剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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フォルトナ編(後日譚)

動かざる者

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エグハルト大陸、先の事件から「陰謀の種」を見つけたフォルトナはバーセルから東へ中央にある大国、セルツェアに向っていた


一旦セルツェア領土に入り、西の街へ。そこでバルテッサ、リーベルスらと別れ、フォルトナはシエラを抱えてそのまま東に向う街道を進む

非常時とあらば「飛んだ」方が早い。それゆえにこのような行動となった

飛行術と足で交互に移動し、僅か一日で中央セルツェアの王都に入った。各大陸の「乱」が外的要因であるならば。そして先のバーセルで暴いた魔族の女。あれを探し何らかの形で止めねばならない

正直かなり疲れたが。すぐ宿を取ってシエラを休ませ自身は即、王都で情報収集に当る

王都セルツェア。
100年近い歴史を誇る王政で大陸中央に位置する。周囲を山岳と森、湖に囲まれた国で天然の防御要塞の様である。自然豊かな場所であり、元々経済と実りが安定している

殆どの物資が支配地域内で自給自足出来る強みである。森から獣、実 湖から魚、水源 山から鉱物 牧草地から牛、馬、敷いて上げれば平地が少ないので穀物が少ないくらいだろう

大陸戦争の中、極端なインフレに苦しむ各国を尻目に安定した治世を行っている。それゆえ、軍事力、支持率共に高く、この国が中央から。西と南を平定して現在一強になりつつあるのはある意味自然な事だった

王は、50歳、セイル=コルドバ

元々強権気味な王だったが、「それまでは」安定治世と武力を両立し名君であった

が、近年、急激に「武」に偏り、先のバーセルの騙し討ちに代表されるように「手段をいとわない」行動が多くなり、世間の評判も落ちている

「王が変わった」と噂される様になったのは、ほんの7,8ヶ月前の事である

「聞けば聞くほど、ベルフの例と似ている」

フォルトナも思わざる得なかった


とは言え、具体的にどう裏を探るのかが難しい、先の例を見ても、向こうも化けられる訳でそれを見抜くにはそれだけの「何か」が必要でもある、幸いシエラが居るので「見る」事は可能だろうが

彼女をフォルトナと共に潜入させるなど無理だ
そして「敵」があの魔族の女、だけとも限らない

規模は、人数は、どれほどの力を持った相手なのかまるで分からないのだ、フォルトナもサーチ術は使えるがそれほど得意という訳でもなく精度もあまりよろしくない、使える距離もかなり近接でしか効かない、まして相手も魔族とあらば、こっちが使って逆にばれる

「さて、どうしたものか」と戻った宿で首ひねって考えた

こういった場合、1つに最も中心に居る人物に予め近づく、敵の狙いが、国其の物の操作ならばそこに近い程効率がいい、物事の決定機関なのだから

2つに只管追う、つまり聞き込みで当りを引くまで動く、がこれは人海戦術に近い、故2は無い

3つに、釣り、餌を撒いて向こうから食いつかせる、となる

フォルトナが選らんだ選択は1と3。まず、城への潜入である、尤も、身隠しや幻術が使える彼女には難しくない。王の身辺を張る。

何故なら、物事の中心で同時に餌でもあるからだ


ここはアデリスと同じく、魔術は浸透している、それに、どこもそうだが、使い手が多い訳ではない、その為聊か無理をしてもバレはしないし大丈夫だろうと思った

実際城に隠し身を使って潜入の後。一通り回って状況を確認した、そこで幻術を使って一般兵に紛れる

本来、王家に近づくなら近衛か何かが良いのだが、ここはその辺に「向こう」の抜かりが無い。

城内の上に近い者は全てチェックされており全ての人間の姓名、顔がリスト化されていた。無論、上に近づく者、近習、世話人、一般面会者、出入り業者全てである、こうなると目的通りにはいかない

「甘く見ていた」のである

やむなく、フォルトナは下階の手近な倉庫に入り、幻術を解いて身隠しの術での捜査に切り替え、それに終始した

とは言え、そこまでしてもそれ程有用な情報は得られなかった。精精、城内の噂の類である

「やはりそう簡単には掴めんか」と諦め
城の中庭から堂々と出て一旦街に戻った

この手の術は有効だが、魔力の消費が激しい。何時間も、という訳にもいかず、どこかでそれを解いて休息しなくてはならない

肩代わりの石が有るには有るのだが、まさかその為に使い切る訳にもいかず、その為一時撤退という事になった

広く、美しい庭、迷路のように作られ、手入れされた生垣、其の中を突っ切って街への道を行った、中央に椅子とテーブルがあり、そこで気品と落ち着きのある女性が一人、優雅にお茶をしていた

