剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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フォルトナ編(後日譚)

真なる者

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フォルトナは再び、アデリスに戻り、地図の作成を続けた、クランデルから更に東、大陸の端と言っていい場所に辿り着いた

大陸を時計回りに、北、東、南と記録して行く事になった
海に面した、美しく大きな国で、城もまた美しい

「パレディウス、と言ったか」
「地元地図にはそうあるな」
「しかし距離とか周囲の自然なんかはまるで無いな」
「うむ、地図を頼りに、のはずだが迷うとはな」

実際最初に買った地元地図はかなりいい加減な出来だ

「それだけに、我等のやっている事に意味がある」
「そうだな、ある意味励みになる」

フォルトナとバルテッサはパレディウスに入った。まずは情報、と街を回り、情報収集を図る

大きく、豊かで、美しい街。それだけに安定した国であるが、少々堅苦しい国でもあった

女神アデリスの守護、伝承を強く反映した国であり。宗教国の意味合いが強い。実際、その信徒が多く、そうでないものは異教徒扱いな事もあり差別的な規制もあった

国主は歴代「女王」である

しかも血縁から選ぶのでは無く「女神の啓示」を受ける。女性が信徒から選ばれ、政もそれに沿った物に成るという聊か極端な政治体制である

ただ、だからと言って魔術が軽視されて、神聖術が持ち上げられるという事も無かった

其の為、バルテッサを連れて居ても白眼視はされなかった。無論皆驚いていたが


その日取った宿でごろ寝しながら感想をもらした

「極端な政治だなぁ」
「フラウベルトも元はこんな感じではないか?」
「知らないけど、らしいわね」
「極端、だが、愚かとも言えんな」
「そうかなぁ」
「昔から「宗教」てのは結局二種類しかないからの」
「?本物と偽者?」
「主「個人の為」の物と、信徒「全ての為」の物とも言う」

「ここはどっちかな?」
「前者、だろうな、そもそも「女神からの啓示」を受けられる者が仮に居たとして、それが主が代わるたび継承されるなどありえんじゃろ」
「でも、そういう能力はあるんじゃないか?」
「ある、が、それは極めて稀だ、ワシの知る限り。その能力や、所謂「奇跡」の力を持った者が登場するのは覚えて居るだけでも、数百年で数人だ」

「じーさんはそういう者に会った事があるのか‥」
「無論、だが、それもかなり初期の話だ」
「初期?」
「今の世界は、天、魔の干渉する余地は少ない、それが多かった人の歴史の初期はそういう力を発揮する者も居たが。今はそれも少ない」

「まあ、それは兎も角今後だが」
「おっと、そうだったな‥」

と、本題について、話合うが、フォルトナとバルテッサの意見は一致していた。地図を記録してさっさと出よう、だった

「バルテッサの言うとおり、本物、な訳が無い」と二人とも思った

そもそも信徒、そうでない者に差を付けるという時点「全」を目指したもので無いのも明白だ。一部権力者にとっての「道具」としての宗教であるのも明白

不愉快はあって。面白いは無いだろう、と感じたのだ。尤も「啓示を受ける者」が本物なら留まって確かめるのも悪くは無いのだが

朝には、見切りを付け、周辺地図の記録と調査を行う。ただ、これが意外に手間取った

王都以外の場所。近隣の森や山岳に村、海側に港、小さな集落や町がやたら多いのである、それを記録しない訳にもいかなかったゆえである


それが全て終わったのが10日後であった。しかしその中で「噂」の聖女の話も多く、頼まないのに聞かされる事になるそれを聞いていく内に

「インチキ宗教」という評価から「実は本物」という評価にフォルトナ、バルテッサは変わりつつあった

「内容や話だけ聞くと、偽者とも言えないわよね?」
「事実ならな‥」

第68代目、「女神の啓示」を受ける聖女は12歳、代替わりして一年だが、元々「最も女神に近い聖女」との評価を信徒から受けていた

それがこの一ヶ月、急激にその力を増し次々「予言」をしていった、そしてそれが外れる事も一度も無かった

内容はくだらないものだ、明日の天気から、その日何が起こる今日はどこどこの町から誰が来る、とか。おおよそ「予言」とも言えない様なものばかりだが一度も外してない、らしい

