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終幕の攻防編
最後の策
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大陸戦争も八年目に成ろうかという所、十分過ぎる優位から、マリアら連合は本格的な攻勢に出る
レバン、クルベルから派兵し、西と南からスエズへ侵攻、同時、デルタへの侵攻である
スエズに侵攻する軍はフラウベルト主軍五千、フリット、グレイら矛も200、レバンからはゴールド親子、クリシュナから二千、北軍のニコライ、ハンナ、数は5千
スエズには防衛二千とロゼット、カリス、ジャスリンらが居たが合わせて八千、一万対一万二千で数で劣り、士気も既に低く厳しくあった。まして防衛に極めて強いシャーロットの不在と援軍のアテである
同時進行であるだけに、手持ちでやりくりしなくては成らない状況、そして反対側デルタにはマリア、ガレスらほぼ全軍二万を繰り出した
もはやどこを守る必要も無い完全に「落としに」来ていた
特にデルタは二ヶ月の連続戦闘のお陰で、砦の体裁も最早無く、アルベルト、エリザベートも合わせて五千まで削られていたまともな防衛戦等展開出来るハズも無く
「こりゃ終わったな」とエリザ自身も分かっていた、故に、百人騎馬らも前に出さず「捨てる」つもりの防衛を展開した
そもそも、数が違いすぎる上、戦略戦術で対抗できる将を自ら捨てたのだ、その時点でもう勝ち目等無い
が、アルベルトはどのような時も「皇帝」への信心が高く1人奮闘したがそれでどうにか成程現実は甘くない
更に悪くしたのは、最後まで防衛戦を展開した為、無意味に前に出て被弾し、重症を負って離脱する事になった
僅か二日でデルタ砦は陥落、特に被害の多いアルベルト軍が2200失いエリザベートは500で留めて撤退する、それ自体戦略ミスである
そもそも砦もボロボロ、碌な防衛施設として成り立っていないのに、兵力展開して篭城防衛してもたいして意味がない
故にこれまでやっていた「兵力は維持」するというシャーロットのやり方しかないのだ
無意味に兵を死なせず、数と戦力を維持、領土を譲っても何れあるかもしれない反撃攻勢の次期に備え、それら貯金を使う、それが最も正しかったのだ
守って維持する事ではない
「最終的な勝利者になれば良い」のである
同時期始まったスエズの防衛戦は善戦していた、指揮がカリスであった事もあるが、スエズは場所が狭く防衛野戦でやり易い事、城自体も硬い事
それでも南と西からの包囲戦、数負けであり、苦しい事は変わりない特に「人材」劣勢である
自軍を分けて二正面防衛になるが手元にロズエルの姉妹、ジャスリンしか居ない事である
自身は後衛において全体指揮し前衛はロズエルの姉妹とジャスリンに任せて戦うがどう見ても向こうの個人武芸者に質はともかく数で負ける終始苦しい展開であった
それでもカリスはスヴァートや突破兵を展開して防御線と武芸者、将の劣勢を個と全を巧みに交換させながら維持して五日凌いだが
デルタの敗戦からクロスランドへ撤退したエリザベートも、まさかここを放棄してスエズに援軍に行く訳にもいかずクロスランドを動けず援軍のアテも無かった、どうにか接戦を展開したカリスも
「このまま凌いでも何も状況が好転しない」との考えから野戦から篭城
更に、放棄前提で反撃、迎撃を五日行い、最後にはロゼットらも連れて、スエズから撤退した。兎に角、劣勢で耐えても、兵の被害が拡大するだけであり
「こちらに流れが来た時の為に兵力だけは温存する」という選択をした
実際カリスは粘った割りには800の被害で済ませ、伊達にシャーロットやアリオスの弟子ではないな、という結果は見せた
とは言え「こちらに流れが来た時」等、もう無いだろう、とは思っていた
既に全体でも敗戦濃厚としか言いようが無い、好転するなら兎も角、更にミスを上塗りするという流れだ当然だろう
カリスらはスエズの撤退から5日掛け、クロスランドへ、元々大戦前から、大陸の重要要所であり、堅い砦街である
ここから東、つまりベルフ本国まで防衛展開する砦や城も直通路には無い、その為ここがある意味、最終防衛の要所でもある
此処より巨大な街が背後のレンフィスであるが、砦や城とは違い「防備」は弱い為である
既にクロスランドに集結した総軍も一万であり、銀の国の軍だけに比しても半数、もはや「西軍」とも言えないような状況だった
ここでようやく皇帝が北の放棄とロベールの撤退を指示した、しかし、数が多いだけに戻るのも最速で二ヶ月という絶望的な状況であるその判断すら遅い
連合側も「もう詰んだな」という意識だった
特にベルフ側は例の「暗殺未遂」事件から志願兵の類も減り徴兵自体も上手く行かなくなり、支配地域から離脱する民も多くなっていた
アリオスはここで、レンフィスから本国へ戻り
