剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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フォルトナ編(後日譚)

操る者

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フォルトナら一行はアデリスでの地図作成を終え。別の大陸を探した、海路が既にある南へ、船を出し海を渡る

本来海図の無い海原を旅するのは無謀だが、アデリスではここから南へ向うルートが確立されていた為である

5日の海の旅の後、その大地を踏み出した

「あんな不穏な土地に行くのかい‥」そう船で言われたがそれは直ぐ分かる

アデリスから南にある大陸、エグハルトこれも人名の様で、元々「英雄王」として名高い、剣王エグハルト=カーディオスが治めた大陸である

大きさはアデリスよりもやや小さいだろう、北から港へ降り、早速だが宿を取った

というのもアデリスでもある程度、ここの情報は得られたからである、ルートが確立されているだけに交流も少ないがある為、基本的な情報もある
「不穏な土地」というだけあって国家間の争いは多い

最初に降りたこの港もバーセルという国の領土であり。ここから東に本国があり、そこが既に「前線」である

兎角地理上、アデリスとの交易の場でもあり。ここを持つのと持たないのでは大陸に置ける優位性が違う、その為バーセルは争いが多い

他国は攻め、バーセルは守るという戦いが絶えた事が無い

そして、この大陸では「本題」の重要性はほぼ無い、常に争っている土地だけに「地図作成」をするまでも無くキチンとした地図が存在するのである

「まあ、当然だな、でなければ戦争も出来ん」
「策を打つのも、輸送をするのも進軍するのも、地形情報が無いと話にならんからな」
「アデリスと違って地域ごとに分かれていないからねぇ」

バルテッサもリーベルス、フォルトナも同じ見解である

「んー、という事は、ほぼ旅だけかな?」
「ある程度見て、間違いがあれば修正程度だろう」
「とは言え、あまり旅もしたくは無いな余りに争いが多い」
「そうだねぇ」
「とりあえずバーセルとやらに行こう」

そう決定されそのまま東へ向けて移動となるがある問題もあった

「地図だけ見ると、やたら密集している様に見えるな」
「それ程広い様に見えんが、7国もあるからの」
「徒歩で三日くらいで次、だけど」
「えー?そんなに歩くの?」

そうシエラが言ったので抱きかかえてバルテッサに乗せた、とりあえずこうしておけばご機嫌である

「しかし困ったな、このメンツだと移動速度が遅いぞ」

シエラはバルテッサに乗れば良い、フォルトナも飛べるが、リーベルスはそういった特殊能力がある訳でもない

「む‥なら馬か馬車でも使うか?」
「それもいいかも知れないな」
「どっちにしろワシは歩くんだがな」
「だから鳥にしろと‥」
「ウムム‥」
「バルテッサはこのままでいいよ」
「自分が乗りたいだけだろシエラ」
「だけじゃなくてカッコイイから」

「ま、まあ、いいんじゃないか?今更変えなくても」
「リーベは相方だからと言って援護しなくていいんだぞ?」「う‥」
「で?結局どうする、それ程金がある訳でもなかろう」

と結局「徒歩」でと成った。理由は単純で「金」の問題。別に路銀が少ない訳ではないのだがこの土地は兎角物価が高い。馬でも買おうものなら途端にサイフを圧迫する

「何なんだ‥一体」
とフォルトナは思ったが理由は単純
「要は物資不足だ、特に戦争に関わる物はだ」
「戦で大量消費する、数が足りない、取り合い、値上がり、の流れだな」
「迷惑な話だなぁ‥」
「特に国民が困るだろうな、そもそも店の類も品数も凄まじく貧相だ、まだ交易地である港はマシだろう外から物が入ってくるだけに」
「となると、バーセルは更に厳しいのか?」
「だろうな」

バルテッサはそう言切った

実際バーセルに着いてみると、「だろうな」はその通りだった、店はあるが品物が大してない、そもそもそれも高い

とりあえず飯だなと思って入ったレストランもメニューが一種固定である

物資の種類にも寄るが、配給制の物も多く。あまる物で商売を成り立たせないとやっていけない、貧乏な訳ではないのだが「売る物が無い」のであり、そうなると「店」ではないのだ

「馬鹿じゃないのか!?」と思わずシエラもフォルトナも言いたくなる、そこは同意だが

「一時的な「戦」ならそれもまあ耐えられるだろうが」
「うむ、どうもこの大陸の乱は10年以上らしいな」
「あほくさー‥こりゃ旅して回る状況じゃないぞ‥物資調達出来るかどうかも怪しい‥」

