベルタと併合になっている、どこに罪を擦り付けるの話では無くなっている」
「では改めてロベルタに要求致します」
「先の開戦に至っては、そちらの将にも通知してトロントの暴走と認知を受けている、外交上の文章も残っているが?」
「ですが、こちらが望んだ戦ではありません」
「戦の原因、引き金、というなら中立地に勝手に支城建築の際こちらの交渉を断ったのが悪い、あそこに支城を作る前にこちらとキチンと会談か、ペンタグラムに申請していればトロントの暴発も無かった」
「憶測でしょう」
「そうだな」
「‥」

「引き金、を探るなら、もしこうだったらは通じんよ」
「ですが実際トロントが攻めてきています、事実というならそれが事実です」
「正式な布告はそちらからだ、望んだ戦いではないならまずは正式会談を持つべきであろう」
「何れにしろ、こちらはロベルタに要求させて貰います」
「結構では、賠償額を計算しなおす」
「ぬ‥」
「戦の原因、トロントの仕掛けもこちらのせいにするのなら、一連の事件は全て「含めた」という事になる。ならば、一連の戦全て含めて戦勝国側となる、で、あれば賠償の請求には当らない」
「それは、詭弁でしょう」
「戦勝国側が賠償等聞いた事が無い、当然だ、そもそもトロントは既にロベルタの一国である」
「‥わかりました、この条件を本国に伝えます」
「それでいい」

「それと、今後ですが?」
「今後?」
「はい、ベルーサはロベルタとの同盟を求めます」
「断る」
「‥それは」
「時限式不戦条約なら考えるが、同盟は無い、開戦前の不当な支城建設もそうだが意図した裏を展開する国とは組まない、ついでに言わせて貰えば、この敗戦でそちらの国は著しく兵力を失った、そして東地域は荒れている、この状況ではロベルタ側に「兵を出してくれ」等と要求されかねん、一方的に不利な同盟には応じない」
「わかりました、では、時限式不戦条約なら考える、という事で、本国に伝えます」
「結構」
「それでは失礼致します」

ベルーサの外交官も礼を払って去った、聞いていたロッゼも官僚も不愉快ではある

「ナンなんですかアレは‥」思わずそう口に出た
「怒るな、色々因縁つけて賠償額を値切ろうってだけだ」
「‥なるほど」
「こっちは「勝った」側だ、どんな因縁つけられても応じなければそれでいい」
「こちらを怒らせても得は無いでしょうに」
「こっちが折れればラッキーくらいのもんさ、どっちにしろもう敵対国だ、表面上争っても別に問題ないのさ、まあ、だから「賠償を吊り上げる」と言った」
「あまり甘く見るな、という事ですね」
「そんな所だ、だからあっさり引いた、んでもう一つの同盟だな」
「これは同感です、あのような仕掛けをした側が今更同盟等と‥」
「露骨に利用目的だな、こっちも向こうも兵力が減ってる、もしかしたら不戦に等しいから釣れるかも?くらいの感じだ、まあ、気にする事もない」
「はい、そうですね」
「向こうが改めて、時限式不戦条約を、と言ってきたら断っていい」
「え?」

「こっちにメリットが無い、どうせ向こうももう動けん、一、二年組んでも実質動けないので無意味だ、そもそも約束を守る連中じゃない。その意味、実際は組まんでいい、こっちからも攻め込むぞ、という脅しを常時掛けられるし舐め腐った交渉を挑んできた分、打ち返してやろう」
「‥なるほど」
「そもそも「考えてやる」しか言って無いしな、もって来たら持って来たで、やっぱやーめたでいいさ」

フォレスの言を聞いて皆肩で笑ってた

「それと明日にはベッケルス大将が来ますので、それで当面大丈夫でしょう」
「そうだな、この状態になったらロベルタ本国も回りを気にせず、軍備していいあっちも人口多いし、豊かだし」
「はい」
「ある意味、この地域はロベルタ頼みだ、反対は出まい、が、ベッケルスをずっと置いておく訳にも行かん、主軍大将だし、後任も探したほうが良い」
「分りました」

実際、この後直ぐに賠償金の類は支払われた、というのも「他所の国なら倍は要求されるぞ」と言った通り、連合の要求は少ない、気が変わらない内に払っておこうという計算である。

だが、フォレスは向こうの統計情報も持っていただけに「ここが精一杯」と見切っても居た

これら賠償金もすぐさま元の共和側に支払われる、ロベルタ自体、直ぐに金が必要な国でも無いし、それは連合もだった、基本金余り感はある、今回の戦闘での被害にあったものへの見舞金を配って終える

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