まず「家」に戻ったシャーロットに面会した
彼のレンフィスに戻って打った「策」の準備は既にほぼ終わっており、後はそれの展開が「動き出す」のを待つのが大半である。だから「終わった後」の事の為にシャーロットに会った
彼女の屋敷を訪れて顔を合わせた時シャーロットは驚いたが同時、嬉しくもあった。元々長い付き合い、兄弟弟子である
そして、何ら意味もなくアリオスが動く事はありえないとも知っていたからだ
アリオスを応接室に招きコーヒーを出した後自分も座って対面した
「で、暇な私に何か御用かしら?」
「ええ、まあ、大した事では無いんですが、後々の事でちょっと」
「と、言うからには敗戦の後の事かしら?」
「ハハ‥流石「シャルル」もう打つ手なしという見解ですね」
「そうねぇ‥どうにかこっちの動きで反撃、らしき物が出来たのは、やっぱり暗殺事件前のクルベルかしら」
「ご尤もです。あそこで東、西を専守、南に全軍攻撃、これで抜けたハズです。となれば、向こうも攻勢にでられませんでした」
「仕方ないわね‥間違いは取り戻せない」
「まあ、それでも成功率は良いとこ五分ですけどね」
「そうね」
一時そこで双方会話が止まってお互いお茶を啜った
「で、私、中央に戻った後、色々工作してましてね」
「ええ」
「まず、シャルルについてですが、今のうちの家の資産なんかを隠した方がいいと思います」
「もう処理してるわ、元の商売の仲間に「銀行」をやらせているわ」
「流石です」
「で?」
「で、シャルルさんの方、要するに「御身」の方ですが、やはり何があっても動かないほうがいいと思います、私の方で一応「八重」さんらに周囲を守らせます」
「何があっても、とは?」
「まあ、無いと思いますが、皇帝から呼び出しが有るかもしれませんし、また、戦場に駆り出されても、もう、無駄でしかありませんし死地に赴く事になるだけですから」
「アルベルトも重症らしいからね」
「代わりに、となっても無視なさって良いと思います、まあ、自分で冷遇しておいて助けろとは笑える話ですが」
「そうかもね」
「で、ですね、身の危険というのもあるし、ここも戦場になるでしょうから」
「もう、そうなるでしょう」
「今更兵力分散の愚かさを知って、ロベールさんを戻しましたし、たぶんガレスさんも戻して決戦でしょう。んで、私の方ですがそれを早める、策を打ってあります色々、なんというか条件付で、可能な限り味方を潰さずに」
「そう‥じゃあ、私はあくまで「ベルフの元八将」て立場でいいのかしらね」
「ええ、私はシャルルさんの安全は確保しますそれと戦後の事も」
「うん?何を考えてるの?アリオス」
「言うまでも無く、秘密でお願いしたいのですが」
「ええ、もちろんよ」
そこで、アリオスは自身の考えた、既に展開してる「策」をシャーロットに披露した
「‥貴方らしい‥と、言っていいのかしら‥」
「本心から言わせてもらいますが。私はもう、皇帝の命に従う気はありません、このまま進んでも、全員死ぬだけです。ですが私自身「ベルフ」という国が歴史から消えるのは耐えられません」
「要は、愚かな判断を繰り返す王が変わればいい、そういう事ね」
「はい」
と両者見詰め合って沈黙した
「分かったわ‥私に出来る事はある?」
「シャルルさんの中央、本土付近に配した、ラファエルさんもこちらへ、貴女はそのまま「皇帝の不興を買って外された不幸な名士」という立場でなるべく安全には配慮してください、それだけです‥」
「分かった」
「では、私はこれで‥」
「次はどこへ?」
「皇帝に会います、まあ、誘導ですね。」
「死なないでよアリオス」
「そのつもりです、後の事は分かりませんが、片付けが終わるまでは死ぬつもりはありません」
二人とも立ち、柔らかく、長い握手を交わした
同日、アリオスは宣言どおり皇帝ベルフに面会無視されるかとも思ったがそれは実現した、皇帝自身、現状の打開策が皆無であった為アリオスに頼らざる得なかった
「勝手な行動を取り、申し訳御座いません」
「‥それはまあ良い、特に何かマイナスがあった訳ではないで?何か用か?」
「は‥「策」というより、反転攻勢に最後に望みを掛けたいと思いましてその許可を頂きたいと」
「ほう‥まあいい、言ってみろ」
そこで、アリオスは「策」を伝える
「ふむ‥たしかに、それしか無いな‥」
「ハイ、事ここに至っては、ただ戦力結集して戦っても不利になる可能性があります、領土を維持するのが目的では無く、我々は「敵」を倒す事が目的と思います、陛下にとっては不快な手段と思いますが‥」
「が、理には適っている、いいだろう、ワシも耐えよう貴様に任せる」
「ハハ!‥」
「ただ、少し時間が掛かります故‥」
「構わん、好きにしろ」
「ありがたき幸せ‥」
と、アリオスは肝心な部分を除いて策を披露。皇帝その物を釣って自身の「策」を通した
ただ、この「策」は連合側、ベルフ軍各将にとっても余りにも予想外だった