「たしかになぁ、金出してどうにか成る話でもないな何しろ物が無い、しかもバーセルはまだマシな立地なんだろ」
「元からある地図を見る限り、正確な物ではある様だし。戦争地域は素通りくらいでいいじゃろ」
「してない所があるのか?」
「分からん」

その為、一行は更に情勢を探った。一通りそれが分かった所で集合して方針も決まる

「それほどデカイ大陸ではないな、端から端まで行っても一ヶ月くらいじゃろ」
「どっちかってと巨大な島だな」

この大陸の「乱」自体既に終盤にあって、中央にある王国が周辺を確保し、争いはそこから東西での防衛戦に終始している、民も疲弊しているが、それだけに深刻では無い「もう直ぐ終わるだろう」と皆の共通認識があったのは確かである

その争いの最前線の一つでもある、そのバーゼルがここでもある、フォルトナらは直ぐに次へ、とも思ったがそれは果たされない

バーセルから東への移動に規制が掛かった事にある

「出れない?」

まず東行きを門の兵に止められたのである

「今は街道で中央のセルツェアの軍とこちらの軍がにらみ合いに成っている今東へ旅等危険だ」という理由である

「私たちは外来人だし、この大陸の乱とは関係無い、それでも?」
「残念だが、他所の者だからと言っても一般人を危険な場所に出す訳にも」
「そう‥」

とフォルトナは返し、考慮するふりを見せた

(どうしようか?)
(ま、無理に、というなら飛ぶなり跳ぶなりすれば良い。大した問題ではないが‥)
(そうね‥)

そうフォルトナとバルテッサが伝心でやり取りしていると一同に声が掛かった

「どうかしましたか?」と

それにたいして、声の主に向かい。門番の兵は背筋を正し敬礼する

「これは‥アネット様!ヴィクトル様!」

アネットと呼ばれた女性。年は20歳くらい。鎧姿でクリーム色の長髪に、やさしい面持ちの女性騎士。正直「騎士」には見えない、それほど優しそうな雰囲気の女性だ

ヴィクトルと呼ばれた男性、年の頃はやはり20歳くらい、鎧騎士だが、藍の長めの髪、優しそうな面持ちの美男子と言っていい外見、おそらく高貴な者であろう気品と落ち着き、オーラがあった

彼女らは一行の事情を聞くが、やはり色よい返事は貰えなかった

「うーん、本来なら別に規制は無いのだが、事態が事態だし‥」
「そうだね、出て行った所を敵の工作員の類と間違われても困るしね」
「そうですよね」

フォルトナは返したが、ヴィクトルは続けてこう促した

「とは言え、それほど長くなるとも思えないし、バーセルに滞在して貰ってもそれ程待つ事もないとは思うけど」
「と、言うと?」
「ええ、今の大陸情勢はご存知?」
「確か収束に向っていると」
「そう、大陸全体で、その気運が高まっている、おそらくこのまま終わると思う」
「そうですね、このにらみ合いもそれで終わるかと」

「根拠があるのかの?、明確な」
「ええ、あちらの外交交渉の申し込みがありましたので」
「成る程」
「おそらく、そう何日も掛からないと思うよ」
「ふむ」
「分かりました、そういう事なら出るのは待ちましょう」

「ご迷惑をかけて申し訳ない」そう何故かヴィクトルに軽く頭を下げられる

「しかし、それだと何処かに泊まるのか?」
「そうなるが‥路銀がきつくなるな」
「うむ、この大陸は物価が高すぎるからの、外なら野営するが良いが街ではそういう訳にもいかぬな」

「んー、私だけ一端帰って小遣いでもせびってくるか」
「そういう相手が居るのか?」
「うん、まあ、ママはお金持ちだしね、バルテッサもだけど」

そりゃそうだろうなぁとリーベルスも納得する。そもそも竜狩の一つの原因が「巣」に財宝があるからでもある、大抵極貧等居ない

しかしこの時はそのどちらも使う必要は無かった

「あの、でしたら、城の施設でもお使いになられますか?」
「そうだね、軍の高官官舎が余っているし」

そう、アネットとヴィクトルが申し出たのだ

「そんな事が可能なのか?」
「うむ、ワシらの様な怪しげな者を入れてはまずかろう?」
「いえ、問題ないと思いますよ」
「だね、僕らの、いや、国の勝手な都合で規制している訳だし」

正直、そう言われると断る理由も無い。
なるべく金が掛からない方が良いのは良いのだ

「ではお世話になります」と一行もそれを受けた

しかし、割り当てられた部屋は城の外とは言え、国軍高官の部屋だった

「えらく広い部屋じゃの‥」
「いいのか?!」

思わずバルテッサもフォルトナも言わざる得ない

「構わないですよ、余ってますから」
「ええ、軍高官と言ってもそう居ませんし」
「それに災害、有事の際は元々一般に開放していますから。今はそれだとも言えますので」

「ほほー、それは立派な心がけだな。なかなか出来る事ではない」
「そうですね、それに「位高きは徳を要する」とも考えていますから」
「ノブレスオブリージュですか」
「はい、国主でもある兄は立派で優しい人だから常にそれを考えています」