思わず、フォルトナも笑みが毀れる程、自然で周りに調和していた「このまま絵画にしたらさぞ名画に成ったろうな」思わず心で呟いた

その彼女の横を通り戻ろうとした
しかし、その高貴な女性は「見えないハズ」のフォルトナに眼をやって、じっと見つめていた

「身隠しが解けた?!」と思わずハッとしてフォルトナは自分の姿を見たが、透明なままだった「まさか?」と思った

そうして高貴な女性はその心を読んだかのように静かに、ゆっくりと言った

「ええ、見えているわ‥」と

あまりの出来事にフォルトナも驚き思わず声が出てします「な?!」と

しかし女性は何事も無かったかの様にティーセットからカップをもう一つ用意し、紅茶を注いでテーブルの対面、誰も居ない対座にスッと置き手を軽く伸ばして席を勧めた

「一人で呑むお茶は寂しいわ、宜しかったらどうぞ‥」と

そこまで来るともうフォルトナも諦めて隠し身を解いて、薦められるまま対座に座った

そしてこの人にはどんな隠し事も出来ない、そう思う程の「何か」を感じた

貴婦人は年齢は30前半、薄い白と金の中間の色の長いストレートの髪、落ち着きと優しさ、だが、どこか疲れたような笑みを持った女性であった

「ジリオーラ=ラナ=コルドバ‥」

そう名乗った。それだけで何者か理解するのは十分である

「コルドバ王の‥」
「ええ‥第1婦人よ‥」

偶然の、が、偶然ではない、彼女との出会いだった


一方、フォルトナらと別れたバルテッサとリーベルスは家「巣」に戻っていた、バルテッサは超絶広い「巣」の中を駆け回り探し物をしていた

広い巣を走り回り、どこに何があるのか分からない程物だらけの室内を、駆け回って探し回る姿はなんとも間抜けである

正直リーベにはどれが重要な物で、どれがそうでないのかサッパリわからない、エンチャントの石以外、全部ゴミにしか見えない、それでもバルテッサにとっては

「ちゃんと整理してあるぞ」という程度らしい

途中手伝おうとしてリーベも周囲を歩き回ってゴミの山を掘り返したが

「年代毎に分けて置いてあるんじゃ、勝手に移動するな!」と怒られたのでやむなく傍観するだけになった

「分けて置いてあるなら直ぐ見つかるはずだが?」と思わなくも無いが

そのうち、洞窟のかなり奥の方まで行ったバルテッサが声を挙げた

「こっちじゃ!こいリーベ!」と。バルテッサは虎の姿のまま顔をゴミの山に突っ込んで「剣」を引っ張り出した

ものすごくゼイゼイしていたが、引っ張り出した「剣」は散々待たされ探し当てた割りに

「OH‥」としか言えない様な物だった

おそらく元は銀色、鞘に収まったままの通常剣、宝玉も嵌められているが、よごれて何色かすら判断つかない埃とサビでボロボロである そんな事は知った事かとバルテッサは偉そうに

「ジャスティファレットじゃ!」

そう言われても、かなりボロボロで汚い、偉そうに言われても共感して驚く事も出来ない、そんな心境である

「なんじゃ‥その眼は‥」その反応がバルテッサは気に入らなかったらしい

「いやね‥これボロボロじゃないか‥使えるのか??!」
「無知な奴じゃ、この手の物は基本的に加護が掛かっておる、時間が経とうとちゃんと使えるわい」
「ま、まあ、疑う訳ではないが‥」
「まあいい、持ってみろ、由緒正しい武器じゃぞ!」

そこでやむなく「きったないなぁ」と思いつつ 剣を持って鞘から抜いた、が、勿論中身もサビと汚れだらけである、ここまでくるとリーベルスもジト目にならざる得ない

「由緒正しき剣、ね‥」
「む、まだ疑うか、ローレライの使った剣なんじゃぞ?!」「マジデ‥」
「おう、マジじゃ、どっかその辺の岩に叩きつけてみろ」
「叩きつける?」
「刃を使わず、刀身の横をな」

ヤレヤレとリーベルスも洞窟の壁側にある適当な岩に言われたとおり、刀身を横に向けて強めに叩いた

「うわ!?」と思わずリーベの声が挙がる程、叩かれた剣からキーンという楽器の高音符を叩いた様な音が響き渡った

すると同時にこびり付いていたサビや汚れが剥がれ落ち、先ほどまでガラクタだった剣が新品の様な美しい姿を現した

「ななな!?」
「フフン、どうじゃ美しい剣じゃろ」

確かに美しい、白銀のしかも金属とは思えない程透き通った、まるで明かりが灯っている様な全身と中央にはめ込まれた緑の宝玉が燃える剣だ。さっきまでのガラクタとはまるで別物

しかも叩いた振動から楽器の音色がしばらく続いた。その音も余りにも美しい音色だ

「な、何なんだコレ‥」
「念ずる剣。聖、魔、どちらにも通る」
「そんな物があるとは‥」
「所謂「ゼロ属性」「念」、だから斬る相手を選ばない万能剣じゃ」
「おお‥」としかリーベも言えなかった