皇帝とアリオスの会談の後、一週間後にそれは訪れる、まず、ベルフの全将に書面での通達。既にアルベルトとシャーロットは居ない為6将ではあるが
「本国決戦‥か」
「間違いではありませんね、しかし、問題は物資の移動ですが‥」
「皇帝からその為の部隊や人員は回すとの事だ」
「とは言え、やるしかないな」
エリザベート、カリスはそう見解を示してその策を同意しその準備に取り掛かる
一方で連合側には「内密」の使者がマリア、エルメイアの元に来訪した、その通達と書面を見てマリアもエルメイアも驚いた
「な?!何でこんな事が‥!」
「後、アリオス様も来られます、ですが、それも内密にどこか別の場所を用意して頂きたい」
「うむ‥しかし信じていいのか?」
「これは「ベルフ」としての会談ではありません、アリオス様としての会談です」
「分かった‥ではこちらの領土でいいのか」
「ハイ、そのくらいでないと情報が漏れます」
「うむ‥ではトレバーの後ろ、港町がある、そこでよいか?」
「分かりました、ですが人数も最少でお願いします」
「よかろう‥10日後の夜、の方がいいか」
「ハイ、伝えます」
と使者に充てられたキョウカは相互に情報交換の後、即座城を出た、そしてエルメイアの方にも同じ内容の使者が訪れ内密会談を行い、同意を取った
両盟主共「何かの罠か?」とも思ったが、アリオスがそこまで姑息な事をするとも思えず、更に、その手の謀略は現状、寧ろベルフを更に損なうだけだろうとも思った
この一件を聞いた極一部の連合軍師アンジェ、アレクシアとも、やはり同じく「この段階に至ってそこまでセコイ手を打つとは思えない」との見解を示し
更に「内密」ならばと少数のメンバーと更に人目に触れない様に最大の配慮がされた
指定日、トレバーの西、「ロドテシス港」でマリア軍の船を着け、夕方には会談メンバーも選抜される
海上なら誰の目にも触れず、情報漏れの確率も極めて低い、何か策だとしても向こうも逃げれないし、そもそも送り込むのも不可能故である
メンバーは其々の連合代表者で来れる者、最小である
エルメイア、アンジェ、カミュ、マリア、ジェイド、ロラン、チカ、アレクシア=猫、シューウォーザーである
海上に出した船に、実際アリオス自ら、キョウカ、八重と護衛5人という疑いすら吹き飛ばす程の少数で、しかも自身らが乗れるだけの小船で乗り込んできた
会談自体も密室を用意され会議テーブルを囲んで会談が行われる、まずアリオスは
「大陸中の名士とお会いできて光栄です」と挨拶した
「うむ、そなたとは初めてではないが、この様な場で再会出来た事を幸いに思う」
「まず、皆さんには私の策がある程度完遂するまで、決して秘密を洩らさない、それに同意願いたい」
「分かった」と一同頷いた
「まず、本心を言わせて貰いますと、私は、皇帝を見限りました」
「!?」
「最も帝国に尽くしたそなたが‥?」
「信用しろ、とは言えません実際今までが今までですから」
「いや、まあ、現状、この場を作ったのだからある程度は信用するが‥」
とマリアの言には一同も同意である
「何がそこまで‥」とエルメイアも思わず口にして呟く
「ハイ、私は戦略家であります、皇帝もそうです、ですが南方戦争から、その慧眼が衰え、国を損なう様な命令と指示、更に、ベルフに尽くした将らを軽視し、意見すらまともに通らなくなりました」
「それで‥」
「個人的な事ですが、兄弟弟子でもあるシャーロット=バルテルスに対する為さり様、エルメイア、マリア様への、愚劣な暗殺策動それで自国民すら軽視するような展開‥これでは、もう王としての意味がありません」
「だが、だからと言ってどうするのか?」
「は、そこで私、皆様に皇帝を討って頂きたいと思い至った次第です」
「分からなくは有りませんが‥」
「しかし、王を裏切る者を信用しろというのは無理があるのでは」
「ご尤もです、ですが、私としてはベルフを潰すというつもりもありません、私自身「ベルフ」という生まれ育った国に対して愛国の心はあります」
「ふむ‥」
「故に、頭を挿げ替える、という策を考えております」
「暗殺でもするのか?いや‥我らに討って欲しいというからには違うか」
「はい、大陸連合はベルフに対する者、故に正面から倒すのです」
「しかし、それで頭を挿げ替えるとは?」
「は、私の弟子でもあります、カリス様、ロゼット様に代替わりして頂きたいのです」
「成程‥カリステア、ロゼット両名共、民心の信頼と評価の高い人物しかも皇帝の子供じゃ」
「左様です、贔屓目かもしれませんが、お二人共、優しく、美しく下も上もよく見るお方、更に戦争を嫌っております、そうなれば、代替わりを果せば、和平の道も有りえます」
「特にカリス様は「早く事を成せば、それだけ人死にを少なく出来る」と考え自ら戦場に出てきたお方です」
エルメイアにとってはその言は意外でもあり、共感があった同じ事を考えていたからである