ヴィクトルらはそう返したが

「兄?という事は‥」
「ああ、申し遅れました、僕はヴィクトル=バーセル、前王の三男です現王は二人居る兄の長男です」
「私はアネット=ブラム、近衛騎士です」

こうしてヴィクトル公らの配慮を受けバーセルに留まる事となった。その中でお互いの事情の話し合いの中で、互いに好感を持った

ヴィクトルとアネットは同年22歳。どちらも公明正大で穏やかな人物である

王の弟、近衛筆頭と立場あっても一つも偉そうで無く。フォルトナらへの対応も、怪しげな目を向ける事も無く同等な立場での応対である

これで嫌えというのが無理な程だ。実際全く裏表が無く元々の知り合いの様にすら感じたのである

「成る程、世界の旅を」
「羨ましい事ですね」
「いえ、単なる娯楽ですよ」
「皆がそういう事が出来る社会を創りたいものですね」
「実際戦争ばかりですから、早く終わらせたいものです」
「既に、そういう流れには成っているのでは?」
「ええ、ですが安心は出来ません。和平会談の類は何度もありましたが、まだ、実現には至っていませんから」
「成る程」

「この乱も僕が物心付くころから続いてますから、経済も生活も混乱をきたしていますし何より民の安心が失われる」
「ご尤もですね」
「和平か‥争わずに済むならそれが何よりなんじゃがな」
「ほんとに馬鹿らしい事だ」
「が、これは「人」の性でもある、そう簡単にはいかんさ」

「あたしが言うのもなんだがどちらの側もお二人の様な方ならそうは成らんからな」
「そうじゃな、ま、「争うように出来ている」としか言えん」
「ふむ」

「大昔は代理戦争、なんてのもあったが、今は多勢軍制の時代だからの」
「代理戦争?」
「うむ、代表者を出して、そこで一対一で決着をつけるという物じゃ」
「そのほうが楽ではあるな」

「が、実際はそうは行かんからのう、そもそも個人戦の結果で決めるというのも、その個人に全てを掛けるというのも極端ではあるし、その者に責任を丸投げしてはいるからな」
「間違い、とも言えんな、人死には少ないならそれも良い」
「そうじゃな、まあ、優劣はつけれんよ」

そこでアネットはヴィクトルの二の腕に軽く触れた

「ヴィクトル様そろそろ」
「ああ、そうだったね」二人は席を立ち

「では、僕らはこれで、途中になるが先に失礼させてもらいます」
「いえ、こちらこそ、長くなってすみません」
「では」
と退出した

「さて、とは言えどうしたものか」
「寝てれば良かろう、ワシは寝る」
「バルテッサ殿はそれでいいとして我々は?」
「うーん、店に物も少ないし、娯楽もないからね」
「とも限らんが、あったとしても金が掛かりそうだ」
「物価がいかれてるからねぇ」

「そもそも人も余り出てないようだし」
「どうせ戒厳令かなんか敷かれてるのだろう」
「うーん」

バーセルに留まる、は良いとして、実際は殆どやる事も無い、本題の地図は元々この土地にあるわけで、それを作る意味はない

街は店少なく、開いているところも少ない。かといって国の外には出られない、となれば「寝てすごす」というバルテッサの言が尤もとも言えた

「しかたないなあたしは酒場でも回ってくるよ」
「シエラも行くぞ!」
「入れる‥のか?」
「別に問題ないと思うが、そもそもあたしも酒はやらん」

「お堅い竜騎士様だな」
「ドラゴンハーフに言われても‥」
「ま、私もやる事もないし、今までの記録の整理でもしとくか」
「分かった、ではな」

リーベルスはシエラと共に官舎を出た

その日の夜、一同が再び集まった後、部屋でリーベルが聞いて回った噂を聞いた

「正直、物不足と物価の高騰以外はそれ程問題は無いようだな、外出規制もあくまで非戦闘員の戦争での被害を避ける為で、大抵落ち着けば解除される様だ」
「二人の評判は?」
「会って我々が受けた印象まんまだよ、公明正大でお人よし、ただ、能力はそれだけの物はあるようだ」
「ふむ」
「武芸に秀でたという事は無いのだが平和な時代だったら兄と弟の人事は逆だったろう、と評される人物だ。特に外交と内政には御付のアネットの力が大きい」
「近衛筆頭だと言っていたが」
「剣はそこそこ、筆頭というには武断的ではないかな。どちらかと言えば統率力と本人の人柄で納まっている感じか」
「上、に立つ者がすべからず武が出来なければ成らない理由もないし」
「要は専門家を適材適所すればいいだけだからな」
「いかにも」