そこまであちこちで聞くとフォルトナもバルテッサも興味を引かざる得ない。パレディウスの城下の街の宿でボソッとフォルトナも言った

「見てみようか?」と
「ここまで「偽者」と言い切れない話が出るとな、そうしたくなる」
「バルテッサはそういった本物に会った事があるんだろ?」
「まあな」
「見て「違い」とかあるのかな?」
「無いな、だが、この姿では規制が掛かる。そもそもかなり接近しないと見れん」
「あー、魔眼がちゃんと使えるのは竜の時だけか」
「左様、だがまあ、ある程度は見れるが、それで聖女かどうか判断するのは難しいが‥」
「いや、兎に角、行って見よう」
「そうだな」

二日後

聖女が週に一度ご尊顔を皆の前に現すという「太陽の曜日」という顔見世行幸があると聞き城下の中央の広場へ出て見る

既に多くの人も出ており、それを待っていた一種お祭りの様でもあった。城から広場まで、そこから南門まで輿に乗ってゆっくり往復、顔見世をするというものだ

輿、と言っても馬無しの馬車、乗っている「聖女」とやらは小窓から少ししか見れない。それでも「少女」である事は見て取れた

「どうだ?バルテッサ」
「ちと遠い、しかも人が多すぎるし、顔もよく見えんな」
「と、言ってもなぁ、あまり接近もできぬだろ」

そうこう話しているうち。中央広場を出るか出ないかの所で輿が止まった。すると意外な事に護衛兵が道を開け、中から少女、つまり「聖女」が出てきたのだ

見た目まるっきり子供、茶の髪で絹のローブとドレスを着た、余りにも体形に不釣合いな物が、無理して着飾ってブカブカ、という感じである

何があったのか?とざわつく観衆だが少女は何かを護衛兵に耳打ちし先導するように歩く、真っ直ぐ、こちらへ歩いてくる

「え??」と思っているうち「聖女」はフォルトナの前まで来て対面したのである、これまで居た周囲の観衆も波が引くように左右に分かれた

「聖女」は下から見上げて、薄っすら笑みを見せて言った
「待っていたよ二人共」と

フォルトナとバルテッサも驚くしか無かった「まさか?!本物?!」と思わず言いそうになった程

「あの‥どういう事でしょう?」
「夢で会った、えっと、フォルトナだよね?」
「ええ、確かにフォルトナですが‥」
「うん、一緒に来て欲しい、ずっとまってたんだ」

(少なくとも‥悪人ではない、この子から、そういった物は感じない)伝心で先にバルテッサはフォルトナに耳打ちした

それを聞いて、正直申し出が意味不明だったが、それを受ける事にした

城に招かれ「聖女」の部屋に案内された。そこで聖女は近習の者も下がらせた。完全に3人だけの状況を整えてから自己紹介した

「聖女、シエラ」
「フォルトナです」
「バルテッサだ」

3者名乗って椅子を勧められた

「あのそれで何故私達を?」
「?言ったままの意味だよ?」
「夢で見た、と言ったが」
「そうだよ、ここに来るのも分かっていた、だから待っていた」


初対面でフォルトナ達の事を知っていた、名前もだ。ここに来るのも分かっていた、となれば「うさんくさい」と思っていた「神託」も嘘ではないのだろう。そう思わざる得ない

「それが、巷で噂の、「女神の啓示」なのか?」
「さぁ?自分では分からない、でも皆が言うならそうなのかもしれない。ただ、「女神の言葉」らしき物は聴いたことはないけどね」
「‥?、つまり全部「夢」で見た出来事が、そのまま起こるそういう系統の話か?」
「うん、そうだよワンちゃん、いや、猫かな?」
「名前で呼べ、犬猫扱いは気持ち悪いぞ」
「ごめん」

「ま、それはいいとして、何で「待っていた」なの?」
「うん、と‥なんて言ったらいいのかな‥そう、フォルトナとバルテッサは「私を守れる」から」
「守れる?」
「そう、フォルトナは私を守る、私が何をしても」
「要領をえんな」