「わたくしも、同じ考えで御座います‥」
エルメイアが真っ先にそう言った
「勝ち負けは兎も角、戦争が長引いて不幸になるのは民衆です、人の上に立つ者、国を預かる者が、それを悪戯に長引かせるのは間違いです」
「慧眼で御座います」
エルメイアにそう言われると一同も唸って考え込む
「ですが、皇帝陛下は降伏などあり得ないでしょう、故に新たな王を入れたいのです」
「しかし‥アリオス殿に何のメリットがあるんじゃ?」
「は、私はもう、負けは確定していると思っています、なので、交換条件を願いたい、無論全て上手くいったらの話ですが」
「聞こう」
と、そこで、アリオスはその「条件」を述べた
「そこまではいい、が、アリオス殿のそれが、我らを損なう「策」でないという保障は?」
「は、私、既に「策」を皇帝陛下に具申して呑ませてあります、それらもお伝えします、そこで、ソレが全て伝えた通り展開したら偽りは無いと考えては貰えませんか?」
「うーむ‥」
「何でしたら、書面にでもしましょう、何らかの裏切りがあった場合それを公開して、私を向こうに居ながら殺せます、味方の手で、何しろ「裏切り者」に出来ますから」
エルメイアはそこで立ち上がり「わたくしはアリオス殿を信じます」と声を張って宣言した
「うむ、ここまで見せられてはな」
「聖女の判断に従います」と一同も追従する
「有り難う御座います皆さん」アリオスもそう返して感謝を述べる
「さて、ではアリオス殿、その「策」とやらを聞かせて貰おう」
「ハ」と、一同に説明を行う
「成程‥」
「うーむ、という事はこちらは何もしないのか?」
「いえ、余り手抜きするとバレますので、適度に皆さんにも「妨害」のふりを」
「分かった」
「それと交換条件ですが」
「それも分かった、ただ、完璧、とは行かんかも知れん、何しろ戦場戦争での事だ」
「承知しています」
「では、一旦解散としよう」
「殆ど、やるべき事はこちら側の事です、なので、改めて連絡を入れます」
「了解した」
ここで、この秘密会談は終わる。船を港に戻し、アリオスらも先に離脱。ただ、その後「偽りの正式外交会談」が後日にはマリアらと行われた「万が一の疑い」もさせない為である
そこでアリオスは連合に対して単身乗り込み「マリアらと直接休戦交渉を行い、物別れに終わった」と両軍に周知させてから
疑いの目すら向けさせず、更に、「戦争の気運」を高めた後、自国に戻る
一方クロスランド、背後にある本国までの道、砦、城、街では皇帝に示した策の準備が進められる
アリオスは一旦クロスランドに戻り他の将と会談、一同も再会を喜んだが、同時、この策への問いを受けるが無論、肝心な部分を排除してアリオスも説明する
「それにしてもよく皇帝に呑ませたな」
「というか、手が無いんでしょう」
「けどまあ、理には適ってると思うよ」
「ええ、これしかありません、ただ、成功率は高くありませんが‥」
「それは仕方ないだろう、もうどうしょうもない所まで来ているからな」
「はい、兎に角、私も兵と将を持ってきました、急ぎましょう」
そう会談を早々に切り上げ、準備に精励させた。連合に伝えた反面、ベルフ側の味方には「真の目的」は一切伝えていないのだからそれ以上言いようがないのもある
策としては単純な物だ
連合の支配地からベルフ王都まで、間にある全ての街や城で兵力を放棄する、物資等も民衆、非戦闘員の分だけ残し引揚げる
下がり防衛しながら敵を削り、王都まで引き、戦力を結集した後、正面決戦を挑み、撃退して反転攻勢という物である
「理に適っている」と言った通り、敵の遠征軍を引き込み、疲弊させ、その疲労のピークで反撃して叩くという策として正統的な物である
アリオスだけに「もっと奇抜な何か」があるのかとも思ったが逆に奇策を挟む余地も無い物であり一応の納得が得られての展開である
ただ、この作戦の場合、全戦力を結集する事、一旦領土を捨てる事であり「皇帝には不快でしょうが」と言った通り、我慢を擁する物である
また、逆に連合側からすればそれだけの物資の用意が必要である事
向こうが捨てた領土の確保維持を必要とするものであり手間が掛かるとも言える
更にただ傍観しているだけで無く、一定の攻めも行わなければアリオスの策を台無しにする事にもなる為やらない訳にはいかなかった
マリアはそのままクロスランド、エルメイアはスエズからクロスランドへの包囲戦を仕掛け、更に向こうの収拾に合わせて東地域も取らなければならない為、メルト、隣接地のある、南方からも攻めを展開する必要がある
実際、東からガレス、北からロベールが引き領土放棄して中央に物資回収しながら撤退を始めたのは更に一ヶ月である
連合各国は敵が引くのに合わせて領土奪取を行いつつ
各国から予備費や予備物資、兵糧等を集めて次第に全方位から領土奪還戦を行った