「和平交渉があるとか?」
「それは今に始まった事ではないらしいな」
「そうなのか」
「ああ、これまで何度もあったが何れも合意には至っていない、どこの国も、らしいが」

「中央にある国の一強に成りつつあるとも聞いたが」
「ある程度、そうなって来ると「和平」というのも期待されてはいる。それに中央の「セルツェア」のコルドバという王もまともな人物らしい。譲り合いがあれば直ぐにでもまとまっても可笑しくないという事だ」
「なら期待して待つしかない、という事か」
「そのようだ」

一同が話していると部屋にヴィクトルらが訪問。両手に荷物を抱えての事だ

「差し入れです、お暇だろうと思いまして」

とテーブルに茶葉の箱、菓子、チェス盤を並べた

「確かに暇だね、街の施設も半数は閉まっているし」
「わー」とまずはシエラがお菓子を頬張った

「しかし、私はチェスは出来ないな」
「なら、あたしが相手しよう」とリーベが受けた

「ところで和平や休戦会談の話だが、なかなかまとまらないそうだな」
「ええ、まあ、最近は特に」
「そうなのか?」

「流れとしては、セルツェアから要望、会談、物別れが何時もの事で」
「持ちかけたのが向こうなのか?」
「そうですね、ですがいざとなると、全く譲歩も無く、臣従に近い物に吊り上げ物別れのパターンです」
「妙な話だな、自分から望んでおいて」

「僕にもさっぱり分かりません」
「ヴィクトル様が主に外交を担当していますがそれだけにそこはハッキリしています」
「コルドバという王はまともだと聞いたが」
「ええ、ですがそれは半年程前の話かと」
「つまり?近年はそうでないと?」

「領土の拡大と同時に外交交渉担当官が変わりまして、そこからは、あまり話しの通じる、という感じはなくなりましたね‥ソレ前は休戦、停戦等も何度かありましたが」
「領土拡大と共に、強権になったのだろうか」
「そうかもしれません」

「ま、よくある事じゃよ、権力を握るまでは穏健、握ってからは人が変わる、そういう例は余りにも多いからのう」
「そういうものなんでしょうか?」
「歴史の教科書を全部みりゃ分かる。むしろその例から洩れた者の方が少ない」

「なるほど、バルテッサ殿はその辺りの学に詳しいのですね」
「伊達にじじいじゃないからの、世界にある殆どの書物は読んだ」
「それは凄い‥」

「しかしそうなると、和平もまた先延ばし、になるのかな」
「まとまらない事には‥」
「うーむ」

そうヴィクトルとのやり取りでそれが難しいと見解が示され自分達も何時出られるのかと思わざる得なかった

こうなれば、飛んで移動するしかないな、とも考えて滞在したが事態は急転する


二日後にはバーセルとセルツェアの街道対峙が解除され両軍一旦引いたのである

それにより移動規制も一部解除されたがフォルトナら一行は動かなかった

その日の深夜シエラが予知夢を見た事にある。しかも今までと明らかに違う内容であった

「戦争‥まだ続く‥何かが燃える‥」そう予知した
「何か?とは?」
「分からない‥なんか黒い靄が掛かってて」
「靄?、そういう事は今まであったのか?」
「ううん、初めて、ただの黒い靄なのに‥凄く怖い‥それに、私たちの姿も黒く染まっている‥」
「どういう意味なんだろう」

「分からんな、が、不吉な夢だな」
「うーん、なら注意して動かない方が良いのかもしれぬな」
「いや、シエラの夢は「予知」だ、必ず、とは言えぬがそうなる、それを避ける方法も手段も現状無い」
「う‥む、具体的な事なら対策は立てられるが、そうではないからな‥」

「でも‥あの二人も見えた‥」
「まさか、ヴィクトル公とアネットの事か??」
「多分‥」
「しかし、外交交渉は上手く行ってるのではないか」
「んー、実際一時休戦の流れには成っているしね」

リーベルスは腕を組んで眼を閉じたまま考え込んだ

「まさか、とは思うが‥」

そう口を開いた後、元領主として、戦略家としての見解を示した

「あくまで一つの可能性だが、この外交交渉が「策」だと考えると偽りの会談である事もありうるな」
「と、言うと?」
「そもそも妙ではないか?自分から会談を持ちかけておいて、まとめる気が全く無いというのも」
「それはそうだけど」