その反応を見てようやくバルテッサも満足したのか、ふふんと鼻を鳴らした

「これが「あの」ローレライ=エーレンベルグが幾多の神を叩き伏せてきた武器なのか」

「左様」
「しかし、この振動音も美しい‥」
「ただの音ではない、その音も聖属性の音じゃ」
「それは‥?」
「その音は魔にとっては「毒」じゃ」
「?!」

「聖鐘の効果がある」
「なんと‥い、いいんだろうか、こんな貴重な物をあたしが持って‥」
「ワシの竜騎士という自覚が無いのう、2番目の騎士なんじゃ寧ろ使って然るべきじゃ」
「わ、分かった、有り難く使わせてもらう」
「ウムウム」

そこでバルテッサは首をゴキゴキした後また走り出した

「とは言え、そりゃ一本しか無いからのう、フォルトナには別の物を探さんと」と言った「また探すの!?」とリーベもつい口に出た

彼が探し出すのを体育座りで只管待つ事になった


ジリオーラは強権な君主の后とは思えぬ、落ち着きと空気を持った女性だった。30前半なのにまるで祖父母と話している様な、全てを包む様な、緊張感すら抱かせない年輪様な物を感じさせた

それゆえにフォルトナも「話す」事を躊躇させなかった

「そう他所の大陸から旅を‥そこでも此処と似たような事が」
「実際バーセルでも私はそれに関わりました」
「それで此処で調査をしていたのね」
「はい、それで‥ジリオーラ様は何故私の姿が‥」

ジルは小さくため息をついた後自身の事を語った

「わたくしは嘗て「時の賢者」と呼ばれた者です」
「時の賢者?」
「魔術師でもあり、神聖術師でもあり、占い師でもあった‥」
「今は‥違うのですか?」
「王と共にあって、わたくしが目立つ様な事は出来ません」
「そっか、それで身隠しも‥」

「陛下も、嘗ては剣王と呼ばれ、いえ、今もですね、公明正大でした」
「今は違う?」
「分かりません「心」が読めないのです。今は近づく事も難しい」
「后なのに」
「ええ、ある時から、何者も近づけ無くしました‥」
「では‥」

「はい、フォルトナさんのお話と合わせれば、魅入られた。という事なのでしょう」
「誰に?」
「陛下が変わったのは近年の人事からです。第二王妃、御付の二人」
「では‥」
「わたくしはそれを見抜く力はありません、見抜いたところで、止める力も」
「事情は分かりました、それなら、私がやりますそれが私の目的ですから」

「先ほど仰った「取り除く」ですか」
「ええ、だからこの事態を見過ごす事は出来ない」
「‥そういう「役目」をおった方なのですね」
「それは、分かりませんが‥」

フォルトナがそう言いかけた所でジルはそれを制した

「誰か来ます、姿を‥」と言われ

咄嗟、フォルトナは身隠しを使って姿を消し、その場から下がった。ジルはティーセットを片付け、最初の様に一人でお茶を続けた

一分程して其の場に一人の女が現れる。ドレスの如何にも気の強そうな若い女性だ。彼女はジルの座るテーブルの横へ来て辺りを見回す

「何か、魔力を感じたが」と言った

離れて見ていたフォルトナはギクっとしたがジルは代わりに答えた

「わたくしでしょう‥静かにしていても魔力が洩れる」
「ま、確かに。気味が悪いくらい魔力が多いからね、アンタ」
「生来の物ですから、仕方ありません‥抑えるには拘束具でも着けないと」
「フ‥第一婦人にそんな事は出来ないわ」
「そうかしら?」
「アンタの存在が問題あるならそうしてもいいが?」
「ええ、わたくしは何もしません」
「だろうね」

と女は笑ったまま満足そうに、その場を離れ城に戻った。ジルは紅茶を啜って間を置いてから、隠れたままのフォルトナに視線を向けず言った

「あれが第二婦人のアガーテ」
「成るほど、けど、私には正体は分からないなぁ」
「そう‥わたくしにもよ」
「仲間を連れてこないと」
「そういうお仲間がいらっしゃるの?」
「ええ、後の事はお任せください。内容が分かった以上、探して見せます」
「おまかせします‥わたくしは「何もしません」」

そうしてフォルトナは一旦街へ戻った
ジルの言い方が引っかかりがあったにはあったが

宿に戻ったフォルトナをシエラが迎えた

「退屈ー」
「バルテッサはまだか‥」
「うん」

情報は得た、活路もある、が、具体的にどうするかの判断が悩む

こんな時に相談相手、知恵を出してくれる「彼」が居ないのは厳しい

一応伝心で連絡を取ってみるが通じず、仕方ないなと思ったがそこで閃いた

「ジリオーラ様は魔術師であると言ってた」という所

そこで戻って直ぐだが、再び城へ向い潜入してジルを探したのである

それなりに苦労するだろうと思っていたがジルは直ぐに見つかる。相変わらず中庭で生垣や花の手入れをしていた。そこでフォルトナは彼女と渡りをつけ遠隔伝心出来る環境を作る
。ジルもそれを断らなかった