この作戦に連合側、事情を知らない国、領主からの不満は出なかった、表面上は「大反撃作戦」に見えた事
それが次々成功した、と見えた事にある
レバン、クルベルから派兵し、西と南からスエズへ侵攻、同時、デルタへの侵攻である
スエズに侵攻する軍はフラウベルト主軍五千、フリット、グレイら矛も200、レバンからはゴールド親子、クリシュナから二千、北軍のニコライ、ハンナ、数は5千
スエズには防衛二千とロゼット、カリス、ジャスリンらが居たが合わせて八千、一万対一万二千で数で劣り、士気も既に低く厳しくあった。まして防衛に極めて強いシャーロットの不在と援軍のアテである
同時進行であるだけに、手持ちでやりくりしなくては成らない状況、そして反対側デルタにはマリア、ガレスらほぼ全軍二万を繰り出した
もはやどこを守る必要も無い完全に「落としに」来ていた
特にデルタは二ヶ月の連続戦闘のお陰で、砦の体裁も最早無く、アルベルト、エリザベートも合わせて五千まで削られていたまともな防衛戦等展開出来るハズも無く
「こりゃ終わったな」とエリザ自身も分かっていた、故に、百人騎馬らも前に出さず「捨てる」つもりの防衛を展開した
そもそも、数が違いすぎる上、戦略戦術で対抗できる将を自ら捨てたのだ、その時点でもう勝ち目等無い
が、アルベルトはどのような時も「皇帝」への信心が高く1人奮闘したがそれでどうにか成程現実は甘くない
更に悪くしたのは、最後まで防衛戦を展開した為、無意味に前に出て被弾し、重症を負って離脱する事になった
僅か二日でデルタ砦は陥落、特に被害の多いアルベルト軍が2200失いエリザベートは500で留めて撤退する、それ自体戦略ミスである
そもそも砦もボロボロ、碌な防衛施設として成り立っていないのに、兵力展開して篭城防衛してもたいして意味がない
故にこれまでやっていた「兵力は維持」するというシャーロットのやり方しかないのだ
無意味に兵を死なせず、数と戦力を維持、領土を譲っても何れあるかもしれない反撃攻勢の次期に備え、それら貯金を使う、それが最も正しかったのだ
守って維持する事ではない
「最終的な勝利者になれば良い」のである
同時期始まったスエズの防衛戦は善戦していた、指揮がカリスであった事もあるが、スエズは場所が狭く防衛野戦でやり易い事、城自体も硬い事
それでも南と西からの包囲戦、数負けであり、苦しい事は変わりない特に「人材」劣勢である
自軍を分けて二正面防衛になるが手元にロズエルの姉妹、ジャスリンしか居ない事である
自身は後衛において全体指揮し前衛はロズエルの姉妹とジャスリンに任せて戦うがどう見ても向こうの個人武芸者に質はともかく数で負ける終始苦しい展開であった
それでもカリスはスヴァートや突破兵を展開して防御線と武芸者、将の劣勢を個と全を巧みに交換させながら維持して五日凌いだが
デルタの敗戦からクロスランドへ撤退したエリザベートも、まさかここを放棄してスエズに援軍に行く訳にもいかずクロスランドを動けず援軍のアテも無かった、どうにか接戦を展開したカリスも
「このまま凌いでも何も状況が好転しない」との考えから野戦から篭城
更に、放棄前提で反撃、迎撃を五日行い、最後にはロゼットらも連れて、スエズから撤退した。兎に角、劣勢で耐えても、兵の被害が拡大するだけであり
「こちらに流れが来た時の為に兵力だけは温存する」という選択をした
実際カリスは粘った割りには800の被害で済ませ、伊達にシャーロットやアリオスの弟子ではないな、という結果は見せた
とは言え「こちらに流れが来た時」等、もう無いだろう、とは思っていた
既に全体でも敗戦濃厚としか言いようが無い、好転するなら兎も角、更にミスを上塗りするという流れだ当然だろう
カリスらはスエズの撤退から5日掛け、クロスランドへ、元々大戦前から、大陸の重要要所であり、堅い砦街である
ここから東、つまりベルフ本国まで防衛展開する砦や城も直通路には無い、その為ここがある意味、最終防衛の要所でもある
此処より巨大な街が背後のレンフィスであるが、砦や城とは違い「防備」は弱い為である
既にクロスランドに集結した総軍も一万であり、銀の国の軍だけに比しても半数、もはや「西軍」とも言えないような状況だった
ここでようやく皇帝が北の放棄とロベールの撤退を指示した、しかし、数が多いだけに戻るのも最速で二ヶ月という絶望的な状況であるその判断すら遅い
連合側も「もう詰んだな」という意識だった
特にベルフ側は例の「暗殺未遂」事件から志願兵の類も減り徴兵自体も上手く行かなくなり、支配地域から離脱する民も多くなっていた
アリオスはここで、レンフィスから本国へ戻り
まず「家」に戻ったシャーロットに面会した
彼のレンフィスに戻って打った「策」の準備は既にほぼ終わっており、後はそれの展開が「動き出す」のを待つのが大半である。だから「終わった後」の事の為にシャーロットに会った