そうこう話していると部屋に男と達が飛び込んでくる

「何事ですか?!聖女様!」と

老人、とまでは行かないが、おそらく権力者であろう男を先導に近習、兵士がシエラの部屋に駆け込んできた、シエラは立って、片手で制した

「落ち着いて大司教、私が招いた者だ」と言って事情を説明した

一応の納得は得られたが、大司教とやらは訝しんでいた。まあ、当然でもある、そもそもフォルトナは見た目から怪しい。しかもバルテッサは鎧を纏った巨大虎である

だが一方、彼の取り巻き、近習の者、兵士は何故か感嘆の声をもらした

聖女が招いた事、ある意味お目にかかれない見た目の一人と一匹、彼らにとっては「使徒」か何かにでも見えたのかもしれない

そうなると大司教も「うぐぐ」と唸ったが文句は言えなかった、そもそもフォルトナを訝しんで見ているのはここで彼だけだ

やむなくそれを受け入れ、更に聖女に詳しい事情を聞くがそれで納得出来る訳もないし、意味不明であった。実際先に説明されたフォルトナ達ですら意味不明なのだから

「と、兎に角、この者達はここに置くと言う事ですか?!」
「そうだ、二人は私の元から離してはならない」
「それは「啓示」なのですか?」
「うん」
「そう仰られるなら従いましょう‥」

と大司教も無理やり納得して受けいれ、部屋を出た

全員出て行った事を確認してからシエラは「まったくめんどくさいじじいだ」とボソッと吐き捨てた

「いいんですか?一応大司教なんでしょ?」
「いいんだよ、権力があるだけの俗物だ」
「はぁ‥」

「で?ワシらにどうしろと?」
「うん、なるべく早くここを出たい「どこか」に連れ出してほしい」
「は?」
「え?」
あまりに突拍子も無いその言にそう、返さざる得ない

「出来ればもう少し説明を‥」
「私はこのインチキ国から出たい」

そうシエラが言った通り。バルテッサの言ったとおりでもある

シエラは元々、北の海に面した小さな町の出。不思議な力があった為、このパレディウスの高司祭に招かれ、と言うより、半ば誘拐気味に連れてこられた

大金を積まれて父親は、要するに娘を売った訳である、そもそも妙な事を言う娘、妙な力を持った子でもあり、これ幸いと厄介払いした

そもそもシエラ自体「女神アデリス」の信者でも信徒でもない、辺境の町の一、漁民の娘である

その「力」というのも当人が言った通り「啓示」「神託」という大層な物ではない、単に夢見の予知、である

それでも稀の能力ではあるが、何しろ不自由且つ、不安定な物だ、夢と言って毎度見る訳でもないし、内容も重要じゃない物が殆ど

それでも「先に起こる事」が分かるのでそれを示す事で聖女としての地位と立場の維持は十分である

「あっきれた話だなぁ‥」
「ふむ、本物では無いが偽者でもない、と言う所か、いや、むしろ、本物寄りには違いないかもな」
「と、言うと?」
「所謂、予知夢という奴だが、そこまで正確無比な物はワシも聞いたことが無い、何らかの神格の力が上乗せ、あるいは加護が働いている可能性は否定出来ん。似た能力の神術だと「千里眼」があるがそれにほぼ近い、寝てる時に見るか、起きてる時に見るかの違いでしかない」

「じゃあ、この子は「本物」て事?」
「可能性はあるんじゃないか?」
「うーん、それなら無理にここを出る必要も無いような‥」
「確かにそうじゃな、その力だけでも「聖女」と崇められるには十分ではある」

「あんな薄汚いじじいの言いなりの「予言」は沢山だ」
「?どういう事?」
「ここには歴代70人の「聖女」が居たそうだが、全部偽者だ皆適当に選ばれた者、それに都合のいいことを言わせて、あのじじいらの都合のいい政まつりごとを進めるそれがずっと繰り返されてきただけだ」
「何か確証が?」