「会談の場でバーセルの重臣を呼び出して騙まし討ちにするというのはどうだ?」
「ありえん話ではないが、無謀じゃな、可能性は低い、そもそもセルツェア側にメリットが薄い」

「そうね、ヴィクトル公が交渉に出ている、それを騙し討ちにした所でバーセル側は王は兄、国が崩壊という事も無い。そもそもその様な手段を使ってしまえば、セルツェア側が一方的に評価が落ちる、それと引き換えでやる事でもないと思う」

しかしリーベルスはもう一つの可能性も示した。無論根拠も証拠も無いが、一連のバーセルとセルツェア、大陸の情勢

元々まともな人物であると噂されるコルドバ王の心変わりである

「あるいは、騒乱の長期化を狙っての事もありうる。あまりにも行動に一貫性が無い、少なくともあたしが王なら、こういうやり方はしない」
「うーん、確かに変な所は多いけど」
「もしや‥」とそこでバルテッサは「例」を示した

「何だ?じーさん」
「皇帝ベルフの例じゃよ」
「?!、まさか‥」
「フリトフルの第二次10年戦争の発端と元凶、皇帝の剣の例がある、外部からの陰謀や意思が絡んでいる可能性は十分あるぞ」
「確かに‥それなら理由としては妥当ではある」

「それは何だ?」事情を知らないリーベルスが聞いたので。フリトフル大陸での「乱」の詳細を一同に聞かせた

「そんな事があったのか‥」
「うむ、それに3つの大陸でどこも多かれ少なかれ同じ様な時期に戦をしている、というのが気味が悪い。世界の歴史的にそういう例は稀じゃ」
「が、だとしてもどうする?」
「うーん‥いっその事ヴィクトル公にでも張り付いて見るか」
「賛成だ、シエラの「夢」でも出てきている。なんらかの関わり「鍵」になっている事も考えられる」
「正直余り気が進まん、が、こうも怪しげな事があるとな」
「私も同感だ、本来なら他所の大陸の話だが、そこに住む者達の意思それ以外での「陰謀」なら見過ごす事も出来ない」
「じゃな、やってもよかろう」
「なら、こうしてはおれん、動こう」
「うむ」