彼女の屋敷を訪れて顔を合わせた時シャーロットは驚いたが同時、嬉しくもあった。元々長い付き合い、兄弟弟子である
そして、何ら意味もなくアリオスが動く事はありえないとも知っていたからだ
アリオスを応接室に招きコーヒーを出した後自分も座って対面した
「で、暇な私に何か御用かしら?」
「ええ、まあ、大した事では無いんですが、後々の事でちょっと」
「と、言うからには敗戦の後の事かしら?」
「ハハ‥流石「シャルル」もう打つ手なしという見解ですね」
「そうねぇ‥どうにかこっちの動きで反撃、らしき物が出来たのは、やっぱり暗殺事件前のクルベルかしら」
「ご尤もです。あそこで東、西を専守、南に全軍攻撃、これで抜けたハズです。となれば、向こうも攻勢にでられませんでした」
「仕方ないわね‥間違いは取り戻せない」
「まあ、それでも成功率は良いとこ五分ですけどね」
「そうね」
一時そこで双方会話が止まってお互いお茶を啜った
「で、私、中央に戻った後、色々工作してましてね」
「ええ」
「まず、シャルルについてですが、今のうちの家の資産なんかを隠した方がいいと思います」
「もう処理してるわ、元の商売の仲間に「銀行」をやらせているわ」
「流石です」
「で?」
「で、シャルルさんの方、要するに「御身」の方ですが、やはり何があっても動かないほうがいいと思います、私の方で一応「八重」さんらに周囲を守らせます」
「何があっても、とは?」
「まあ、無いと思いますが、皇帝から呼び出しが有るかもしれませんし、また、戦場に駆り出されても、もう、無駄でしかありませんし死地に赴く事になるだけですから」
「アルベルトも重症らしいからね」
「代わりに、となっても無視なさって良いと思います、まあ、自分で冷遇しておいて助けろとは笑える話ですが」
「そうかもね」
「で、ですね、身の危険というのもあるし、ここも戦場になるでしょうから」
「もう、そうなるでしょう」
「今更兵力分散の愚かさを知って、ロベールさんを戻しましたし、たぶんガレスさんも戻して決戦でしょう。んで、私の方ですがそれを早める、策を打ってあります色々、なんというか条件付で、可能な限り味方を潰さずに」
「そう‥じゃあ、私はあくまで「ベルフの元八将」て立場でいいのかしらね」
「ええ、私はシャルルさんの安全は確保しますそれと戦後の事も」
「うん?何を考えてるの?アリオス」
「言うまでも無く、秘密でお願いしたいのですが」
「ええ、もちろんよ」
そこで、アリオスは自身の考えた、既に展開してる「策」をシャーロットに披露した
「‥貴方らしい‥と、言っていいのかしら‥」
「本心から言わせてもらいますが。私はもう、皇帝の命に従う気はありません、このまま進んでも、全員死ぬだけです。ですが私自身「ベルフ」という国が歴史から消えるのは耐えられません」
「要は、愚かな判断を繰り返す王が変わればいい、そういう事ね」
「はい」
と両者見詰め合って沈黙した
「分かったわ‥私に出来る事はある?」
「シャルルさんの中央、本土付近に配した、ラファエルさんもこちらへ、貴女はそのまま「皇帝の不興を買って外された不幸な名士」という立場でなるべく安全には配慮してください、それだけです‥」
「分かった」
「では、私はこれで‥」
「次はどこへ?」
「皇帝に会います、まあ、誘導ですね。」
「死なないでよアリオス」
「そのつもりです、後の事は分かりませんが、片付けが終わるまでは死ぬつもりはありません」
二人とも立ち、柔らかく、長い握手を交わした
同日、アリオスは宣言どおり皇帝ベルフに面会無視されるかとも思ったがそれは実現した、皇帝自身、現状の打開策が皆無であった為アリオスに頼らざる得なかった
「勝手な行動を取り、申し訳御座いません」
「‥それはまあ良い、特に何かマイナスがあった訳ではないで?何か用か?」
「は‥「策」というより、反転攻勢に最後に望みを掛けたいと思いましてその許可を頂きたいと」
「ほう‥まあいい、言ってみろ」
そこで、アリオスは「策」を伝える
「ふむ‥たしかに、それしか無いな‥」
「ハイ、事ここに至っては、ただ戦力結集して戦っても不利になる可能性があります、領土を維持するのが目的では無く、我々は「敵」を倒す事が目的と思います、陛下にとっては不快な手段と思いますが‥」
「が、理には適っている、いいだろう、ワシも耐えよう貴様に任せる」
「ハハ!‥」
「ただ、少し時間が掛かります故‥」
「構わん、好きにしろ」
「ありがたき幸せ‥」
と、アリオスは肝心な部分を除いて策を披露。皇帝その物を釣って自身の「策」を通した
ただ、この「策」は連合側、ベルフ軍各将にとっても余りにも予想外だった
皇帝とアリオスの会談の後、一週間後にそれは訪れる、まず、ベルフの全将に書面での通達。既にアルベルトとシャーロットは居ない為6将ではあるが
「本国決戦‥か」
「間違いではありませんね、しかし、問題は物資の移動ですが‥」