「実際連れてこられて私はずっと何もしなかった。そこであのじじいはこう言った「大金を払って連れてきたのだ、お前の能力のある無しに関わらず神託はして貰う、従わないなら捨てるだけだ」とな」
「なんとまぁ‥」
「けど、一ヶ月前、フォルトナの夢を見た。だから見た「予知」を使ってやれる事を全てやった、そしたらじじい共は手のひらを返した」
「事情は分かったけど連れ出せ、というのはね」
「ウム、ワシらは「聖女」をかどわかした誘拐犯になるんかの?」

「そもそも、曲がった政治体制、と言っても別にそれで国滅びる程でもないし。今まで上手く行っていた物をぶち壊しにして去るってのも極端だと思う」
「では、このままじじい共の嘘政治を続けて良いというのか??」
「ハッキリ言ってそうだな。別にインチキを暴いて大司教らが追い出されたとしてもそれで国が良くなるという訳じゃない、寧ろ混乱か、あるいはこの国の基盤でもある「信仰」が根底から壊れる事になる、それで民が幸せになるならいいが‥」
「うー‥」

「とりあえず‥もう少し、考えて見ましょう、私もいい答えが見つからないわ‥」
「ここに居てくれるか?」
「ええ、当分はね」

二人は別に部屋を与えられ「客」としてもてなされた「当分残る」としたが、どうすればいいのか分からない事態でもあった

「困ったわね‥」
「当人にとっては「聖女」として残って生きるのが妥当だと思うが?」
「嫌な事を強要されて生きるのがか?」
「嘘つきで生きるのは周りの政治屋共であってシエラは本物と自称しても問題ない能力はある」
「でも神託、では無いんだろ?」

「それでも彼女を崇める、多くの信徒が居る、それは不幸とも思わんが?」
「けどさぁ~、当人は幸せじゃないんだろ?」
「そうだな」
「じゃあやっぱり逃げてもいいんじゃない?」
「さてね、彼女個人の意思を尊重するのか、それとも信徒全員の意思を尊重するのか、だが」
「うーん‥」

散々考えた挙句、結局フォルトナにも決断は出来なかった。確かに一部権力者のインチキ政治で物事が運ぶのも宗教を道具としか思わず、信徒すらも騙している、これは不愉快であるし、卑劣だろう

が、現状、多少不自由であるが、失政が多く皆が不幸になっているという訳でもない

しかし、そのインチキがシエラは嫌いだったしそもそも連れてこられて無理やりやらされているのであるし、彼女は信徒でも無い

シエラの意思を尊重するのと、今の立場を続けるのとどちらがいいのか

実際、その悩みの中での選択もシエラには伝えたが、彼女は「残る」という事は頑として受けなかった

「だとしても、卑劣な事は卑劣、悪政は悪政と主張するべきだ」と彼女自身がそう返したのである

そしてシエラ何日か考え、ある行動に出る
「聖女」の神託、啓示を止めたのだ。シエラにしてみれば嘘を続ける事も不快であるし従うのも嫌だった

そして「待っていた」フォルトナが自分を尊重してくれないと分かり実力行使に出た、ある意味失望していたのと。この立場を続けるのがうんざりだった。実際言葉にもして見せた

「女神など居りはせん。神託など受けてない」

後先考えない行動でもあるが。こどもぽいが「正しい物は正しい、間違いは間違い」と主張する正道な考えでもある

しかし、そうなると周囲の信徒も訝しざる得ない。自分達の信じる物、を「聖女」自身に否定されたのである。これにより国その物が不穏な空気に包まれる

だが、そうなると、迷いのあったフォルトナにも一定の思考方向を示す「こうなっては仕方ないな」と彼女らも動く事となる

シエラの護衛をバルテッサに任せ、自身は「裏」を探る為に
五日離れた

この様な事態になっては起こるべき事、も予想は付く。それが成された時の対処の準備を整えた

まず、大司教はシエラの部屋に乗り込んできて怒鳴った
「どういうつもりだ!」と
「嘘を嘘と言ってなにが悪い」平然とそうシエラは返した

「そういう問題では無い!貴様この国を潰す気か!」
「インチキの上に立ってる国がそれ程惜しいか、俗物」
「貴様‥」
「気に入らなければ「別のインチキ」聖女でも連れてくればいい何時でも出てってやる」