「何時も一人ですから構いませんよ」

何故第一婦人が何時も一人なのか、何故「時の賢者」とまで呼ばれた方が、この様な立場なのか、そして動かないのか、疑問は尽きなかった


そしてジルはその事にも誤魔化さずハッキリ答えた

「わたくしは王の妻と成った時点で表舞台から、名を姿を消しました、わたくしの過去を知る人も、それほど多くは無い」
「何故その様な」
「あくまで王は陛下、わたくしが如何に力があろうと、それをもって前に出る事は誤りです」
「護衛の類が居ないのは?仮にも王妃では」
「わたくしを守る意味は薄いからです、それに「怖い」のでしょう」
「術師であるからですか?」
「それもあります。実際10年以上前ですが刺客の類はありましたが果たされませんでした」
「もしや‥」
「ええ、お察しの通りです、わたくしに触れる事すら叶わなかった」
「それで‥」

「今の立場にあり、放置されているのも「怖い」からかも知れません。そしてわたくしは能動的に何かをしない、ならば手を出さない方が良い、そう、皆考えるのでしょう」
「それが例の第二婦人の態度ですか」
「確証はありませんが、フォルトナさんの「陰謀」の疑いは当りでしょう、それをわたくしがどうこうしようとは思いませんが」

「無論、それは私がやります、しかし‥」
「?」
「王が心変わりした事を寂しく思わないのですか?」
「思います。ですが、あくまでわたくしは彼の妻、それが変わってしまっても、それを諌め様とは思いません」
「立場‥なんでしょうか」
「それだけの「力」があるのは自覚しています。しかしわたくしはそれを使いたくない。理解しがたいでしょうか」

「いえ、単なる心変わりならそうでしょうが、そうでは無いですから」
「ええ、実際わたくしが出来る事は、少ない」

そこで二人の伝心のやり取りに別の人物が割り込む

「我々もセルツェアに入ったぞ、フォルトナ」
「バルテッサかやっと来たか」
「探し物に手間取ってな」

フォルトナはジルに謝して一旦街へ戻った

「そういう訳ですので私は一旦戻ります」
「ええ、また」と二人は分かれた

早速フォルトナは街へ、シエラの待つ宿まで戻る

そこで一行は合流し。まず先行して大方の情報を得たフォルトナはそれらを伝える

「状況が分かってもそれは難しいな」
「ウム、そもそも近づけないのではな」
「が、今のところ入り込んでいる「魔」が二人と考えればそう難しくないハズ」
「うーん」
「ならいっそ「餌」の対象でも変えてみるか?」

「どういう事?リーベ」
「ジリオーラ殿に今の所近づけるのなら、寧ろ彼女に張り付いて護衛と睨みを利かせた方が向こうも動きにくいし、けん制になるかも知れん」
「成る程、確かに一理ある」
「問題は彼女が受け入れるか?だが」
「兎に角、明日だな」
「うむ」

と、一行は其の日は休息を取り後日から行動を再開す
「受け入れるか?」のジリオーラはフォルトナの提案をすんなり受け入れる

彼女自身、外的要因ではあるが、「何か変化があるなら‥」とも思った。彼女の立場もあり、周囲の感情もある

「個人的に護衛を雇った」と言っても、文句をつける人間は居ない、その立場はある意味中立である

当人は表に出ず、主張もしない、王の后であって尚、誰もが敵する事を躊躇する人物である、したがって、干渉する者は略居ない、どの方面から見ても一歩引かれる立場があった

そこでジルの周囲にはリーベルス、シエラが着いて潜入が可能なバルテッサ、フォルトナは交代で情報収集に当る、しかも堂々と且つ大胆に

敵が多くない、と分かった以上、別にバレても構わない。この方針を取った以上、「敵」が動く、あるいはこちらに干渉してくるのであれば。かえってそれが敵の正体を知る機会にすらなる

フォルトナ側にしてみれば、潜り込んでいる「魔」を暴き。消してしまえばいいだけだ

国家其の物の陰謀なら兎も角、極一部で干渉している工作員さえ叩き潰せば。正常な流れに戻る。流れを逆流させている川の大石を取り除けばいいのだ

実際「向こう」のリアクションは早かった

その日もジルは庭でリーベとシエラを伴ってお茶をしていたが、その一同の下に第二婦人であるアガーテが供を着けて現れ、一行を訝しんで見た

アガーテも近くに来て見ただけで不快そうな顔のまま一言も発せず城内に戻った

だが、それだけで十分である。シエラは彼女らが去った後それを確かめた

「バーセルで見たあの悪魔と同じだよ」と
「やはりか」
「隣に居た奴がそう、アガーテて人も多分人じゃない、嫌な光を放ってた」

これで確実に「敵」が分かった

一応の事としてジルらは城内を回りシエラの眼で見て回ったが。他には居らず。それが二人である事を確認した後フォルトナらとも情報交換を行った

「今後どうするか?」
「相手が二人と分かったなら各個撃破で良いだろう、その後王を探す」
「問題はどう引っ張り出すか?だが」
「別に策を弄する必要も無いさ、上階に入って直接接触すればいい」
「引き続きリーベとシエラにジル様を任せる」
「私は正面から行く」
「了解」