「皇帝からその為の部隊や人員は回すとの事だ」
「とは言え、やるしかないな」
エリザベート、カリスはそう見解を示してその策を同意しその準備に取り掛かる
一方で連合側には「内密」の使者がマリア、エルメイアの元に来訪した、その通達と書面を見てマリアもエルメイアも驚いた
「な?!何でこんな事が‥!」
「後、アリオス様も来られます、ですが、それも内密にどこか別の場所を用意して頂きたい」
「うむ‥しかし信じていいのか?」
「これは「ベルフ」としての会談ではありません、アリオス様としての会談です」
「分かった‥ではこちらの領土でいいのか」
「ハイ、そのくらいでないと情報が漏れます」
「うむ‥ではトレバーの後ろ、港町がある、そこでよいか?」
「分かりました、ですが人数も最少でお願いします」
「よかろう‥10日後の夜、の方がいいか」
「ハイ、伝えます」
と使者に充てられたキョウカは相互に情報交換の後、即座城を出た、そしてエルメイアの方にも同じ内容の使者が訪れ内密会談を行い、同意を取った
両盟主共「何かの罠か?」とも思ったが、アリオスがそこまで姑息な事をするとも思えず、更に、その手の謀略は現状、寧ろベルフを更に損なうだけだろうとも思った
この一件を聞いた極一部の連合軍師アンジェ、アレクシアとも、やはり同じく「この段階に至ってそこまでセコイ手を打つとは思えない」との見解を示し
更に「内密」ならばと少数のメンバーと更に人目に触れない様に最大の配慮がされた
指定日、トレバーの西、「ロドテシス港」でマリア軍の船を着け、夕方には会談メンバーも選抜される
海上なら誰の目にも触れず、情報漏れの確率も極めて低い、何か策だとしても向こうも逃げれないし、そもそも送り込むのも不可能故である
メンバーは其々の連合代表者で来れる者、最小である
エルメイア、アンジェ、カミュ、マリア、ジェイド、ロラン、チカ、アレクシア=猫、シューウォーザーである
海上に出した船に、実際アリオス自ら、キョウカ、八重と護衛5人という疑いすら吹き飛ばす程の少数で、しかも自身らが乗れるだけの小船で乗り込んできた
会談自体も密室を用意され会議テーブルを囲んで会談が行われる、まずアリオスは
「大陸中の名士とお会いできて光栄です」と挨拶した
「うむ、そなたとは初めてではないが、この様な場で再会出来た事を幸いに思う」
「まず、皆さんには私の策がある程度完遂するまで、決して秘密を洩らさない、それに同意願いたい」
「分かった」と一同頷いた
「まず、本心を言わせて貰いますと、私は、皇帝を見限りました」
「!?」
「最も帝国に尽くしたそなたが‥?」
「信用しろ、とは言えません実際今までが今までですから」
「いや、まあ、現状、この場を作ったのだからある程度は信用するが‥」
とマリアの言には一同も同意である
「何がそこまで‥」とエルメイアも思わず口にして呟く
「ハイ、私は戦略家であります、皇帝もそうです、ですが南方戦争から、その慧眼が衰え、国を損なう様な命令と指示、更に、ベルフに尽くした将らを軽視し、意見すらまともに通らなくなりました」
「それで‥」
「個人的な事ですが、兄弟弟子でもあるシャーロット=バルテルスに対する為さり様、エルメイア、マリア様への、愚劣な暗殺策動それで自国民すら軽視するような展開‥これでは、もう王としての意味がありません」
「だが、だからと言ってどうするのか?」
「は、そこで私、皆様に皇帝を討って頂きたいと思い至った次第です」
「分からなくは有りませんが‥」
「しかし、王を裏切る者を信用しろというのは無理があるのでは」
「ご尤もです、ですが、私としてはベルフを潰すというつもりもありません、私自身「ベルフ」という生まれ育った国に対して愛国の心はあります」
「ふむ‥」
「故に、頭を挿げ替える、という策を考えております」
「暗殺でもするのか?いや‥我らに討って欲しいというからには違うか」
「はい、大陸連合はベルフに対する者、故に正面から倒すのです」
「しかし、それで頭を挿げ替えるとは?」
「は、私の弟子でもあります、カリス様、ロゼット様に代替わりして頂きたいのです」
「成程‥カリステア、ロゼット両名共、民心の信頼と評価の高い人物しかも皇帝の子供じゃ」
「左様です、贔屓目かもしれませんが、お二人共、優しく、美しく下も上もよく見るお方、更に戦争を嫌っております、そうなれば、代替わりを果せば、和平の道も有りえます」
「特にカリス様は「早く事を成せば、それだけ人死にを少なく出来る」と考え自ら戦場に出てきたお方です」
エルメイアにとってはその言は意外でもあり、共感があった同じ事を考えていたからである
「わたくしも、同じ考えで御座います‥」
エルメイアが真っ先にそう言った
「勝ち負けは兎も角、戦争が長引いて不幸になるのは民衆です、人の上に立つ者、国を預かる者が、それを悪戯に長引かせるのは間違いです」