完全に売り言葉に買い言葉の喧嘩同然。しかし、道理の面でシエラに分がある。それだけに反論も出来ないのである

シエラは「餓鬼」であるがその一つ一つの考え、言葉は完全に正論である、無論考えてやっている訳ではないし。彼女自身も半ばやけくそだ

が、こうも言っているのだ

「悪事を悪事と否定出来ない者が何が国だ。国を立てる者が、正しい事を選ばないでどうするのか。嘘とインチキで固めた栄華がそれ程惜しいのか」と

シエラに付いて居たフォルトナもバルテッサもボーゼンである。同時、彼女の「正しさ」に感銘を受けたのである。そして、ここまで来るともう大司教も見切りを付けた

「分かった、好きにしろ!貴様は解任だ、どこへでも出て行け」

そう叩きつけて部屋をズカズカ出て行った
「言いなりの聖女」として使えなければもう邪魔でしかない
だからさっさと「次のいいなりの聖女」に切りかえればいいのである

それ自体シエラにとっては望む所であった。出て行けというならそうするさ、くらいにしか思わなかった
同時、ここでフォルトナらも離した


「つまらない事に巻き込んでごめん、でも私は私の意志を貫く」と

手持ちの宝石を一部渡して去らせたのである


それは謝罪の意味も含めてである、彼女なりに色々考えて「残る事も考えたら?」と意見したフォルトナらの考えも、用意もひっくり返した

自分で引き込んでおいて何もさせなかった事、シエラはそういう他者の気持ちよりも、自分の意思を通して突き進んだ、それを自身も「悪い事」と自覚していた、故の行動である

それが分かっているフォルトナもバルテッサも黙って受け取って国を出たのである


以降の行動は早かった「新たな聖女」を5日後には立てて、シエラを退任させ、その日のうちに、シエラを馬車で移送、南の街道の森まで運び叩き出した

「この街道先はもう別の国だ、二度とこっちに戻ってくるな」だった、シエラ自身は別にそれで良かった

「ようやくペテンの片棒から外された」としか思わなかったし、そのまま森の中の街道を晴れ晴れとした気分で一人でズンズン歩いて行った

彼女の行動と発言は勧善懲悪に類するものであるが子供ぽいが、それ以上に正しい、誰も否定出来ない程の物も確かにあった

しかし「子供」の考えを出ないのでもある。それが直ぐ現実に、彼女の前に訪れる

森の街道を南下して進む彼女の前に数人の男がとうせんぼする様に立ちはだかる。明らかに不快な顔でシエラを睨んだ

「なんだ?お前達」そう問うた

しかし相手はうめく様に返した

「女神を否定する聖女など‥」と意味不明な事言って腰に挿した小剣を抜いた

シエラも「え??」としか言えなかった

男は剣を構えシエラに飛び掛って剣を振り下ろす。なにが起きたか分からず咄嗟に頭を抱えて身を屈めた

ガン!と音を立て剣に何かが当った
そして声が掛かった

「やっぱり子供よね、当然こうなるのは分かりそうなものなのに」と

それを聞き目を閉じて硬直していたシエラはその眼を開き見た。男の振り下ろされた剣は弾かれ男とシエラの間にフォルトナが割り込み、刀を抜いていた

「な‥何で、ここに」そう返すのが精一杯だった

「前聖女「このインチキを知っている者」しかもそれを暴く事を憚らない。そんな貴女を生きて逃す程「聖人」じゃないわよ?あの大司教は」

盛大に皮肉交じりでフォルトナは更に返した

「初めから、殺すつもりだったのか‥」
「そういう事ね、ついでに「追い出した後、王国と遠い所で」という条件ありね」
「読んでいたのか」
「陰謀、というかインチキを知ってる者は少ない、それを信じる者も。だから暴こうとすれば必ずそれを消そうと考える、ま、基本ね、だから私達は後をつけてた、それだけ」
「あのくそじじい‥」