と一同も同意する


が、バルテッサはある一つの「思い」と「命」があった、それは彼が「神竜」である事にも由来している

一行はそのまま朝には準備を整え、解除された規制の街から出て、双軍の対峙していた街道を東に向った

バーセルとセルツェア両軍の対峙する中間にある小さな関所街というより集落だが。そこでの外交交渉があった為、フォルトナらはそこまで向った

しかしながら、まさか「夢で見た」とも言えず「疑い」の事は話さず、普通の旅人として関所の集落に潜入

というのも一行が外交会談の場に入れる訳でもなく、ヴィクトル公に張り付く訳にもいかない、顔見知りとは言え門外漢でしかない、ただの旅人である

故にフォルトナとバルテッサが交代で「隠し身」を使ってヴィクトル公の周囲に気を配る形を取った

シエラとリーベはそのまま宿に待機である

とは言え、あまり軍施設に近づく事も出来ないのでかなり外から眺める形での監視ではある

実際事が起こるとも限らないし、それが何時かも分からない、何しろシエラの「夢」が明確でない。それだけに不安も多いのだが、現状こういった対処しか出来ないものある

しかし、事の起こりは早かった。翌日和平会談の行われた後、その日の夜半

部屋で休んでいたヴィクトルらの元に報告が入る、駆け込んできた兵士がこう言った

「セルツェアが!軍を動かしました!」と

どういう事かとヴィクトルとアネットは立ち外に飛び出した、官舎の外に出た所でセルツェア側の代表者の男らに鉢合わせ

当然ヴィクトルは「何の真似だ!?」と怒鳴る、しかし、相手は「男」ではない声で返した

「申し訳ありませんがヴィクトル公はここに留まっていただきたい」と
「何?!‥」
「和平等されては面白く無いでしょう?」


そう男は返し剣に手を掛けた、相手は一人、こちらはアネットとヴィクトル護衛兵4人だ

咄嗟、アネットとバーセルの味方兵も剣を抜いてヴィクトルの前に出て迎撃体勢を整える、それを見て「男」は楽しそうに笑った

「もう遅いですよ」

そう言った途端集落のアチコチから火の手、包囲していたセルツェア軍が一斉に集落の四方から突入してくる、アネットは前に出て剣を構えたまま叫んだ

「騙し討ちか!ヴィクトル様逃げて!!」と対峙する敵に構える

「それも無駄です、その道はありませんよ」男はそう言って悠然と前に歩いて剣を抜きながら片手で軽く斬った

「え?!‥」としかアネットも言葉が無かった


彼女も伊達に近衛筆頭ではない、剣にも聊か自信はある、その彼女が何も出来ずに肩口から斬られ膝から落ちた

「アネット!」と叫びヴィクトルも前に出ようとした
が、一歩も動けなかった

まるで石にでもなったかの様に足が動かない

男はそのままゆっくり歩き今度は動けないヴィクトルの足、右足太ももに剣を突き立て地面に倒し、周囲に居たバーセルの護衛兵もわき腹を軽く斬って倒す

まるで案山子を斬るかのように、それを楽しむ様に、あえて致命傷にならない様に

何が何だか分からない、何故こんな状況になるのか、何故こんな無謀な騙し討ちをするのか

その心境をあざ笑うかのように「男」は自分の姿を現した、その体が崩れる様に、風が煙を払う様に

「全くまぬけな連中だね‥」

そう崩れた体の中から別の姿をあらわす

「男」で無く「女」しかも、人かどうかも怪しい見た目。異様に白い肌に露出多い衣装、黒紫色のロングの髪に何より異様な蒼く輝く眼、これにはヴィクトルらも驚愕と同時に合点がいく

「術士‥入れ替わっていたのか‥」
「ほんと間抜けね、こうも簡単に嵌るなんて」そう言いつつ

今度は女は倒れて動けぬ、護衛兵らに次々剣を刺し始めた、激痛と断末魔の叫びが上がる

「な?!何を?!」
「何?、何っていたぶってるんだけど?」そう言いながら
うつ伏せに倒れているアネットの肩も打ち抜く

「あーあ、ホントに脆くて弱いわねぇ、遊ぶのにも大して使えないわ」

余りに愚劣な女の行動に「止めろ!」とヴィクトルが声を上げるが無論それすら逆効果だ

今度はヴィクトルに顔を寄せにんまりと笑った後、彼の手の甲を浅く斬る「ぐあ!」と声があがる

「その上痛がり屋だな」そう楽しそうに女は言、まるで何事も無かったかの様に周りを見渡し

「ま、名残惜しいけどあんまり時間が無いね。もう直ぐこっちの兵が来る、そろそろ死んでね」

そうして剣を振り上げ、とどめを刺しにかかるが、女は何か?を感じて後ろに跳び退った

尻餅で地面に蹲るヴィクトルの背後の空間がゆがみ、その中から白い虎が姿を現す

「ふん「カン」の良い奴じゃな、まさか術の溜めに気がつくとはの」

そうバルテッサが間に合ったのである

その姿と中身に驚いたのか、これまで余裕だった「女」もいきなり取り乱し、怒鳴った

「な、なんだ貴様!?何者だ!」
「何者とは?見ての通り「使い魔」じゃが?」
「ふざけるな!たかが使い魔がその様な光を放つか!!」
「ほう、貴様も魔眼を持っているのか」
「グ‥」と歯を噛み鳴らし「女」は一歩も動けなくなった

理由は単純、余りにもこの虎は桁違いの力と魔力を持っている、そして天敵でもある「光」も。本体なら兎も角、使い魔がそんな力がある訳はないのだ

そこへもう一人フォルトナも何も無い空間から姿を現す

「で?何なのコイツ」と言いながら刀を抜く
「さてね、どうやら「人」でも「混ざりもの」でもなさそうだ」
「見た目からしてそうよね」
「おそらく中級から上級魔族だろう。魔眼はそれほど低俗魔には付かん、それなりの力を持った純粋種だ」
「そんなのがまだ生きていたのね‥」
「お主やワシが言う事でもないが」