行動は決定されたが。向こう「敵」からしても状況は同じだった。お互いがお互い邪魔な奴を取り除けばいいとしか思わなかったのだ

どちらも強大には違い無い「敵」だが規模は極めて小さい、それさえ取り除けばいいのだ。そしてそれは直ぐに形として現れる。

「向こう」から直接仕掛けてきたのである

三日後 夜半。

城を外から張っていたフォルトナ。アガーテは単身姿を現し城を出る、そしてフォルトナは後を付けた

「バルテッサは王を」
「ウム、分かっていると思うが」
「言われるまでもない」

アガーテの単身行動が「釣り」である事も分かっている。故にあえて自身も一人でついた

大胆でもある、危険も伴う、がそれはお互い様であるし。お互いの意図を確認するためには何より手っ取り早いのである

街のはずれに着いた所でアガーテは堂々と「本体」を表し。振り返って見た、そこでフォルトナも身隠しを解除して対峙する

アガーテも先に会った「魔」と似たような姿。だが明らかに格上なオーラと、少なくともそう見える姿である。黒の密着したドレス、青白い肌と黒い髪

「魔」にも関わらず高貴で威圧感のある雰囲気の女である

「バーセルで邪魔をしたのは貴様らしいな」
「その様だ」
「何者だ?見たところ貴様人魔の様だが?何故邪魔をする?」

「フリトフル大陸、故郷でも同じ様な陰謀があった」
「成る程‥それでしつこく追い回している訳か」
「と、言うからには貴様が黒幕で間違い無いのだな?」
「残念だが私も下っ端さ」
「そうか‥、が、だとしても、見逃す訳にはいかんな」

それが可笑しかったのかアガーテは笑ってみせる

「フ‥、しかし理解に苦しむ、人間が争って滅ぶのが何が問題なんだ、それを止めて何になる?」
「歴史は人が作る物、貴様が作る物ではない」
「くだらん理由だ」
「お前の言う通り、私は人魔、故に人の心もある」
「‥そうか、貴様は高貴種とのハイブリットか‥」
「おそらくな」

「道理で考え方が学者の様である訳だ」
「褒められたと、思っておこう」

そしてアガーテはある方針から一つ投げかけた

「惜しいな、それ程の力と才覚があるなら。世界を支配しても足りるだろう貴様の周りに居る連中も」
「この世界は人に与えられた物。外部から干渉して変えるのは許されない、それに‥」
「?」
「パパもママもそんな事は望まない」
「クク‥そうか」
「お前がどう思おうと私は、自分の分を弁えている「そちら側」に行く判断はない」

アガーテはある意味「誘い」を掛けた、そしてそれが分かるフォルトナは、そう返して、相容れぬ立場を明確にし、拒否した

「まったく面白い奴だ、我が主も欲しがっただろう」
「それこそ馬鹿げた話だ「支配」したければ「そちら側」の世界でやればいい、それが出来ないから人間界でいい気に成っているだけだ」
「‥貴様‥主を雑魚扱いするか?」
「実際そうさ。自信があるならやってみせればいい、やれないできないなら自己に自信が無いからだ」

「それで私に殺されるならお笑いだな」
「どうほざいても、私の相方はそれを成した者だ。事実をして語らしめる者の足元にも及ばん」
「何?‥」
「知らんか?「虎」をバルバロッサとローレライの逸話を」
「クク‥成る程、異常な力があるとは思ったが‥まさかまだ生きているとはな、が、それで合点がいった。」
「ほう」

「神竜バルバロッサはその力と見識を「神」に認められ、「神」なる役目と称号を人界で得た者。我々に敵するのは必然、という訳か」
「なら選べ、諦めるか、ここで斬られるか」

その言にアガーテはニンマリして見せた

「が、貴様はそれ程の力あるとは思えんな?アレの「相方」ではなかろう」
「ああ、ただの「孫の様な物」さ」
「まあいい、自己を過大評価しても私には勝てん」
「そうでもない、私とて竜の子、それに準備はしてある」