何時ものシエラ、に戻ったのを確認してフッと笑った。実に彼女らしい、と

そう思っているうち、別の所から声届いた。何もない空間が歪み「蜃気楼の中から」ヌッと出てきたバルテッサである

「あまり悠長に話して居る場合でもないぞ?後ろからも来る」
「数は?」
「20だ」
「少ないな」
「シエラに向けたものにしては多いだろ」
「ま、たしかに」

と、悠長にしている場合ではないのに悠長な二人に対峙した男達は次々剣を構え、ジリジリ迫った

「何だ‥まだ逃げてないのか‥」
「狂っている、からな、冷静な判断力等ないじゃろ」
「まさに狂信か」

フォルトナは迫る敵に一歩踏み出し軽く刀を3度振った・刀を面前でブンッと振って鞘に刀を納めた。途端、対面していた男達はドシャッとその場に前から崩れた

斬ったかどうかも分からない程の早業で4人倒したが、倒れた連中から道に、血が広がり、斬ったことがようやく確認出来た

フォルトナが強いのもある、が、相手は兵でも剣士でもない相手にすら成らなかった

「で?後ろの連中はどうする?大司教自らのお出ましだが?」
「うーん、どうせ種は仕込んであるんだし、相手する事もないな」
「そうだな、ではさっさと行こう」
「ああ」

とフォルトナはシエラを抱え上げ、バルテッサの背中に乗せた「え?え?」と困惑するシエラにバルテッサは言った
「走るぞ?しっかり掴まっていろ」と

フォルトナは低空飛行で跳び
バルテッサは凄まじい速度で走り出した

「キャーーーーーーーーーーーー」とシエラの叫び声が森に木霊した

こうして「聖女」シエラはこの国を無事去った。しかし、シエラの「神託」いや、予知はまだ二つあった、そしてそれは当ったのである


パレディウスは結局「女神の信仰」のまま続いた。が、大司教は城に戻った途端逮捕拘禁され。寄付金や税金のかなりの不正流用が発覚、というより、書面にして全て街にも城にもばら撒かれたのである

フォルトナの「仕込んだ種」がこれである、フォルトナは「化けられる」為、この手の裏の暴きはお手の物である。

「偽りの新しい聖女」のまま、大司教だけ外され偽りは偽りのまま続いたが、幸運な事に最大のインチキ野郎の後に司教に成った者の治世は至ってまともであった。

新しい聖女を立てつつ、極端な制限、規制も緩和されたインチキなのには代わらないのだが、少しづつ、改善が進んでいった様である

インチキでも別に構わないのである、ぶち壊す必要もない要は、そこに住む民の幸せが少しづつ拡大し、より良くなればいいのだ

これが夢の予言の一つ


そして、シエラはフローリアの時と違いフォルトナに何があっても付いて行く、としてバルテッサの背中から降りなかった

そこまでされるとフォルトナも断らず、そのまま「旅」に加えたのだ「イチイチ、フリトフル往復するのもねぇ‥」と呟いて、消極的ではあるが、好きにさせたのである

へばりつかれたバルテッサには、いい迷惑ではあるが

そしてシエラは「フォルトナはお願いすれば断らない」事も知っていた

森から南地域へ抜け、そのまま、港へ出て次の港まで船に乗った、ここでシエラは「この海、夢で見たよ」と言った、つまり予定通りなのだ

これがもう一つの夢の予言である

「黒い剣士と白い虎が私に会いに来る」

「パレディウスは別の聖女が治める、そこにあのじじいは居ない」

「3人で海に出る、旅をする」の三つであった。全てその通りに成ったのである

船を降り、南地域の島の港で歩きながら言った

「んー結局さ、シエラって「聖女」なのかな」
「また、その話題か、予知夢以上の力があるとでも?」
「だってさー、予知夢の精度高くないか?」
「それはワシも思うが、神託とは関係無いだろう。当人もそう言っている」
「うーん」