「慧眼で御座います」
エルメイアにそう言われると一同も唸って考え込む
「ですが、皇帝陛下は降伏などあり得ないでしょう、故に新たな王を入れたいのです」
「しかし‥アリオス殿に何のメリットがあるんじゃ?」
「は、私はもう、負けは確定していると思っています、なので、交換条件を願いたい、無論全て上手くいったらの話ですが」
「聞こう」
と、そこで、アリオスはその「条件」を述べた
「そこまではいい、が、アリオス殿のそれが、我らを損なう「策」でないという保障は?」
「は、私、既に「策」を皇帝陛下に具申して呑ませてあります、それらもお伝えします、そこで、ソレが全て伝えた通り展開したら偽りは無いと考えては貰えませんか?」
「うーむ‥」
「何でしたら、書面にでもしましょう、何らかの裏切りがあった場合それを公開して、私を向こうに居ながら殺せます、味方の手で、何しろ「裏切り者」に出来ますから」
エルメイアはそこで立ち上がり「わたくしはアリオス殿を信じます」と声を張って宣言した
「うむ、ここまで見せられてはな」
「聖女の判断に従います」と一同も追従する
「有り難う御座います皆さん」アリオスもそう返して感謝を述べる
「さて、ではアリオス殿、その「策」とやらを聞かせて貰おう」
「ハ」と、一同に説明を行う
「成程‥」
「うーむ、という事はこちらは何もしないのか?」
「いえ、余り手抜きするとバレますので、適度に皆さんにも「妨害」のふりを」
「分かった」
「それと交換条件ですが」
「それも分かった、ただ、完璧、とは行かんかも知れん、何しろ戦場戦争での事だ」
「承知しています」
「では、一旦解散としよう」
「殆ど、やるべき事はこちら側の事です、なので、改めて連絡を入れます」
「了解した」
ここで、この秘密会談は終わる。船を港に戻し、アリオスらも先に離脱。ただ、その後「偽りの正式外交会談」が後日にはマリアらと行われた「万が一の疑い」もさせない為である
そこでアリオスは連合に対して単身乗り込み「マリアらと直接休戦交渉を行い、物別れに終わった」と両軍に周知させてから
疑いの目すら向けさせず、更に、「戦争の気運」を高めた後、自国に戻る
一方クロスランド、背後にある本国までの道、砦、城、街では皇帝に示した策の準備が進められる
アリオスは一旦クロスランドに戻り他の将と会談、一同も再会を喜んだが、同時、この策への問いを受けるが無論、肝心な部分を排除してアリオスも説明する
「それにしてもよく皇帝に呑ませたな」
「というか、手が無いんでしょう」
「けどまあ、理には適ってると思うよ」
「ええ、これしかありません、ただ、成功率は高くありませんが‥」
「それは仕方ないだろう、もうどうしょうもない所まで来ているからな」
「はい、兎に角、私も兵と将を持ってきました、急ぎましょう」
そう会談を早々に切り上げ、準備に精励させた。連合に伝えた反面、ベルフ側の味方には「真の目的」は一切伝えていないのだからそれ以上言いようがないのもある
策としては単純な物だ
連合の支配地からベルフ王都まで、間にある全ての街や城で兵力を放棄する、物資等も民衆、非戦闘員の分だけ残し引揚げる
下がり防衛しながら敵を削り、王都まで引き、戦力を結集した後、正面決戦を挑み、撃退して反転攻勢という物である
「理に適っている」と言った通り、敵の遠征軍を引き込み、疲弊させ、その疲労のピークで反撃して叩くという策として正統的な物である
アリオスだけに「もっと奇抜な何か」があるのかとも思ったが逆に奇策を挟む余地も無い物であり一応の納得が得られての展開である
ただ、この作戦の場合、全戦力を結集する事、一旦領土を捨てる事であり「皇帝には不快でしょうが」と言った通り、我慢を擁する物である
また、逆に連合側からすればそれだけの物資の用意が必要である事
向こうが捨てた領土の確保維持を必要とするものであり手間が掛かるとも言える
更にただ傍観しているだけで無く、一定の攻めも行わなければアリオスの策を台無しにする事にもなる為やらない訳にはいかなかった
マリアはそのままクロスランド、エルメイアはスエズからクロスランドへの包囲戦を仕掛け、更に向こうの収拾に合わせて東地域も取らなければならない為、メルト、隣接地のある、南方からも攻めを展開する必要がある
実際、東からガレス、北からロベールが引き領土放棄して中央に物資回収しながら撤退を始めたのは更に一ヶ月である
連合各国は敵が引くのに合わせて領土奪取を行いつつ
各国から予備費や予備物資、兵糧等を集めて次第に全方位から領土奪還戦を行った
この作戦に連合側、事情を知らない国、領主からの不満は出なかった、表面上は「大反撃作戦」に見えた事
それが次々成功した、と見えた事にある
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