相変わらずの緊迫感の無さである。そこに遅れてリーベとシエラも合流する

「バルテッサ殿!」と

完全に4対1、数は問題では無いが「女」にはそれが分かる

全員が全員「まともな人間で無い」事が。しかもそのうち3人は「あちら側」の者だ

魔族である「女」には魔眼が無くても直ぐ分かる。思わず鳥肌が立つ程不愉快な空気を発しているのだ

フォルトナとリーベルスは剣を構え包囲する様にジリジリ動く、こうなっては「女」にも「戦う」という判断は無い

眼を「カッ」と開き鈍い光を放つ
が、効果は無かった

「何?今の?」
「マニュピュレイタ、操りの眼だな、ワシらには無意味だが」

そう、ヴィクトルらが何も出来なくなったのはこの魔眼のせいであるが、それすらフォルトナらには効果が無い

しかもりーべにもシエラにも効かない、誰かに効けばそこから反撃なり活路なり、出来るがそれすら誰にも効かないのだ

「な、無効だと??!!何者なんだお前ら!」」としか「女」も言えなかった

「何だと言われてもねぇ、混ざりものとしか‥」
「貴様人魔か?!、しかも神格の」
「私は違うけどね‥」

フォルトナと魔族の女のやり取り、その隙にリーベはこれ幸いと斬りかかる

「女」はそれを咄嗟飛びのいてかわし、距離を取って構えなおしたが、反撃は無謀、バルテッサ一人でも自分が相手できるレベルに無い

立て続けにリーベが飛び掛るが今度の一撃は当った。と言うより、斬られたまま「女」の体をすり抜けたのだ

「ええ??!」とリーベも前につんのめったまま言った

斬られたまま「女」は霧の様に姿が薄くなり、最後には消えた、雑魚の様な捨て台詞を残して

「クソ!覚えてろ!!」と
「逃げたか‥」
「名前ぐらい名乗りなさいよ」
「確かに」

「悠長に話している場合ではなかろう、我等も早く逃げないと火と兵が殺到してくる」
「そうだったわね」

とフォルトナらはその場に倒れるヴィクトルらを抱えて跳躍した


燃える集落を遠くに見る平原、そこまで一同は移動して、まず治療を行った

「あの馬鹿魔族?が遊んでてくれたお陰で助かったわね、幸い二人共致命傷ではないわ」
「しかし、アレは何だ?」
「さあのう‥純粋魔族には違いないがワシにも分からん」
「シエラは何か分かった?」
「バルテッサの言う通りだよ、ただ、話して通じる相手じゃないかな嫌な光が纏ってあるし」

「そっか‥」
「が「陰謀」の種は分かったな」
「そうじゃな、どうやらあの女が干渉して「乱」を伸ばしたと考えるべきじゃろうな」
「ええ、むかつくわね」
「魔族、と言ってましたが‥」

怪我の癒えたヴィクトルはゆっくり立ち上がって述べた

「でもハッキリはしてないわね、分かったのはそれだけ」
「乱を伸ばしていた、とは一体??」

そこでフォルトナはフリトフル大陸、故郷であった。皇帝ベルフの剣と、10年戦争の中身と外部干渉あってその様な事態が拡大したというあらすじを説明して聞かせた

「成る程‥別の大陸でもその様な事が」
「そういう訳で私にとってこの一件は他人事じゃないのよ。その疑いあってヴィクトル公に付いてた」
「しかしあなた方は一体‥」

「詳しい事は言えないけど、私は所謂「人魔」よ」
「人魔!?」
「心配するな、人魔と言っても、フォルトナは下種種とのハイブリットでは無い、無分別な者ではない」
「す、すいません」
「いえ、伝承を知っていれば恐ろしいのは当然よ」
「ウム、まあ、誤解があるのも事実だからな。そこを切り取って暴虐な者とされるのは問題もあるがの」
「そうなんですか」

「人魔、ハイブリットと言っても一般的に認識される「暴虐」なのは所謂低級、中級の魔族なんかの混ざり者だ。高貴な者や神格者の側とのハーフやクオーターならそれが「聖」「魔」に関わらず、高い知能と良識を兼ね備えている場合が多い、とはいえ過去の例から見ても高種と人のハーフは少ないんじゃがの」
「その意味であの女はあっち側って事なのか」
「左様じゃ」

「いたぶってないでさっさと殺せばよかったのにな、ヴィクトル公が死んでいたらどうしょうも無かった」
「アホには違いない、が、面倒な相手じゃ」
「ええ、全然斬れないみたいだし‥」
「低級種なら普通の武器でも戦えるがそうでないなら無理だ」
「そうなのか」

「ウム、エンチャント武器か魔法、聖剣でもないとなぁ」
「私の武器なら斬れる?」
「多分無理じゃ、フォルトナのブリーティングブレードは「斬り」処理なだけだ、なんらかの属性を上乗せしないと通らん」
「くぅ‥」
「そうか‥」

とフォルトナもリーベルスも肩を落とした

「それはまあ、ワシが後で対応策を考える、今は今後の事じゃろう」
「そうねぇ、ヴィクトル公が無事だったし、やる事はある」

「ええ、分かってます、実際「アレ」を見てしまったのですから、僕らも「陰謀」である事は理解しました、となれば、戦争回避にあるいは広げない様に動くべきでしょう」
「ウム、乱の拡大が狙いならそれをしないようにするべきだな、ま、向こうの意図が意味不明だが」
「そうね」