フォルトナはそう言って、何時もの「刀」で無い「剣」を抜いて構えた、アガーテにはそれが分かる、見ただけで、嫌な光を放つ「剣」だ

「プロヴィデンス、か‥」
「忠告はしたぞ、アガーテ」

そうなってはもう話し合いも無駄だろう、どちらにもそれは分かった、だからアガーテも構えた。そう「お互いがお互いを取り除く為に」

左手を宙に差出し、そこに青い光が集まる、それが次第に形を作り物質化する「槍」に

「名を聞こう、竜の子とやら」
「フォルトナ」

そうして二人は前に駆けた

互いに「魔」でもある、しかし剣技の戦いとなった。お互いに「特化武器」があった所以である

フォルトナはプロヴィテンス「摂理の剣」という聖加護の付いた剣、アガーテは魔槍、インテンジブル「無形の槍」という存在しないが存在するという、重さの無い、万能魔属槍である

互いが互いの剣技を振るい、「斬る」事が尤も効果が高い
そしてどちらも「剣技」に自信があった故だ

カマイタチが発生するような鋭く、早い斬りあいの応酬となった。互いに譲らず斬りあい、数分のやり取りの中互いが浅く斬られ、被弾する

そこで「差」がついた
一つ、武器の特化性の差である

どちらも「高速治癒がある」故、本来ならただのかすり傷に過ぎない、が。フォルトナのプロヴィテンスは「魔」特化である、その切り傷は受けた「魔」には極めて治癒しにくい裂傷である

一方、フォルトナが受けた「傷」は超自然治癒で見る見る塞がる、アガーテの「魔槍」は万能であるが所詮「魔槍」元々人魔、つまりあちら側で無くこちら側であるフォルトナには効果は薄いのである

もう一つに「剣技」の差

純粋「魔」の格はアガーテのが上かも知れない、まざりもののフォルトナには。本来分が悪い相手かも知れない、が、フォルトナの「剣技」は、あらゆる技術とあらゆる流派のミックスであり「師」は父と母。