フォルトナも腕を組んで首を捻った、シエラはニコニコ笑って「だけじゃないよ」と言って、周りをキョロキョロ見渡して近くに人が居ない事を確認した後

フォルトナの手を握って、ジッと見つめた
「フォルトナは所謂「人魔」の人なんだね、ハイブリットなんだそれに虹みたいな光が射してる」
と平然と言った

それを聞いてフォルトナもバルテッサも驚愕した

「まさか‥魔眼か‥」
「それが異常な精度の予知夢の原因か‥」
「わかんない、けど、ずっと昔からあった」
「ふむ、血筋にそういう者が居て、ある日突然その代で継がれる事はあるが」
「パパもママも普通の人だよ」
「だろうな‥」
「けど、疑問は晴れたな」
「うむ、ワシもびっくりじゃが、例として、決して少ない物ではない、シエラがそうだとしても別に不思議とかおかしいという事でもない」
「それ両目なの?」
「そうだよ」
「珍しい事には違いない「資質」を見る系統の魔眼は、おそらく、神格者の側、だ」

「そうなのか?」
「伝記や神話で「嘘を見抜く目」を持つ神が居るだろう例えば英雄を拾い上げる天使とか」
「ああ‥成る程、ヴァルキリーとかか」

「左様、だから「中身」を見れる目なんだが。まあ、面倒だから魔眼と一緒くたにされとるがその力は千差万別だ」
「ほほう、じゃ、文字通り「魔」のほうなら何になるんだ?」
「メデューサの石の目、サキュバスの魅了じゃな、全部魔眼じゃがシエラの場合「神眼」と呼ぶべきなのかもしれんな」
「ん?という事はじーさんも」

「一応そういう事だ、が、ワシは片目じゃ」
「こりゃ驚きだなぁ‥」
「しかしこれだけとも限らんがな」
「確かに、元が何なのかにも寄るが」
「それは調べようが無いな」
「ま、兎に角、拾い物、には違いないね」
「それもどうだかな‥」

バルテッサのその言にフォルトナも「?」だったが、それをハッキリ調べる方法も無いのも事実だった、兎に角「旅」の仲間は増えた事にはなった

お荷物なのかそうでないのかイマイチ分からないが

シエラはご機嫌だった、握ったままのフォルトナの手をブンブン振って歩いていった

彼女はある意味、聖女と言えたろう。正しい物を正しいと言い、間違いは間違いと主張し、悪い物は悪いと言う事を憚らない

それを出来る者は何時、どの国、どの時代でも極めて少ない
勧善懲悪に類する物ではある、が、多くの他者、から見たら「正義」である

もし、シエラが残っていたら別な国に成ったかもしれないがそれはあくまで「もしも」の話である

そして「インチキ」の中から「聖者」が出た皮肉でもあった
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幼馴染同士パーティーを組んで冒険者として生計を立てている2人、シルフィとアステリアは王都でのクエストに一区切りをつけたところだった。 故郷の村へ馬車が出るまで王都に滞在する彼女らは、今流行りのオイルマッサージ店の無料チケットを偶然手に入れる。 好奇心旺盛なシルフィは物珍しさから、故郷に恋人が待っているアステリアは彼のためにも綺麗になりたいという乙女心からそのマッサージ店へ向かうことに。 しかしそこで待っていたのは、真面目な冒険者2人を快楽を貪る雌へと変貌させる、甘くてドロドロとした淫猥な施術だった。 シルフィとアステリアは故郷に戻ることも忘れてーー ★登場人物紹介★ ・シルフィ ファイターとして前衛を支える元気っ子。 元気活発で天真爛漫なその性格で相棒のアステリアを引っ張っていく。 特定の相手がいたことはないが、人知れず恋に恋い焦がれている。 ・アステリア(アスティ) ヒーラーとして前衛で戦うシルフィを支える少女。 真面目で誠実。優しい性格で、誰に対しても物腰が柔らかい。 シルフィと他にもう1人いる幼馴染が恋人で、故郷の村で待っている。 ・イケメン施術師 大人気オイルマッサージ店の受付兼施術師。 腕の良さとその甘いマスクから女性客のリピート必至である。 アステリアの最初の施術を担当。 ・肥満施術師 大人気オイルマッサージ店の知らざれる裏の施術師。 見た目が醜悪で女性には生理的に受け付けられないような容姿のためか表に出てくることはないが、彼の施術を受けたことがある女性客のリピート指名率は90%を超えるという。 シルフィの最初の施術を担当。 ・アルバード シルフィ、アステリアの幼馴染。 アステリアの恋人で、故郷の村で彼女らを待っている。

30年待たされた異世界転移

明之 想
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 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

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