と一同は決め、そのままヴィクトルらをバーセル本国まで送り届けた

本国に戻ったヴィクトル、アネットは兄である王に事態を報告、戦争回避に動いたが、それで収まるはずも無かった

王である兄はある程度納得したが、兵も将も民も納得は出来ない、自軍に大きな被害が出た訳ではないのだが

交渉の合間の騙し討ち、早期に撤退して、少ないがバーセル側の軍にも被害が出たし、中立地とは言え、関所も集落も焼けたのである

当然バーセル側では怒りとセルツェアへの非難は多い。一方セルツェアは非難も「知らぬ事」で済ませた

そもそもこの一件事態、実際あの場に居て「アレ」を見ていない者には信じられない話ですらある

結局「乱」の拡大はどうにか防げたのだが、「収める」までにはならなかった

そして二日後、再びフォルトナらに会い、そういう報告をした「申し訳ない‥」と、まずヴィクトルは謝した

「しかたないわね、アレを信じろって方が無理だろうし」
「うむ、別にヴィクトル公が謝る事ではない」
「ですが、防備、には徹せられるとは思います、国力に差がありますから、こちらから攻める状況には元々無いので」
「それは幸いじゃな」
「ええ、将や兵は兎も角、国主である兄は聞き入れてくれましたのでなんとかなります」

「結局の所騙し討ち、ヴィクトル公の死、王である兄の怒りと、騒乱の拡大という流れかしらね」
「そう思います」
「それだけは防げたのは大きい」
「全くです」
「さて、それはいいが、あたし達はどうする?」

「行くしかないな、セルツェアに、アレをのさばらせておくと大変な事になる」
「顔バレしてるが大丈夫かね」
「行ってみんと分からんが、それ程大規模に潜入している訳でもなかろう?」
「魔の類が大量に居る訳じゃないしね、ま入るのは大丈夫だろう」
「左様」

そうしてフォルトナら一行は大陸中央、セルツェアに向う事と成った、出掛けに礼として路銀を渡された

「お世話に成りました、何か進展があったら教えてください。僕らに出来る事があれば助力致します」

そうヴィクトルとアネットは声を揃えて言い、頭を下げた、そこでバルテッサは考慮した後

「フォルトナ、ワシの胸の鎧に付いている石を外せ」と指示し、彼の胸で一際大きく白く輝く石を外させ、ヴィクトルに託した

「これは?エンチャントの石ですね?」
「元々はただの肩代わりの石だが、そいつは高圧縮品、人外の魔力を持った奴が近づくと一際輝きが増す、先の様に、化けてる奴が居ればある程度反応する、持っているといい」
「あ、有難う御座います」
「何、路銀の礼じゃよ」とバルテッサは返したが

どう考えても受け取った金の20倍はするだろう巨大な魔石である、だが、お互いそれ以上言わずだった。お互いがお互いの配慮が分かる故でもあった

「しかし「アレ」が首謀者とも思えないね」
「だろうな、裏に更に大物が居ると考えるべきか、優先すべき事案、ヴィクトル公を、ドサクサに参れて殺すという本題を後回しにして今回は助かった訳だからね」
「当然使い走りじゃろう」
「あれも倒すのは難しいだろうに、親玉が居るのか‥」

「まあ、武器の問題じゃからのう、巣に帰ればそれは持ってこれるが、それなりの装備はあそこに置きっぱなしじゃし、尤も、神術でもあればそれも必要ないんだがな」
「オイオイ‥無くなってたりしないだろうな‥」
「あんな所に泥棒が入るとは思えんが、何れにしろ、次の国に入ったら一旦ワシは戻ろう」
「うん、私もこの武器を改良しないと無理ぽいし」
「いや、そこはワシの所にある武器でよい、どうせ幾つもあるしの」
「そうなん?」
「うむ」

「ま、何れにしても次の国に入ってからだ、転移先を記憶しないとな」
「あたしはよく知らないのだが、転移魔法は記憶しないといけないのか?」
「知らないところには跳べんよ。下手に使うと海の中や空の上になりかねん」
「怖いな」

そうして一行は次、セルツェアへ向って街道を進んだのであった

兎も角、陰謀は未然に半分は防いだ。陰謀の種も分かった、敵の狙いでもあるヴィクトル公の命も守った、十分な成果、とも言えただろう

「ところでさ、私らは分かるけど、シエラにも効かないんだね、魔眼」
「そういやそうじゃの、やはりシエラにはなんらかの神格の力、加護が働いているのかも知れん」
「調べられないのか?」
「それも戻ってからじゃな、とは言え判明するとは限らん」
「そっか」

「外部からの、例えば外から力の供給を受けているというなら追えるが、元々の遺伝的要素など分からんよ」

一方そのシエラは歩くバルテッサの背中に乗って寝息を立てていた

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