純粋剣士としての力量でアガーテを上回ったのである、そしてフォルトナは致命的な一撃をアガーテに叩き込んだ、右脇腹を切り裂き引かせたのである

思わずアガーテは余裕の表情を崩し、大きく跳び退った。アガーテは傷を見て取り乱した、もう冷静さは微塵も無かった

「ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!!人魔如きが!」そう怒鳴った

所詮「人魔」と侮った「魔」の格としては低い、混ざり物でしかない、それがそもそもの間違いである

フォルトナはドラゴンスレイヤー、勇者と言っていい父と歴史上稀な魔竜の母のハイブリットである、そもそも混ざり物でも「高種」なのだ

そしてどちらの「力」も受け継いでいる「格」で決まるような単純な力の持ち主では無い、そして彼女はジェイドの持つ
「限界突破」人に有るべき、積み重ねと成長があるのだ

「人魔如きがどうした!」フォルトナは駆け、止めの一撃を放った

本来なら逃げるべき状況だろうが、アガーテは意地、自身が高種であるプライドから引かなかった、それが彼女の命運を決定付けた

フォルトナの一撃を受け肩口から斜め下に切り裂かれ、その場に崩れ落ちた

高種魔族であるからにはこんな傷は直ぐ治るが「聖」の一撃は治らない

アガーテは両膝を地面について、不思議そうな、悲しそうなそれでいて可笑しそうにして見上げた

「ああ‥そうか、私は死ぬのか‥こんな日が来るなんて‥」

それが最後の言葉だった、前に倒れ、砂となって崩れ落ちた

「お前は判断を誤った、人界で生きるなら人と調和するべきなのだ、ここはもうお前達の世界では無い、何故、強大な竜が絶滅寸前になったのか思うべきだったのだ」

フォルトナもそれだけ残し、その場を去った

同時刻「城」でも大きな細事があった

夜半、ジリオーラの元に策動が行われていた。彼女の広い部屋に詰めていたシエラは先に気がついた

「何か来るよ!大勢」と

それを聞きリーベルスは刀を抜いてジルとシエラを部屋の隅に下げた、その準備を整えたと同時部屋へ兵達が飛び込んでくる

「オイオイ、多すぎじゃないか?」とリーベは軽口を叩いた

踏み込んできた兵は10、外にも倍は居るだろう「多すぎ」という割りにはリーベは不敵に笑っていた

が、この兵は尋常な兵ではない、「眼」がまるで何も見えていないかの様な、虚ろでまるで生気が無い

「魅入られた、とはこういう事か」

となれば交渉や話し合いが通じるとも思えない、故にリーベは怯むことなく、戸惑いも無く先頭の相手から叩き伏せに掛かった

最初の一人を斬った、そこで既に違和感が強い、まるで声も挙げず、斬られたまま崩れ落ちた、生きる屍の様だった

味方がやられても目も向けず、兵らは次々剣を構えて向ってくるが、むしろリーベルスには「多すぎる」という事は無い

そもそもの武力でエリザベートと劣らぬ力がある、ただの兵等、相手に成らない、まして今の彼女は「竜騎士」である

ほぼ一方的に向かい来る敵を叩き伏せた、物の1分も掛からず、入ってきた10人片付けたのだ

彼女にとっては余裕だ、しかし、そこで変化が起きる

外に控えた「兵」達も踏み込んでくるだろうと思った途端、残った兵が一斉にその場に昏倒したのだ

「ええ??!」

とリーベも思わず声を挙げたが同時

「やっぱりこんな案山子じゃ相手にならないか」と声が掛かった「背後」から

その瞬間背中に激痛が走った、切られたのだ「な?!」と体勢を崩しながらもリーベは振り返ったが、そこへ次の一撃が突き出され、肩を斬られた

あえて致命傷にならない、深手にならない斬り、このやり口、そうバーセルで会った「あの魔族の女もう一人」だった

「アハハハハハ、残念でした!お馬鹿さん!後ろに注意~てな!」
「グ‥セコイ真似を‥」
「引っかかる方が悪いんだよ!!」

と言うが早いからリーベの足を斬った、そして膝から崩れたリーベの喉元に剣を付き立てた

「バーカ、バーカ。死んだら言い訳は出来ないんだよ!」

そう言いながら刀を振り上げ、止めの一撃を放った、それを見ていたシエラは叫んだ

「嫌ーーーーーーーーーーー!!!」と

凄まじい金きり声で

耳を劈く声にリーベも思わず「ウワ!?」と声を挙げた、だがそれ以上に耳をやられたのは魔族の女だった

「ああああああああああああああああ!!」と声を挙げ頭を抱えて、武器を落として七転八倒した

咄嗟にチャンスと思ったリーベは片膝のまま全力で振りぬいて斬った、ジャスティファレット、で

魔族の女は首を飛ばされ絶叫したまま絶命し砂となって崩れ落ちた

「あ、危なかった‥」

肩で息して、リーベもその場にへたり込んだ

「大丈夫!?」とシエラが駆け寄る、リーベの傷は見る見る塞がっていく、これも「契約」の力である、尤も、フォルトナ程早くは治らないが


(それにしても‥シエラのあの声は‥)

そう思ったが、彼女の「力」と自身の持つ剣、それで閃いた

(まさか‥聖鐘の効果があるのか‥)


が、今はそれを追及している暇は無い、もう「次」が無いとも言えない為、剣を携え立ち、警戒を続けたのである

だが、それも直ぐに終わるのである、フォルトナから伝心で伝えられた「一匹は片付いたよ」と

潜入している「敵」は二匹、フォルトナが片付け、自身もたった今倒した、これで一先ず安心したのである


そして、全ての事は終わったとバルテッサの連絡からも判明した「最上階の王座に来い」だった

一行はジルを連れて言われたままバルテッサの元へ向った、向う間に居た衛兵も全て昏倒していた

王座の周りにシルクのカーテンがしてあり、バルテッサはその前で一同を待って佇んでいた。その態度から、よくないニュースなのは言われるまでも無く分かった

コルドバ王は王座に座ったまま。既に無かったのである「中身」が

「生きてはいる、が、心が無い」
「つまり?」
「廃人じゃよ」
「完全に木偶に仕立て上げられていた、という事か」
「さっきの兵共と同じか‥」
「左様じゃな」

「元には戻らないのか?」
「分からん‥ただ操られただけ、ではないからな。それに、この状態が続けば何れ肉体も死ぬ‥」

ジリオーラは無言だった、寂しそうな眼をしていたが、黙って夫に近づき、手を重ねて見つめるだけだった

フォルトナら一行も何も言えなかった。確かに終わった、が、決して最良の結果とも言えなかった

そして一同は一晩休み、城は平常にはなった、まるで悪夢から覚めた様に、城の者は「人」に戻ったのである

ジリオーラはある決断をし、フォルトナらに伝えた

「わたくしが、せめて後を取ります」と
「良いのか?ジル殿はそういう立場は避けて居た様だが」
「ええ、わたくしの「何もしなかった」事がこの結果を招いたとも言えます、せめて、少しでも元に戻したい‥」
「そうか‥」
「子が居れば、後継者を立てられますが、そうではないので‥」

「代わりに成る者が居ない、という事だな」
「はい‥」
「仕方ないか」
「ですが、わたくしは術師でもあります、なんとか陛下を‥」
「しかし、この事件をどうしたものか‥」
「証拠、が残っている訳ではありませんし、夫は病とし、国主として立てたまま、後事をするしかないでしょう」

「まさか魔族の仕業での「乱」と言っても信じる者は少なかろうしな」
「はい」
「兵や側近もその辺りの事は覚えていない様だしなぁ」
「なんだかスッキリしないわねぇ‥」
「が、大きく前進したには違い無い、ワシらは「操る者」を倒した」
「そうだね、あまりクヨクヨしても仕方ない、前進している事には違い無いのだし」

だが、同時にフォルトナにはそれ程ジルの決断を悪い事、とも思えなかった、無論個人的な思いではあるが

ジリオーラは控えめ過ぎるが、知識と良識を兼ね備えた、類稀な人物でもあると評していたからである

仮にも嘗て「時の賢者」とまで呼ばれた人であり、後を取って、国を治めると成れば、悪い方向には行かないだろうと確信に近いものがあったからでもある

実際、ジルはその期待を裏切らなかった。あくまで夫を国主とし、自分は二番目の立場で、控えめで穏健で知恵に富んでいた

隣国との外交に乗り出し、先のバーセルにも謝し、和平に望み、それを成した

前年、攻め落とし、既に領地と成った国や土地にも公正で穏健な治世を敷き

軍備さえも縮小して大陸全土に「もう乱は止めましょう」と形にして見せ、確実に「和平」に向ったのであった

彼女はその立場を弁えつつ
自らも術師である事から、夫の治療を続けた、だが、廃人と成った彼はバルテッサの指摘通り「持たなかった」のである

問うて答えず、意思も無ければ返答も出来ない、そして食事も取らず、最後には衰弱死する事になった

ジルが何もしなかった事、それがこの結果を招いた、自身がそう言ったが、実際の所は分からない

確かに初めからジルがその類稀な力を持って夫の為に動いたなら少しは違う結果があったかもしれない

だが、彼女はあくまで自分の立場を貫き、夫が何をしようと従った、その判断自体「妻」として間違いとも言えない

そして今回の「陰謀」を暴く役目に無かったし、その「眼」は無いのである

強いて言えば、フォルトナと会うのが遅かったのだろうか。フォルトナ自身、そう思い、割り切って終えた「誰の責任とも言えない」のであった

同時、フォルトナはジリオーラの資質に好意を持った「力」ありながらそれを振るわず、あくまで妻として支え、自分が認めた「夫」に判断と力の使い所を委ねたのである

それもまた、一つの、形違えど「正しさ」「強さ」なんだろうと思った

その後一行は国を出て一旦バルテッサの巣に戻る、一つにシエラの事である

リーベルスの話を聞き、ここでようやくバルテッサは魔眼と術と様々な道具によって、本格的に調べた

「ウーム、たしかに「光」の属性が予め備わっている、しかも外部からの、力の流入も僅かに認められる」
「という事はやはり「聖女」なのか?」
「いや、言わば「神女」だろう」
「どゆこと?」

「聖女は神が、どちらかと言えば与えた力の効果によって成される「交流」「神託」も、その効果じゃ、だがシエラは違う、初めからそれを備えているのだ」
「?」
「つまりあれだな、シエラのは自身が使っているのじゃ神術を」
「?!!!」
「早い話、その神の血統という事じゃよ」
「んな?!だ、誰の?!!」

「まあ、しかとは言えんが「アデリス」じゃろうな‥」
「えええ?!」
「その辺はリーベルスの詳しかろう?」
「ああ」

女神アデリス。大陸を魔から守護した女神とされている、自身に「武」の力の無さから、多くの「人間」を召し上げ「使徒」として勇者を輩出し力と加護を与え

あくまで「人の土地は人が守るべき」とし貫いた

「人」「神」の距離が最も近い神とされ、後年には間に子を設けたとも伝承されている、余りに優しく、あまりに厳しく、あまりに美しかった女神の一人である

「なるほど~、じゃあその血族が残っていても不思議じゃないのか‥」
「そういう事だな」
「おっどろいたわね‥」
「ちなみに「声」も神術の一つ、ホーリーベルじゃな、効果はリーベの持ってる剣の響きと同じじゃ、ただ威力は段違いだが」
「人工的な物とその物だからね」
「こうなると他の神術も持っている可能性もあるがの」
「はあ~、もうため息しか出ないわ」

しかしフォルトナは呆れて笑った

「しかしあの大司教はとんだ大間抜けね‥」
「シエラは本物以上、だった訳だしの、最大のアデリス信者が本物、つまり、アデリスの子孫を切り捨てたのだからのう」
「なんとまあ、笑えん話だな」

そう一同は話したが、当のシエラは退屈して椅子に座ったままもう夢の中だった

「問題なのは私の聞いた「主」だな」
「まだ上が居るのか、うんざりするな‥」
「とは言え、ここで止める訳にも行くまい?」
「そうだな、ま、バルテッサの役目とやらも教えて貰ったし」
「ム‥」
「その辺あたしも詳しく聞きたいな?竜騎士としては」
「別に大した事じゃないわい、ローレライが暴れたお陰、そのせいで受けた、副産物じゃい」
「ほほう」
「ワシがまだ、ただの「竜」だった頃の話じゃ‥」

そうしてバルテッサは自身とローレライの「逸話」を語りだした、「聞きたい」と言いつつ、あまりにも長い爺の話に。フォルトナもリーベルスもうんざりしたのは言うまでもない

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